「ミルくん、現場付近で熊が出たんだって」
「え─……
最近、多いですね……」
そんなわけで、
本日のお仕事は休みになりました。
安全が確保されるまでは、
ここの現場は後回しかな……
「さて……どうするか……」
突然の休日。
やることは色々とあるけれど。
季節は秋から冬へと、
着実に移り変わっているようで……
さすがにもう、
半袖の服は着ないな、と。
半袖や薄手の衣類を春まで収納すべく、
今日は衣替えをすることに。
仕舞い込む前に洗濯し、2階のベランダへ。
ここは周囲から死角になっているので、
洗濯物を干すのにはピッタリです。
天気予報では一日中、
雨予報だったけれど──……
実際に降ったのは朝方だけで。
多少の雲はあるものの、
空はよく晴れています。
うーん
ときどき強めの風が吹くな……
でも、そのおかげで早く乾きそう。
洗濯物が、びっしりと並んで
干されている光景は壮観です。
その中には、下着の類もありまして……
無骨なボクサーパンツが並ぶ中、
ひときわ異彩を放つのは
ガーターベルト。
にわかハマショーから
勝負下着として贈られたという、
謎の経緯で今、ここにあるのだけれども
うぅーん……
悪い意味で目立ってる……
まぁ、今後も身につけることはなく
タンスの肥やしとなるのだろうけれど。
とにかく、たくさん洗濯をして疲れました。
コーヒーでも淹れて一休みしよう。
やっぱり豆からひくと香りが良いね。
コーヒー片手に庭を眺めていると、
風に乗って落ち葉が1枚、
窓にはりつきました。
秋風の悪戯か、
それとも贈り物か。
ゆったりと流れる時間。
こんな休日の過ごし方も悪くない。
せっかくだし、
お客さんから貰った柿も剥こうかな。
いつも食べなれている柿と、
どう違うのか、ちょっと楽しみ──……
黒っ‼︎
え?
なんかこの柿、黒くない?
闇堕ちしてる⁉︎
いや、でも、味は良いな……
見た目のインパクトも凄いけど、
甘さもかなりのものです。
さすがは高級柿……
スーパーで買うものとは違うな……
一休みして体力も回復したことだし。
ついでに部屋の片付けに着手する事しばし。
部屋にあるものを、
普段使い用、
特別な日用、
封印用
の3つに分類して整理します。
ちなみにガーターベルトも、
封印用のカテゴリーに分類されます。
決して誰も触れないように
ふと気がついたら、空が暗い。
今更ながらに雨予報が的中?
一雨来る前に洗濯物を取り込まないと。
「おっ……もう乾いてる」
秋風のおかげかな。
薄手の衣類は、すっかり乾いています。
手際よく衣類を取り込んでカゴの中へ。
夏用の下着も春までクローゼット行き。
通気性は良いけど、その分寒いんだ……
パチン、パチンと。
洗濯バサミを外していたら、
運悪く、その中のひとつが砕け散り。
そのタイミングで吹き抜ける、
わりと強めな秋風くん。
するり、ひらりと優雅に宙を舞う、
勝負下着(封印予定)
悲報。
勝負下着、風に飛ばされる。
『ああ、「さよなら」の意味さえも知らないで』
……というのは確か、
ハマショーの『路地裏の少年』だったかな
──……って、のんびり見てる場合じゃねぇ
誰かに見られたら終わる
幸いにして、この場所は死角だけれども
洗濯物が風に乗って、
道路まで行ってしまう可能性だってあるんだ
玄関近くにゴミステーションがあるせいで、
意外と人通りが多いんだよ……っ……‼︎
ご近所さんに見られる前に、
なんとしても回収しなくては……‼︎
「うおお……‼︎」
全力疾走。
時間との勝負です。
どうか外に誰もいませんように……‼︎
勢いよく飛び出すと、目の前には
近所のおばちゃん
…………。
え?
なんで?
なんで、近所のおばちゃんが、
我が家の玄関先にいるの?
この最悪なタイミングで
「こんにちは、ミルくん」
「あ、どうも……こんにちは……」
いや
のんびり挨拶してる場合じゃねえ……
一刻も早く、下着を探して回収しないと‼︎
ブツはどこだ!?
見られたら大変だ
見られたら終わるぞ──……
「これ、いま飛んできたわよ」
終わったぁぁ──……ッ‼︎‼︎
おばちゃんの手には、
ヒラヒラのガーターベルト。
どうすりゃいいんだ、この、
言い逃れできねぇ状況
「あぁ、ぁ……ども……」
蚊の鳴くような声とはこの事か
我ながら、とんでもなくか細い声が出た。
まさに今の心境が現れている。
その場に崩れ落ちそうになるのを、
ギリギリのところで耐えながらブツを回収。
頑張れ、ミル。
落ち着け、ミル。
こういう時こそ平常心だ。
笑顔で対応すれば流せる……かも‼︎
「ははは……
どうもありがとうございます
今日は風が強いですからね、
飛ばされちゃいました」
「恋人がいたのね
それはミルくんの趣味?」
断じて違う
なんか誤解されてる‼︎
さすがに否定しておかないと、
後々悲しい事になる
「いません‼︎
これは自分用です‼︎」
まずい‼︎
勢い余って、
墓穴掘った‼︎
違う‼︎
違うんだ……‼︎
おばちゃん、お願い
そんな目で見ないで
急募
この状況を打開する方法
「いや、あの、えっと……」
「あらあらミルくんってば
でも、まぁ……お似合いよ」
似合っても困る
「そうよね、今はそういう時代よね
大丈夫、おばちゃんはミルくんの味方よ
隠さずにもっと堂々としていなさい‼︎」
どうしよう
話がどんどん進んで行く
しかも明後日方向に
ねえ、おばちゃん
その理解力が逆に辛いよ
どうすれば良いんだ……
イマジナリーの恋人相手に、
派手な下着を贈っていると思われていた方が
まだ傷は浅かったのでしょうか……?
「あらやだ、雨が降ってきたわ」
そっか
降り出したか
まるで自分の心中のようだ……
「そうそう、これを渡しにきたのよ
畑で採れたミョウガなんだけどね
花が咲いてきちゃったから急いで食べて」
「あ、どうも……」
ミョウガ……
そっか、ミョウガか……
ミョウガをたくさん食べると、
物忘れするっていう迷信があるけれど。
今日の記憶も忘れられるかな
忘れたい……
忘れさせてくれ……
むしろ、おばちゃんの口に全部突っ込んで、
全て忘却の彼方に消し去りたい
ミョウガを受け取り、
笑顔でおばちゃんを見送って。
心の中で大発狂
しばらく打ち震えた後で、
ミョウガは美味しくいただきました。
おばちゃん、どうもありがとう……
オマケ
クローゼットの奥深くに眠る、
封印された収納箱がこちらになります。
この度、勝負下着も追加されました。
さあ
安らかにお眠り……
勝手ながら凄くモテる印象を持って居ました。
よく人からプレゼントをもらうので、
そのせいもあるのかもしれません😅
人から好かれて羨ましい限りです。
私は人付き合いが苦手で今一つ上手く行きません……
そのお返しの意味が強いです💦
モリオンさんは人付き合いが苦手なタイプなのですね……
自分もあまり人前に出るのは得意ではないのですが😅
子供の頃から不登校気味で圧倒的にコミュニケーションの経験が足りないのだと思います。
イラスト等の投稿に特化したSNSに登録して作品を公開してみたのですが上手く行かずに意気消沈して居ます。
いいねもコメントもフォローも付かないと心が折れます。
愚痴っぽくなってしまい失礼致しました。
環境に交友関係が左右されることはありますね💦
個人的に自分はモリオンさんの作品、好きですよ。
ちなみにこちらのブログの話ですが、
モリオンさんのフォローボタン消えています💦
お手数ですが確認をお願いします😅
もしよろしければ、参考までにどうぞ😊
確認してみます。