フルータリアンの備忘録

フルータリアンとは、果物を主食にしているベジタリアンのことです。

重金属汚染について――爪ミネラル検査の結果も公開します

2021-12-31 | フルータリアンのメモ
■ 前置き――史上最強の猛毒「ダイオキシン」

私は「ダイオキシン類関係公害防止管理者」という、少しマイナーな国家資格を保有しています。
塩素を含むプラスチックを焼却炉で燃やすとダイオキシンが発生することから、未然に公害を防止・管理する目的で設けられている国家資格です。
ダイオキシンの毒性は極めて強く、強い催奇形性・発癌性を有します。
「自然界に存在する最も毒性の強い物質のさらに 10 万倍の毒性を持つ」と評価され、「史上最強の猛毒」とも言われています。
そして、資格試験の教科書の途中にあっさりと書かれていて驚くようなことなのですが、是非とも知っていただきたい一節があります。

それは、
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日本人のダイオキシン類摂取量のうち約 7 割は魚介類から摂取されている

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という事実です。

また、ダイオキシンは脂肪に溶けやすいという性質があるため、肉類、乳製品、卵にも多く含まれる傾向があります。
逆に、水に対しては不溶性または難溶性であるため、穀物類や果物はダイオキシンをほとんど含みません。
人の体内に入った場合は、脂肪分の多い母乳などに高濃度に蓄積していくことになります。
自分が女性であれば、この事実を重く受け止めると思います。

また、魚介類はダイオキシン以外にも水銀、カドミウム、有機塩素系農薬、PCB、有機スズ化合物、有機臭素系化合物なども含まれ、まさに汚染物質の宝庫と言えます。
PCB や有機スズ化合物は、環境ホルモンとも呼ばれ、内分泌攪乱作用が疑われています。
これら有害物質は、大型魚になるほど濃度が高くなります。
小型魚がプランクトンを食べて、大型魚が小型魚を食べるという食物連鎖の過程で、汚染が濃縮されていくからです。
日本人が当たり前に食べているマグロ、サケ、カツオなどは大型魚に分類されることを改めて認識する必要があります。
食物連鎖の頂点に立つクジラは、メチル水銀の濃度が最も高く、規制値を大幅に上回ることが話題になることもあります。
クジラ漁は、食文化の違いや動物の命といった観点から議論されることが多いのですが、海外の人はその水銀濃度の高さにも注目していることを知っておくべきでしょう。

また、2011 年の原子力災害以降は、これに放射能汚染のリスクが加わります。
特に、放射性物質ストロンチウム90は魚の骨に溜まりやすく、半減期も約 29 年と長いことから、その危険性を指摘する声は多いです。
当時、海洋汚染に対する懸念から、寿司業界の市場規模もかなり縮小していくのではないかと予想した人もいましたが、10 年経ってみて、その予想は外れてしまいました。
回転寿司チェーン「スシロー」を展開する FOOD&LIFE COMPANIES は、2021 年 9 月期決算で過去最高益を叩き出し、業界第 2 位の「くら寿司」も 21 年 10 月期決算で国内売上高の過去最高を更新しています。

事故後、「ベジタリアンではないけど、魚と乳製品は控えている」という人に出会ったことがありますが、現実的で賢い選択であると感じました。
「何を食べるべきか」ということは「何を食べないべきか、何を減らすべきか」を賢く選択することでもあります。
私は、菜食主義者として魚介類を長年口にしていないので、自身の体内の汚染状況も気になるところです。
そこで、比較的手軽に実施できる検査として、有害ミネラル検査を実施してみることにしました。
ダイオキシンを測定することはできませんが、食品汚染の代表格である有害重金属をはじめ、数十種類の体内ミネラルの状態を知ることができます。

■ 爪ミネラル検査の結果公開

ら・べるびぃ予防医学研究所が実施しているミネラル検査を受けることにしました。
検査には、毛髪ミネラル検査と爪ミネラル検査の 2 種類があり、どちらでも似た傾向が出るとのことですが、今回は爪ミネラル検査を選びました。
自身の爪を採取して送付すると、2 週間ほどで検査結果が帰ってきます。

検査項目は、

必須ミネラル 12 種 (ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、リン、セレン、クロム、モリブデン、マンガン、鉄、銅、亜鉛)、
有害金属 5 種 (カドミウム、水銀、鉛、ヒ素、アルミニウム)、
準有害金属 3 種 (ストロンチウム、アンチモン、バリウム)、
参考ミネラル 3 種 (バナジウム、コバルト、ニッケル)、
その他金属 6 種 (ニオブ、バラジウム、ネオジム、タングステン、タリウム、プラチナ)

の全 29 項目です。

私の場合、有害金属系はすべて標準範囲内でしたが、必須ミネラルのセレンの値がかなり低く、「低値注意」と要注意項目になりました。
セレンというミネラルについて今まで意識することはなかったので、非常に良い機会になりました。

特に重要だと思われる有害金属 5 種 (カドミウム、水銀、鉛、ヒ素、アルミニウム) に焦点を当てて、もう少し詳しく振り返りたいと思います。
まずは私の検査結果ですが、以下のような結果でした↓



・カドミウムは、標準範囲 13.9 ppb 以下のところ、7.5 ppb で、「基準範囲」内でした。
(一般健常者の 84%が「基準範囲」、13.5%が「要注意」、2.5%が「注意」に収まります)
・水銀は、標準範囲 1413 ppb 以下のところ、7 ppb 以下で、定量下限値以下の測定値となり、「基準範囲」内。
(定量下限値以下の場合「以下」と表示されます)
・鉛は、標準範囲 425 ppb 以下のところ、127 ppb で、「基準範囲」内。
・ヒ素は、標準範囲 170.9 ppb 以下のところ、62.9 ppb で、「基準範囲」内。
・アルミニウムは、標準範囲 12690 ppb 以下のところ、7610 ppb で、「基準範囲」内。

次に、それぞれを個別に掘り下げていきたいと思います。

(1) 水銀――日本人の水銀蓄積量は欧米人の 2 ~ 6 倍

四大公害の一つ、水俣病の原因物質です。
神経系に障害を与える作用があり、重度の場合、知覚・運動・聴覚・触覚・視覚などに障害をきたすことになります。
自閉症や発達障害との関連性も指摘されています。

日本人の場合、水銀摂取の 8 割以上が魚介類経由となっています。
ワクチンの中にも防腐剤として水銀化合物が含まれています。
虫歯の充填剤として使用される歯科用アマルガムから、水銀が溶出してしまうことも摂取要因になっています。

日本人は魚介類の消費量が多いため、体内の水銀蓄積量は欧米人の 2 ~ 6 倍にもなります。
今回、私の検査値は定量下限値以下で、かなり低い値を出すことができましたが、水銀に関しては、やはり食事の選択が大きな影響を与えるようです。
わかりやすく言えば、魚介類を食べないこと、または、魚介類の消費をできるだけ減らすことです。

(2) ヒ素――米を危険視するスウェーデン

人体にとって猛毒であり、摂取量が少ないに越したことはありません。
体内に取り込まれると、酵素の働きを阻害したり、タンパク質の合成に障害を起こします。
その結果、頭痛、体重の減少、虚弱、甲状腺腫、筋肉萎縮、肝障害、心臓肥大などの慢性中毒症状につながる恐れがあります。    
発癌性が報告されており、IARC (国際癌研究所) の発癌性評価では最も高い「1」の「発癌性がある」に分類され、EPA (米国環境保護庁) の発癌性評価でも「A」の「人に対して発癌性の十分なデータがある」と、最高ランクに分類されています。

日本人は、無機ヒ素の 9 割を米とひじきから摂取しています。 (ヒ素には有機ヒ素と無機ヒ素があり、無機ヒ素の方が毒性が高い)
米は土壌のヒ素を吸収しやすいため、小麦や野菜などに比べて濃度は数十倍になります (参考:「食品に含まれるヒ素の実態調査」農林水産省 2014 年)。
米に含まれる無機ヒ素は、玄米の外側のぬかに多く含まれているため、玄米よりも白米の方がヒ素の濃度が低くなります。
また、ひじきのヒ素濃度も高く、イギリスの食品規格庁は 2004 年にヒジキの摂取を控えるように勧告したこともあります。
食品以外ではタバコの煙にも含まれています。

スウェーデンは、高濃度のヒ素摂取に対する懸念から米を危険視しており、「6 歳未満に米や米加工食品を与えてはいけない」と注意を喚起しています。
また、煎餅などの米菓子がアメリカに輸出された場合、「がん、先天異常、その他の生殖障害を引き起こす可能性があるヒ素が含まれております」といった警告がパッケージに表示されることになります。
米を主食とする日本人にとってはショッキングなことですが、米を主食としない海外の国は、米を冷静に見ています。

(3) カドミウム――日本人のカドミウム摂取の半分は米から

四大公害の一つ、イタイイタイ病の原因物質です。
過剰摂取すると腎機能障害を引き起こし、骨からカルシウムが失われて、骨が変形したり折れやすくなったりします。

カドミウムは、根本的には土壌や河川水の汚染に由来するため、あらゆる食品に含まれています。
日本人の場合、米の寄与率が 50%と最も高く、その次に寄与率が高いのが野菜・海藻類で 15%、その次が魚介類で 11%となっています (厚生化学研究 1981~2001 の平均)。

米の外側にある薄皮に多く含まれるため、玄米よりも白米の方が含有量が低くなります。
また、タバコの煙にも含まれています。

(4) 鉛――飲料水にも注意

鉛による急性中毒は古くから知られています。
鉛は中枢神経に対して有毒であり、たとえ低濃度でも、長時間曝された場合には、認知能力に障害を与え、精神遅滞や学習障害を引き起こすことが知られています。

鉛の主な摂取源は水道水です。また、タバコの煙にも含まれています。
水道管が鉛製の場合、水道管から鉛が溶け出して水に入っていきます。
昭和の頃に敷設された水道管は鉛製のものが大半であり、未だに多くの家庭で使われています。

ローフード食はそれだけで水分欲求が満たされやすいため、お茶やコーヒーの摂取が少なくなり、その分、鉛の摂取量が減少する可能性があります。
健康のために毎日水を 2 リットル飲んでいるという人もいますが、仮にその水に鉛が溶け込んでいる場合、高い検査値が出る可能性があります。
有害ミネラルを測るテスターも販売されているようなので、水道水やペットボトル水の濃度を計測してみるのも面白いかもしれません。

(5) アルミニウム――食品添加物にも含有

体内に蓄積した場合、認知障害、食欲不振、胃腸障害、神経疾患、骨障害等の症状が起きる可能性があります。
アルツハイマー病とのの関連性が長らく議論されてきましたが、現在はその因果関係を否定する声が大きくなっているようです。

最大の摂取源は食品であり、海藻、貝類、大豆、ごま類、葉菜類に多く含まれています。
ベーキングパウダーなどの膨張剤を使用した穀類加工品や菓子類からの摂取が最も多くなっています。
漬物に使われるミョウバンをはじめ、色止め剤、品質安定剤、着色料などの食品添加物にもアルミニウムが含まれています。

・総括

これら有害重金属は体内で自然に排泄されていくものですが、半減期 (体内に入ってからその量が半減するまでの期間) は、メチル水銀の場合、約 70 日、鉛では数年から 10 年、カドミウムでは数十年とされています。
私の場合、水銀の値だけ定量下限値以下でかなり低かったのですが、それは水銀の半減期が約 70 日と短いことも関係あるのかもしれません。
他の重金属については、摂取量を減らすことを意識しながら、気長にデトックスに取り組んでいく必要がありそうです。

魚、米、ヒジキなどは日本人の食卓には欠かせない食品ですが、重金属汚染という観点から見ると好ましい食品とは言えません。
日本人は、水銀の多くを魚介類から、ヒ素の大半を米とヒジキから、そしてカドミウムの半分は米から摂取しています。
その点、果物や野菜を主体にした食事は、重金属汚染を減らす上で、比較的望ましい結果をもたらすと考えます。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【参考文献】

1. 大森隆史『毛髪ミネラル検査のすすめ 見てわかる図解版デトックス健康法の決め手』コスモ21 (2005)
2. 大森隆史『「重金属」体内汚染の真実 ―ほんとうのデトックスのすすめ』東洋経済新報社 (2017)
3. 大森隆史、永本 玲英子『頭皮毒デトックス――地肌力がみるみる再生!』コスモトゥーワン (2014)
4. 陽 捷行 (著, 編集)『農と環境と健康に及ぼすカドミウムとヒ素の影響』 (北里大学農医連携学術叢書) 養賢堂 (2008)
5. カオ・ダイ レ (著), 尾崎 望 (翻訳)『ベトナム戦争におけるエージェントオレンジ―歴史と影響』文理閣 (2004)
6. David Hammond. Mercury Poisoning: The Undiagnosed Epidemic: How to detox. David Hammond (2014)
7. James Lilley. HEAVY METALS DETOX: The Easy Way to Detoxify - Detoxification Helps Protect Against Accelerated Aging, Sickness, Brain Fog, & Fatigue. Independently published (2019)
8. Harvey Diamond. Fit For Life: A New Beginning――The Ultimate Diet and Health Plan. Citadel (2021)

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葉物野菜は食べなくて大丈夫か――ベビーリーフでグリーンスムージー

2021-11-11 | フルータリアンの実践
■ フルータリアンの謎

ほとんどそのような機会はありませんが、フルータリアンが複数名集まった場合に議論になりそうな話題が「葉物野菜は食べなくて大丈夫か?」というものです。

これに関しては未だによくわからず謎のままです。

フルータリアンはベジタリアンの一種ですが、まったく野菜を食べないという人も多く、そのために菜食主義者の中でも特異な存在として見られることもあります。
果物率 100 パーセントのフルータリアンに実際にお会いしたことはありませんが、きっと素晴らしい健康状態にあるのだろうと想像します。
逆に、栄養のバランスを意識したり、その他さまざまな理由で、意識して野菜を食べているというフルータリアンもいます。

フルータリアンの定義を厳密に適用して「野菜を食べているならフルータリアンではない」という考え方もありますが、この記事では厳密な定義にはこだわらず、
純粋に健康上の観点から優劣を考えてみたいと思います。

他の類人猿たちはどうかというと、チンパンジーの場合、果物の割合が 50%で、野菜が 40%です。
ゴリラは体格が大きい割には野菜の割合が高く、野菜が 80%で果物が 20%。
オランウータンは、果物が 60%で野菜が 30%と、果物の割合が高いものの、環境条件に左右されることも多く、果物が少ない季節には野菜の割合が高くなります。

果物率が最も高いのはクモザル (Spider Monkey:スパイダーモンキー) で、果物率 100%との記述も見たことがありますが、90%以上とされていることが多いようです。
逆にホエザル (Howler Monkey:ハウラーモンキー) はほとんど野菜しか食べない葉食性の霊長類であり、葉の消化を助ける特殊な腸内細菌叢を保有しています。
果物率 90%以上のクモザルの方が、葉食性のホエザルよりも、脳が 2 倍大きいことから、果物食の優位性を主張するフルータリアンもいるようですが、
少し論理が飛躍しているようにも感じられます。

人間の世界でも、青汁だけを飲んで生きているような人もいて、そのような人の腸内細菌は、組成が草食動物に近くなっているといいます。
人間の消化システムは、腸内細菌を変化させながら、ある程度は食べ物の方に適合させていくことができるようです。

フルータリアン栄養学者のダグラス・グラハム博士は、フルーツを主食にしながら、カロリーベースで 2~6%を葉物野菜から摂取することを勧めています。
仮に一日の摂取カロリーが 2000 キロカロリーの場合、その内の 40~120 キロカロリーは葉物野菜から摂取するという計算になります。
野生の類人猿に比べるとかなり少なめと言えるでしょう。 

では私の場合はどうかというと、オランウータンと同じで果物が多いのですが、ベビーリーフをよく食べています。
なぜベビーリーフかというと、チンパンジーの真似をしているからです。

チンパンジーが葉を食べるとき、若くてやわらかい葉だけを選んで食べる傾向があり、特にマメ科の若葉が好物だと言われています。
やわらかい若葉は、消化の難しい硬い繊維分が少なく、アルカロイド類の毒物も少ないという特徴があります。
チンパンジーなどの類人猿は硬いセルロース繊維を消化することができず、アルカロイド類の解毒能力も限られていることから、
繊維も毒物も少ない若葉を本能的に選択していると考えられています。
果食動物に見られるこの嗜好性は、果食動物と草食動物の違いの一つなのかもしれません。
私は、チンパンジーは野菜選びにかけては人間より"目利き"なのではないかと思っています。
野菜であれば何でも調理して食べようとする人間とは違って、チンパンジーはやわらかい若葉を"よく選んで"食べています。

一言でベビーリーフ (幼葉) といっても、様々な種類があります。
代表的なものでは、水菜、ルッコラ、リーフレタス、レッドスピナッチ、マスタードリーフ、ケール、ピノグリーン、デトロイトなどです。
詰め合わせで売っていることが多いので、結果的に複数種類の幼葉から栄養を摂取することになります。

■ ベビーリーフの食べ方

ベビーリーフの具体的な食べ方を紹介します。

・ベビーリーフのサラダ

一つ目のメニューは、ベビーリーフのサラダです。
まず、お皿にベビーリーフを敷き詰めます↓


ベビーリーフは包丁でカットする必要がないので楽です。
次に、トマトをザク切りにして、お皿に入れます↓


ハーブ岩塩またはニンニク岩塩をかけて味付けしたら完成です (いわゆるドレッシングは使いません)。
トマトの代わりにキュウリやパプリカなど他のノンスイートフルーツもよく使います。
私的にはこれだけでも十分美味しいのですが、アボカドを加えるとさらにリッチなサラダになります↓


・ベビーリーフのグリーンスムージー

もう一つのメニューは、ベビーリーフのグリーンスムージーです。
一緒にミックスする果物はさまざまなバリエーションが考えられますが、一番手軽なのはバナナです↓


まずは、ベビーリーフと水を適量、ミキサーに入れてしっかり粉砕します。
その上に、バナナを加えて再度ミックスしたら完成です↓


すごいキレイな緑色のジュースになるので、最初作ったときは感動しました。
苦すぎず甘すぎない絶妙な美味しさが魅力です。
成長した大人の葉物野菜を使ったグリーンスムージーと比べると、苦みが少なめです。
ベビーリーフの値段が高いときは、柔らかそうな葉っぱのサニーレタスなどを選択することもあります。

■ ベビーリーフの栄養メリット

成長した野菜に比べると、ベビーリーフには以下のメリットがあります。

(1) 農薬の散布回数が少ない

病害虫の影響を受ける前の幼葉の段階で摘み取ってしまうため、農薬の散布回数が少なく、使われる化学肥料も最小限である。
無農薬・化学肥料無使用で売られているものも多い。

(2) シュウ酸の含有量が少ない

シュウ酸は、ホウレンソウなどのあく・えぐみの原因とされている成分であるが、ベビーリーフはシュウ酸の含有量が少ない。
シュウ酸は尿路結石を引き起こす可能性があるとされ、ホウレンソウの生食を勧めない医師も多い (下茹でするとシュウ酸が流れ出るため、下茹でが勧められることが多い)。

(3) これから成長してゆくための栄養素がぎっしり詰まっている

レタスと比較した場合、ベータカロテンは 10 倍以上、ビタミン C は約 7 倍、鉄は約 5 倍、カルシウムは約 6 倍、葉酸は約 4 倍、食物繊維は約 2 倍と、
ほとんどの栄養素において優れている。
この豊富な栄養価は、大人になるために必要な栄養素が凝縮されているからと説明することができる。

(4) 苦味成分のアルカロイドが少ない

苦味成分であるアルカロイド系毒素は、幼葉の段階では含有量が少ない。
この毒素は害虫などから身を守るためのもので、幼葉が成長するにつれて含有量が多くなる。

■ グリーンスムージーの理論

私はチンパンジーを真似てベビーリーフを重視しているわけですが、実はグリーンスムージーの考案者もチンパンジーを理想モデルにしています。
チンパンジーは遺伝子の 99.4%が人間と同じであり、生理的に人間にもっとも近い動物だからです。
グリーンスムージーを世に広めたのは、ローフード研究家のヴィクトリア・ブーテンコさんですが、彼女はチンパンジーの食生活を調べる中で、
自身のローフードメニューに圧倒的に足りない食材があることに気づきます。それが葉物野菜です。
まず、野生のチンパンジーの食事構成を以下に図式化してみたいと思います。比較のために、典型的なローフードの食事構成も並べてみます↓


左がチンパンジーの食事構成で、右が典型的なローフーディストの食事構成です。
チンパンジーの食事で注目すべき特徴は葉物野菜が圧倒的に多いということです。
それに比べてローフーディストの食事は、葉物野菜がかなり少なく、ナッツやドレッシングから油脂を取り過ぎているという問題があります。
この問題を解消するため、葉物野菜を美味しく大量に摂取する方法としてグリーンスムージーが考案されたのです。
当時ブーテンコさんは、典型的なローフーディストの食生活をしていましたが、グリーンスムージーを採り入れ、葉物野菜の摂取量を大幅に増やし、同時に油脂の消費を減らすことで、
自身の健康状態を大幅に改善することに成功したと主張しています。

ブーテンコさんは、葉物野菜のことを一言で「グリーン」と表現していますが、一般に「野菜」と称されている食品はもっと細かく分類すべきだと言っています。
つまり、「葉物野菜」と「それ以外」です。
「それ以外」ももう少し細かく分類して、
にんじん、たまねぎ、じゃがいもなどの根菜類、
トマト、ナス、パプリカなどのノンスイートフルーツ、
キャベツ、カリフラワー、ブロッコリーなどのアブラナ科野菜、
に分けることができます。

私たちが「野菜を食べる」と言ったとき、にんじん・たまねぎ・じゃがいもなどの根菜類の割合が多いものです。
しかしチンパンジーは通常、にんじんやじゃがいもなどの根菜類は食べず、飢餓状態など特別な場合にだけ食べると言われています。
野菜をしっかり食べているという意識が高い人でも、よく調べてみるとグリーンの摂取量が少ないことが多いものです。
グリーンを単独で食べると苦すぎて食が進まず、大量に摂取することが難しいのですが、果物と混ぜ合わせてグリーンスムージーにすることで、美味しく大量にグリーンを摂取することができます。

■ 南米のパラドックス――グリーンに対する本能

栄養学上の「南米のパラドックス」とも呼べる興味深い現象があります。
南米人は肉料理中心の食生活をしており、牛肉の年間消費量が米国人よりも約 1.5 倍多い (日本人の約 7 倍) のにも関わらず、なぜか米国人よりも肥満率が低く、生活習慣病も少ないというものです。
しかも、南米人の主食はパンやイモ類、とうもろこしなどで、野菜類はほとんど摂取していません。

このパラドックスに対する答えとして、南米人はマテ茶を大量に飲んで野菜の成分を補っているからではないかと考えられています。
マテ茶は現地で「飲むサラダ」と呼ばれ長く愛飲されてきたもので、不足しがちな野菜の栄養素を補ってきたと言われています。
実際、野菜に匹敵するほどの優れたポリフェノール・フラボノイド類・ビタミン・ミネラル・食物繊維が含まれていることも明らかになっています。
一見、極度に偏った南米人の食生活ですが、マテ茶からグリーンの成分を摂取してバランスをとっており、そこには確かに「グリーンに対する本能」のようなものがあります。

南米人がマテ茶を飲むとき、ボンビージャと呼ばれるフィルター付の金属ストローを使います。こんな感じです↓


金属ストローの先っぽに小さな穴が空いていて、そこで茶葉を漉して飲みます。
緑茶よりもさらにグリーンの風味が強い感じです。
ボンビージャを使った方がグリーンの成分をしっかり吸収できる感じがしますが、掃除が少し面倒なので、普通の茶漉しを使ってもよいでしょう。

マテ茶が素晴らしいのは、カフェインなどのアルカロイド系の成分が少なく、体への負担が少ないことです。
多めに飲んでも、気持ち悪くなりません。
フルータリアンはそもそもお茶を飲まないという人も多いのですが、オフィスワーカーなどで仕事中に飲み物を携帯しておきたいという人もいるでしょう。
マテ茶を採り入れてグリーンの摂取を意識してみるのもいいかもしれません。

■ 動物園も試行錯誤

ここ数年、一部の動物園で、類人猿に与える食事に関して実験的な取り組みが行われています。
動物園では、チンパンジーなどの類人猿に生の果物と野菜を与えていますが、果物の割合を減らして、その分野菜の量を増やそうとしているようです (例えば、多摩動物公園)。
これは世界的な傾向で、動物栄養学の研究が進んでいる欧州の取り組みが起点となっています。
本来の自然状態に近付けるべく野菜の量を増やそうという試みですが、チンパンジーたちの健康状態は改善し、以前よりも風邪をひきにくく、毛艶も良くなり、下痢気味だった便も改善されたといいます。

動物園は"実地"の栄養学のエキスパートだと思います。
人間と遺伝子を 99.4 パーセント共有するチンパンジーの食生活と健康状態から学べる点も多いはずです。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【参考文献】

1. Victoria Boutenko. Green for Life: The Updated Classic on Green Smoothie Nutrition. North Atlantic Books (2011)
2. Dr Douglas Graham. The 80/10/10 Diet: Balancing Your Health, Your Weight, and Your Life, One Luscious Bite at a Time. Foodnsport Pr (2006)
3. T. C. Fry. The Great Fruitarian Debate!: Between Dr. T. C. Fry and Dr. Ralph Cinque (2018) [キンドル版], 検索元 amazon.com
4. 日本マテ茶協会「マテ茶について」http://www.matecha-kyokai.jp/study.html (2021年11月4日)
5. 西田利貞「ドクトル西田のサル学ノート<第 2 回>」https://www.nichirei.co.jp/koras/category/sarugaku/002.html (2021年11月4日)
6. 東京ズーネット「しっかり食べてすこやかに──チンパンジーたちの食事情」https://www.tokyo-zoo.net/topic/topics_detail?kind=news&inst=tama&link_num=26111 (2021年11月10日)
7. 東京ズーネット「バナナ給餌をやめました──チンパンジーたちの食事情・続編」https://www.tokyo-zoo.net/topic/topics_detail?kind=news&inst=tama&link_num=26616 (2021年11月10日)
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一番のオススメ「パイナップル生ジュースダイエット」

2021-07-30 | フルータリアンの実践
■ ミキサー導入のすすめ

同じフルータリアンでも、ミキサーを"使う派"と"使わない派"がいるわけですが、初心者の段階ではミキサーを使った生ジュースづくりも試してほしいと思います。
特に、タンパク質分解酵素が多く含まれているパイナップルやメロンなどの果物は、ミキサーでジュースにするのがオススメです。
これらの果物を固形のまま食べると酵素の影響で口が荒れやすいという人が多いのですが、ジュースにすることで口を荒らさずに美味しくいただくことができます。

ローフードスタイルの食生活を長く続けている人ほど、うまくミキサーを採り入れていることが多いようです。
生ジュースメニューを上手に食生活に採り入れることで、結果的にローフード率(食事に占める生食の割合)も高くなり、
優れた健康状態を維持することができます。
私自身、今でも謎なのですが、「固形の果物はそんなに食べたくないが生ジュースだったら飲みたい」というテンションになるときがあります。
そんなテンションのときにこそ、ミキサーを用意してジュースづくりを楽しめばよいのです。
生ジュースを採り入れることで、手持ちの選択肢を増やすことができ、バリエーションを豊かにすることができます。

ジューサーに関しては、必須ではないと考えています。
私も一時期「イキイキ酵素くん」というそれなりに高価なジューサーを購入し、さまざまなジュースを試していたことがあります。
しかし、掃除が面倒なことと、食費がかかりすぎるという問題があって、結局使わなくなってしまいました。
人参ジュース、リンゴジュース、セロリジュースなどジューサーでしか作れないメニューもあるので、
食費が気にならず、これらのメニューも採り入れてみたいという方は、購入を検討してみてもよいでしょう。
特に、リンゴとセロリのミックスジュースは、美味しくて感動した記憶があります。

■ パイナップル生ジュースダイエットの実践

バナナダイエット、キウイダイエット、トマトダイエットなど、さまざまな果物ダイエットが流行を繰り返しています。
フルータリアンであれば、分け隔て無くこれらの食品を楽しめばよいのですが、
もし私が「~式ダイエット」を提案するとしたら、「パイナップル生ジュースダイエット」を提案します。
パイナップル生ジュースは、私が内部被曝対策としてこの 10 年間日常的に実践してきたメニューです。
便秘解消効果とデトックス効果が高く、無理のないダイエットができます。


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☆ パイナップル生ジュースの作り方

手順 1.パイナップルの皮の部分をナイフで切り落とし、実をブロック状にカットします。

手順 2.切り落とした皮の部分を、二つに折り曲げて果汁を搾ります。
(これをやった方が水分が多くなり、出来上がりが滑らかになります)

手順 3.パイナップルの実を入れてミキサーでミックスします。混ざりにくい場合は、長箸や料理用ヘラなどで移動させます。
(私は芯の部分もミックスしていますが、好みに応じて取り除いてもよいでしょう)
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一度ジュースにしたあとは酸化するのが早いので、できるだけ時間を空けずに飲みます。
ジュースバーなどでジュースを作り置きにしているのを見かけることがありますが、酸化という観点からはあまりよくありません。

ルールは簡単で、3 食のうち 1 食をパイナップル生ジュースに置き換えるというもの。
このダイエットは、食事制限ではないので、満足感が得られるまでしっかりと摂取します。
パイナップル大サイズ 1 玉から、約 800 ml のジュースを作ることができます。
中サイズ 1 玉であれば、約 600 ml、小サイズ 1 玉であれば、約 400 mlが目安になります。
実践している内に自身の適量がわかるようになります。
私の場合、大サイズ 1 玉または小サイズ 2 玉が適量で、約 800 ml のパイナップルジュースを一回の食事で摂取します。
かなりのボリュームに驚く人もいるかもしれませんが、穀物や大豆を食べないわけですから、
エネルギーを満たすためにも当然このくらいの量は必要になってきます (それでも低カロリーですが)。

パイナップルは一部の医薬品と相性が悪いので、薬を服用されている方は事前に主治医に相談したほうがよいでしょう。

■ パイナップルの 5 つのメリット

☆ メリット 1.残留農薬汚染が少ない

アメリカの環境保護 NPO 機関 EWG (The Environmental Working Group) は、
残留農薬が比較的少ない農産物のランキング「Clean 15」を毎年発表していますが、
パイナップルは、2021 年度のランキングで第 3 位に選ばれています。

・Clean 15 (2021 年度版)

1 位:アボカド
2 位:スイートコーン
3 位:パイナップル
4 位:タマネギ
5 位:パパイヤ
6 位:グリーンピース
7 位:ナス
8 位:アスパラガス
9 位:ブロッコリ
10 位:キャベツ
11 位:キウイ
12 位:カリフラワー
13 位:マッシュルーム
14 位:ハネデューメロン
15 位:カンタロープメロン

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☆ メリット 2.パイナップルは天然の胃腸薬

パイナップルには強力なタンパク質分解酵素が含まれています。
この酵素により、腸内の毒素や未消化物が分解され、腸内をキレイな状態に保つことができます。

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☆ メリット 3.タンパク質分解酵素「ブロメライン」による抗がん効果 (抗腫瘍効果)

パイナップルに含まれるタンパク質分解酵素「ブロメライン」は、唯一パイナップルにだけ含まれている食物酵素で、今もっとも注目されている酵素の一つです。
ブロメライン酵素には以下の作用があります。

・心血管系の改善
・骨関節炎の緩和
・免疫原性の改善
・血液凝固能の改善
・抗がん効果 (抗腫瘍効果)

中でも、全ての人に関係があってもっとも重要なのが、抗がん効果 (抗腫瘍効果) でしょう。
健康な人の体の中でも毎日 5000 個ものがん細胞が発生しているからです。
ブロメライン酵素は、生体内試験・生体外試験の両方において、以下の抗がん効果が認められています。

・免疫系の抗がん活性を高める
・腫瘍の転移を抑制する
・腫瘍の増殖・浸潤の可能性を減少させる

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
☆ メリット 4.コストパフォーマンスが良い

パイナップルは一年中手に入る上に、食費はそこまで高くありません。
パイナップル大サイズ 1 玉から、約 800 ml のジュースを作ることができ、意外とボリュームがあります。

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☆ メリット 5.砂糖入りの菓子類や清涼飲料水に対する欲求がなくなる

パイナップルの自然な甘味に慣れてくると、砂糖を使った人工的な甘味に違和感を感じるようになります。
結果、砂糖や油脂類を使った加工食品の消費を減らすことにつながり、更なるダイエット効果と健康増進が期待できます。


■ おすすめバリエーション

(1) パイナップルとレモンのミックスジュース

フルータリアンになると、意外とレモンの使い道がわからないという人もいるかもしれませんが、
ジュースのアクセントに使うのはいいアイデアだと思います。
パイナップルとレモンのミックスジュースは私が最も好きなジュースの一つです↓



手順 1.果汁絞り器でレモン汁を搾ります。
手順 2.レモン汁とパイナップルをミキサーにかけてミックスすれば完成!

レモンの代わりに、ライムやグレープフルーツなど他の柑橘類を試してみるのも面白いかもしれません。

(2) 台湾パイナップル

最近よく見かけるようになった台湾産パイナップル。
値段は高くなりますが、たまに楽しむ分には良いでしょう。
芯の部分も水分が多くて食べやすいので、芯もミキサーにかけます。
少しアップル風味が強めで、リッチな生ジュースが楽しめます。
こんな感じで赤っぽくなります↓


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【参考文献】

1. Lisa Rigas. The Pineapple RX: Discover The Detox Power Of This Tropical Fruit And 21 Ways it Can Supercharge Your Health.
High Performance Marketing Solutions LLC (2014)
2. Pearl Robinson. PINEAPPLE? Let Me Explain: Everything you need to know, health benefits, remedies, recipes and more.
Global Heaven (2017)
3. Om Krishna Uprety. Pineapple Miracle. (2017)
4. RAJENDRA PAVAN. The Life with Bromelain: Properties and Therapeutic Application of Bromelain: A Review (2019)
5. Raffy Karamanoukian MD & Hratch Karamanoukian MD. Dr Karamanoukian's Guide to Bromelain - One of Nature's Best Enzymes (2011)
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生菜食主義の普及に貢献――霊的指導者サティヤ・サイ・ババ

2021-01-03 | 20 世紀に学ぶ
インドの霊的指導者サティヤ・サイ・ババ (1926 年 11 月~2011 年 4 月) は、20 世紀において、生菜食主義の普及に貢献した人物の一人かもしれません。

2011 年 4 月の葬儀では、世界中の要人・宗教関係者を含む 50 万人の参列者が集まり、国葬で葬儀が執り行われました。
インドで国葬されたのは、大統領など政治関係者を除けばマザー・テレサ以来であったことから、その影響力の大きさがわかります。

日本でも一時サイ・ババ ブームが起き、何もない手の中からビブーティと呼ばれる聖なる灰や腕時計・貴金属などを取り出してみせる「物質化現象」が特に話題になりました。
日本のテレビ番組では、半ば超能力者扱いで一面的な取り上げ方をされることが多く、
学校・病院の建設、水道設備の敷設などの慈善事業や、サイ・ババの思想そのものが知られることは少なかったように思います。

サイ・ババの思想で興味深い点は、食生活に関する言葉・指針を多く残しているところです。
例えば、こんな言葉があります。
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・骨を作るために、もっと人参を食べるべきです。

・ゴマの種子は動脈を清め、視力を向上させます。

(出典:『プラサード―食物に関する御言葉集―』142 ページ)
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具体的な食べ物が出てくるのが面白いと思います。
さらに興味深いことは、60 年前にサイ・ババが示唆していた食生活の科学的妥当性が今になって証明されているように見えることです。

食べ物に関する、サイ・ババの発言を集めた本『プラサード 第 2 版 食物に関する御言葉集』
(サティヤ・サイ・オーガニゼーション・ジャパン婦人部編、サティヤ・サイ出版協会訳、サティヤ・サイ出版協会、2007 年 6 月)
から、特に印象に残った 12 の言葉を紹介させていただきたいと思います。

[1] 現代人の心の中に潜む悪魔的傾向について
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食物は、人間の生命力、肉体、心、人格の主原因です。
肉体によって摂取される食物の大部分を占める粗大部分は、排泄物として体外に排出されます。
食物のわずかな部分を占める精妙な部分は、肉体に吸収されて、血液として循環します。
そして、ごくわずかな分量である、食物のもっとも精妙な部分が、心 (マナス、マインド) を作り上げます。
したがって心は、自分が摂取した食物を反映しています。
現代の我々の心の中の動物的・悪魔的な諸傾向は、自分の摂取する食物に起因するのです。

『プラサード―食物に関する御言葉集―』40 ページ
--------------------------------------------------------------
→ 菜食主義になってイライラすることが少なくなったという人は多いです。
食物は、精神の微細な動きに影響を及ぼしています。
現代にはびこる衝動的で無意味な暴力は、根本的には食生活に起因しているのかもしれません。

[2] なぜ動物たちは生まれてくるのか?
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人間が動物を殺すとき、その動物に苦しみや痛みや傷を与えます。
神はすべての生物に宿っているのですから、どうしてそのような苦しみを与えることができるのでしょう。
だれかが犬をたたくと、犬が悲鳴を上げることがあります。
犬が大きな苦痛を感じるからです。
それでは、殺されるときの苦しみはどれほど大きいでしょうか?
動物たちは、人間に食べられるために生まれて来たのではありません。
動物たちは、それぞれの生涯をこの世でまっとうするために生まれたのです。

『プラサード―食物に関する御言葉集―』176 ページ
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→ サイ・ババは非菜食の家庭に生まれたのにもかかわらず、物心ついたときから肉を食べることを拒みました。
これは、少年時代に既に常人離れしていたことを示すエピソードの一つです。
そして 14 歳のとき、サソリに刺されて意識を失ったことがきっかけで、自らを聖者シルディ・サイ・ババの生まれ変わりであると宣言しました。

[3] 動物の命と植物の命は違う
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人々の中には、野菜や木にも命があるのだから野菜を切るのは暴力行為だ、と論じる者もいるかもしれません。
野菜や木にも命があることは確かです。
しかし、野菜や木には心 (マインド、マナス) がありません。
そのため、野菜や木が傷みを感じることはありません。
五つの鞘、つまり、食物の鞘、生気の鞘、心の鞘、知性の鞘、至福の鞘を備えているのは人間だけです。
心を持っている者は苦しみと喜びを体験します。
人、動物、鳥、虫には心が授けられていますが、木と野菜には授けられていません。
果実をもぐと樹液がにじみ出てくる木があります。
木から樹液が出るのは自然現象ですが、それを苦痛の涙と誤解している人たちもいます。
木は心の機能を備えていないため、傷みを感じることはありません。

『プラサード―食物に関する御言葉集―』178~179 ページ
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→ 非菜食主義者の主張でよくあるのが「植物にも命があるのだからベジタリアンは矛盾している」というものです。
これに対してサイ・ババは、動物と植物は別であり同一視してはならないと言っています。
植物には傷みを感じる心 (マインド、マナス) がないからです。
動物に暴力が加えられたとき、その打撃は中枢神経系を経て脳に痛みとして伝達されます。
これは植物には見られない現象です。
また、リンゴの木から果実をもぎ取ったとしても、リンゴの木は死にません。

[4] ノン ベジタリアン フードの実害
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ノン ベジタリアン フードはガンをはじめとするさまざまな病気の原因です。
皆さんは、シンガポールやバーラタ (インド) の多くの人々は魚を食べているせいで有毒なバクテリアに感染している、
という記事を雑誌や新聞で読んだことがあるでしょう。
多くの人々はノン ベジタリアン フードは力をつけてくれるという間違った観念をもっていますが、
実際は、ノン ベジタリアン フードは健康を害します。
ノン ベジタリアン フードを摂ることでひとたび健康を損なったなら、
残りの人生を果実と塊茎を食べて森で暮らしても、決して元の健康状態には戻れないでしょう。

『プラサード―食物に関する御言葉集―』164 ページ
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→ 菜食主義者はほぼすべての部位のガンにおいて、発症率が非菜食主義者よりも低いことがわかっています。
動物性食品は、植物性食品よりも食物連鎖の上位に位置するため、生物濃縮によって高濃度に汚染が蓄積している場合が多いです。

[5] 浄性の食事
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一方、健康は大きな財産であることを知る者は、サトウィック フード(浄性の食事)だけを摂ることに、たいへん気を使います。
生の食物、ナッツ、果物、発芽した豆類がベストです。
こうした食物を、少なくとも一食に、たとえば夕食時に、用いなさい。
それによって長寿は確実となります。
長寿に努めるのは、人類同胞に奉仕する手段としてその長い年月を利用するためです。

『プラサード―食物に関する御言葉集―』297 ページ
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→ サイ・ババは、体と心と魂の健康のためには「浄性の食事」が必要だと言いました。
生の食物、ナッツ、果物、発芽した豆類。
生菜食主義を心がけている人たちにとってはお馴染みの食べ物です。

[6] 人間は 840 万分の 1 の例外である
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みずからの神性を発見する能力を与えられているのは人間だけです。
この点で食習慣は重要な役割を演じています。
地上の生物は 840 万種類ありますが、そのうち 839 万 9999 種類が虫や鳥や動物や獣などで、
自然界に神によって用意されたものを食べて生きており、概して病気にはかかりません。
この点で、人間は唯一の例外です。
人間は食欲の奴隷となり、スパイスを効かせて調理された種々の食物を特に喜んで食べていますが、
そのような食物が人間の寿命をどの程度縮めているかは全然知りません。
そのほかにぜひとも注意すべきことは、菜食の人々は病気にかかりにくいのに、
肉食主義者がかかる病気の数は多いという事実です。
理由は何でしょうか?
それは、肉食は人間の身体の必要と相容れないからです。

『プラサード―食物に関する御言葉集―』145~146 ページ
--------------------------------------------------------------
→ ローフードの考え方が示されています。
人間以外のすべての動物は、自然界の法則に従いローフードで生きています。
これは当たり前の法則ではありますが、人間の社会に住んでいると意識することもなく忘れてしまうようなことです。

[7] なぜ人間の世界には病気が蔓延しているのか?
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病気の主な原因は何ですか?
地球には種として分類された数億もの生き物が住んでおり、自然から確保した食物、自然によって供給されたものによって生きています。
人間だけがその例外です。
味覚や感覚を満足させるために、人間は、自然がもたらしてくれたものの構造や特性を変えて、煮たり、揚げたり、混ぜたりして、
生命力のない調合物を作っています。
鳥や獣はそのような破壊的な方法を用いません。
鳥や獣は、生のものを食べ、力を与えてくれる命のエキスを摂っています。
そのため、鳥や獣は、人間が自らにもたらしている多くの病気の犠牲になることがありません。

『プラサード―食物に関する御言葉集―』296 ページ
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→ 不必要な調理により食べ物の栄養が壊れてしまうことを言っています。
私は、生菜食を実践しているうちに、コロッケやフライなどの揚げ物料理がもっとも苦手になりました。
今となっては、超高温で処理されたものを当たり前のように食べていた過去が不思議に感じられます。

[8] 食べ物の「生命力」を壊さない
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人間は、自然の状態にある生の食物を嫌う唯一の生き物です。
ほかの動物は皆、穀物、草、葉、新芽、果実など、食物をそのままの状態で食します。
人間は、舌や目や鼻の欲求を満たすために、茹でたり、揚げたり、溶かしたり、混ぜたり、
さまざまな調理法を用いています。
その結果、個々の栄養価は減らされるか破壊されています。
油で揚げられれば、種子は発芽しません。
これは「生命力」が除去された明白な証拠です。
こういったわけで、調理されていない発芽されたばかりの生の豆類が好ましいのです。
ナッツと果物も好ましいものです。

『プラサード―食物に関する御言葉集―』292 ページ
--------------------------------------------------------------
→ 火で調理された豆・種子は生命力を奪われ、もはや発芽することができません。
栄養面においては、酵素の死滅、およびビタミン・ミネラルの損傷を招きます。
ローフードや酵素といった概念が確立されていない時代に、発芽したばかりの豆類がベストであることを見抜いていたのはすごいことだと思います。

[9] 他を助け、決して傷つけないこと
--------------------------------------------------------------
皆さんが肉を食べるので、多くの人々が動物を殺さなければなりません。
その動物が殺されるのは皆さんの責任です。
皆さんが肉を食べるから、動物たちが殺されるのです。
これは罪です。
罪のない動物たちを殺して食べるとは、何という罪なことでしょう。
皆さんは、大切なことを二つ知っておかなければなりません。
つねに助け、決して傷つけないことです。
私たちは、だれをも傷つけてはなりません。
これこそが真の人間的価値です。

『プラサード―食物に関する御言葉集―』177 ページ
--------------------------------------------------------------
→ サイ・ババが言う二つの大切なこと、「他を助けること」「決して傷つけないこと」は日々の食生活においても体現することができます。
動物性食品を食べないことによって、動物を殺さずに済むだけではなく、環境に対する負荷も減らすことができます。

[10] 医者と薬を過信しないこと
--------------------------------------------------------------
しかし、今、人は錠剤と注射の時代に生きています。
健康は医者を通じて得られる、もしくは維持できる、などと信じてはなりません。
また、薬だけが健康を保証できるものと考えてもいけません。
もしもそうならば、人は皆、死んだりしないはずです。
さて、医者たちが、他人に与えたアドバイスに自ら従っているかどうかを調べてごらんなさい。
彼らは、自らアドバイスした「してはならない習慣」、まさにその犠牲者なのです!

『プラサード―食物に関する御言葉集―』152 ページ
--------------------------------------------------------------
→ 「医学はすごい速度で進歩している」という楽観論の裏で現実に起こっていることは、
癌・糖尿病をはじめとする生活習慣病のさらなる蔓延です。
また、天文学的に増え続ける医療費によって、ますます財政は圧迫されています。
医者と薬を過信せず、自身の健康に対して責任を持つことが社会的にも求められていると思います。

[11] 果物のジュースと葉物野菜
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私たちの摂取する食べ物の中には神聖な力があります。
学生はだれもがバランスのとれた食事をしなければなりません。
オレンジジュース、トマトジュース、ライムジュース、リンゴジュースはとても健康によいものです。
葉野菜はビタミンも鉄も含んでいるので、高い栄養価があります。
肉体は健康であるべきです。
健康な肉体をもっていればどんな仕事も引き受けることができます。

『プラサード―食物に関する御言葉集―』157 ページ
--------------------------------------------------------------
→ 日本で生菜食を実践している人は圧倒的に少数派であり、中には一人孤独に続けている人もいると思います。
そんな人にこそ、このサイ・ババの言葉を知ってほしいと思います。
わかりやすく「とても健康によい」と言っています。

[12] ずっと同じ体重
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私は 68 歳です。信じようと信じまいと、私の体重は 14 歳のときからずっと 108 ポンド (約 49 キロ) ちょうどです。
109 ポンドに増えたこともなければ、107 ポンドに減ったこともありません。
この種のバランスと節度をもてば、皆さんも健康な生活を送ることができます。

『プラサード―食物に関する御言葉集―』160 ページ
--------------------------------------------------------------
→ この言葉が印象に残ったのは、私もずっと同じ体重で安定しているからです。
身長は 170 cm で体重はずっと 55 kg です。
細身ではありますが、BMI の「痩せ」には届かないラインで安定するのが面白いところです。
ナチュラルハイジーンという健康科学では、「毒血症」「排泄の遅れ」という観点から体重の増減が説明されます。
これに関しては、別の機会に取り上げたいと思っています。
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日本のフルータリアンの特権とは?――冬でもローフード率を落とさない

2020-11-09 | フルータリアンの実践
世界中のフルータリアンが移住したいと思う国としては、熱帯地方が人気です。
私自身、タイがうらやましいと思うことがあります。
タイではマンゴーのジュースが安い値段で楽しめて、サラダにさえパパイヤが入っています。
しかし、日本で長年フルータリアンを実践していて、日本のフルータリアンならではの特権があることに気付きました。
そしてその恩恵は冬に訪れます。
その恩恵とはずばり「柿」と「みかん」です。

ローフードを実践している人で、冬になるとローフード率が下がってしまうという人がいますが、
柿とみかんを上手く取り入れることでローフード生活を充実させることができます。

■ 柿


柿は、そのほとんどが東アジアで栽培されているため、ヨーロッパやアフリカでは馴染みの薄い果物です。
近年のインバウンド熱の高まりに伴って、海外からの注目度も高まっています。
そのまま「KAKI」という呼び名で知られています。
日本では様々な品種の柿が豊富に楽しめます。
これは日本のフルータリアンならではの特権と言えるでしょう。

とくに熟れた柿は天然のゼリーです。
私は、ローフード生活を始めた頃、柿ばかりを食べていたら
お菓子・スイーツ類に対する欲求が消えるという経験をしました。
ベジタリアンやビーガンの人でも、砂糖入りのスイーツが辞められないという人は多いですが、
熟れた柿をゼリーだと思って楽しんでいるうちに、砂糖の人工的な甘みに違和感を感じるようになります。
(砂糖の害については、映画『あまくない砂糖の話』[DVD] の視聴をオススメします)

日本には「柿が赤くなると医者が青くなる」という言い伝えがありますが、
天文学的に医療費が膨れ上がる今こそ、この知恵を受け継いでいくべきでしょう。

■ みかん

日本では様々な都道府県でみかんが生産されており、秋から冬にかけて豊富に手に入ります。
みかんは、海外でも生産されていますが、日本ほどメジャーな果物ではありません。
このことは日本人の血液を調べると明らかになります。

日本人は「β-クリプトキサンチン」というカロテノイドの血中濃度が高く、逆に、みかんを食べない諸外国では β-クリプトキサンチンの血中濃度が低いことがわかっています。
みかんには、β-クリプトキサンチンが高濃度で含有されていて、糖尿病・肝機能異常症・脂質代謝異常・動脈硬化などの発症リスク低下との関係が明らかになっています。
さらに研究が進めば、日本人の健康とみかんとの関係が見直される日が来るかもしれません。

みかんは水分が多いので、ジュースに向いています。
私がよく作るのは、みかんと黒バナナのミックスジュースです。


まずは水分の多いみかんをミキサーにかけます。
次にバナナをミックスします。舌ざわりがトロトロの美味しいジュースが出来上がります ↓


ナチュラルハイジーンという健康科学では、酸味のある果物と甘い果物を混ぜ合わせるのは、食べ合わせが悪く消化に良くないと教えていますが、今のところ、特別な弊害は感じていません。
少なくとも、加熱食品を食べたときのような"消化の重さ"はありません。

少し値は張りますが、みかんとキウイ、みかんとパイナップルなどの組合せもオススメです (こちらは酸味のある果物同士の組合せであり、食べ合わせは悪くないとされています)。
慣れてきたら、食費を抑えるためにも箱買いを試してみるのもよいでしょう。

■ 冬にこそ風邪に対する抵抗力が高まり、冬にこそ肌がきれいになる

みかんのビタミン C 含有量が高いことはよく知られていて、100 g 中 35 mg のビタミン C が含まれます。
柿にいたってはその倍の、70 mg/100 g のビタミン C を含みます。
ビタミン C は体の免疫力を高める働きがあり、風邪やインフルエンザの予防に効果があることが知られています。
また、 強い抗酸化作用を持ち、美肌・美白の維持にも有効です。

柿とみかんを豊富に摂取しているローフーディストは、日本で最もビタミン C のレベルが高い人達であり、
最も風邪をひきにくい人達だと思われます。
私自身の体験で言うと、風邪をひくのは 3~4 年に一度という頻度に落ち着いています。

私は関西地方に住んでいるので、和歌山と奈良の柿 (都道府県別の収穫量 1 位・2 位)、和歌山のみかん (都道府県別の収穫量 1 位) から多大な恩恵を受けています。
日本のフルータリアンならではの特権を楽しみながら、冬でもローフード率を落とさないように心がけたいと思っています。
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