■ 前置き――史上最強の猛毒「ダイオキシン」
私は「ダイオキシン類関係公害防止管理者」という、少しマイナーな国家資格を保有しています。
塩素を含むプラスチックを焼却炉で燃やすとダイオキシンが発生することから、未然に公害を防止・管理する目的で設けられている国家資格です。
ダイオキシンの毒性は極めて強く、強い催奇形性・発癌性を有します。
「自然界に存在する最も毒性の強い物質のさらに 10 万倍の毒性を持つ」と評価され、「史上最強の猛毒」とも言われています。
そして、資格試験の教科書の途中にあっさりと書かれていて驚くようなことなのですが、是非とも知っていただきたい一節があります。
それは、
---------------------------------------------------------------------
日本人のダイオキシン類摂取量のうち約 7 割は魚介類から摂取されている
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という事実です。
また、ダイオキシンは脂肪に溶けやすいという性質があるため、肉類、乳製品、卵にも多く含まれる傾向があります。
逆に、水に対しては不溶性または難溶性であるため、穀物類や果物はダイオキシンをほとんど含みません。
人の体内に入った場合は、脂肪分の多い母乳などに高濃度に蓄積していくことになります。
自分が女性であれば、この事実を重く受け止めると思います。
また、魚介類はダイオキシン以外にも水銀、カドミウム、有機塩素系農薬、PCB、有機スズ化合物、有機臭素系化合物なども含まれ、まさに汚染物質の宝庫と言えます。
PCB や有機スズ化合物は、環境ホルモンとも呼ばれ、内分泌攪乱作用が疑われています。
これら有害物質は、大型魚になるほど濃度が高くなります。
小型魚がプランクトンを食べて、大型魚が小型魚を食べるという食物連鎖の過程で、汚染が濃縮されていくからです。
日本人が当たり前に食べているマグロ、サケ、カツオなどは大型魚に分類されることを改めて認識する必要があります。
食物連鎖の頂点に立つクジラは、メチル水銀の濃度が最も高く、規制値を大幅に上回ることが話題になることもあります。
クジラ漁は、食文化の違いや動物の命といった観点から議論されることが多いのですが、海外の人はその水銀濃度の高さにも注目していることを知っておくべきでしょう。
また、2011 年の原子力災害以降は、これに放射能汚染のリスクが加わります。
特に、放射性物質ストロンチウム90は魚の骨に溜まりやすく、半減期も約 29 年と長いことから、その危険性を指摘する声は多いです。
当時、海洋汚染に対する懸念から、寿司業界の市場規模もかなり縮小していくのではないかと予想した人もいましたが、10 年経ってみて、その予想は外れてしまいました。
回転寿司チェーン「スシロー」を展開する FOOD&LIFE COMPANIES は、2021 年 9 月期決算で過去最高益を叩き出し、業界第 2 位の「くら寿司」も 21 年 10 月期決算で国内売上高の過去最高を更新しています。
事故後、「ベジタリアンではないけど、魚と乳製品は控えている」という人に出会ったことがありますが、現実的で賢い選択であると感じました。
「何を食べるべきか」ということは「何を食べないべきか、何を減らすべきか」を賢く選択することでもあります。
私は、菜食主義者として魚介類を長年口にしていないので、自身の体内の汚染状況も気になるところです。
そこで、比較的手軽に実施できる検査として、有害ミネラル検査を実施してみることにしました。
ダイオキシンを測定することはできませんが、食品汚染の代表格である有害重金属をはじめ、数十種類の体内ミネラルの状態を知ることができます。
■ 爪ミネラル検査の結果公開
ら・べるびぃ予防医学研究所が実施しているミネラル検査を受けることにしました。
検査には、毛髪ミネラル検査と爪ミネラル検査の 2 種類があり、どちらでも似た傾向が出るとのことですが、今回は爪ミネラル検査を選びました。
自身の爪を採取して送付すると、2 週間ほどで検査結果が帰ってきます。
検査項目は、
必須ミネラル 12 種 (ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、リン、セレン、クロム、モリブデン、マンガン、鉄、銅、亜鉛)、
有害金属 5 種 (カドミウム、水銀、鉛、ヒ素、アルミニウム)、
準有害金属 3 種 (ストロンチウム、アンチモン、バリウム)、
参考ミネラル 3 種 (バナジウム、コバルト、ニッケル)、
その他金属 6 種 (ニオブ、バラジウム、ネオジム、タングステン、タリウム、プラチナ)
の全 29 項目です。
私の場合、有害金属系はすべて標準範囲内でしたが、必須ミネラルのセレンの値がかなり低く、「低値注意」と要注意項目になりました。
セレンというミネラルについて今まで意識することはなかったので、非常に良い機会になりました。
特に重要だと思われる有害金属 5 種 (カドミウム、水銀、鉛、ヒ素、アルミニウム) に焦点を当てて、もう少し詳しく振り返りたいと思います。
まずは私の検査結果ですが、以下のような結果でした↓
・カドミウムは、標準範囲 13.9 ppb 以下のところ、7.5 ppb で、「基準範囲」内でした。
(一般健常者の 84%が「基準範囲」、13.5%が「要注意」、2.5%が「注意」に収まります)
・水銀は、標準範囲 1413 ppb 以下のところ、7 ppb 以下で、定量下限値以下の測定値となり、「基準範囲」内。
(定量下限値以下の場合「以下」と表示されます)
・鉛は、標準範囲 425 ppb 以下のところ、127 ppb で、「基準範囲」内。
・ヒ素は、標準範囲 170.9 ppb 以下のところ、62.9 ppb で、「基準範囲」内。
・アルミニウムは、標準範囲 12690 ppb 以下のところ、7610 ppb で、「基準範囲」内。
次に、それぞれを個別に掘り下げていきたいと思います。
(1) 水銀――日本人の水銀蓄積量は欧米人の 2 ~ 6 倍
四大公害の一つ、水俣病の原因物質です。
神経系に障害を与える作用があり、重度の場合、知覚・運動・聴覚・触覚・視覚などに障害をきたすことになります。
自閉症や発達障害との関連性も指摘されています。
日本人の場合、水銀摂取の 8 割以上が魚介類経由となっています。
ワクチンの中にも防腐剤として水銀化合物が含まれています。
虫歯の充填剤として使用される歯科用アマルガムから、水銀が溶出してしまうことも摂取要因になっています。
日本人は魚介類の消費量が多いため、体内の水銀蓄積量は欧米人の 2 ~ 6 倍にもなります。
今回、私の検査値は定量下限値以下で、かなり低い値を出すことができましたが、水銀に関しては、やはり食事の選択が大きな影響を与えるようです。
わかりやすく言えば、魚介類を食べないこと、または、魚介類の消費をできるだけ減らすことです。
(2) ヒ素――米を危険視するスウェーデン
人体にとって猛毒であり、摂取量が少ないに越したことはありません。
体内に取り込まれると、酵素の働きを阻害したり、タンパク質の合成に障害を起こします。
その結果、頭痛、体重の減少、虚弱、甲状腺腫、筋肉萎縮、肝障害、心臓肥大などの慢性中毒症状につながる恐れがあります。
発癌性が報告されており、IARC (国際癌研究所) の発癌性評価では最も高い「1」の「発癌性がある」に分類され、EPA (米国環境保護庁) の発癌性評価でも「A」の「人に対して発癌性の十分なデータがある」と、最高ランクに分類されています。
日本人は、無機ヒ素の 9 割を米とひじきから摂取しています。 (ヒ素には有機ヒ素と無機ヒ素があり、無機ヒ素の方が毒性が高い)
米は土壌のヒ素を吸収しやすいため、小麦や野菜などに比べて濃度は数十倍になります (参考:「食品に含まれるヒ素の実態調査」農林水産省 2014 年)。
米に含まれる無機ヒ素は、玄米の外側のぬかに多く含まれているため、玄米よりも白米の方がヒ素の濃度が低くなります。
また、ひじきのヒ素濃度も高く、イギリスの食品規格庁は 2004 年にヒジキの摂取を控えるように勧告したこともあります。
食品以外ではタバコの煙にも含まれています。
スウェーデンは、高濃度のヒ素摂取に対する懸念から米を危険視しており、「6 歳未満に米や米加工食品を与えてはいけない」と注意を喚起しています。
また、煎餅などの米菓子がアメリカに輸出された場合、「がん、先天異常、その他の生殖障害を引き起こす可能性があるヒ素が含まれております」といった警告がパッケージに表示されることになります。
米を主食とする日本人にとってはショッキングなことですが、米を主食としない海外の国は、米を冷静に見ています。
(3) カドミウム――日本人のカドミウム摂取の半分は米から
四大公害の一つ、イタイイタイ病の原因物質です。
過剰摂取すると腎機能障害を引き起こし、骨からカルシウムが失われて、骨が変形したり折れやすくなったりします。
カドミウムは、根本的には土壌や河川水の汚染に由来するため、あらゆる食品に含まれています。
日本人の場合、米の寄与率が 50%と最も高く、その次に寄与率が高いのが野菜・海藻類で 15%、その次が魚介類で 11%となっています (厚生化学研究 1981~2001 の平均)。
米の外側にある薄皮に多く含まれるため、玄米よりも白米の方が含有量が低くなります。
また、タバコの煙にも含まれています。
(4) 鉛――飲料水にも注意
鉛による急性中毒は古くから知られています。
鉛は中枢神経に対して有毒であり、たとえ低濃度でも、長時間曝された場合には、認知能力に障害を与え、精神遅滞や学習障害を引き起こすことが知られています。
鉛の主な摂取源は水道水です。また、タバコの煙にも含まれています。
水道管が鉛製の場合、水道管から鉛が溶け出して水に入っていきます。
昭和の頃に敷設された水道管は鉛製のものが大半であり、未だに多くの家庭で使われています。
ローフード食はそれだけで水分欲求が満たされやすいため、お茶やコーヒーの摂取が少なくなり、その分、鉛の摂取量が減少する可能性があります。
健康のために毎日水を 2 リットル飲んでいるという人もいますが、仮にその水に鉛が溶け込んでいる場合、高い検査値が出る可能性があります。
有害ミネラルを測るテスターも販売されているようなので、水道水やペットボトル水の濃度を計測してみるのも面白いかもしれません。
(5) アルミニウム――食品添加物にも含有
体内に蓄積した場合、認知障害、食欲不振、胃腸障害、神経疾患、骨障害等の症状が起きる可能性があります。
アルツハイマー病とのの関連性が長らく議論されてきましたが、現在はその因果関係を否定する声が大きくなっているようです。
最大の摂取源は食品であり、海藻、貝類、大豆、ごま類、葉菜類に多く含まれています。
ベーキングパウダーなどの膨張剤を使用した穀類加工品や菓子類からの摂取が最も多くなっています。
漬物に使われるミョウバンをはじめ、色止め剤、品質安定剤、着色料などの食品添加物にもアルミニウムが含まれています。
・総括
これら有害重金属は体内で自然に排泄されていくものですが、半減期 (体内に入ってからその量が半減するまでの期間) は、メチル水銀の場合、約 70 日、鉛では数年から 10 年、カドミウムでは数十年とされています。
私の場合、水銀の値だけ定量下限値以下でかなり低かったのですが、それは水銀の半減期が約 70 日と短いことも関係あるのかもしれません。
他の重金属については、摂取量を減らすことを意識しながら、気長にデトックスに取り組んでいく必要がありそうです。
魚、米、ヒジキなどは日本人の食卓には欠かせない食品ですが、重金属汚染という観点から見ると好ましい食品とは言えません。
日本人は、水銀の多くを魚介類から、ヒ素の大半を米とヒジキから、そしてカドミウムの半分は米から摂取しています。
その点、果物や野菜を主体にした食事は、重金属汚染を減らす上で、比較的望ましい結果をもたらすと考えます。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【参考文献】
1. 大森隆史『毛髪ミネラル検査のすすめ 見てわかる図解版デトックス健康法の決め手』コスモ21 (2005)
2. 大森隆史『「重金属」体内汚染の真実 ―ほんとうのデトックスのすすめ』東洋経済新報社 (2017)
3. 大森隆史、永本 玲英子『頭皮毒デトックス――地肌力がみるみる再生!』コスモトゥーワン (2014)
4. 陽 捷行 (著, 編集)『農と環境と健康に及ぼすカドミウムとヒ素の影響』 (北里大学農医連携学術叢書) 養賢堂 (2008)
5. カオ・ダイ レ (著), 尾崎 望 (翻訳)『ベトナム戦争におけるエージェントオレンジ―歴史と影響』文理閣 (2004)
6. David Hammond. Mercury Poisoning: The Undiagnosed Epidemic: How to detox. David Hammond (2014)
7. James Lilley. HEAVY METALS DETOX: The Easy Way to Detoxify - Detoxification Helps Protect Against Accelerated Aging, Sickness, Brain Fog, & Fatigue. Independently published (2019)
8. Harvey Diamond. Fit For Life: A New Beginning――The Ultimate Diet and Health Plan. Citadel (2021)
私は「ダイオキシン類関係公害防止管理者」という、少しマイナーな国家資格を保有しています。
塩素を含むプラスチックを焼却炉で燃やすとダイオキシンが発生することから、未然に公害を防止・管理する目的で設けられている国家資格です。
ダイオキシンの毒性は極めて強く、強い催奇形性・発癌性を有します。
「自然界に存在する最も毒性の強い物質のさらに 10 万倍の毒性を持つ」と評価され、「史上最強の猛毒」とも言われています。
そして、資格試験の教科書の途中にあっさりと書かれていて驚くようなことなのですが、是非とも知っていただきたい一節があります。
それは、
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日本人のダイオキシン類摂取量のうち約 7 割は魚介類から摂取されている
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という事実です。
また、ダイオキシンは脂肪に溶けやすいという性質があるため、肉類、乳製品、卵にも多く含まれる傾向があります。
逆に、水に対しては不溶性または難溶性であるため、穀物類や果物はダイオキシンをほとんど含みません。
人の体内に入った場合は、脂肪分の多い母乳などに高濃度に蓄積していくことになります。
自分が女性であれば、この事実を重く受け止めると思います。
また、魚介類はダイオキシン以外にも水銀、カドミウム、有機塩素系農薬、PCB、有機スズ化合物、有機臭素系化合物なども含まれ、まさに汚染物質の宝庫と言えます。
PCB や有機スズ化合物は、環境ホルモンとも呼ばれ、内分泌攪乱作用が疑われています。
これら有害物質は、大型魚になるほど濃度が高くなります。
小型魚がプランクトンを食べて、大型魚が小型魚を食べるという食物連鎖の過程で、汚染が濃縮されていくからです。
日本人が当たり前に食べているマグロ、サケ、カツオなどは大型魚に分類されることを改めて認識する必要があります。
食物連鎖の頂点に立つクジラは、メチル水銀の濃度が最も高く、規制値を大幅に上回ることが話題になることもあります。
クジラ漁は、食文化の違いや動物の命といった観点から議論されることが多いのですが、海外の人はその水銀濃度の高さにも注目していることを知っておくべきでしょう。
また、2011 年の原子力災害以降は、これに放射能汚染のリスクが加わります。
特に、放射性物質ストロンチウム90は魚の骨に溜まりやすく、半減期も約 29 年と長いことから、その危険性を指摘する声は多いです。
当時、海洋汚染に対する懸念から、寿司業界の市場規模もかなり縮小していくのではないかと予想した人もいましたが、10 年経ってみて、その予想は外れてしまいました。
回転寿司チェーン「スシロー」を展開する FOOD&LIFE COMPANIES は、2021 年 9 月期決算で過去最高益を叩き出し、業界第 2 位の「くら寿司」も 21 年 10 月期決算で国内売上高の過去最高を更新しています。
事故後、「ベジタリアンではないけど、魚と乳製品は控えている」という人に出会ったことがありますが、現実的で賢い選択であると感じました。
「何を食べるべきか」ということは「何を食べないべきか、何を減らすべきか」を賢く選択することでもあります。
私は、菜食主義者として魚介類を長年口にしていないので、自身の体内の汚染状況も気になるところです。
そこで、比較的手軽に実施できる検査として、有害ミネラル検査を実施してみることにしました。
ダイオキシンを測定することはできませんが、食品汚染の代表格である有害重金属をはじめ、数十種類の体内ミネラルの状態を知ることができます。
■ 爪ミネラル検査の結果公開
ら・べるびぃ予防医学研究所が実施しているミネラル検査を受けることにしました。
検査には、毛髪ミネラル検査と爪ミネラル検査の 2 種類があり、どちらでも似た傾向が出るとのことですが、今回は爪ミネラル検査を選びました。
自身の爪を採取して送付すると、2 週間ほどで検査結果が帰ってきます。
検査項目は、
必須ミネラル 12 種 (ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、リン、セレン、クロム、モリブデン、マンガン、鉄、銅、亜鉛)、
有害金属 5 種 (カドミウム、水銀、鉛、ヒ素、アルミニウム)、
準有害金属 3 種 (ストロンチウム、アンチモン、バリウム)、
参考ミネラル 3 種 (バナジウム、コバルト、ニッケル)、
その他金属 6 種 (ニオブ、バラジウム、ネオジム、タングステン、タリウム、プラチナ)
の全 29 項目です。
私の場合、有害金属系はすべて標準範囲内でしたが、必須ミネラルのセレンの値がかなり低く、「低値注意」と要注意項目になりました。
セレンというミネラルについて今まで意識することはなかったので、非常に良い機会になりました。
特に重要だと思われる有害金属 5 種 (カドミウム、水銀、鉛、ヒ素、アルミニウム) に焦点を当てて、もう少し詳しく振り返りたいと思います。
まずは私の検査結果ですが、以下のような結果でした↓
・カドミウムは、標準範囲 13.9 ppb 以下のところ、7.5 ppb で、「基準範囲」内でした。
(一般健常者の 84%が「基準範囲」、13.5%が「要注意」、2.5%が「注意」に収まります)
・水銀は、標準範囲 1413 ppb 以下のところ、7 ppb 以下で、定量下限値以下の測定値となり、「基準範囲」内。
(定量下限値以下の場合「以下」と表示されます)
・鉛は、標準範囲 425 ppb 以下のところ、127 ppb で、「基準範囲」内。
・ヒ素は、標準範囲 170.9 ppb 以下のところ、62.9 ppb で、「基準範囲」内。
・アルミニウムは、標準範囲 12690 ppb 以下のところ、7610 ppb で、「基準範囲」内。
次に、それぞれを個別に掘り下げていきたいと思います。
(1) 水銀――日本人の水銀蓄積量は欧米人の 2 ~ 6 倍
四大公害の一つ、水俣病の原因物質です。
神経系に障害を与える作用があり、重度の場合、知覚・運動・聴覚・触覚・視覚などに障害をきたすことになります。
自閉症や発達障害との関連性も指摘されています。
日本人の場合、水銀摂取の 8 割以上が魚介類経由となっています。
ワクチンの中にも防腐剤として水銀化合物が含まれています。
虫歯の充填剤として使用される歯科用アマルガムから、水銀が溶出してしまうことも摂取要因になっています。
日本人は魚介類の消費量が多いため、体内の水銀蓄積量は欧米人の 2 ~ 6 倍にもなります。
今回、私の検査値は定量下限値以下で、かなり低い値を出すことができましたが、水銀に関しては、やはり食事の選択が大きな影響を与えるようです。
わかりやすく言えば、魚介類を食べないこと、または、魚介類の消費をできるだけ減らすことです。
(2) ヒ素――米を危険視するスウェーデン
人体にとって猛毒であり、摂取量が少ないに越したことはありません。
体内に取り込まれると、酵素の働きを阻害したり、タンパク質の合成に障害を起こします。
その結果、頭痛、体重の減少、虚弱、甲状腺腫、筋肉萎縮、肝障害、心臓肥大などの慢性中毒症状につながる恐れがあります。
発癌性が報告されており、IARC (国際癌研究所) の発癌性評価では最も高い「1」の「発癌性がある」に分類され、EPA (米国環境保護庁) の発癌性評価でも「A」の「人に対して発癌性の十分なデータがある」と、最高ランクに分類されています。
日本人は、無機ヒ素の 9 割を米とひじきから摂取しています。 (ヒ素には有機ヒ素と無機ヒ素があり、無機ヒ素の方が毒性が高い)
米は土壌のヒ素を吸収しやすいため、小麦や野菜などに比べて濃度は数十倍になります (参考:「食品に含まれるヒ素の実態調査」農林水産省 2014 年)。
米に含まれる無機ヒ素は、玄米の外側のぬかに多く含まれているため、玄米よりも白米の方がヒ素の濃度が低くなります。
また、ひじきのヒ素濃度も高く、イギリスの食品規格庁は 2004 年にヒジキの摂取を控えるように勧告したこともあります。
食品以外ではタバコの煙にも含まれています。
スウェーデンは、高濃度のヒ素摂取に対する懸念から米を危険視しており、「6 歳未満に米や米加工食品を与えてはいけない」と注意を喚起しています。
また、煎餅などの米菓子がアメリカに輸出された場合、「がん、先天異常、その他の生殖障害を引き起こす可能性があるヒ素が含まれております」といった警告がパッケージに表示されることになります。
米を主食とする日本人にとってはショッキングなことですが、米を主食としない海外の国は、米を冷静に見ています。
(3) カドミウム――日本人のカドミウム摂取の半分は米から
四大公害の一つ、イタイイタイ病の原因物質です。
過剰摂取すると腎機能障害を引き起こし、骨からカルシウムが失われて、骨が変形したり折れやすくなったりします。
カドミウムは、根本的には土壌や河川水の汚染に由来するため、あらゆる食品に含まれています。
日本人の場合、米の寄与率が 50%と最も高く、その次に寄与率が高いのが野菜・海藻類で 15%、その次が魚介類で 11%となっています (厚生化学研究 1981~2001 の平均)。
米の外側にある薄皮に多く含まれるため、玄米よりも白米の方が含有量が低くなります。
また、タバコの煙にも含まれています。
(4) 鉛――飲料水にも注意
鉛による急性中毒は古くから知られています。
鉛は中枢神経に対して有毒であり、たとえ低濃度でも、長時間曝された場合には、認知能力に障害を与え、精神遅滞や学習障害を引き起こすことが知られています。
鉛の主な摂取源は水道水です。また、タバコの煙にも含まれています。
水道管が鉛製の場合、水道管から鉛が溶け出して水に入っていきます。
昭和の頃に敷設された水道管は鉛製のものが大半であり、未だに多くの家庭で使われています。
ローフード食はそれだけで水分欲求が満たされやすいため、お茶やコーヒーの摂取が少なくなり、その分、鉛の摂取量が減少する可能性があります。
健康のために毎日水を 2 リットル飲んでいるという人もいますが、仮にその水に鉛が溶け込んでいる場合、高い検査値が出る可能性があります。
有害ミネラルを測るテスターも販売されているようなので、水道水やペットボトル水の濃度を計測してみるのも面白いかもしれません。
(5) アルミニウム――食品添加物にも含有
体内に蓄積した場合、認知障害、食欲不振、胃腸障害、神経疾患、骨障害等の症状が起きる可能性があります。
アルツハイマー病とのの関連性が長らく議論されてきましたが、現在はその因果関係を否定する声が大きくなっているようです。
最大の摂取源は食品であり、海藻、貝類、大豆、ごま類、葉菜類に多く含まれています。
ベーキングパウダーなどの膨張剤を使用した穀類加工品や菓子類からの摂取が最も多くなっています。
漬物に使われるミョウバンをはじめ、色止め剤、品質安定剤、着色料などの食品添加物にもアルミニウムが含まれています。
・総括
これら有害重金属は体内で自然に排泄されていくものですが、半減期 (体内に入ってからその量が半減するまでの期間) は、メチル水銀の場合、約 70 日、鉛では数年から 10 年、カドミウムでは数十年とされています。
私の場合、水銀の値だけ定量下限値以下でかなり低かったのですが、それは水銀の半減期が約 70 日と短いことも関係あるのかもしれません。
他の重金属については、摂取量を減らすことを意識しながら、気長にデトックスに取り組んでいく必要がありそうです。
魚、米、ヒジキなどは日本人の食卓には欠かせない食品ですが、重金属汚染という観点から見ると好ましい食品とは言えません。
日本人は、水銀の多くを魚介類から、ヒ素の大半を米とヒジキから、そしてカドミウムの半分は米から摂取しています。
その点、果物や野菜を主体にした食事は、重金属汚染を減らす上で、比較的望ましい結果をもたらすと考えます。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【参考文献】
1. 大森隆史『毛髪ミネラル検査のすすめ 見てわかる図解版デトックス健康法の決め手』コスモ21 (2005)
2. 大森隆史『「重金属」体内汚染の真実 ―ほんとうのデトックスのすすめ』東洋経済新報社 (2017)
3. 大森隆史、永本 玲英子『頭皮毒デトックス――地肌力がみるみる再生!』コスモトゥーワン (2014)
4. 陽 捷行 (著, 編集)『農と環境と健康に及ぼすカドミウムとヒ素の影響』 (北里大学農医連携学術叢書) 養賢堂 (2008)
5. カオ・ダイ レ (著), 尾崎 望 (翻訳)『ベトナム戦争におけるエージェントオレンジ―歴史と影響』文理閣 (2004)
6. David Hammond. Mercury Poisoning: The Undiagnosed Epidemic: How to detox. David Hammond (2014)
7. James Lilley. HEAVY METALS DETOX: The Easy Way to Detoxify - Detoxification Helps Protect Against Accelerated Aging, Sickness, Brain Fog, & Fatigue. Independently published (2019)
8. Harvey Diamond. Fit For Life: A New Beginning――The Ultimate Diet and Health Plan. Citadel (2021)