Metropolitan Diary (メトロポリタン ダイアリー)

New York Times に毎週1回掲載される読者投稿欄、「Metropolitan Diary」の自由訳です。

びっくり!

2010年02月01日 | 地下鉄・電車・飛行機
DEAR DIARY:

この前、地下鉄のCトレインに乗っていたとき、すっごいことがありました。59番通りの駅から女の人が乗ってきて、その人はたくさんのビニール袋を持っていて、中には食べ物やシャツやほかにも色んなものが詰め込まれてました。でも別に変な感じはしませんでした。

でも、電車が動き始めた時に、いつもそうなんだけど、ガタンと揺れて、その人は転びそうになって、手に持っていたビニール袋を一つ落っことしてしまいました。

そしたら、袋の中から、大きなウシガエルが飛び出してきたんです!

女の人はあわててそのカエルをつかまえようとして、カエルはぴょんぴょんはねて、そばにいた人たちも応援して、ようやく元通りにビニール袋の中に入れました。

こんなの初めて見たよ。ほんとにすごかったよ!

Matthew Goldberg, age 12

人は見かけによらぬもの

2010年01月31日 | 地下鉄・電車・飛行機
Dear Diary:

今はもうすっかり年をとってしまった私の猫は、動物愛護協会の里親募集で、まだ小さな子猫だった頃に私が引き取ったものです。92番通りにある愛護協会のオフィスからチェルシーの私のアパートメントまで、地下鉄に乗って連れて帰りました。協会の人が子猫を入れるための段ボールの箱を用意してくれて、私は大事にその箱を抱えて電車に乗り込んだのです。

電車が動き始めるとすぐ、子猫は世にも悲しげな声でなき始めました。私はどうしたらいいか分からなくてとても困ってしまいました。

すると向かいの座席に、とても大柄な、ちょっと怖い感じの男の人がやってきて腰をおろしました。黒い革のジャケットに銀色の鎖を垂らし、首のあたりに入れ墨をしていました。その人は私のことをじっとにらむように見つめています。私は一刻も早く電車が駅に着くよう祈りました。

すると、その男の人が話しかけてきました。

「うちの子猫もそんなもんだ。気にするこたぁないよ」

そして、にっこり笑って軽くうなずくのでした。

Lara Bergen

小銭

2010年01月30日 | 地下鉄・電車・飛行機
Dear Diary:

メトロノースのグリニッジ駅から自宅のあるスカースデールまで行くには、定期券の差額分、3ドルを支払わなければならない。しかし、あいにく小銭の持ち合わせがなかったので、切符売り場で、「ちょうど小銭の持ち合わせがなくて、50ドル札しかないんだが、大丈夫かい?」と尋ねた。すると係員はにこりともしないで、さらりと言った。

「ここはグリニッジ。それも小銭みたいなもんですから」

Thomas Feyer

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訳者注:アメリカでは日常的に使われる紙幣は20ドル札までである。50ドル札や100ドル札はまず使わない。多額の現金を持ち歩くのは危険だということと、偽札リスクがあるので受け取りを拒否されることが多いというのがその理由だ。

夢に見る彼らの姿

2010年01月22日 | 地下鉄・電車・飛行機
Dear Diary:

会社の友達が地下鉄のEトレインの中で目にした出来事を話して聞かせてくれました。

明らかにホームレスと分かる男女二人が身の回りの物を詰め込んだ紙袋を抱えて座席に座っていたそうです。そこへ、いつもEトレインの中で物乞いをしている男の人が通りかかって、二人に気付くとすぐに手に持っていたサンドウィッチを差し出しました。ジュースが残ってなくて申し訳ないとおわびしながら。

その人はいつものように車両をあちこち移動しながら、小銭を恵んでもらえないかと乗客たちに訴えていました。再びホームレスの二人の前を通りかかると、まだ何か食べ物がいるんじゃないかと心配そうに尋ねました。

するとそのホームレスの男性がその人に1ドル札を渡そうとするのです。彼は驚いて、「いやいや、そんな、お金なんてくれなくていいんだよ」と言いました。ホームレスの男性は毅然として譲りません、

「そうはいかんよ。お互いフィフティー・フィフティーだ。あんたはおれたちによくしてくれた。おれもあんたにきちんとしたいんだ」
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この話を聞いてずい分考えさせられました。リーマンやらシティグループやらのお偉いさんのこと、贅沢なコーポレートジェットを乗りまわす大企業のCEOたちのこと・・・。

ああいう傲慢で強欲な連中にふさわしい後半生の過ごし方は、ホームレスの人たちのために寄付を募り、ピーナッツバターのサンドウィッチを地下鉄の中で配って歩く生活ではないかしら。疲れた時には駅のベンチで寝ればいいんだわ。

ええ、もちろん、そんなこと絶対あり得ないってこと知ってますよ。ちゃんと分かってます。けれど、たまにはこんな夢をみたい気分になるんです。

Judy Capel

デザート

2010年01月12日 | 地下鉄・電車・飛行機
Dear diary:

時:20年ほど前のある晩、午後10時半頃

場所:シェリダンスクェアからアップタウンへ向かう地下鉄の中

芝居がはねて家路に向かう大勢の一団が乗り込んで、電車は朝のラッシュアワーの時のように込み合っていた。しばらく進むと、突然電車が停車した。明かりが消えて車内は真っ暗。エンジンが止まり何か煙の臭いが漂い始めた。

鼓動が高鳴る。不安が募る。ほんの2,3分しか経っていないのだろうけれど、何時間にも感じられる。煙の臭いはますますひどくなる。乗客はみんなパニック寸前。

そのとき私の友人スティーブ(亡くなってずい分経ちます。私にとって忘れえぬ人です。)が、私の方に身体を寄せてやさしい声で言いました。

「デザート、ちゃんと食べておけば良かったね」

このセリフに車内は笑いに包まれました。すると、エンジンが再びうなりをあげて電灯がついて明るくなり、まるで何事もなかったかのように電車は走り始めました。彼の機知にあふれる態度が、現実を動かす力を持っていたのかと、なつかしく思い出されます。

Linda Maryanov

袖振り合うも他生の縁

2010年01月05日 | 地下鉄・電車・飛行機
Dear Diary:

何週間か前のできごとでした。私がブロードウェイと81丁目の角にたたずんでいると、「ねえ君、ちょっとこっちへ」と声が聞こえました。声の方を振り向くと、サングラスをかけた男性が高級車の運転席から、私に向かって手招きをしています。

もちろん私は知らない人と話をするようなタイプではないのですが、変な人でもなさそうだったので、車に近づいて腰をかがめ、先方の顔をうかがってみました。するとその人はサングラスをはずして、「覚えているかな、僕は毎朝君と同じ地下鉄に乗ってたんだよ。」と言いました。

なるほど思い出しました。この人には見おぼえがあります。私は高校に通う4年間というもの毎日、この人と同じ時間の同じ電車の同じ車両に乗って、同じ駅で降りていたのです。

学校生活はどうだい、と尋ねられたので、無事にすべてを終えることができて、あとは2週間後に卒業式が控えているだけです、と答えました。もちろん、「どこの大学に行くんだい?」と聞かれたし、「そりゃあいい、わくわくしてるだろ?」とも言われました。最後に、元気で頑張るだよと言ってくれて、お別れしました。

私がその場から離れて通りを歩き始めると、ちょうどその人の奥さんが(奥さんも毎朝、その同じ地下鉄に乗っていました)車に向かっているのが見えました。賭けてもいいんですけど、奥さんが車の助手席に乗り込んで走り始めた瞬間、きっとその人は奥さんに向かってこう言うんじゃないかしら。

「ねえ君、たった今ここで君を待っている間に、誰に出会ったか、当ててご覧!!」

Alisa Cohen

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訳者注:アメリカでは5、3、4年制が普通

神の恵みを語る前に

2010年01月03日 | 地下鉄・電車・飛行機
Dear diary:

それは地下鉄Aトレインの車内での出来事でした。真っ赤なドレスを着て、ピンのように細くとがったかかとのハイヒールを履いた女性が、聖書を胸に抱いて静かに聖歌を歌い始めました。そして、乗客の皆に向かって、互いに助け合い、愛し合うよう、祈りの言葉を捧げました。

すると、一人のみすぼらしい身なりの若者が彼女の前に立って、恵まれない人々のためにどうか施しを、と訴え始めました。彼もまた、全能の神の恵みについて語り、乗客にアピールしているのです。

赤いドレスの女性の方は、突然現れた若者に先を越されたのがしゃくにさわったようで、彼に向かって一言、投げつけました。

「仕事みつけなさいよ!」

Jane Tainow Feder

iPhone の使用法

2009年12月30日 | 地下鉄・電車・飛行機
Dear Diary:

ある日の朝、マンハッタンンのペンステーションに向かういつもの通勤電車の中で、私の前の席に座っていた若い女性が、iPhoneを手鏡がわりにしてメイクアップをし始めた。彼女はまゆずみを入れるたびにiPhoneで写真を撮って、その写真を入念にチェックしながら作業を進めた。

左目、右目、そして口紅と、何回も写真を撮り、それを注意深く確認しながらお化粧をしているのだ。

すべてのパーツの作業を終えた彼女は、今度はiPhoneを、ありとあらゆる角度にかざして、自分の顔を動画に収め始めた。そしてその動画をまた入念にチェックして、必要な修正を施すのだった。ようやく完成したとみえて、彼女はにっこりとiPhoneに向かってほほ笑んで、最後の写真を撮影し、化粧道具をハンドバッグにしまった。

この間、一時間足らずの出来事だった。たまたま彼女の後ろの席に座っていた私は、傍観者として存分に楽しませていただいた。

Angelo Buencamino

子供じゃあるまいし!

2009年12月23日 | 地下鉄・電車・飛行機
Dear Diary:

10月のある日の夜だった。私の乗っていた地下鉄の車内は結構込み合っていた。とある駅で乗客が乗り降りして、一つ空いた席ができた。年の頃30代なかばくらいの男性が腰かけようとして、その席の隣に座っているもっと若い男性のジャケットの裾を少し押しのけた。

座っていた方の若者はジャケットの裾を取り直して、その男に、「何すんだよ、あんたに人の物を触る権利はないよ」という意味のことを言った。言われた方の男性は、「ここは公共の場所だ!」と言い返して、一気に険悪な言葉の応酬が始まった。ついに男性が大声でどなり声をあげた、「この野郎、ぶん殴ってやるぞ!!」

若者も負けてはいない。すっくと立ち上がって、両者にらみ合いの体勢に入った。どちらも相手が先に手を出すのを待っているのは明らかだ。車内の緊張が頂点に達したその時だった。小柄で、品のいい、おそらく50代くらいの女性が、大きな声で叫んだ、「あなたたち、いいかげんにしなさい!!」

車内の乗客全員が(もちろんにらみ合っている二人も含めて)、彼女の方に振り返った。「一体どうしたっていうのよ、あなたたち二人、まるで子供みたいじゃない」

喧嘩していた二人はバツが悪そうにうつむいた。その女性はさらに続けて、その二人に向かって、お互いにきちんと謝るようにと要求した。すると、驚いたことに、若者の方がゆっくりと右手を差し出したのだ。一方の男性もこれに応じて、やや躊躇しながらも、右手を出して、二人は握手した!

これでやっと一件落着かと思ったら、さらにその女性は、その二人に、車内の乗客の皆さんすべてに対して不快な思いをさせたことをお詫びしなさい、と言いつけたのだ。

彼女の見事な采配ぶりに、車内には歓声と拍手が沸き起こった。

Ken Charkalis

ここはニューヨークだから

2009年12月18日 | 地下鉄・電車・飛行機
Dear Diary:

私の夫、ダニエルはタイムズスクェアのオフィスビルの41階で働いています。眼下にハドソン川を見渡すことができる、眺めの良いフロアです。

今年の1月、USエアーウェイズの1549便がハドソン川に緊急着陸(水)したとき、夫は他の同僚と一緒に窓際に集まって救助活動の様子を見ていたそうです。その時、別の社員が通りかかって、「みんな何見てるんですか?」と声をかけてきたので、「ジェット旅客機が川に降りてきたんだ」と夫が答えると、カリフォルニアからこちらへ転勤してきたばかりの、その若い社員はこう言ったんですって。

「ああ、それならさっき僕も見ましたよ。ちょっと変だなとは思ったけど、『ここはニューヨークだから』と思い直して席に戻ったんですが・・・」

Rebecca Wolf