フルータリアンの備忘録

フルータリアンとは、果物を主食にしているベジタリアンのことです。

冷凍フルーツでバリエーションをつける――フローズンメニューの導入

2022-05-25 | フルータリアンの実践
冷凍フルーツを取り入れることで、単調になりがちな食生活に、バリエーションをつけることができます。

冷凍ものの方が安価で、季節を気にせず年中楽しめるというメリットがあります。
半解凍のまま利用して、フローズンスムージーやアイスクリーム風ミックスボウルなど、ひんやり食感のメニューを楽しむことができます。

様々な冷凍フルーツが出回っていますが、よく見かけるのが、イチゴ、ブルーベリー、マンゴー、パイナップル、ブドウ、キウイ、ライチなどです。
私は、このうち、冷凍ブルーベリーと冷凍マンゴーをよく利用しています。

その一方で、冷凍処理による栄養損失について気にされる方もいるかもしれません。
これについては後半で触れることにして、まずは、冷凍フルーツを利用した、ひんやり美味しいフローズンメニューを紹介したいと思います。

■ かんたんフローズンメニュー

[1] 冷凍ブルーベリー

・バナナとブルーベリーのミックスボウル


ブルーベリーが半解凍ぐらいのタイミングで、バナナとミックスします。
ひんやりとした食感で、アイスクリームのような味わいがあります。

スーパーが閉まっていてコンビニしか開いていないときでも、用意できる可能性が高いメニューです。
最近のコンビニは、冷凍フルーツの取り揃えがとても充実しています。

・バナナとブルーベリーのフローズンスムージー


汗をかいて水分欲求があるときは、フローズンスムージーにするのもよいでしょう。

眼精疲労を感じているときにブルーベリージュースを飲むと、翌日に目の疲れが和らいでいることに気付くこともあります。
ブルーベリーに豊富に含まれるアントシアニンには、目の毛様体筋の緊張をほぐす効果があり、眼精疲労を軽減させます。

バナナとブルーベリーの組合せは、クレープやお菓子に使われる定番ですが、子供たちがもっとも好きな味の一つです。
砂糖入りの炭酸飲料を与える代わりに、果物だけのスムージーを作ってあげることで、子供の虫歯を防ぐことができます。

[2] 冷凍マンゴー

・マンゴーとバナナのミックスボウル


バナナの上に、冷凍マンゴーをかけただけの簡単メニューです。
リンゴとも相性が良いです。

東洋医学やマクロビオティックの影響を受けた方に多いのですが、生の野菜や果物を食べると体が冷えると考えている人もいます。
しかし、多くのローフード実践者が体験している世界は、その逆です。
「体の内側からポカポカする」、「血のめぐりが良くなったのか、体温が上がった気がする」などと、体の冷えとは真逆の現象を体験する人が多いのです。
この理由としては、生の野菜や果物は、加熱処理によって酵素が破壊されておらず、大変消化が良いため、全身の代謝が良くなっていることが考えられます。
なにより、人間以外のすべての野生動物は、食べ物を加熱することなく、そのままの状態で食べています。
寒さが厳しい冬の季節においては、寒風にさらされて冷え切った食べ物をそのまま食べることもありますが、それはそれで何の問題もないわけです。

・ひんやりトロピカルジュース


冷凍マンゴーとパイナップルのミックスジュースです。
南国フルーツ同士の掛け合わせが生み出す、独特でトロピカルな味わいが魅力です。

マンゴーやパイナップルに含まれる豊富な酵素により、腸内の毒素や未消化物が分解され、腸内をキレイな状態に保つことができます。

■ 冷凍による栄養損傷について

果物に対して様々な加工が行われていますが、中でも、濃縮還元されたジュースは栄養の損傷が激しく、栄養価という観点から見た場合、全く別物と考えるべきです。
加熱殺菌の工程を伴うため、酵素は死滅し、ビタミン・ミネラルをはじめとする栄養素も損傷を受けています。
米国のフルーツ研究家、ポール・グロス博士は、自著『スーパーフルーツ』(未訳) の中で、未加工のままの果物と、濃縮還元されたジュースの栄養価を以下のように比較しています。


多くのローフード実践者が、市販の濃縮還元ジュースには手を出さずに自分で生ジュースを絞るのは、こういった理由からです。

それに対して、冷凍処理の場合は、未加工の果物や乾燥果実と近いレベルで栄養価が保たれると、グロス博士は言っています。
そして、その根拠となる理由も多くあるわけですが、以下、ポイントとなる論点をいくつか示したいと思います。

・前処理のブランチングについて   

冷凍野菜の場合、前処理としてブランチングという加熱処理が行われています。
加熱により酵素を不活性化させて、冷凍保存中の変質や変色を防ぐためです。

それに対して、冷凍果物の場合、ブランチングをしてしまうと新鮮さが失われてしまうため、ブランチングは行われていません。
ただし、ごく一部のスライス状の果物は、変色を防ぐためにブランチングを行うこともあるようです。
正確なことは、製造元に確かめなければわからないようです。

・急速冷凍と通常冷凍の違いについて

現代の冷凍食品は、急速冷凍により冷凍保存されています。
どの程度、"急速"かというと、マイナス 5℃~マイナス 1℃の範囲を「30 分以内」で通過する速さです。

この温度帯は、「最大氷結晶生成温度帯」と呼ばれており、食品の水分が氷結晶に変わる時間帯です。
この際、氷結晶の肥大化が起こり、食品の細胞膜が破壊されてしまいますが、
この温度帯をできるだけ素早く通過させることで、氷結晶の肥大化を抑制することができ、細胞破壊を防ぐことができます。

通常の冷凍 (緩慢冷凍と呼びます) では、この温度帯を通過するのに何時間もかかるため、食品体積の膨張とともに細胞破壊が起こり、品質の劣化につながります。
以下のグラフは、急速冷凍と緩慢冷凍の凍結曲線を比較したものです。 (参考:一般社団法人日本冷凍食品協会のホームページ内資料より)


・冷凍によるビタミン C の損傷について

栄養素の中でもビタミン類は損傷を受けやすく、特にビタミン C は、栄養素として重要性が高く、分析もしやすいことから、冷凍フルーツの品質を測定する上で最も代表的な指標になっています。

Bisset と Berry による研究 (*3) では、濃縮オレンジジュースを冷凍保存した場合に、ビタミン C がどれだけ保持されるかが調査されています。
濃縮オレンジジュースを、-20.5℃で凍らせた後、-20.5℃、-6.7℃、1.1℃の 3 通りの温度で冷凍保存を行いました。

最も低い温度である -20.5℃ で冷凍保存した場合、一年後のビタミン C 保持率は 91.5%でした。
それに対し、-6.7℃では 8 ヶ月の時点で 79%の保持率、1.1℃ではたった 3 ヶ月で 89%の保持率となりました。

-20.5℃の低温下では、かなり高い保持率で、ビタミン C が保持されていたと言えるでしょう。
以下のグラフは、濃縮オレンジジュースの冷凍保存時のビタミン C 保持率を示したものです (アルミ付紙パックで保存した場合のデータ) 。



・冷凍によるビタミン B 群の損傷について

Spiess による研究 (*4) は、冷凍保存におけるビタミン B 群とカロテンの保持に関するものです。
オレンジジュースとイチゴを -18℃で冷凍保存した場合の、葉酸、ナイアシン、パントテン酸、リボフラビン、チアミン、ピリドキシンの安定性について報告されています。
12 ヶ月の冷凍保存後、チアミンとピリドキシンのみが減少していました。それ以外は、ほぼそのまま保持されていました。
従って、-18℃での冷凍保存が 1 年までであれば、ビタミン B 群において、はっきりとした栄養損傷は見られないと結論づけています。

Minasyan と Astabatsyan による研究 (*5) では、様々な冷凍フルーツで、ビタミン B 群の変化について調べています。
各フルーツは、-40℃で冷凍された後、8ヶ月間、ポリ袋で冷凍保存されました (-18℃~-20℃)。
冷凍前、冷凍後、冷凍保存後に、各ビタミン B 群 (チアミン、パントテン酸、ピリドキシン、ニコチン酸、イノシトール) の測定を行いました。
冷凍保存後、ビタミン量のわずかな減少が認められました。
イノシトールとニコチン酸の保持率は、94.9%~99.3%。ピリドキシンの保持率は、78.3%~97.6%、パントテン酸は 85.1%、チアミンは 88.2%でした。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【参考文献】

1. Lester E. Jeremiah (ed.). Freezing Effects on Food Quality (Food Science and Technology Book 72). CRC Press (2019)
2. Paul M. Gross. Superfruits: (Top 20 Fruits Packed with Nutrients and Phytochemicals, Best Ways to Eat Fruits for Maximum Nutrition, and 75 Simple and Delicious Recipes). McGraw Hill (2009)
*3. O.W.Bisset and R.E.Berry. Ascorbic acid retention in orange juice as related to container type. J.Food Sci. 40(1):178 (1975)
*4. W.E.L.Spiess. Changes in ingredients during production and storage of deep-frozen food―a review of the pertinent literature ZFL 8:625 (1984)
*5. J.A.Venning, D.J.W.Burns, K.M.Hoskin, T.Nguyen, and M.G.H.Stec. Factors influencing the stability of frozen kiwifruit pulp. J.Food Sci.54(2):396-400,404 (1989)
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フルータリアンの基礎は菜食にあり――知っておきたいロマリンダ食

2022-03-30 | 20 世紀に学ぶ
■ フルータリアンにいたる道

普通の食生活をしていた人が、いきなりフルータリアンの食生活を始めるのは珍しいことです。
私の場合もそうでしたが、多くの場合、次のようなステップを経てフルータリアンに近づいていきます。

ベジタリアン(菜食主義)

ヴィーガン (完全菜食主義)

ローフード (生菜食) の導入(生食率を30%→50%→70%と徐々に上げていく)

フルータリアン(果菜食)

それぞれの段階に応じて超えるべき壁のようなものがあり、少しずつステップを踏みながら体を慣らしていく方が、最終的には長続きします。
実際、既にヴィーガンを実践していてローフードやフルータリアンに興味を持ち始めたという人の方が、圧倒的に長続きする可能性が高いです。

よって、今まで普通の食生活を送っていた人でフルータリアンを実践してみたいという人がいたら、「まずは菜食から始めてみてはどうか」「果物多めの菜食スタイルを試してみてはどうか」と提案すると思います。

例えば、日本でヴィーガンを実践する上で超えるべき壁の一つとして、スープに使われている出汁 (だし) をどうするかという問題があります。
大半の出汁は鰹節が使われているため、これを避けようとすると外食での選択肢は大きく狭まります。
だからといって自分で出汁を準備するのも手間だったりします。

そこで、うどんやそばを出汁を使わずに美味しく食べる方法はないだろうかと考えるようになるわけです。
そして、実際、四国地方には醤油うどんというメニューがあることに気付きます。
残念ながら現在の醤油うどんは出汁が使われているのですが、20 世紀前半頃、うどんに純粋な醤油だけをかけて食べていたという記録があり、しかも大変なご馳走であるとされていました。
そして今度は、どんな醤油がうどんに合うだろうかと試行錯誤を始めるようになります。

このような模索を重ねながら、そして、その過程で得られる様々な気づきを増やしながら、少しずつステップを踏んでいくわけです。
やはり食生活というのは、子供の頃から何十年もかかって身につけてきた習慣ですから、急激な変化には耐えられないのだと思います。

多くのフルータリアンはこのようなステップを経てフルータリアンになっているので、自分はベジタリアンである、またはヴィーガンであるとのアイデンティティを持っていることが多いのです。
今のところ日本では菜食主義者は少数派ですから、同調圧力が強いと言われる日本社会の中で、嫌でも自らのアイデンティティを意識せざるを得ないでしょう。
特に、「菜食主義者 VS 非菜食主義者」の健康上の議論に巻き込まれるのは必至です。

このような議論が巻き起こった場合、栄養学の最先端の論文を研究されている方などが、「最新の栄養学はますますプラントベースの食事を支持している」と総括して教えてくれることがあります。
これは世界中の研究者によって、もう何十年も前から叫ばれ続けていることです。
その一方で、菜食は健康に悪いという記事や論文も少なからず見つかることから、これらが非菜食主義者に取り上げられて、議論の応酬が続くことになります。

このような場合、両陣営とも、比較的最新の研究を持ち出してきて議論し合うことが多いようです。
しかし、そのような最新の研究に頼らなくとも、菜食の健康上の優位性という点については、20 世紀の時点で既に証明されているのだと思います。

それを最もわかりやすい形で示しているのがロマリンダ食です。

■ 禁煙・禁酒・菜食の町 ロマリンダ

ロマリンダとは、米国ロサンゼルスの東方 100 キロメートルに位置する小さな田舎町のことです。
ロマリンダは、キリスト教の一教派「セブンスデイ・アドベンチスト」(Seventh Day Adventists = SDA) の信者によって作り上げられました。
町の多くの住民は菜食主義者であり、町ぐるみで健康食・自然食運動が実践されてきました。

現在においてもロマリンダは有数の長寿地域として知られ、"アメリカにおける唯一のブルーゾーン"とも言われています。
ブルーゾーンとは、作家で探検家のダン・ビュイトナーによって調査・提案された、現代世界における 5 大長寿地域のことです。
(イタリアのサルデーニャ島、米国カリフォルニア州のロマリンダ、コスタリカのニコヤ半島、ギリシャのイカリア島、沖縄の大宜味村)
"一般のアメリカ人よりも 10 年長く生きるスリムな人々"といった文句で紹介されることもあります。

ロマリンダで最も活発な産業は医療事業であり、多くの市民が医療活動に従事しています。
ロマリンダは、人口一万人弱の小さな町でしたが、1984 年にロマリンダ大学医療センターが、世界で初めてヒヒの心臓を赤ちゃんに移植するというショッキングな手術を行ったことで、世界的に有名になりました。
その次に活発な産業が出版・教育事業です。
出版・教育事業に力を入れているのは、同教派が「キリストの再臨のメッセージを全世界に宣べ伝えることを使命としている」ためです。
現在、信徒数は世界全体で 2000 万人を越えており、日本での信徒数は 1 万 5 千人余だということです。

本記事では、現在のロマリンダではなく、20 世紀後半のロマリンダに焦点を当てようと思います。
大規模で貴重な栄養疫学調査の大半は、20 世紀後半に行われているためです (よって現在の状況とは異なる記載もあります)。

アドベンチストが菜食を実践するのは、聖書に
「神がはじめに穀類、堅果類、果物、野菜などの菜食を人間の食物として与えられた」(創世記第一章)
ことが記載されているためです。

また、次に挙げる五つの生活原理を日常生活の心がけとしています。

[1] バランスのとれた食事をする

[2] 自然治癒に努める

[3] 病気にならないよう予防を心がける

[4] 精神衛生に注意する

[5] 神と人間に対して愛を持つ

これら生活原理の内、特に[1][2][3]を忠実に守ろうとすれば、菜食だけではなく、禁酒・禁煙の習慣にもつながっていくわけです。
酒やタバコは、はっきりと「有害なもの」として認識され、町のスーパーマーケットでも売られていませんでした。
また、精製した小麦や砂糖のような"非自然食品"は、食料品売り場の片隅に追いやられていました。
香辛料やカフェインの入ったコーヒーやコーラなどの嗜好品も、"反自然飲料"と考える人が多く、避けられる傾向にありました。
[3]の病気の予防の観点から、適度な運動を心がけようとする人も多く、健康維持のために様々なスポーツやエクササイズが実践されていました。

■ SDA 栄養疫学調査

ロマリンダのような、禁煙・禁酒・菜食を実践する社会集団は珍しく、熱心な研究対象になってきました。
代表的で重要な疫学調査を取り上げたいと思います。
なお、各調査では、セブンスデイ・アドベンチストのことを「SDA」と簡略的に表します (Seventh Day Adventists = SDA)。

☆ セブンスデイ・アドベンチストの 5 つのダイエットグループと、グループ別の疾患発症リスク

最も大規模な疫学調査の一つが、2002 年から行われている AHS-II (Adventist Health Study II) と呼ばれる調査です。
米国とカナダの約 10 万人の SDA が調査対象になっています。
セブンスデイ・アドベンチストの食スタイルで最も多いのが卵乳菜食でしたが、信仰の度合いや信仰を食生活にどれほど反映させるかによってばらつきが生まれます。
本調査では、研究対象の人数が多かったこともあり、以下の 5 つのグループに分類して健康状態を比較することができました。

・グループ 1:ノンベジタリアンの SDA (ノンベジ)

SDA の中で最も大きな割合を占めるグループで、全体の 43.7%を構成。
果物、野菜、乳製品、卵、魚、鶏肉、赤肉を含むすべての食品群を食べる。
5 つのグループの中で最も不健康なグループ。

・グループ 2:セミベジタリアンの SDA (セミベジ)

すべての食品群を食べるものの、魚・鶏肉・赤肉の消費量が極めて少ないグループ。
SDA 全体の 8.3%を占める。
健康状態は、ノンベジタリアンよりも優れている。

・グループ 3:ペスコベジタリアンの SDA (ペスコ)

果物、野菜、魚、卵、乳製品は食べるが、赤肉や鶏肉は食べないグループ。
SDA 全体の 9.7%を占める。
赤肉や鶏肉を食べるグループより健康状態が優れている。

・グループ 4:ラクトオボベジタリアンの SDA (ラクトオボ)

動物性食品の内、卵と乳製品は食べるが、魚、鶏肉、赤肉を食べないグループ。
卵、牛乳、チーズ、ヨーグルト、バター、アイスクリームなどの卵・乳製品を食べる卵乳菜食。
SDA では二番目に多く、全体の 34%を占める。
魚、鶏肉、赤肉を食べるグループより健康状態が優れている。

・グループ 5:ヴィーガンの SDA (ヴィーガン)

食事のすべてが植物性食品から構成され、魚、鶏肉、赤肉など一切の動物性食品を口にしないグループ。
いわゆる完全菜食主義者で、SDA 全体の 4.3%を占める。
最も素晴らしい健康状態を享受している。


各グループの割合と特徴を以下のようにまとめることができます。



次に、疾患別に、グループ同士で疾患リスクの比較が行われました。

・グループ別糖尿病リスク


ノンベジの罹患リスクを 1 とした場合、セミベジが 0.72、ペスコが 0.49、ラクトオボが 0.39、ヴィーガンが 0.22 と、ヴィーガンが最も低い。

・グループ別高血圧リスク


ノンベジの罹患リスクを 1 とした場合、セミベジが 0.77、ペスコが 0.62、ラクトオボが 0.45、ヴィーガンが 0.25 と、ヴィーガンが最も低い。

・グループ別体重比較 (BMI値)


ノンベジの BMI 値は28.3、セミベジは 27、ペスコは 25.7、ラクトオボは 25.5、ヴィーガンは 23.1。
ヴィーガンのみが、普通体重の範囲内。

☆ 平均余命の調査

次は、1974 年から 1988 年にわたって行われた AHS-I (Adventist Health Study I) と呼ばれる調査です。
カリフォルニア在住の 25 歳以上の SDA 信徒 34192 名が調査対象になっています。

・世代毎で平均余命を比較 (男性の場合)

すべての世代において、SDA の平均余命は、カリフォルニア住民を上回っていることがわかります。

・世代毎で平均余命を比較 (女性の場合)

男性の場合に比べると平均余命の上げ幅は少ないものの、女性の場合もすべての世代で、SDA の平均余命の方が長くなっています。

☆ SDA の死亡原因の比較

次は、SDA 信徒と 普通の食事をしている人とで、死亡原因を比較したデータです。
ロマリンダ大学で、1958 年から 1965 年までの 8 年間にわたって行われた調査で、カリフォルニア在住の約 5 万人の SDA 信徒 (35 歳以上) が調査対象になっています。
カリフォルニア全州の住民と比較しています。

平均寿命を比較すると以下の通りとなりました。

・カリフォルニア男性:71 歳
・SDA 男性:77 歳
・カリフォルニア女性:77 歳
・SDA 女性:80 際

個別の疾患毎の死亡原因発生率は以下の通りです。
カリフォルニア住民の値を 100 とした場合の SDA の値が示されています。


このように、すべての疾患において、SDA の方が低いことが示されました。
がんによる死亡についても、すべての部位のがんで、SDA の方が低い発生率となっています。
喫煙と深い関わりのある死亡原因、肺がん・口腔がん・咽喉がん・喉頭がん・気管支炎・肺気腫・膀胱がん、においてはかなり低い発生率となっています。
また、飲酒と深い関わりのある死亡原因、食道がん・肝硬変・交通事故においても明らかに発生率が低くなっています。

非喫煙の習慣のみが、低い死亡率に寄与しており、菜食の習慣は関係ないのではないかと考える人もいるかもしれません。
そこで、非喫煙の SDA と非喫煙の非 SDA のがん罹患率も比較されています。
そして、この比較においても、やはり SDA の方が低い値でした。

[非喫煙の SDA と非喫煙の非 SDA のがん罹患率を比較]

・がん全体の死亡率は、SDA 男性の場合で 85%、SDA 女性の場合で 78%。

・肺がんによる死亡率は、SDA 男性の場合で 67%、SDA 女性の場合で 42%。

・結腸直腸がんによる死亡率は、SDA 男性の場合で 67%、SDA 女性の場合で 42%。

・乳がんによる死亡率は、SDA 女性の場合で 81%。前立腺がんによる死亡率は、SDA 男性の場合で 93%。

・リンパ腫または白血病による死亡率は、SDA 男性の場合で 93%、SDA 女性の場合で 89%。

・全ての死因を総体的に比較すると、非喫煙 SDA 男性の死亡率は、非喫煙非 SDA 男性よりも 21%低く、非喫煙 SDA 女性の死亡率は、非喫煙非 SDA 女性よりも 9%低い。
冠動脈心疾患や卒中などのがん以外の死亡率も、SDA の方が低い。

この頃の日本では、一生涯のうち日本人の 4 人に 1 人はがんにかかると言われていました。
それが 21 世紀を迎える頃には、3 人に 1 人になり、今では、2 人に 1 人となっています。
これらは 50 年以上も前のデータですが、現代の日本人においてこそ意味のある調査研究でしょう。

菜食をするとがんの発生が少なくなる理由については、はっきりとしたことはわかっていませんが、2 つの観点から因果関係を推測することができます。
まずは、植物性食品に豊富に含まれる食物繊維、ビタミン類、ポリフェノール・カロテノイドなどの抗酸化物質が、がんを抑制する働きをしていることが考えられます。
もう一つの観点としては、肉を焼いたり揚げたりした場合に変異誘発物質が発生すること、また、PCB・PCD などの発がん性のある農業・工業用化学物質は、肉・魚・乳製品・油脂類に蓄積されやすいことなどが考えられます。
農薬というと果物や野菜を思い浮かべる人が多いかもしれませんが、実際には動物性食品に高濃度で検出されます。
世界的な環境活動家のジョン・ロビンズ氏も、
「すべての有害な残留農薬の 95~99 %は、肉・魚・乳製品・卵から体内に取り込まれている」
と述べています。
農薬の付着した飼料を家畜が食べることで、脂肪組織や筋肉組織に汚染が蓄積・濃縮されていくためです。

■ 日本の中のロマリンダ

「ロマリンダ」または「アドベンチスト」という名がつく病院があれば、菜食に理解のある病院である可能性が高いです。
最も古く長い伝統を持っているのが、1929 年に開設された東京衛生アドベンチスト病院です。
キリスト教系の病院ということで理由のない迫害を受けて、1945 年に閉鎖に追い込まれたものの、数年後に再度活動を再開して今日に至っています。
病院では菜食メニューが振る舞われ、禁煙教室や菜食料理講習会などの活動も盛んに行われてきました。

その他としては、神戸アドベンチスト病院や沖縄のアドベンチストメディカルセンターも長い伝統を持っています。
神戸アドベンチスト病院は、菜食レストランや菜食教室も運営しており、菜食のレシピ本なども出版しています↓

知花雅之著『神戸アドベンチスト病院栄養科スタッフがつくる おいしくて体にいい穀菜食レシピ』福音社

一度覚えてしまえばずっと使えそうなレシピが多く参考になります。

私は、事故や大病をして入院した経験などはまだないのですが、このような菜食に理解のある病院が日本にもあることを心に留めておきたいと思います。

セブンスデー・アドベンチスト教団の食品事業部である三育フーズも、菜食食品の会社として様々な菜食食品を手掛けています。
グルテンを抽出した代替肉を販売したのは三育フーズが日本初であり、昨今のヴィーガン食品への関心の高まりとともに菜食食品の需要も拡大しているようです。

このように、ロマリンダは遠く離れた日本においてもその活動を広げて、少なくない影響を与えてきました。  
日本人目線でロマリンダの存在を知ったときに改めて感動することは、飽食・肉食大国のアメリカにおいて、
ごく少数の社会集団でありながら、差別を受けることなく社会的に認められて、医療・出版事業を中心に大きな役割を果たしてきたことです。

これが日本であればそうはうまくいかなったかもしれません。
同調圧力の強い社会の中で、不当に差別されたり、偏見を持たれたり、嫌がらせを受けたりする可能性が高かったことでしょう。

アメリカには、互いの考え方の違いを自由として尊重する文化があります。
様々な人種がいるので、考え方の違いを認め合わないと社会的にやっていけないという側面もあるでしょうが、日本人としてはその態度に学ぶ点も多いはずです。
また、菜食同士の夫婦であっても、細かなスタイルの違いはどうしても出てくるものですが、こちらにおいても個人の自由としてお互いのスタイルを認め合う傾向が強いようです。

■ セブンスデイ・アドベンチストは果物をどのように捉えていたか

セブンスデイ・アドベンチストは果物をどのように捉えていたのでしょうか?
セブンスデイ・アドベンチストのリーダー的存在であり精神的な支柱でもあったエレン・グールド・ホワイト (1827 年~1915 年) の言葉を基に推察してみたいと思います。

エレン・グールド・ホワイトは、宗教家・教育家・著述家として、セブンスデー・アドベンチスト教会の創立において指導者的役割を果たした人物です。
「預言者」とも呼ばれており、生涯で見た幻の内容は文書として大切に保存され、教会の中では聖書に次ぐ重要文書という扱いを受けています。

☆ 果物から受ける祝福

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アダムがエデンの家郷を失ったとき、主が果物の供給を断たれなかったことに対し、私は神にとても感謝している。

『Statement from E.G.White Manuscript files』157 節、1900 年
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年間の大部分を通じて新鮮な果物が得られる国々に住んでいる人は、そのような果物によって受ける祝福に気付くよう主は望んでおられる。
木から採ったばかりの新鮮な果物に頼れば頼るだけ、その祝福も更に大きいのである。

『Testimonies for the Church. Vol.7』126 節、1902 年
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→ もともと初期の人類は果実が豊富に採れる森に暮らしていましたが、道具を発明して狩りをすることを覚えたり、農耕技術を発展させたりして、自らの生存領域を森以外に拡大させていきました。
人間は森を捨て去りましたが、森は人を見捨てませんでした。
その果実を通じて人間の健康を支え続けたのです。
アダムとイブは、旧約聖書の『創世記』に登場する理想郷「エデン」を追放されることになりましたが、それでも神によって果物の供給だけは断たれることがありませんでした。
果食に原始回帰的な意味合いを見出す人もいます。
失われてしまった森とのつながりを果食を通じて取り戻すという感覚です。

☆ 果物は最上の食物、しかし食後の果物は NG

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加工されず、単純であるが、量の豊富な果物は、神の働きのために準備している人々の前に備え得る最上の食物である。

『Statement from E.G.White Manuscript files』103 節、1896 年
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健康を支える仲介者として、我々は特に果実を推薦する。
しかし、他の食物で十分にまかなった食後に食べてはならない。

『Statement from the E.G. White Manuscript files』43 節、1908 年
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→ 加工されていない自然のままの果物が、最上であると言っています。
また、食後に果物を食べるのは良くないことも指摘しています。
消化が複雑になるためでしょう。
ビタミンという言葉すらも存在しない時代に、この原則を見抜いていたのはすごいことです。

☆ 食事の際に大量の飲み物を飲むのは変?

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大量に食塩をとってはならない。
ピクルスや調味料の入った食物を用いることを避け、豊富に果物を食しなさい。
そうするならば、食事のときにあれほど飲物を要求させた刺激は、大部分消失するであろう。

『Medical Ministry』305 節、1905 年
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→ ローフードは、食べ物自体にたっぷり水分が含まれているので、飲み物を特別に添える必要がなくなります。
逆に、普通の食事をしていたときはなぜあれほどまでに水分を欲したのだろうかと考えたくなります。
その一つの原因として、加熱食品特有のある種の"刺激"が考えられます。
単に水分を補給するためだけではなく、この"刺激"を抑えるためにドリンクを飲んでいたのかもしれません。

☆ 臨時のフルーツファスティング

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不摂生な食事が、しばしば病気の原因であって、身体が最も必要とすることは、これに負わされた無理な重荷を除くことである。
いろいろな病気の場合に最もよい治療法は、過労した消化器官が休息する機会を得るため、患者が一度か二度食事を断つことである。
数日間、果物だけの食事をとることは、しばしば頭脳労働者の荷を大いに軽減してきた。
多くの場合、短期間絶食をし、その後に単純で過度の食事をすることにより、自然そのものの回復力が働いて、全快に至らせた。
一、二ヶ月の節制した食事は、多くの苦しむ人々に、克己の道が健康への道であることを確信させることだろう。

『Medical Ministry』235 節、1905 年
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→ 不摂生な食事が多くの病気の原因であることは、この時代に既に知られていました。
また、酷使された消化器官の負担を取り除く上で、果物だけの食事が有効であることも知られていました。
果物だけの食事は、消化器官を休めるのに役立つだけではなく、豊富な栄養と浄化力によって、自然そのものの回復力が働くのを助けます。

☆ 有害な食品の代わりとして

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我々の医療機関においては、禁酒について明瞭に教えるべきである。
患者に、人を酔わせるアルコール飲料の害と絶対禁酒の祝福を示さなければならない。
彼らの健康を破壊したものを廃止するよう患者に求め、このような食物の代わりに、果物を豊富に与えるべきである。
オレンジ、レモン、プルーン、桃など、またその他多くの種類の果物を手に入れることができる。
骨折って努力が払われれば、主が造られた世界は実り多いからである。

『Statement from E.G.White Manuscript files』145 節、1904 年
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→ アルコールや砂糖などの健康に良くない食品の摂取を完全に断つのは難しいことです。
それらを断つことだけに意識を集中するのではなく、代わりの食品として果物を導入するのはよい方法です。
果物を多く食べていると、味覚が自然な状態に近づき、有害な食品が与える強い刺激に違和感を感じるようになります。

☆ 果樹園から採れたての果物は格別

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家庭も機関も、土地の栽培と改善のため更に努力することを学ぶべきである。
土地が季節に従って生じる地の産物の価値を人々が知りさえすれば、土を耕すために、もっと勤勉な努力が払われるはずである。
果樹園や農園から採れたての果物や野菜の特別な価値を、すべての者が知るべきである。
患者や学生の人数が増加するにつれて、更に広い土地が必要になってくる。
ブドウの木を植えて、その機関がブドウを生産することもできる。
また、その土地にオレンジ畑も有利である。

『Statement from the E.G.White Manuscript files』13 節、1911 年
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→ 土地の有効利用について述べた言葉です。
採れたての果物や野菜こそ健康に最善であり、果樹の栽培を積極的に検討すべきだと言っています。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【参考文献】

1. 箕浦 万里子『ロマリンダの長寿食―アメリカの町ぐるみ自然食実践レポート』自然の友社 (1985)
2. 知花雅之『神戸アドベンチスト病院栄養科スタッフがつくる おいしくて体にいい穀菜食レシピ』福音社 (2013)
3. Elvin Adams MD MPH. The Healthiest People: The Science Behind Seventh-Day Adventist Success. iUniverse (2019)
4. Ellen G. White. Counsels on Diet and Foods. Ellen G. White Estate, Inc. (2010)
5. エレン・G・ホワイト『食事と食物に関する勧告』サンライズミニストリー (2002)
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重金属汚染について――爪ミネラル検査の結果も公開します

2021-12-31 | フルータリアンのメモ
■ 前置き――史上最強の猛毒「ダイオキシン」

私は「ダイオキシン類関係公害防止管理者」という、少しマイナーな国家資格を保有しています。
塩素を含むプラスチックを焼却炉で燃やすとダイオキシンが発生することから、未然に公害を防止・管理する目的で設けられている国家資格です。
ダイオキシンの毒性は極めて強く、強い催奇形性・発癌性を有します。
「自然界に存在する最も毒性の強い物質のさらに 10 万倍の毒性を持つ」と評価され、「史上最強の猛毒」とも言われています。
そして、資格試験の教科書の途中にあっさりと書かれていて驚くようなことなのですが、是非とも知っていただきたい一節があります。

それは、
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日本人のダイオキシン類摂取量のうち約 7 割は魚介類から摂取されている

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という事実です。

また、ダイオキシンは脂肪に溶けやすいという性質があるため、肉類、乳製品、卵にも多く含まれる傾向があります。
逆に、水に対しては不溶性または難溶性であるため、穀物類や果物はダイオキシンをほとんど含みません。
人の体内に入った場合は、脂肪分の多い母乳などに高濃度に蓄積していくことになります。
自分が女性であれば、この事実を重く受け止めると思います。

また、魚介類はダイオキシン以外にも水銀、カドミウム、有機塩素系農薬、PCB、有機スズ化合物、有機臭素系化合物なども含まれ、まさに汚染物質の宝庫と言えます。
PCB や有機スズ化合物は、環境ホルモンとも呼ばれ、内分泌攪乱作用が疑われています。
これら有害物質は、大型魚になるほど濃度が高くなります。
小型魚がプランクトンを食べて、大型魚が小型魚を食べるという食物連鎖の過程で、汚染が濃縮されていくからです。
日本人が当たり前に食べているマグロ、サケ、カツオなどは大型魚に分類されることを改めて認識する必要があります。
食物連鎖の頂点に立つクジラは、メチル水銀の濃度が最も高く、規制値を大幅に上回ることが話題になることもあります。
クジラ漁は、食文化の違いや動物の命といった観点から議論されることが多いのですが、海外の人はその水銀濃度の高さにも注目していることを知っておくべきでしょう。

また、2011 年の原子力災害以降は、これに放射能汚染のリスクが加わります。
特に、放射性物質ストロンチウム90は魚の骨に溜まりやすく、半減期も約 29 年と長いことから、その危険性を指摘する声は多いです。
当時、海洋汚染に対する懸念から、寿司業界の市場規模もかなり縮小していくのではないかと予想した人もいましたが、10 年経ってみて、その予想は外れてしまいました。
回転寿司チェーン「スシロー」を展開する FOOD&LIFE COMPANIES は、2021 年 9 月期決算で過去最高益を叩き出し、業界第 2 位の「くら寿司」も 21 年 10 月期決算で国内売上高の過去最高を更新しています。

事故後、「ベジタリアンではないけど、魚と乳製品は控えている」という人に出会ったことがありますが、現実的で賢い選択であると感じました。
「何を食べるべきか」ということは「何を食べないべきか、何を減らすべきか」を賢く選択することでもあります。
私は、菜食主義者として魚介類を長年口にしていないので、自身の体内の汚染状況も気になるところです。
そこで、比較的手軽に実施できる検査として、有害ミネラル検査を実施してみることにしました。
ダイオキシンを測定することはできませんが、食品汚染の代表格である有害重金属をはじめ、数十種類の体内ミネラルの状態を知ることができます。

■ 爪ミネラル検査の結果公開

ら・べるびぃ予防医学研究所が実施しているミネラル検査を受けることにしました。
検査には、毛髪ミネラル検査と爪ミネラル検査の 2 種類があり、どちらでも似た傾向が出るとのことですが、今回は爪ミネラル検査を選びました。
自身の爪を採取して送付すると、2 週間ほどで検査結果が帰ってきます。

検査項目は、

必須ミネラル 12 種 (ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、リン、セレン、クロム、モリブデン、マンガン、鉄、銅、亜鉛)、
有害金属 5 種 (カドミウム、水銀、鉛、ヒ素、アルミニウム)、
準有害金属 3 種 (ストロンチウム、アンチモン、バリウム)、
参考ミネラル 3 種 (バナジウム、コバルト、ニッケル)、
その他金属 6 種 (ニオブ、バラジウム、ネオジム、タングステン、タリウム、プラチナ)

の全 29 項目です。

私の場合、有害金属系はすべて標準範囲内でしたが、必須ミネラルのセレンの値がかなり低く、「低値注意」と要注意項目になりました。
セレンというミネラルについて今まで意識することはなかったので、非常に良い機会になりました。

特に重要だと思われる有害金属 5 種 (カドミウム、水銀、鉛、ヒ素、アルミニウム) に焦点を当てて、もう少し詳しく振り返りたいと思います。
まずは私の検査結果ですが、以下のような結果でした↓



・カドミウムは、標準範囲 13.9 ppb 以下のところ、7.5 ppb で、「基準範囲」内でした。
(一般健常者の 84%が「基準範囲」、13.5%が「要注意」、2.5%が「注意」に収まります)
・水銀は、標準範囲 1413 ppb 以下のところ、7 ppb 以下で、定量下限値以下の測定値となり、「基準範囲」内。
(定量下限値以下の場合「以下」と表示されます)
・鉛は、標準範囲 425 ppb 以下のところ、127 ppb で、「基準範囲」内。
・ヒ素は、標準範囲 170.9 ppb 以下のところ、62.9 ppb で、「基準範囲」内。
・アルミニウムは、標準範囲 12690 ppb 以下のところ、7610 ppb で、「基準範囲」内。

次に、それぞれを個別に掘り下げていきたいと思います。

(1) 水銀――日本人の水銀蓄積量は欧米人の 2 ~ 6 倍

四大公害の一つ、水俣病の原因物質です。
神経系に障害を与える作用があり、重度の場合、知覚・運動・聴覚・触覚・視覚などに障害をきたすことになります。
自閉症や発達障害との関連性も指摘されています。

日本人の場合、水銀摂取の 8 割以上が魚介類経由となっています。
ワクチンの中にも防腐剤として水銀化合物が含まれています。
虫歯の充填剤として使用される歯科用アマルガムから、水銀が溶出してしまうことも摂取要因になっています。

日本人は魚介類の消費量が多いため、体内の水銀蓄積量は欧米人の 2 ~ 6 倍にもなります。
今回、私の検査値は定量下限値以下で、かなり低い値を出すことができましたが、水銀に関しては、やはり食事の選択が大きな影響を与えるようです。
わかりやすく言えば、魚介類を食べないこと、または、魚介類の消費をできるだけ減らすことです。

(2) ヒ素――米を危険視するスウェーデン

人体にとって猛毒であり、摂取量が少ないに越したことはありません。
体内に取り込まれると、酵素の働きを阻害したり、タンパク質の合成に障害を起こします。
その結果、頭痛、体重の減少、虚弱、甲状腺腫、筋肉萎縮、肝障害、心臓肥大などの慢性中毒症状につながる恐れがあります。    
発癌性が報告されており、IARC (国際癌研究所) の発癌性評価では最も高い「1」の「発癌性がある」に分類され、EPA (米国環境保護庁) の発癌性評価でも「A」の「人に対して発癌性の十分なデータがある」と、最高ランクに分類されています。

日本人は、無機ヒ素の 9 割を米とひじきから摂取しています。 (ヒ素には有機ヒ素と無機ヒ素があり、無機ヒ素の方が毒性が高い)
米は土壌のヒ素を吸収しやすいため、小麦や野菜などに比べて濃度は数十倍になります (参考:「食品に含まれるヒ素の実態調査」農林水産省 2014 年)。
米に含まれる無機ヒ素は、玄米の外側のぬかに多く含まれているため、玄米よりも白米の方がヒ素の濃度が低くなります。
また、ひじきのヒ素濃度も高く、イギリスの食品規格庁は 2004 年にヒジキの摂取を控えるように勧告したこともあります。
食品以外ではタバコの煙にも含まれています。

スウェーデンは、高濃度のヒ素摂取に対する懸念から米を危険視しており、「6 歳未満に米や米加工食品を与えてはいけない」と注意を喚起しています。
また、煎餅などの米菓子がアメリカに輸出された場合、「がん、先天異常、その他の生殖障害を引き起こす可能性があるヒ素が含まれております」といった警告がパッケージに表示されることになります。
米を主食とする日本人にとってはショッキングなことですが、米を主食としない海外の国は、米を冷静に見ています。

(3) カドミウム――日本人のカドミウム摂取の半分は米から

四大公害の一つ、イタイイタイ病の原因物質です。
過剰摂取すると腎機能障害を引き起こし、骨からカルシウムが失われて、骨が変形したり折れやすくなったりします。

カドミウムは、根本的には土壌や河川水の汚染に由来するため、あらゆる食品に含まれています。
日本人の場合、米の寄与率が 50%と最も高く、その次に寄与率が高いのが野菜・海藻類で 15%、その次が魚介類で 11%となっています (厚生化学研究 1981~2001 の平均)。

米の外側にある薄皮に多く含まれるため、玄米よりも白米の方が含有量が低くなります。
また、タバコの煙にも含まれています。

(4) 鉛――飲料水にも注意

鉛による急性中毒は古くから知られています。
鉛は中枢神経に対して有毒であり、たとえ低濃度でも、長時間曝された場合には、認知能力に障害を与え、精神遅滞や学習障害を引き起こすことが知られています。

鉛の主な摂取源は水道水です。また、タバコの煙にも含まれています。
水道管が鉛製の場合、水道管から鉛が溶け出して水に入っていきます。
昭和の頃に敷設された水道管は鉛製のものが大半であり、未だに多くの家庭で使われています。

ローフード食はそれだけで水分欲求が満たされやすいため、お茶やコーヒーの摂取が少なくなり、その分、鉛の摂取量が減少する可能性があります。
健康のために毎日水を 2 リットル飲んでいるという人もいますが、仮にその水に鉛が溶け込んでいる場合、高い検査値が出る可能性があります。
有害ミネラルを測るテスターも販売されているようなので、水道水やペットボトル水の濃度を計測してみるのも面白いかもしれません。

(5) アルミニウム――食品添加物にも含有

体内に蓄積した場合、認知障害、食欲不振、胃腸障害、神経疾患、骨障害等の症状が起きる可能性があります。
アルツハイマー病とのの関連性が長らく議論されてきましたが、現在はその因果関係を否定する声が大きくなっているようです。

最大の摂取源は食品であり、海藻、貝類、大豆、ごま類、葉菜類に多く含まれています。
ベーキングパウダーなどの膨張剤を使用した穀類加工品や菓子類からの摂取が最も多くなっています。
漬物に使われるミョウバンをはじめ、色止め剤、品質安定剤、着色料などの食品添加物にもアルミニウムが含まれています。

・総括

これら有害重金属は体内で自然に排泄されていくものですが、半減期 (体内に入ってからその量が半減するまでの期間) は、メチル水銀の場合、約 70 日、鉛では数年から 10 年、カドミウムでは数十年とされています。
私の場合、水銀の値だけ定量下限値以下でかなり低かったのですが、それは水銀の半減期が約 70 日と短いことも関係あるのかもしれません。
他の重金属については、摂取量を減らすことを意識しながら、気長にデトックスに取り組んでいく必要がありそうです。

魚、米、ヒジキなどは日本人の食卓には欠かせない食品ですが、重金属汚染という観点から見ると好ましい食品とは言えません。
日本人は、水銀の多くを魚介類から、ヒ素の大半を米とヒジキから、そしてカドミウムの半分は米から摂取しています。
その点、果物や野菜を主体にした食事は、重金属汚染を減らす上で、比較的望ましい結果をもたらすと考えます。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【参考文献】

1. 大森隆史『毛髪ミネラル検査のすすめ 見てわかる図解版デトックス健康法の決め手』コスモ21 (2005)
2. 大森隆史『「重金属」体内汚染の真実 ―ほんとうのデトックスのすすめ』東洋経済新報社 (2017)
3. 大森隆史、永本 玲英子『頭皮毒デトックス――地肌力がみるみる再生!』コスモトゥーワン (2014)
4. 陽 捷行 (著, 編集)『農と環境と健康に及ぼすカドミウムとヒ素の影響』 (北里大学農医連携学術叢書) 養賢堂 (2008)
5. カオ・ダイ レ (著), 尾崎 望 (翻訳)『ベトナム戦争におけるエージェントオレンジ―歴史と影響』文理閣 (2004)
6. David Hammond. Mercury Poisoning: The Undiagnosed Epidemic: How to detox. David Hammond (2014)
7. James Lilley. HEAVY METALS DETOX: The Easy Way to Detoxify - Detoxification Helps Protect Against Accelerated Aging, Sickness, Brain Fog, & Fatigue. Independently published (2019)
8. Harvey Diamond. Fit For Life: A New Beginning――The Ultimate Diet and Health Plan. Citadel (2021)

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葉物野菜は食べなくて大丈夫か――ベビーリーフでグリーンスムージー

2021-11-11 | フルータリアンの実践
■ フルータリアンの謎

ほとんどそのような機会はありませんが、フルータリアンが複数名集まった場合に議論になりそうな話題が「葉物野菜は食べなくて大丈夫か?」というものです。

これに関しては未だによくわからず謎のままです。

フルータリアンはベジタリアンの一種ですが、まったく野菜を食べないという人も多く、そのために菜食主義者の中でも特異な存在として見られることもあります。
果物率 100 パーセントのフルータリアンに実際にお会いしたことはありませんが、きっと素晴らしい健康状態にあるのだろうと想像します。
逆に、栄養のバランスを意識したり、その他さまざまな理由で、意識して野菜を食べているというフルータリアンもいます。

フルータリアンの定義を厳密に適用して「野菜を食べているならフルータリアンではない」という考え方もありますが、この記事では厳密な定義にはこだわらず、
純粋に健康上の観点から優劣を考えてみたいと思います。

他の類人猿たちはどうかというと、チンパンジーの場合、果物の割合が 50%で、野菜が 40%です。
ゴリラは体格が大きい割には野菜の割合が高く、野菜が 80%で果物が 20%。
オランウータンは、果物が 60%で野菜が 30%と、果物の割合が高いものの、環境条件に左右されることも多く、果物が少ない季節には野菜の割合が高くなります。

果物率が最も高いのはクモザル (Spider Monkey:スパイダーモンキー) で、果物率 100%との記述も見たことがありますが、90%以上とされていることが多いようです。
逆にホエザル (Howler Monkey:ハウラーモンキー) はほとんど野菜しか食べない葉食性の霊長類であり、葉の消化を助ける特殊な腸内細菌叢を保有しています。
果物率 90%以上のクモザルの方が、葉食性のホエザルよりも、脳が 2 倍大きいことから、果物食の優位性を主張するフルータリアンもいるようですが、
少し論理が飛躍しているようにも感じられます。

人間の世界でも、青汁だけを飲んで生きているような人もいて、そのような人の腸内細菌は、組成が草食動物に近くなっているといいます。
人間の消化システムは、腸内細菌を変化させながら、ある程度は食べ物の方に適合させていくことができるようです。

フルータリアン栄養学者のダグラス・グラハム博士は、フルーツを主食にしながら、カロリーベースで 2~6%を葉物野菜から摂取することを勧めています。
仮に一日の摂取カロリーが 2000 キロカロリーの場合、その内の 40~120 キロカロリーは葉物野菜から摂取するという計算になります。
野生の類人猿に比べるとかなり少なめと言えるでしょう。 

では私の場合はどうかというと、オランウータンと同じで果物が多いのですが、ベビーリーフをよく食べています。
なぜベビーリーフかというと、チンパンジーの真似をしているからです。

チンパンジーが葉を食べるとき、若くてやわらかい葉だけを選んで食べる傾向があり、特にマメ科の若葉が好物だと言われています。
やわらかい若葉は、消化の難しい硬い繊維分が少なく、アルカロイド類の毒物も少ないという特徴があります。
チンパンジーなどの類人猿は硬いセルロース繊維を消化することができず、アルカロイド類の解毒能力も限られていることから、
繊維も毒物も少ない若葉を本能的に選択していると考えられています。
果食動物に見られるこの嗜好性は、果食動物と草食動物の違いの一つなのかもしれません。
私は、チンパンジーは野菜選びにかけては人間より"目利き"なのではないかと思っています。
野菜であれば何でも調理して食べようとする人間とは違って、チンパンジーはやわらかい若葉を"よく選んで"食べています。

一言でベビーリーフ (幼葉) といっても、様々な種類があります。
代表的なものでは、水菜、ルッコラ、リーフレタス、レッドスピナッチ、マスタードリーフ、ケール、ピノグリーン、デトロイトなどです。
詰め合わせで売っていることが多いので、結果的に複数種類の幼葉から栄養を摂取することになります。

■ ベビーリーフの食べ方

ベビーリーフの具体的な食べ方を紹介します。

・ベビーリーフのサラダ

一つ目のメニューは、ベビーリーフのサラダです。
まず、お皿にベビーリーフを敷き詰めます↓


ベビーリーフは包丁でカットする必要がないので楽です。
次に、トマトをザク切りにして、お皿に入れます↓


ハーブ岩塩またはニンニク岩塩をかけて味付けしたら完成です (いわゆるドレッシングは使いません)。
トマトの代わりにキュウリやパプリカなど他のノンスイートフルーツもよく使います。
私的にはこれだけでも十分美味しいのですが、アボカドを加えるとさらにリッチなサラダになります↓


・ベビーリーフのグリーンスムージー

もう一つのメニューは、ベビーリーフのグリーンスムージーです。
一緒にミックスする果物はさまざまなバリエーションが考えられますが、一番手軽なのはバナナです↓


まずは、ベビーリーフと水を適量、ミキサーに入れてしっかり粉砕します。
その上に、バナナを加えて再度ミックスしたら完成です↓


すごいキレイな緑色のジュースになるので、最初作ったときは感動しました。
苦すぎず甘すぎない絶妙な美味しさが魅力です。
成長した大人の葉物野菜を使ったグリーンスムージーと比べると、苦みが少なめです。
ベビーリーフの値段が高いときは、柔らかそうな葉っぱのサニーレタスなどを選択することもあります。

■ ベビーリーフの栄養メリット

成長した野菜に比べると、ベビーリーフには以下のメリットがあります。

(1) 農薬の散布回数が少ない

病害虫の影響を受ける前の幼葉の段階で摘み取ってしまうため、農薬の散布回数が少なく、使われる化学肥料も最小限である。
無農薬・化学肥料無使用で売られているものも多い。

(2) シュウ酸の含有量が少ない

シュウ酸は、ホウレンソウなどのあく・えぐみの原因とされている成分であるが、ベビーリーフはシュウ酸の含有量が少ない。
シュウ酸は尿路結石を引き起こす可能性があるとされ、ホウレンソウの生食を勧めない医師も多い (下茹でするとシュウ酸が流れ出るため、下茹でが勧められることが多い)。

(3) これから成長してゆくための栄養素がぎっしり詰まっている

レタスと比較した場合、ベータカロテンは 10 倍以上、ビタミン C は約 7 倍、鉄は約 5 倍、カルシウムは約 6 倍、葉酸は約 4 倍、食物繊維は約 2 倍と、
ほとんどの栄養素において優れている。
この豊富な栄養価は、大人になるために必要な栄養素が凝縮されているからと説明することができる。

(4) 苦味成分のアルカロイドが少ない

苦味成分であるアルカロイド系毒素は、幼葉の段階では含有量が少ない。
この毒素は害虫などから身を守るためのもので、幼葉が成長するにつれて含有量が多くなる。

■ グリーンスムージーの理論

私はチンパンジーを真似てベビーリーフを重視しているわけですが、実はグリーンスムージーの考案者もチンパンジーを理想モデルにしています。
チンパンジーは遺伝子の 99.4%が人間と同じであり、生理的に人間にもっとも近い動物だからです。
グリーンスムージーを世に広めたのは、ローフード研究家のヴィクトリア・ブーテンコさんですが、彼女はチンパンジーの食生活を調べる中で、
自身のローフードメニューに圧倒的に足りない食材があることに気づきます。それが葉物野菜です。
まず、野生のチンパンジーの食事構成を以下に図式化してみたいと思います。比較のために、典型的なローフードの食事構成も並べてみます↓


左がチンパンジーの食事構成で、右が典型的なローフーディストの食事構成です。
チンパンジーの食事で注目すべき特徴は葉物野菜が圧倒的に多いということです。
それに比べてローフーディストの食事は、葉物野菜がかなり少なく、ナッツやドレッシングから油脂を取り過ぎているという問題があります。
この問題を解消するため、葉物野菜を美味しく大量に摂取する方法としてグリーンスムージーが考案されたのです。
当時ブーテンコさんは、典型的なローフーディストの食生活をしていましたが、グリーンスムージーを採り入れ、葉物野菜の摂取量を大幅に増やし、同時に油脂の消費を減らすことで、
自身の健康状態を大幅に改善することに成功したと主張しています。

ブーテンコさんは、葉物野菜のことを一言で「グリーン」と表現していますが、一般に「野菜」と称されている食品はもっと細かく分類すべきだと言っています。
つまり、「葉物野菜」と「それ以外」です。
「それ以外」ももう少し細かく分類して、
にんじん、たまねぎ、じゃがいもなどの根菜類、
トマト、ナス、パプリカなどのノンスイートフルーツ、
キャベツ、カリフラワー、ブロッコリーなどのアブラナ科野菜、
に分けることができます。

私たちが「野菜を食べる」と言ったとき、にんじん・たまねぎ・じゃがいもなどの根菜類の割合が多いものです。
しかしチンパンジーは通常、にんじんやじゃがいもなどの根菜類は食べず、飢餓状態など特別な場合にだけ食べると言われています。
野菜をしっかり食べているという意識が高い人でも、よく調べてみるとグリーンの摂取量が少ないことが多いものです。
グリーンを単独で食べると苦すぎて食が進まず、大量に摂取することが難しいのですが、果物と混ぜ合わせてグリーンスムージーにすることで、美味しく大量にグリーンを摂取することができます。

■ 南米のパラドックス――グリーンに対する本能

栄養学上の「南米のパラドックス」とも呼べる興味深い現象があります。
南米人は肉料理中心の食生活をしており、牛肉の年間消費量が米国人よりも約 1.5 倍多い (日本人の約 7 倍) のにも関わらず、なぜか米国人よりも肥満率が低く、生活習慣病も少ないというものです。
しかも、南米人の主食はパンやイモ類、とうもろこしなどで、野菜類はほとんど摂取していません。

このパラドックスに対する答えとして、南米人はマテ茶を大量に飲んで野菜の成分を補っているからではないかと考えられています。
マテ茶は現地で「飲むサラダ」と呼ばれ長く愛飲されてきたもので、不足しがちな野菜の栄養素を補ってきたと言われています。
実際、野菜に匹敵するほどの優れたポリフェノール・フラボノイド類・ビタミン・ミネラル・食物繊維が含まれていることも明らかになっています。
一見、極度に偏った南米人の食生活ですが、マテ茶からグリーンの成分を摂取してバランスをとっており、そこには確かに「グリーンに対する本能」のようなものがあります。

南米人がマテ茶を飲むとき、ボンビージャと呼ばれるフィルター付の金属ストローを使います。こんな感じです↓


金属ストローの先っぽに小さな穴が空いていて、そこで茶葉を漉して飲みます。
緑茶よりもさらにグリーンの風味が強い感じです。
ボンビージャを使った方がグリーンの成分をしっかり吸収できる感じがしますが、掃除が少し面倒なので、普通の茶漉しを使ってもよいでしょう。

マテ茶が素晴らしいのは、カフェインなどのアルカロイド系の成分が少なく、体への負担が少ないことです。
多めに飲んでも、気持ち悪くなりません。
フルータリアンはそもそもお茶を飲まないという人も多いのですが、オフィスワーカーなどで仕事中に飲み物を携帯しておきたいという人もいるでしょう。
マテ茶を採り入れてグリーンの摂取を意識してみるのもいいかもしれません。

■ 動物園も試行錯誤

ここ数年、一部の動物園で、類人猿に与える食事に関して実験的な取り組みが行われています。
動物園では、チンパンジーなどの類人猿に生の果物と野菜を与えていますが、果物の割合を減らして、その分野菜の量を増やそうとしているようです (例えば、多摩動物公園)。
これは世界的な傾向で、動物栄養学の研究が進んでいる欧州の取り組みが起点となっています。
本来の自然状態に近付けるべく野菜の量を増やそうという試みですが、チンパンジーたちの健康状態は改善し、以前よりも風邪をひきにくく、毛艶も良くなり、下痢気味だった便も改善されたといいます。

動物園は"実地"の栄養学のエキスパートだと思います。
人間と遺伝子を 99.4 パーセント共有するチンパンジーの食生活と健康状態から学べる点も多いはずです。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【参考文献】

1. Victoria Boutenko. Green for Life: The Updated Classic on Green Smoothie Nutrition. North Atlantic Books (2011)
2. Dr Douglas Graham. The 80/10/10 Diet: Balancing Your Health, Your Weight, and Your Life, One Luscious Bite at a Time. Foodnsport Pr (2006)
3. T. C. Fry. The Great Fruitarian Debate!: Between Dr. T. C. Fry and Dr. Ralph Cinque (2018) [キンドル版], 検索元 amazon.com
4. 日本マテ茶協会「マテ茶について」http://www.matecha-kyokai.jp/study.html (2021年11月4日)
5. 西田利貞「ドクトル西田のサル学ノート<第 2 回>」https://www.nichirei.co.jp/koras/category/sarugaku/002.html (2021年11月4日)
6. 東京ズーネット「しっかり食べてすこやかに──チンパンジーたちの食事情」https://www.tokyo-zoo.net/topic/topics_detail?kind=news&inst=tama&link_num=26111 (2021年11月10日)
7. 東京ズーネット「バナナ給餌をやめました──チンパンジーたちの食事情・続編」https://www.tokyo-zoo.net/topic/topics_detail?kind=news&inst=tama&link_num=26616 (2021年11月10日)
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一番のオススメ「パイナップル生ジュースダイエット」

2021-07-30 | フルータリアンの実践
■ ミキサー導入のすすめ

同じフルータリアンでも、ミキサーを"使う派"と"使わない派"がいるわけですが、初心者の段階ではミキサーを使った生ジュースづくりも試してほしいと思います。
特に、タンパク質分解酵素が多く含まれているパイナップルやメロンなどの果物は、ミキサーでジュースにするのがオススメです。
これらの果物を固形のまま食べると酵素の影響で口が荒れやすいという人が多いのですが、ジュースにすることで口を荒らさずに美味しくいただくことができます。

ローフードスタイルの食生活を長く続けている人ほど、うまくミキサーを採り入れていることが多いようです。
生ジュースメニューを上手に食生活に採り入れることで、結果的にローフード率(食事に占める生食の割合)も高くなり、
優れた健康状態を維持することができます。
私自身、今でも謎なのですが、「固形の果物はそんなに食べたくないが生ジュースだったら飲みたい」というテンションになるときがあります。
そんなテンションのときにこそ、ミキサーを用意してジュースづくりを楽しめばよいのです。
生ジュースを採り入れることで、手持ちの選択肢を増やすことができ、バリエーションを豊かにすることができます。

ジューサーに関しては、必須ではないと考えています。
私も一時期「イキイキ酵素くん」というそれなりに高価なジューサーを購入し、さまざまなジュースを試していたことがあります。
しかし、掃除が面倒なことと、食費がかかりすぎるという問題があって、結局使わなくなってしまいました。
人参ジュース、リンゴジュース、セロリジュースなどジューサーでしか作れないメニューもあるので、
食費が気にならず、これらのメニューも採り入れてみたいという方は、購入を検討してみてもよいでしょう。
特に、リンゴとセロリのミックスジュースは、美味しくて感動した記憶があります。

■ パイナップル生ジュースダイエットの実践

バナナダイエット、キウイダイエット、トマトダイエットなど、さまざまな果物ダイエットが流行を繰り返しています。
フルータリアンであれば、分け隔て無くこれらの食品を楽しめばよいのですが、
もし私が「~式ダイエット」を提案するとしたら、「パイナップル生ジュースダイエット」を提案します。
パイナップル生ジュースは、私が内部被曝対策としてこの 10 年間日常的に実践してきたメニューです。
便秘解消効果とデトックス効果が高く、無理のないダイエットができます。


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☆ パイナップル生ジュースの作り方

手順 1.パイナップルの皮の部分をナイフで切り落とし、実をブロック状にカットします。

手順 2.切り落とした皮の部分を、二つに折り曲げて果汁を搾ります。
(これをやった方が水分が多くなり、出来上がりが滑らかになります)

手順 3.パイナップルの実を入れてミキサーでミックスします。混ざりにくい場合は、長箸や料理用ヘラなどで移動させます。
(私は芯の部分もミックスしていますが、好みに応じて取り除いてもよいでしょう)
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一度ジュースにしたあとは酸化するのが早いので、できるだけ時間を空けずに飲みます。
ジュースバーなどでジュースを作り置きにしているのを見かけることがありますが、酸化という観点からはあまりよくありません。

ルールは簡単で、3 食のうち 1 食をパイナップル生ジュースに置き換えるというもの。
このダイエットは、食事制限ではないので、満足感が得られるまでしっかりと摂取します。
パイナップル大サイズ 1 玉から、約 800 ml のジュースを作ることができます。
中サイズ 1 玉であれば、約 600 ml、小サイズ 1 玉であれば、約 400 mlが目安になります。
実践している内に自身の適量がわかるようになります。
私の場合、大サイズ 1 玉または小サイズ 2 玉が適量で、約 800 ml のパイナップルジュースを一回の食事で摂取します。
かなりのボリュームに驚く人もいるかもしれませんが、穀物や大豆を食べないわけですから、
エネルギーを満たすためにも当然このくらいの量は必要になってきます (それでも低カロリーですが)。


■ パイナップルの 5 つのメリット

☆ メリット 1.残留農薬汚染が少ない

アメリカの環境保護 NPO 機関 EWG (The Environmental Working Group) は、
残留農薬が比較的少ない農産物のランキング「Clean 15」を毎年発表していますが、
パイナップルは、2021 年度のランキングで第 3 位に選ばれています。

・Clean 15 (2021 年度版)

1 位:アボカド
2 位:スイートコーン
3 位:パイナップル
4 位:タマネギ
5 位:パパイヤ
6 位:グリーンピース
7 位:ナス
8 位:アスパラガス
9 位:ブロッコリ
10 位:キャベツ
11 位:キウイ
12 位:カリフラワー
13 位:マッシュルーム
14 位:ハネデューメロン
15 位:カンタロープメロン

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☆ メリット 2.パイナップルは天然の胃腸薬

パイナップルには強力なタンパク質分解酵素が含まれています。
この酵素により、腸内の毒素や未消化物が分解され、腸内をキレイな状態に保つことができます。

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☆ メリット 3.タンパク質分解酵素「ブロメライン」による抗がん効果 (抗腫瘍効果)

パイナップルに含まれるタンパク質分解酵素「ブロメライン」は、唯一パイナップルにだけ含まれている食物酵素で、今もっとも注目されている酵素の一つです。
ブロメライン酵素には以下の作用があります。

・心血管系の改善
・骨関節炎の緩和
・免疫原性の改善
・血液凝固能の改善
・抗がん効果 (抗腫瘍効果)

中でも、全ての人に関係があってもっとも重要なのが、抗がん効果 (抗腫瘍効果) でしょう。
健康な人の体の中でも毎日 5000 個ものがん細胞が発生しているからです。
ブロメライン酵素は、生体内試験・生体外試験の両方において、以下の抗がん効果が認められています。

・免疫系の抗がん活性を高める
・腫瘍の転移を抑制する
・腫瘍の増殖・浸潤の可能性を減少させる

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☆ メリット 4.コストパフォーマンスが良い

パイナップルは一年中手に入る上に、食費はそこまで高くありません。
パイナップル大サイズ 1 玉から、約 800 ml のジュースを作ることができ、意外とボリュームがあります。

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☆ メリット 5.砂糖入りの菓子類や清涼飲料水に対する欲求がなくなる

パイナップルの自然な甘味に慣れてくると、砂糖を使った人工的な甘味に違和感を感じるようになります。
結果、砂糖や油脂類を使った加工食品の消費を減らすことにつながり、更なるダイエット効果と健康増進が期待できます。


■ おすすめバリエーション

(1) パイナップルとレモンのミックスジュース

フルータリアンになると、意外とレモンの使い道がわからないという人もいるかもしれませんが、
ジュースのアクセントに使うのはいいアイデアだと思います。
パイナップルとレモンのミックスジュースは私が最も好きなジュースの一つです↓



手順 1.果汁絞り器でレモン汁を搾ります。
手順 2.レモン汁とパイナップルをミキサーにかけてミックスすれば完成!

レモンの代わりに、ライムやすだちなど他の柑橘類を試してみるのも面白いかもしれません。

(2) 台湾パイナップル

最近よく見かけるようになった台湾産パイナップル。
値段は高くなりますが、たまに楽しむ分には良いでしょう。
芯の部分も水分が多くて食べやすいので、芯もミキサーにかけます。
少しアップル風味が強めで、リッチな生ジュースが楽しめます。
こんな感じで赤っぽくなります↓


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【参考文献】

1. Lisa Rigas. The Pineapple RX: Discover The Detox Power Of This Tropical Fruit And 21 Ways it Can Supercharge Your Health.
High Performance Marketing Solutions LLC (2014)
2. Pearl Robinson. PINEAPPLE? Let Me Explain: Everything you need to know, health benefits, remedies, recipes and more.
Global Heaven (2017)
3. Om Krishna Uprety. Pineapple Miracle. (2017)
4. RAJENDRA PAVAN. The Life with Bromelain: Properties and Therapeutic Application of Bromelain: A Review (2019)
5. Raffy Karamanoukian MD & Hratch Karamanoukian MD. Dr Karamanoukian's Guide to Bromelain - One of Nature's Best Enzymes (2011)
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