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三河湾流域圏を学ぶ

 三河湾流域圏を学んでいきます。
 

地域の生物多様性損失・汚染・気候危機との闘い

2025-04-17 13:20:22 | SDGs・生物多様性目標
 めざすべき自然共生社会像(長期目標としての 2050年ビジョン)「『2050年までに、生物多様性が評価され、保全され、回復され、賢明に利用され、生態系サービスが維持され、健全な地球が維持され、全ての人々にとって不可欠な利益がもたらされる』自然と共生する社会」を実現します。
 「生物多様性国家戦略2023-2030(~ネイチャーポジティブ実現に向けたロードマップ~)」・「生物多様性地域戦略」のめざす2050年以降の姿
 持続可能な社会を構築するためには、自然が安定し、変化に対するしなやかさを保ち、将来にわたりその恵みを受けることができるよう、共生と循環に基づく自然の理に則った行動を選択することが重要であり、自然資本を次の世代に受け継ぐべき資産として捉え、その価値を的確に認識して、自然資本を守り持続可能に活用する社会に変革していくことが必要で、これらを通じて、自然の仕組みを基礎とする真に豊かな社会を構築します。
‣豊かな生物多様性に支えられた健全な生態系が確保された社会
‣自然を基盤としてその恵みを持続可能に利用する社会
‣生物多様性の主流化による変革がなされた社会
を実現します。

 「生物多様性国家戦略2023-2030(~ネイチャーポジティブ(自然再興)実現に向けたロードマップ~)」の基本戦略は、「生物多様性に係る取組を支える基盤整備と国際連携」・「生活・消費活動における生物多様性の価値の認識と行動」・「 生態系の健全性の回復」・「自然を活用した社会課題の解決」・「ネイチャーポジティブ経済の実現」です。 
 里山、森林、河川、農地、都市、湖沼、里海、沿岸域、地下水盆などをつなぐ水循環は、国土における生態系ネットワークの重要な基軸であり、そのつながりが、在来生物の移動分散と適正な土砂動態を実現し、それによって栄養塩を含む健全な物質循環が保障され、沿岸域においてもプランクトンのみならず、固有の動植物の生息・生育・繁殖環境が維持されています。健全な水循環を維持し、人間活動に必要な水資源を持続的な方法で利用していき、適正な水量と水質の確保し、生物の良好な生息・生育・繁殖環境を確保し、さらに生態系の健全性を回復し、生物多様性の損失を止め、反転させ、生物多様性の状況を回復軌道に乗せていきます。生態系の健全性を回復し、生物多様性の損失を止め、反転させ、生物多様性の状況を回復軌道に乗せるための緊急な行動をとっていき、2050年までに、自然共生社会を構築していきます。
 生物群集全体の保全に向けた場の保全・再生とネットワーク化をおこなっていきます。
 それぞれの地域の生物多様性や生態系が、人と自然の関係も含めた地域の特性に応じて、地域ごとの知恵や技術も活かしつつ保全・再生され、次の世代に受け継がれるようにしていきます。
 「30by30」 2030年までに、生物多様性の損失を止め、人と自然との結びつきを取り戻すために、陸と海の30%以上を「保護地域とそれ以外で生物多様性保全に資する地域(OECM:Other Effective area-based Conservation Measures)」とし、健全な生態系として効果的に保全し、劣化した生態系の再生などを推進し、自然資本を軸とした国土のストックとしての価値の向上の視点を踏まえ、国土全体にわたって普通種を含めた生物種の生息・生育・繁殖地の確保と連結性の向上を図っていきます。
 生態系のレジリエンス(回復力)を高めていきます。地域の個体群をそれぞれに保全し、遺伝的な多様性も確保し、自然災害や気候変動などの様々な変化に対してレジリエントである健全な生態系を確保し、より豊かな生物多様性の基盤としていきます。種、とりわけ絶滅危惧種の絶滅を⾷い⽌めながら、種の回復と保全を行っていきます。

 豊かな生態系を維持し回復させる社会経済活動を拡大していきます。
 開発で失われる以上に、自然・生物多様性を増やしていきます。
 野生生物の保全を進めていきます。
 海洋と沿岸の生態系に関する重大な悪影響を回避するため、強靱性(レジリエンス)の強化などによる持続的な管理と保護を行い、健全で生産的な海洋を実現するため、海洋と沿岸の生態系の回復のための取組を行う。
 水産環境を整備していきます。生態系全体の底上げを図ります。
・多自然川づくり、多自然河口・干潟・藻場・サンゴ礁・浅海づくり
・モリタニングによる統合的・順応的な取組
・水産生物の動態、生活史に対応した良好な生息環境空間の創出
・森里川海の物質循環の把握・正常化
・貧酸素水塊の消滅
・藻場・干潟の保全・造成、底質改善
・漁港等の構造物の有効活用
・沖合域における湧昇流漁場の整備
・ブルーカーボンの活用
 豊かな生態系を育み水産資源の増大に必要不可欠な藻場・干潟の実効性のある効率的な保全・創造対策を推進するための基本的な考え方をとりまとめた「藻場・干潟ビジョン」が公開されています。
 藻場・干潟の持続可能な保全体制の構築を促し、藻場・干潟のカーボンニュートラルへの貢献を推進していきます。
 ブルーカーボン生態系は、平均して年間2~7%が失われている。この重要な生態系を維持するためにさらなる措置が講じられなければ、今後20年以内にほとんど失われてしまう可能性があると警告されています。(国連環境計画報告)
 湿地、干潟、藻場を保全・再生することで、多様な生物が生息する環境が形成されるとともに、CO₂を光合成で吸収し炭素を貯留するブルーカーボン生態系の形成につながります。
 湿地・干潟の重要性を認識します。

「生物多様性なごや戦略実行計画2030 ~ネイチャーポジティブの実現に向けて~」には、「重点的・優先的に取り組むべき事柄 重点方針1生物多様性に配慮したまちづくりの推進」に、「❾藤前干潟の保全」が、「重点方針2社会変革につながる取り組みの促進」に、「➋藤前干潟を通した人づくり」が掲げられています。
 干潟を賢明に利用し、2030年までに、自然再興を実現していきます。
 将来にわたり、「サンゴ礁生態系、高緯度サンゴ群集域、それに連続する砂浜や磯浜などの沿岸環境や隣接する藻場や砂泥底、干潟やマングローブ林などとの空間的なつながりと、そこに分布する生物群集それぞれとのつながり」が健全な状態で維持され、その恵みを享受できる自然と共生する社会の実現をめざして、「サンゴ礁生態系保全行動計画2022-2030」が策定されています。「SDGsアクションプラン等の関連する行動計画」・「海洋基本計画」・「昆明モントリオール生物多様性枠組・国連生態系回復の 10年・国連海洋科学の 10 年等の国際的動向」・「生物多様性国家戦略2023-2030(~ネイチャーポジティブ実現に向けたロードマップ~)・海洋生物多様性保全戦略」・「ネイチャーポジティブ経済移行戦略」・「気候変動適応計画」、サンゴ礁生態系を取り巻く状況も踏まえ、効率的かつ効果的な評価・見直しに努めます。

 「利用可能な最良の科学的根拠に基づき、世界の海洋とその資源の保護・保全・再生・持続可能かつ公平な利用に関する世界的な取組を主導し、きれいで健全な生産的かつ回復力のある生態系を有する海洋の実現を図ります。」( G7気候・エネルギー・環境大臣会合コミュニケ)

 きれいで、健全で回復力があり、生産的で、安全な海・森・里・川・湿地にしていきます。豊かな海・きれいな海・親しめる海にしていきます。
 生態系を回復して、自然環境と人とのよりよい関係を構築していきます。

 陸域と海域の利用・管理において、生物多様性への負荷を軽減していきます。
 汚染の減少、投棄廃絶と有害な化学物質や物質の放出の最小化、未処理の排水の割合半減および再生利用と安全な再利用の世界的規模での大幅な増加させることにより、水質を改善していきます。
 2030年までに水と衛生の利用可能性と持続可能な管理をすべての人に確保します。
 2025年までに、海洋堆積物や富栄養化を含む、特に陸上活動による汚染など、あらゆる種類の海洋汚染を防止し、大幅に削減していきます。
 生態系を回復して温暖化に対する緩和策・適応策を推進していきます。
 炭素を隔離・貯蔵して気候変動影響に適応する自然の力を強めるようにします。
 生物多様性の損失や生態系サービスの低下を軽減するために、温室効果ガス排出量の削減、生態系ネットワークの再生や気候変動に対する順応性の高い健全な生態系の保全と回復などを行います。

 農業生産活動は、自然環境の保全などに大きく寄与する側面と環境に負荷を与える側面があることにかんがみ、生物多様性の保全、有機農業の推進、温室効果ガスの排出削減などにより、環境と調和のとれた食料システムの確立を図ります。

 自然を活用した社会課題の解決(生物多様性国家基本戦略)
 生物多様性が、国際社会が現在直面している開発上と社会的な緊急の課題に対する解決策を提供してくれます。
 持続可能な社会に向けた意思決定に、自然の価値と自然を活用した社会課題の解決を組み込みます。健全な生態系を確保する基盤的・統合的アプローチである「30by30」の2030年目標を達成し、地域の環境・社会・経済の問題の同時解決につながる NbS(Nature based Solution)を進めます。生態系が多様な機能を発揮することにより、気候変動緩和のための吸収源の確保や災害リスクに対する強靱性(レジリエンス)の強化に加え、観光や農林水産業などを通じた地域の活性化、健康や福利など、直面する社会課題を解決していきます。自然環境を社会・経済・暮らし・文化の基盤として再認識し、自然の恵みを活かして気候変動緩和・適応、防災・減災、資源循環、地域経済の活性化、人獣共通感染症、健康などの多様な社会課題の解決につなげ、人間の幸福と生物多様性の両方に貢献する「自然を活用した解決策」(NbS)を進めていきます。
 生態系が有する機能の可視化や、一層の活用を推進していきます。
 環境・社会・経済の課題解決の基盤として、自然の多様な機能を、資本財(自然資本財)として取り入れ、社会資本整備やまちづくりなどに、その多様な機能を持続的に活用していきます(グリーンインフラ)。
 森・里・川・海のつながりや地域の伝統文化の存続に配慮しつつ自然を活かした地域づくりを推進していきます。都市に関する持続可能な開発目標の達成には、「自然を活用した社会課題の解決」が費用対効果に優れ、地球規模での持続性に極めて重要です。
 気候変動緩和・適応にも貢献する自然再生を推進するとともに、吸収源対策・温室効果ガス排出削減の観点から現状以上の生態系の保全と活用を進めていきます。
 環境政策(自然再興・循環経済・脱炭素など)を統合的に実施し、相乗効果(シナジー)を発揮させ、経済社会の構造的な課題の解決にも結びつけていきます。気候変動対策と生物多様性保全のシナジーの強化を図ります。
 沿岸生態系においてブルーカーボンの隔離・貯留機能を持つ藻場・干潟や、自然由来で炭素蓄積される湿地などの保全・再生を推進します。
 再生可能エネルギー導入における生物多様性への配慮を推進していきます。
 野生鳥獣との軋轢緩和に向けた取組を強化していきます。

 「一条堤」浜松市沿岸域防潮堤
 宮脇方式で木を植える「いのちの森づくり」は、地域の人々とともに植樹し、植樹する人々の心の中に、いのちを植え、 混植による自然林の再生をおこなうもので、 「自然を活用した社会課題の解決」で、防災力を強化し、自然再興に貢献します。
 沿岸域の総合的な管理により、多様な関係者の参画により魅力ある自立的な地域を形成し、良好な環境の形成、安全の確保および多面的な利用の調和を図り、美しく安全で生き生きした姿の沿岸域を復元・創造して子孫に引き継いでいきます。
 里海は、生態系の回復、生物多様性の維持・向上、沿岸域環境向上、土地劣化防止、資源循環、気候変動対策に貢献するとともに、災害リスクを低減する「グリーンインフラ」の役割を果たしていきます。

 暮らしを守り、地域ににぎわいをつくる海辺の風景(「グリーンインフラ実践ガイド」から)
流域治水プロジェクト2.0 豊川水系流域治水プロジェクト2.0 ~日本の東西をつなぐ「交通の要衝」を水害から守る流域治水対策~
◎グリーンインフラの取り組み『下流域の多様な生物の生息環境の再生と環境学習による地域振興』
〇豊川河口域の減少した干潟を再生することにより、多様な生態系の回復を図るため、2028年度(令和10年度)までにアサリやハマグリ等の底生生物が生息できる河川環境の再生や、環境学習・自然体験の場の創出など、自然環境が有する多様な機能を活かすグリーンインフラの取組を推進する。
 干潟を賢明に利用し、2030年までに、自然再興を実現していきます。

 ハマグリ蛤 国ランク:絶滅危惧Ⅱ類 愛知県ランク:準絶滅危惧 
 種、とりわけ絶滅危惧種の絶滅を⾷い⽌めながら、種の回復と保全を行っていきます。

 ハマグリは、三河湾からの資源でした。内田貝塚は、縄文時代後期中葉から晩期(約3000年前)の貝塚で、ハマグリばかりの貝層(2メートル余)で、窯跡もあり、かまゆで加工したハマグリを、中部高地(現在の長野県)などに出荷、交易していました。
 農林水産業や事業者による原材料調達などの活動は、生物多様性への影響にも配慮した持続可能な方法で行われ、地域に固有の希少種の保護など生物多様性の保全の取組と両立する形で国内の自然資源の有効活用を進めます。
 人間によって引き起こされる既知の絶滅危惧種の絶滅が阻止され、2050年までに、すべての種の絶滅率とリスクが10分の1に削減され、在来の野生種の個体数が健全かつ強じん(レジリエント)な水準まで増加されるようにしていきます。野生種と家畜・栽培種の個体群内の遺伝的多様性が維持され、その適応能力が保護されるようにしていきます。
 人々の暮らしについて、「ウェルビーイング/高い生活の質」が実感できるよう、連関する3つの危機:生物多様性の損失、汚染、気候危機による環境への危機<生物多様性損失・汚染・気候危機との闘い>などに対処し、地球を破壊から守っていき、ライフスタイルのイノベーションを創出しつつ、安全・安心、健康で心豊かな暮らしを実現していきます。
 地域SDGsの生物多様性主流化をして、「生物多様性保全機能」を中心にして、地域・流域・沿岸域の重要な機能:①生物多様性保全機能、➁水循環機能、③二酸化炭素の吸収・環境負荷の低減機能、④生産機能、⑤保健・レクリエーション機能、⑥景観形成、地域文化の保存・継承機能、⑦国土保全機能を、統合的・複合的に発揮し、地域の持続可能な社会を構築していきます。

 2030年、統合的自然再興(生物多様性の損失を止め、反転させ、自然を回復軌道に乗せる)を実現し、2050年までに、自然共生社会を構築していきます。

海洋科学と地域の持続可能な海洋経済の構築

2025-04-12 09:59:59 | SDGs・生物多様性目標
 SDGs・社会変革・経済変革を推進し、自然再興し、海洋の健全性を保護・回復し、食糧を提供し、里海・沿岸コミュニティーに力を与え、都市に勢いを与え、人と物を輸送し、地球規模の課題に革新的な解決策を提供する持続可能な海洋経済を構築していきます。

 地球上の全ての生命にとって不可欠であり、<生物多様性損失・汚染・気候危機との闘い>(生物多様性の損失の阻止と反転、汚染への対処、SDGsに沿った気候変動への対応)にとって不可欠な、強靭な沿岸・海洋生態系を有する、クリーンで健全かつ生産的な海洋と海に向けて、断固として行動するとともに緊急に取り組みます。

 「持続可能な開発のための国連海洋科学の10年(2021〜2030年)」は、海洋システム・地球システムの状態の衰退を逆転させ、この巨大な海洋生態系の持続可能な開発のための新たな機会を触媒するために、海洋科学と知識生成を刺激し、その使用方法を変革し、2030年までに現在の海から望ましい海への移行を促進することをめざしています。
(◎:持続可能な開発のための国連海洋科学の10年(2021〜2030年))
◎「今ある海」から「私たちが望む海」への変革 「国連海洋科学の10年」は、海洋科学、海洋研究に対する理解を深め、政策および意思決定に資するべく方向付ける枠組みを提供するものであり、これを達成するために、リソースと技術革新を結集して、持続可能かつ健全な海洋のための能力開発、科学的知見の蓄積、インフラの構築と共有、パートナーシップの促進を図り、その過程において、全ての人にとって持続可能、公平で、健全な未来の一翼を担うべく、「今ある海」から「私たちが望む海」への変革をうながします。

◎成果7:人の幸福と持続可能な開発に関連して社会が理解し、価値を認める「夢のある魅力的な海・地球」
 「地球ができたのはだいたい45億年前。われわれの地球はものすごい幸運な星なんですね。この地球は、そのエネルギーのもとになっている太陽からの距離がちょうどよいから、春夏秋冬と季節があって、水は凍ることがあるけれど、だいたいは水の形で保たれていて、しかも蒸発してしまわない。この水が液体のまま、何十億年と続いて存在していることはたいへん大事なことです。なぜかというと生き物が生まれたのは水(海)の中だから。地球の近くにも星はいっぱいあるけれど、水がないから生命は誕生しませんでした。地球のような青い惑星は宇宙を探してもなかなかありません。」(人類の幸運について中・高生に語った小柴昌俊氏(ノーベル物理学賞受賞・東京大学名誉教授)講演録「宇宙は不思議のビックリ箱」(「文藝春秋」第81巻 第5号掲載)から)
 太陽・地球・月・年月日・海潮干・生命・生物多様性
 「地球の自転と公転、月の公転によって生じる日・月・年にみられる環境変化に適応した生物の活動リズムの多様性が共存の鍵

◎リテラシーの向上と人類の行動変容
◎社会と海洋の関係を回復する
 自然・海洋を尊重するために、人間の開発様式、振る舞いおよび活動を変革していきます。(「福利のための生物多様性の保全及び持続可能な利用の主流化に関するカンクン宣言」)
 健全な海と健全な人間を構築していきます。「各地域の活動を活性化し、産業にビジネス・チャンスを提供し、環境保全と経済発展を両立させる、科学的知識に基づいて実施される解決策の成功例はあり、これらの解決策によれば、人々は海の資源を枯渇させることなくその恩恵に浴することができるようになります。目標は明確です。健全な海と健全な人間を構築することです。これらは、健全なブループラネットにとって必須の要素です。」(平成23年度(第20回)ブループラネット賞受賞者ジェーン・ルブチェンコ博士「美と恵みと力の源である海洋:我々の青い惑星の持続可能な未来への鍵」から)
 海洋科学は、海洋における過去、現在、計画された人間の活動についての理解を深めることに貢献するために緊急に必要です。

◎持続可能で強靭かつ公平な海洋経済の発展  変化する環境・社会・気候の下で、海洋経済の公平で強靭かつ持続可能な発展のために、知識を生み出し、イノベーションとマルチセクター・パートナーシップを支援し、解決策を開発する。

 持続可能でレジリエントなブルーエコノミー/海洋経済 のためのG20ハイレベル原則が公開されています(「G20環境・気候大臣会合成果文書及び議長総括(仮訳)」から)。

原則8. 共有の海洋課題に取り組むための国際協力の強化
 海洋空間は本質的に相互につながっており、海岸線沿い、一国の海洋水域内、あるいは公海上や深海底で発生する活動は、遠く離れた海岸線沿いの沿岸及び海洋環境に影響を与える可能性がある。したがって、健全な海洋とその資源の保全と持続可能な利用を確保するためには、海洋保護区の設置やそのネットワークに向けた調整、その他の効果的な区域ベースの保全措置、能力開発、知識の共有、技術、共通のプロジェクトや投資、優良事例等を通じて、あらゆる適切なレベルでの政府間及び関連する国際機関間の強力な協力が必要である。

原則9. 海洋ファイナンスの強化
 海洋保護、保全、持続可能な利用、沿岸・海洋資源の回復は、大きな資金需要に直面している。確立されつつあるブルーエコノミー/海洋経済分野での持続可能な成長には、途上国を含め、国内・国際、民間・公的といった資金源からの資金アクセスの強化、適宜、沿岸・海洋環境を脅かす補助金を含む有害なインセンティブの特定、排除、段階的廃止、改革が必要である。
 UNFCCC、パリ協定、生物多様性条約等の既存のメカニズムを、それぞれのマンデートに沿って、海洋関連の行動のために効率的かつ効果的に活用することは、海洋の生物多様性と生態系の保護、保全、持続可能な利用、回復のため、また気候変動の緩和と適応のために不可欠であり、持続可能でレジリエントなブルーエコノミー/海洋経済に貢献する。

原則3. 社会的・世代間公平性とジェンダー平等の推進
 ブルーエコノミー/海洋経済の戦略と政策枠組みは、社会的公平性、世代間公平性、ジェンダー平等を促進することが極めて重要である。女性や地域コミュニティ、先住民族が、適切な能力開発を通じて、計画、意思決定、実施プロセスに完全かつ効果的に参加し、持続可能なブルーエコノミー/海洋経済が提供する経済的機会から利益を得られるようにするためには、透明で包摂的なアプローチが重要である。さらに、先住民族、若者、女性を含む全てのコミュニティと個人は、ブルーエコノミー/海洋経済の持続可能性に貢献し、沿岸・海洋環境への悪影響を軽減する持続可能なライフスタイルを採用するようエンパワーされるべきである。

原則6. 先住民と伝統知識の認識、保護、活用
 沿岸・海洋環境の効果的な管理には、適切な場合には、先住民の伝統的な知識、文化、慣習を尊重し、それらを取り入れることが必要である。先住民の知識、伝統的知識は、人間と海洋、沿岸・海洋生態系の関係を認識しながら、環境の持続可能性と天然資源の責任あるスチュワードシップを促進することができる。先住民の知識と伝統的知識を考慮し、公正で衡平な利益配分を促進することは、コミュニティのスチュワードシップ、包摂、参加型の沿岸・海洋環境の保全と持続可能な管理を促進するはずである。
 地域の特性に応じた生物多様性の持続的な利用(「平成22年度三河湾流域における生物多様性の持続可能な利用に係る伝統的知恵に関する調査報告書」から)
□ 地域の自然環境 ・川、海、干潟、砂、岩 ・貝、魚、海草、藻場、渡り鳥、スナメリなど ・木の葉、流木
〇伝統的知恵 自然環境を暮らしに即して認識・分類し、自然の中から有用なものを取り出して持続可能に利用し自然の中に成り立つ暮らしの基盤を共同で維持管理し、さらに自然を畏れ敬うために神を祀る。
〇持続可能な資源利用の仕組み 
・社会組織の秩序ある共同利用が可能とする持続的な自然資源の利用 
・自然およびその恵みに対する感謝の気持の醸成
〇環境を読み、社会環境の変化に対応・再生する力
・伝統的な生活や生業により培われた地域環境を読む力
・社会環境の変化を感じ取り対応・再生する力
〇限りある資源の恵みを最大限に活用する知恵
・地域の気候や地形に応じたきめ細やかな土地利用
・地域の特性に応じた狩猟や採取、料理法など、生活や生業に基づき継承された文化

 「安全で繁栄し、平和な世界を構築していきます。その基盤は科学的な理由です。科学は、生活の負担を軽減し、その苦しみを軽減するすべての進歩の根底にあります。科学は、より良い生活に向けた真実、知識、革新を追求する世界的な共通善です。」(「私たちの惑星、私たちの未来:緊急の行動への呼びかけ」から)
◎科学的公正、平等、包摂、尊重、公平が「国連海洋科学の10年」の核となる原則です。
原則5. 科学、技術、イノベーションの活用
 持続可能で強靭なブルーエコノミー/海洋経済を創造するためには、科学者、公共団体、企業、研究機関の国際協力を基盤に、科学、技術、イノベーションの支援に協調して焦点を当てることが必要である。確かな科学に裏打ちされた、既存の、そして新たな技術に基づき、生態系や自然を活用した社会的なイノベーションは、海洋部門や産業が気候や海洋・沿岸環境に与える悪影響を最小化するための新たな解決策を生み出し、実行するのに役立ち、持続可能性、資源効率、循環経済に貢献することができる。今世紀半ば頃までに世界の温室効果ガス排出量ゼロ/カーボン・ニュートラルを達成し、気候変動の悪影響に対する強靭性の構築をし、沿岸・海洋生態系の保護・保全・持続可能な利用・回復を確保し、生物多様性の損失を阻止し反転させ、汚染を削減し、繁栄と持続可能な生活のための機会を創出する。

 革新的な海洋科学的知見を見出し利用する。革新のための条件、すなわち、情報の乏しい深海域から、人との関わり合いの多い沿岸域、さらには極域までをも含み、海洋の定性的、定量的知見を得る事によりパラダイムシフトを創出し、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に寄与する解決策の開発に資する。

◎成果6:全ての人々がデータ、情報、技術、イノベーションに平等にアクセスできる「開かれた海・地球」
◎海をデジタルで表現する
◎技能、知識、技術、全員参加  能力の向上とデータや情報へのアクセス、知識の向上
◎世界海洋観測システムの持続的拡大 

 持続可能な開発に関するグローバル・レポート2023「危機の時代、変化の時代:持続可能な開発への変革を加速させる科学」報告書は、科学と実践の架け橋となり、国連加盟国の政策決定者から若者や地域団体、金融機関からその他産業パートナー、ドナー機関から慈善団体、そして教育機関から市民社会団体に至るさまざまなアクターに向けて、実行可能な知識と実践的なツール及び事例を提供するもので、SDGsの進捗を評価し、課題ならびに持続可能な社会の実現に向けた解決策を提言しています。
1「2030アジェンダ」の折り返し地点において、国連加盟国に6つの要素
(i) SDGsの実施における負の傾向や停滞に対抗するための国家行動計画、
(ii) 国家行動計画に反映させるための地域や産業に特化した計画、
(iii) 税制改革、債務再編と救済、SDGs 実施のための国際金融機関によるエンゲージメント強化など、財政余地を拡大するための「アディスアベバ行動目標」等を通じたイニシアチブ、
(iv) SDGs 関連のデータ、科学に基づくツール、政策学習への投資、
(v) 科学・政策・社会のインターフェースを強化するためのパートナーシップ、
(vi) 政府やその他のステークホルダーの説明責任を向上させる措置
からなる共通の「SDG変革枠組み(SDG Transformation Framework)」を確立すること。
2 個人・組織・ネットワークの各レベルにおいて、戦略立案、イノベーション、紛争管理、阻害要因の特定と克服、危機とリスクへの対処などに向けた変革のための能力開発を推奨しています。
3 一貫性と衡平性を実現し、人々のウェルビーイングが気候・生物多様性・生態系を犠牲にすることなく確実に向上するために、持続可能性への変革に向けた6つのエントリーポイントのそれぞれにおいて重要な相乗効果のある介入策を提唱しています。
 行動を起こすことでSDGs全体に影響を与えうる重要な分野での変革:
①人間のウェルビーイングと能力、➁都市と都市周辺部の開発、③地球環境コモンズ、④持続可能な食料システムと健康的な栄養パターン、⑤持続可能で公正な経済、⑥エネルギーの脱炭素化とエネルギーへの普遍的アクセス
4 実施する上での基盤条件を改善する5つの措置を提案しています。
 ①紛争の予防と解決への投資、➁財政余地の拡大、③社会的に疎外されたグループへの支援、④デジタルトランスフォーメーション(DX)の活用、⑤ジェンダー平等への投資です。
5 科学を変革するためのツールと、人間と自然が共に繁栄できる未来に向けて科学・政策・社会の連携を確実なものにするアプローチを提言しています。

原則7.ブルーエコノミー/海洋経済のモニタリングと評価メカニズムの確立と実施
 海洋の広大な面積と幅広い海洋活動や利害関係者は、ブルーエコノミー/海洋経済活動の持続可能性をモニタリングし、評価する上で大きな課題となる。気候変動、生物多様性の損失、汚染のペースや規模、それらが沿岸・海洋環境に与える影響に伴う不確実性は、ブルーエコノミー/海洋経済の実施戦略の定期的な再評価と再編成を必要とするかもしれない。海洋・沿岸環境への悪影響を評価し、最小化し、緩和することを目的とした効果的なモニタリングと評価のメカニズムを、既存のものを活用することも含めて確立し、実施することは、包摂的で持続可能かつレジリエントなブルーエコノミー/海洋経済のための意思決定に情報を提供する上で重要である。
◎成果4:社会が海洋状況の変化を理解し、対応することができる「予測できる海・地球」
◎成果5:海洋の危険から生命および暮らしが守られる「安全な海・地球」
◎海洋災害の警報 早期警報システムを世界の全地域に拡張し、高度化
◎海洋・沿岸リスクに対するコミュニティの回復力を高める

原則4. ブルーエコノミー/海洋経済への統合的アプローチに資する海洋空間計画(MSP)の利用推進
 海洋科学は、海洋保護区およびその他の地域ベースの管理措置の計画と実施を支援することに貢献するために緊急に必要です。
 持続可能でレジリエントなブルーエコノミー/海洋経済には、あらゆるセクターのあらゆるパートナーやステークホルダーの効果的な関与と参加が必要である。漁業、養殖業、港湾・海運業、海洋科学技術、エネルギー、観光業、その他の新興部門等の海洋部門は多様なニーズ、野心、環境への影響を抱えている。海洋空間計画(MSP):シースケープアプローチ、SATOUMI里海づくりは、海洋空間を管理するための科学的根拠に基づいた、協力的かつ参加型のアプローチであり、生態系内のあらゆる相互作用を認識し、多様な人間による利用のバランスをとり、海洋保護と保全の必要性を考慮するものである。
 このような生態系に基づく参加型の空間的アプローチを、沿岸国の利害を考慮しながら、国、準国家レベル、地域レベルで採用することは、
①増加する人間活動の数、多様性、強度と、海洋の健全性、ひいては生態系サービスを提供し維持する長期的な能力とのバランスをとること、
➁適切な生態学的、経済的、社会的、文化的視点を取り入れること、
③生態系のスケールで調整された科学と情報に基づく管理を支援すること
に貢献することができる。
 長期的に有効であるためには、海洋空間計画が気候の変化を考慮に入れ、強靭性を構築し、生物多様性の損失を阻止し反転させ、汚染と闘うことに貢献することが重要である。

 海洋科学は、気候変動を緩和および適応し、災害リスクを軽減し、損失と被害に対処し、回復力を強化するための対策を開発および実施することに貢献するために緊急に必要です。
◎海と気候変動の理解と予測の促進 気候変動に対する海洋ベースの解決策を解き明かす  

 「我々の地球は、気候変動、生物多様性の損失および汚染という3つの世界的危機ならびに進行中の世界的なエネルギー危機からの未曾有の課題に直面している。
 我々は、この勝負の10年に行動を拡大することにより世界の気温上昇を摂氏1.5度に抑えることを射程に入れ続け、2030年までに生物多様性の損失を止めて反転させ(自然再興)、エネルギー安全保障を確保するとともに、これらの課題の相互依存性を認識し、シナジーを活用することで、パリ協定へのコミットメントを堅持する。」(2023年5月「G7広島首脳コミュニケ」より)

原則 2. 海洋・気候の関連性の認識と対処
 健全な海洋とその沿岸と海洋生態系は、気候変動との戦いにおいて非常に重要である。
 気候変動の現在および予測される影響は、ブルーエコノミー/海洋経済のほぼ全てのセクターに悪影響を及ぼし、地球の気候を安定させる海洋とその生態系の能力にも影響を及ぼす。
 海洋と気候の相互連関を認識し、特に沿岸と海洋生態系の保護、保全、持続可能な利用、回復(自然再興)によって、持続可能な海洋に関する行動を通じた気候変動の緩和と適応の機会を認識することが重要である。
 自然を活用した解決策、生態系を活用したアプローチおよびその他の管理・保全のアプローチは、気候適応のための解決策を提供し、自然の炭素吸収源としての役割を果たすことによって、異常気象や海面上昇に対処する等のコベネフィットを提供することができる。
 気候変動の影響に対する沿岸地域社会とブルーエコノミー/海洋経済の適応能力を強化するために、科学、先住民の知識、地元の視点に基づいた、自然を活用した解決策、生態系を活用したアプローチおよびその他の管理・保全アプローチ、技術を含む適応策を取り入れるべきである。
 自然エネルギーを含む低GHGとゼロのエネルギー源の可能性を最大限に活用し、海洋を活用した産業の持続可能性を強化し、海洋を活用した二酸化炭素の除去と隔離の安全かつ効果的な利用の可能性に関する研究を、潜在的な機会や環境への影響の可能なリスクの防止を含めて推進する。
 既存の不平等に対処し、異常気象に対して脆弱な沿岸地域のコミュニティを支援する必要性がある。
◎海洋・沿岸リスクに対するコミュニティの回復力を高める

原則 1. 海の健全性の優先:海洋汚染への対処、生物多様性の損失の阻止と反転、沿岸及び海洋生態系の保全
 海洋科学は、健全な海が食料システムの重要な部分であることを認識し、魚の資源を回復し維持することに貢献するために緊急に必要です。
◎成果3:持続可能な食料供給及び海洋経済を支える「生産的な海・地球」
◎海からの食料資源の確保 世界人口の持続可能な栄養補給

◎成果2:海洋生態系の理解、保護、復元、管理が進んだ「健全かつ回復力の高い海・地球」
◎生態系と生物多様性の保護と回復  国連「生態系回復の10年」との相乗効果を発展
 海洋の保護と生産は、国連気候変動枠組条約とパリ協定、生物多様性条約、及びリオ宣言で定められた汚染者負担原則に沿ったもので、海洋と陸の活動と生態系全体にわたって調整されていきます。

 沿岸と海洋の汚染は、生態学的と社会経済的に重大な結果をもたらす沿岸と海洋の生物多様性に対する脅威を増大させている。
 沿岸・里海と海洋の汚染:プラスチック、大気汚染物質、その他の残留性汚染物質、海洋環境に影響を及ぼす持続不可能な開発と違法行為、気候変動、外来種など

◎成果1:汚染源を特定し、削減、除去した「きれいな海・地球」
◎海洋汚染の減少 海洋汚染への理解と対策
 海洋科学は、プラスチック汚染を含むあらゆる種類の海洋汚染の防止、削減、管理を行うことに貢献するために緊急に必要です。

 持続可能で強靭(レジリエント)なブルーエコノミー/海洋経済は、
 陸上と海上での活動を含むあらゆる種類の海洋汚染の削減
 国連海洋法条約の下での国家管轄権外区域の海洋生物多様性の保全と持続可能な利用に関する協定の実施等、昆明・モントリオール生物多様性枠組のゴールとターゲットの達成
 海洋生物多様性と沿岸・海洋生態系の健全性の保護、保全、持続可能な利用、回復(自然再興)
 陸域、内陸水域、沿岸域および海洋域の少なくとも30%が効果的に保全・管理されることを確保し、それを可能にするための緊急行動(30by30)
に貢献するもの。
 海洋環境等を含むプラスチック汚染に対する対策は、持続可能な消費と生産、経済における資源効率と循環性、科学的・社会経済的評価、廃棄物の環境的に健全な管理を含む包括的なライフサイクル・アプローチに基づいて行われるべきである。
 廃棄物の海洋投棄と海洋排出は、海洋汚染防止のために適用される国際的義務と安全基準を厳守しなければならず、特に廃棄物の不法投棄と海洋排出の防止と撲滅の重要性に留意する。

 地球環境コモンズ 行動への呼びかけ(「国際連合 持続可能な開発に関するグローバル・レポート2019 未来は今:持続可能な開発を達成するための科学」から) 
〇政府・地域社会・民間セクター・国際的な関係者は、「持続可能な開発目標」を達成すると同時に、自然資源の保護・回復・持続可能な利用に必要な変革を早急に達成しなければならない。
〇政府は、環境の外部性、特に地球環境コモンズに影響する外部性を正確に評価し、価格設定・移転・規制・その他のメカニズムを通じて使用パターンを変更する必要がある。