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メイサと7人の外国人たち

アラサー元お水とキャラの濃い外国人達の冒険記

友達がいるから

2018-09-13 23:17:45 | 
『聞いて、聞いて聞いてお願い聞いて〜涙』




私のポストにすぐに既読マークがついた。
どうかしましたか、とヒロちゃんからコメントが届いた。




『仁さんって覚えてる?』

『(みずき)覚えてるよ!連絡こなくなった人だよね?』

『そう!もう悩んでるのも嫌だから昨夜連絡したのよ』

『(ヒロちゃん)どうでしたか?』




私はメソメソと携帯画面を連打した。
内容はこうだ。
翌日の昼に仁から返信が来た。
『こんにちは、寝てた。』に始まり『メイサ元気?』で〆る二文だった。
その後二言ほど他愛もない話をした後、『もうご飯食べた?』の私のメッセージの後に彼はまた消えた。




『でもね、でもね』



グスグスと、けれど整理しながら私は連打し続けた。



『他の子には返信してるみたいなの。
もう怒ってなさそうに見える私のことは無視して他の子には返信するって…。
でも結局さ。
その他の子の事がどうだか知らないし知る方法もないけど、
正直彼が来るの楽しみにしてたし、この1週間私なりに消化しようとしてたけど、
彼も何か私のこと考えてたなら返事続けるんじゃないかなと思うんだ。
どんな事でもさ。』



『気にしてたなら、やっと連絡ついた(いやお前が連絡しなかったんだろと思いつつ)メイサさんに返事するよね。
なんか、そう思ったらすごく残念な気持ちになっちゃった』



『だから、返事はしたけどそれは優男的な?
なんか普通の人間としてって言うか…わかんないけど。
これからどうしたらいいんだろ』




すぐにみずきが泣いてるスタンプを送ってくれた。



『これはショック受けるよ…自分の所にはこないけど別の人とやりとりしてたら。
一緒に飲み明かしたい。』



すぐにヒロちゃんのメッセージも上がって来た。



『そんな悲しい出来事が…。
この頃、私が瞬間移動できたらいいのにと思っています。
今すぐメイサちゃんに所まで飛んでいくのに。
みずきちゃんも連れて』

『ホント私もその能力あればって思う〜!!』




二人はいわゆるキラキラしたぶりっ子な女子ではない。
だから、こんな友達思いなこと言っちゃってる私っ♡とは思ってないだろう。
そんな2人だから、大好きだった。
笑顔になれた。




『2人ともありがとう。2人のおかげで弱音を吐く事が出来たよ。
ま、なんかもうこれで見切りがつけられるわ。
なんか今、くだらない時間を過ごしてたなーと思ったよ。
これ以上考えるの悔しいからやめるよ!』




こういう時は美味しいものでもパーッと食べて飲みに行きたいね!と
飲兵衛のヒロちゃんが明るいスタンプを送ってくれた。
良い友達を持ったと思った。




こうして再連絡も不発に終わり、私と仁のことはよくわからないまま終わった。
もう考えないと宣言したものの、当然自発的に浮かんで来てしまうもので。
その後、咲人と毎日話すようになってもそれは変わらなかった。
ただ自分を嫌いにはなりたくなかったので、流石に彼とこれ以上どうにかしようとは思えなかった。
だってこんなはアホに固執するのは時間の無駄じゃないか。
なので、アホなロマンスの余韻がまだ残っていても、少なくとも考えないように努力したし
彼のプロフィールを見るのはもうやめた。



「何か悲しい事があった時はどうするの?」




後に、咲人にそう聞かれた時、真っ先にこの出来事が頭に浮かんだ。
悲しい時、私には助けてくれる人がいる。
そう思うと少しだけ強くなれた。
彼女たちは間違いなく私の親友だ。
他にも黒歴史、知ってるしね。へへ。



仁とのことがよくわからないけど形式上終わり



梓とはその後何通かメールだけして



そして、咲人と毎晩の長電話を始め




少しずつ彼に惹かれていっていた。




ある朝




私はあることに気づいた。






続きます。








最低の女

2018-09-11 21:52:05 | 
真夜中のタクシーで家路を急ぐのは懐かしい。
お水の頃はよくそうして帰ったものだ。
ふと薄目を開けると、窓には光るビルがいくつか映っていた。
東京のど真ん中よりは暗い街だ。

眠いけど眠れそうにない。
梓にしてしまったこと、自分の気持ち、っていうか要するに自分自身にガッカリだ。
ガッカリなんてリズミカルな単語で済ませられる気持ちじゃない。
絶望感だ。




梓が私に触れた時って言ってもロングシャツにズボンじゃ首と腹くらいしか触れなかったけど。
もっと正確に言うと、抱き締めて首にキスした時。
私は「これは仁さんにしてもらいたかったのに」と思ったのだ。
どうでもいい男相手ならよかったのかもしれないが、そんな気持ちのまま梓を受け入れてはいけないと思った。
私は本当に梓が大好きだった。


頭が痛いのは梅酒のせいか精神的なものか。
いや、日本酒をガンガン空けていた私があんなもんで酔っ払うわけがない。


ずっと良くしてくれてきた梓に悪いことをしたというのに
会ったこともない不誠実な仁さんで心がいっぱいだなんて
そんな自分には絶望しかない。
ああ、ごめん梓。
私は本当にバカモンだ。





部屋についた頃、梓からメールが届いた。





『無事に着いた?
今日は会えてよかったよ :) 楽しかった。
でも眠かったね(笑)おやすみ』




帰ったことは、伝えなきゃ……




『今着いたよ。ありがとう。
私もすごく楽しかった!おやすみなさい』




化粧も落とさず適当に服を脱ぎ捨ててベッドに倒れこんだ。
マジで眠い。
頭も心も体もぜーんぶグチャグチャのクタクタだ。
ポイと投げ捨てた携帯の光が暗い部屋で目立つ。
手繰り寄せるようにそれを掴んで、例のアプリを開いた。




仁さん……




彼のプロフィールを開くと、彼がいつオンラインだったかわかる。
2〜3時間前に彼もこのアプリを使っていたらしい。





どうしてこの人を忘れられないんだろう。
どうしてこんな辛い思いしなきゃいけないんだろう。
あっという間にレビューが増えた私には、今や話し相手が20人はいる。
それなのに毎日この人のことが気になってしまう。
どうしたら忘れられるんだろう。
どうして彼は連絡してこないんだろう……。





ポチ……




ポチポチポチポチ……





送信ボタンを押したのと、眠りに入るのと、どちらが先だったかわからない。





『こんばんは、仁さん。元気?(╹◡╹)』





翌日、彼から返信が来た。






続きます。

好きな男の腕の中でも違う男の夢を見る

2018-09-10 20:00:03 | 
腕の力を強めるのと一緒に、梓は私のうなじにキスをした。
ステップ一つ一つの間に、長い間があった。


梓、今キスしたよな………


眠気と戦いながら私は考えた。
そして彼との過去の会話を思い出した。




「私、男友達がいないの」




初めて梓に会った時、私は彼にそう告白した。
まだこの街に不慣れだった私を連れて行ってくれたのは、小さな、でも居心地の良いカフェだった。
賑わう地上ではなく、誰もいない地下の席で話していた。
大きなテーブルを挟んで、私と梓は初対面なのに弾む会話を楽しんでいた。
沢山の共通項。ユーモア。真面目な話からくだらないジョークまで、笑顔に溢れた時間だった。
全然タイプじゃないな、と思ったけど、すっごく楽しいなと思った。
だけど、男の人は彼氏か他人、それかお客しか選択肢がなかった私にとって
彼はニュータイプだった。
私の告白に、梓は興味深そうな表情を見せた。



「ずっと男の子と話す機会があんまりなかったのもあるし、まぁでもそれは関係ないと思うの。
バイト先とか紹介とか友達作る機会なんていくらでもあったと思う。
でも私にとって男の人は、彼氏か他人しかいないんだ」


残念でも何でもない事実を話すと、彼はそっかぁ面白いねと笑った。
その夜、彼はすぐに「すごく楽しかった!また来週会える?」とメールをくれた。
スケジュールが理由でそれは難しかった。
でも、彼はその日から毎日連絡をくれた。
頻繁に、いつ会えるか質問してきた。



私は、多分彼が友達以上の何かを求めているんじゃないかと思った。




「突然ゴメン!もし時間があったら助けてくれない?」



ある晩、私は彼に連絡した。
翌日に英語のスピーキングテストを受けることになったのだ。
私の都合なんか御構い無しで、会社が決めたものだった。
そこそこ大切なテストだったので、テストの前に誰かと会話の練習をしたかった。


梓はすぐに返信をくれて、翌朝会うのは無理だけど電話はできると言った。
始業前に駅から歩く道すがら、私と電話で話せると提案した。
ありがたすぎるその提案にプリーズ!!と返信し、翌朝ドキドキと電話を握りしめて待っていた。



「そろそろ行かなきゃ」



梓がそう言うまで、私はたっぷり話す練習をさせてもらった。
ふと時間を見ると、45分も話していた。



「うん。今日は本当にありがとう!」

「いいよいいよ。テスト頑張ってね。自信持って」



梓は明るくそう言ったけど、鼻をすするのが聞こえた。



この時


季節は真冬で


外はものすごく寒くて


最寄駅から会社まで45分も歩くはずがなくて…





私は




梓が、私のために45分も寒空の下にいてくれたんだと




わかった。





「What are you doing?」



私の質問に、梓はI don’t know と答えた。
すっとぼけているだけだけど、怒る気にはならない。
梓は時々寝息を立てていて、寝てるのか襲ってるのかどっちとも言えなかった。




「メイサは、男友達はいないんだもんね。彼氏か他人って言ってたよね」



何度目かのランチで、彼はそう言った。
いつ会っても、何度会っても、梓と話すのは楽しかった。
梓は賢い。
梓はユーモラスだ。
梓はスマートだ。
梓はとても温厚で大人だった。



でも、どうしても恋愛対象には思えなかった。
多分、見た目の問題だった。
彼は不細工でもないし、背も高い。
でも、色々なところがタイプじゃなかった。
梓のことが大好きだったけど、梓に抱かれる自分が想像できなかった。


私は言わなきゃいけないと思った。
笑顔を見せた。




「そう!梓は女友達が沢山いるんでしょう?」

「沢山じゃないけど、女子も男子も普通にいるよ」

「そうだよね。それに梓の趣味はちょっとフェミニンだし、可愛いものも好きだよね」



ははは、そうだねと梓は笑った。
私は続けた。



「だから梓とは一緒に居られるんだと思う!
梓は半分女の子みたいだから、友達で居られるんだと思う」



一瞬彼の目が開いたのを感じた。
なるほどね、と彼は相槌を打った。
楽しかったね、いつも通り沢山笑ったね、と
コートを着ながら私がそう言った時、梓はそうだねと笑わずに答えて



「俺はメイサのファンだからね」



と言った。






「……寝てた」



私がつぶやくと、梓は俺も、と言った。
2人とも本当に眠くて、本当に寝てしまっていた。
私がモゾモゾと体勢を整えていると、梓は私の肩のあたりに顔を埋めた。
そして、また私の手に触れ、両手で包み込んだ。



「どうしてこんなに手が小さいの」



足も、と続けた。



「すごく可愛い」



私は黙っていた。




「本当に帰るの?」

「……帰らなきゃ」

「俺は」




お願い


何も言わないで





「メイサがこのままここにいればいいのにって思ってる」





私がただ黙っているのは眠いからだと思ったのか、それとも照れていると思ったのか。
梓が考えていたことは私にはわからない。


梓の腕は私を離しそうになかった。
頭を肩にうずめたまま、彼はまたキスをした。
くすぐったかったので体をよじると、逆効果みたいだった。






私はこのまま梓の友達じゃなくなるのかな

梓のことが大好きだから

友達じゃなくなるのがイヤだけど

でも………












梓が私の体に触れた瞬間



パッと



光る液晶の中の笑顔が浮かんだ









「メイサさんのこと、大好きだよ」








仁さん








私はシャツのボタンに手をかけていた梓を強く抱きしめた。
彼が動きを止めるくらい、強く。





「梓」





彼は静止したままだ。





「私、帰らなきゃ」





長い間のあと、梓はOKと言った。
私のカーディガンのボタンは全部外れていた。
あれ?という顔をする私に、ごめん、と彼は謝った。




「大丈夫よ」

「メイサ、車呼ぶ?電車で帰るの好きじゃないだろ」




彼の呼んだタクシーに乗り、手を振り、目を閉じて。





私は






絶望感でいっぱいだった。









続きます。

抱きしめて

2018-09-09 15:16:09 | 
さて、話は2週間前にさかのぼる。
咲人とは一度しか話したことがなかった頃のことだ。



毎日仁さんのことが頭に浮かび、正直に言うと、結構堪えていた。
思い出してみれば、彼のどこがそんなに好きだったのか良くわからない。
というより、彼のことをまだそんなに知らなかった。


背が高いとか(それは好み)

顔がキレイそうとか(でもしゃくれてる←)

理系だとか

頭の回転がいいとか

勉強家だとか

明るいとか………



良いところは挙げられると思うんだけど
私はこんなにも表面的なことで人を好きになれるんだったっけ。
ルックスはとても大切だけど、それでもなお一番大切じゃない。(そもそもしゃくれてるじゃん)
私が本格的に人を好きになるには、性格の相性がすごく必要だった。



だから、彼なんかに固執してもしょうがないと思った。
みんなにソイツ良くないと言われた。
私もそう思っていた。
けど、彼に惹かれた気持ちや過ごした時間の笑顔は本当だったから、
理由もわからずこんな状態になっていることが辛かった。



人生ってのは、悲しい時に悲しいことが重なるものだ。
ふとしたことから、ものすごーく残念なトラブルに巻き込まれてしまった。
怒りに任せてその場を立ち去り、大通りを早足に歩きながら泣きそうになった。


うぅ、ここで泣く意味って何なんだろ。
こんな異国まで来てメソメソするなんてアホらしいのに。



グスンと足を止め、私は携帯を取り出した。
こんな時に連絡できるのはコイツしかいない。
ポチポチポチポチ




『梓!!今どこ?何してる?』



流石に秒速では返信はなかったが、一時間後にどうしたの?と返事が来た。



『急にごめん!何してるの?』

『俺は仲間と会ってたよ。軽く食事してた。
メイサは今どこにいるの?仕事は?』

『私はこのあたり』

『もしかして会いたかった?だったら今からなら空いてるけど』



梓はいつも優しかった。
私がこんなに急に連絡しても、それが意味不明でも、マイルドに対応してくれた。
私は日本語で即答した。



『あいたい!』



ハハハ、と笑っている顔文字付きで返ってきた。



『バーか何か行く?それともウチくる?』



梓の家には一度行ったことがある。
その時、私は相当気をつけてシャツにワイドパンツという色気ゼロの格好で向かった。
私の心配は無駄で梓は指一本触れてこず、美味しい母国料理を振舞ってくれた。(恥ずかしい)
その日もハーフパンツではあるものの、分厚い黒タイツにチェックのロングシャツと誘惑めいていなかった。



『どっちでもいい!』

『はは、分かった。じゃうちの最寄駅まで来て。迎えに行くよ』



ポチポチポチポチ



『わかった!梓、メイサはしょっぱいものが食べたい!』



と日本語で書くと、また爆笑している顔文字付きでOKと返信が来た。
梓の家に上がりこむと、私はゴメンね突然!と謝った。



「大丈夫。どうかしたの?何か飲む?」



梓は手慣れた手つきでワインをいれてくれた。
彼の部屋はとてもクリーンで、快適だ。
早くに親元を離れ、学費も生活費も自分でどうにかして来た彼はすごく自立している。
大変な思いをした人は人生の酸っぱさを知っているから優しかったりする。
でも、リアリストで、厳しい。
梓が私とのランチを奢ってくれたことは一度もない。
友達なんだから当たり前だけど、男の子は何でもないのに見栄を張る生き物だ。



「で、しょっぱいもの」



と言ってスナックを開けた。
私は苦笑した。



「ごめん、突然押しかけるわしょっぱいものが食べたいって言いよるわ…」

「ははは、面白かったよ。笑ったわ」

「 あ、そうそう。これあるわよ」



と、私はカバンから星型のタッパーを取り出した。
勢いよく開けて中を見せると、梓はラズベリー?と目を丸くした。



「何それ?ラズベリーケースなの?」

「そうよ」

「へぇ、甘いもの持ってるくせにしょっぱいもの食べたいって言ったの?」

「甘いもの持ってるからしょっぱいもの用意しろって言ったんじゃない」



エラそうにそう答えると、梓はまた笑った。
ラズベリーとワインをつまみながら、何があったのかと聞かれたけど、
私はただちょっとトラブル!でも大丈夫!とだけ答えた。
梓はそれ以上聞かなかった。




「たまに疲れる時もあるけど、大丈夫よ。私は強いから」

「そう?」

「私、ポジティブでしょ」

「そうだね。メイサはポジティブ。いいと思う」

「そ。まーこんな見た目してるから結構軽視されることあるんだよね、女だし。
そういう奴には必要以上に強めに対応してやってるんだけど」

「メイサ怒ると激しいよね」

「しょーがないじゃん。多少やり過ぎくらいでちょうど見た目とバランス取れるのよ」



童顔の男の子がヒゲを伸ばすみたいに
優しそう、大人しそう、と踏んで接してくる奴らには鉄拳を食らわすことがあった。
この温和そうかつ超女子な見た目、どーにかなんないかな。

梓は言った。



「でも…そうしてたらメイサは辛くない?ずっと強いふりしてたらさ」



いい案だね、とでも言われるかと思っていたので、ちょっと意外だった。
けれど、私のことを気にしてくれてるのがわかった。




「んー、大丈夫。ありがとう」

「そっか、ならいいんだけどさ。こっちで飲まない?」



と、梓はソファを指した。
ワインの後に梅酒にも手を出して、夜中なのも手伝って、眠かった。
ソファで私たちは色んな話をした。
将来のこと、過去のこと、恋愛のこと……



「私は見た目で言えばアジア人の方が好みかな。まぁ差別も抵抗もないけど、単純に黒髪が好きだから」

「あー、わかる。俺も黒人の子とか可愛いなって思うけどアジア人の方が多分好き」

「まぁ私は背が高い人が好きだから、欧米人の方が当たりやすいんだけどね」

「メイサ背どれくらい?」

「ここじゃ小さめだけど日本じゃ大きい方だよ」

「うん、日本に行った時もっと皆小さかったよ。
おばあちゃん達なんか俺の2/3くらいしかないイメージだった」

「ははは(笑)梓は背高いもんね」

「180くらいだから、まぁもっと背が高い人たくさんいるけど」



梓は自分の手を開いてみせた。



「俺は手と足がデカイんだよね」

「え?あっ確かに。足デカ!」

「そう(笑)靴がないんだよ〜」

「大変そうだねー。私は手小さいからなぁ」




と、私が手を見せると、梓は自分の手を重ねて小さ!とビックリした。



「日本人の中でも小さいからね…」

「可愛いと思う」




へ?



私は聞こえなかったふりをした。


「不便だよー。球技とか不利だし(笑)」

梓は笑っただけだった。
私が欠伸すると、梓はマットレスを引き出してソファベッドを作ってくれた。
ありがと〜と半ば寝ぼけながら横になると、彼も隣に横になった。



ふと



彼の腕が私を後ろから抱きしめていることに気がついた。



あれ?



「梓…」

「ん?」

「終電って何時だっけ?」

「今日は一晩中あるよ」

「そっか」

「帰るの?」

「うーん、もうちょっとしたら。明日仕事あるし」




梓は、何時から?どこで?と珍しくたくさん質問して来た。
いつも聞き分けが良いというか、すぐにわかったと言うのに。




不意に




梓の腕に力がこもった。





続きます。

意地悪なモンスター

2018-09-07 20:18:56 | 咲人
「私、あなたに質問があるんだけど。。。」

「どうぞ」

「その……今日私たち、あまり良くない会話をしたじゃない?」

「……ああ」




咲人の声がちょっと、優しくなったのを感じた。




「正直、私はこれからも、あなたと話したいと思ってるけど……」

「うん?」

「心配しているの…その、あなたは、もう私に連絡してこないんじゃないかって…」



Waitと 咲人が割り込んだ。



「メイサは、俺にもう連絡するなって言ってるの?」

「いや、違う。そうじゃないんだけど」

「ごめん俺よくわかってない」

「そ、そうよね。ごめんごめん、えーと」



実は、このとき私の使った表現が少しややこしかった。
私は「あなたが連絡してこないことを恐れている」と表現したかったのだが、
彼には「あなたは私に連絡してこないはずだ」と伝わってしまったのだ。
彼がそう取り得る表現なのはわかるので、自分のせいだとすぐに気がついた。
私は、えーとえーとと違う表現を探したり説明し直したりしたが、どうもうまく伝わらないようで、
咲人はひたすら悩みながらOKを繰り返していた。(OKじゃないやん)



「えっと……わかってないよね?」

「うーん。正直に言うと、うん、わかってない」

「わかった」




ふぅ、と私はため息をついて、仕切り直した。





「咲人、あなたが好きよ」





咲人はワンテンポ遅れてOKと言った。
さっきまでのOKと違う声色だった。




「だから、私はこれからもあなたと話したい」

「うん」

「でも、あまり楽しくない会話をしてしまったから…」

「うん」

「あなたはこれからも私と話したい?私は……あなたを失いたくないのよ」




全部言い終わると、私は一仕事終えたような気持ちだった。
これは告白じゃない。
ただの人としての好きだと、多分彼もわかってると思う。
誤解を招きそうなこんな言い方したかったわけじゃない。
けれど、これくらいストレートに言った方が意味がわかるんじゃないかと思った。
愛おしすぎるような言葉を吐かれた後で、咲人は少しの沈黙の後、話し始めた。



「たしかに君の言う通り、俺たちは今日、楽しかったとは言い難い会話をしたと思う。
それはまぎれもない事実だ」

「そうね(ホント面倒くさい喋り方するなこいつ)」

「でも」




一呼吸置かれた。




「俺の中では何も変わってないよ。
これからも君と話したいし、これからもっと君のことを知りたいと思ってる」





咲人………。



こみ上げる思いとは裏腹に、私はフン!と鼻息をついた。




「正気?」

「何が?」

「ちょっ、だから!あなたは私とまだ話したいとか色々言ったでしょ?本当に?って聞いてんのよ」

「本当だよ」

「ふーん?あ、そ。」

「それに、君は俺のメールアドレスを知ってるだろ」




は?




「知ってますが…それが何か?」

「何か有事の際にはそっちに連絡してくれれば、確認して返事を書くよ」

「……で?」

「だから、君が俺を失うことはないよ」





(°▽°)





「あのぉ……そういう手段的な意味で言ったんじゃないんだけど」




すると咲人は、こともなげにペロッと答えた。




「知ってる。からかっただけだよ」




ちょっ、

ハァー?!



私はへたへたと力が抜け、ソファに仰向けに倒れた。
そしてすぐに笑い出した。




「なんで笑ってるんだ?」

「そら笑うわ!(笑)」

「そうか?」

「もぉ〜〜〜……。咲人、ホントに意地悪」



ため息まじりにそう糾弾すると、咲人は笑いもせずに答えた。



「Yes, I am.」

「すっごく意地悪」

「かもね」

「なんでそんなに意地悪なの?」

「さあね。でもこれが俺の自然な状態なんだよ。君に対しては特に」




またそれ?なんでよぉ、と私はむくれた。
咲人は優しい声で続けた。




「でも君は、意地悪な人が好きなんだろ」

「……」

「だろ」




何も言えず、ウー、と声ともなんとも取れない音を発していると、
咲人は畳み掛けるように訊ねてきた。




「どうして意地悪な人が好きなの?」




え、えぇぇぇぇぇ
そ、それは。。。。




ドMだからだよぉぉぉぉぉ




と言えるわけもないので、(いや多分もうわかってそう)
そんなこと聞かないでよ、と切なげに返事した。




「オッケー。君が答えたくないならいいよ」

「(えっイヤそこは多少強引に言わせてほしい←ドM全開)そ、そういうわけじゃ…」

「メイサ、質問がある」




ハイと私は従順に返事した。






「メイサは……






ヴァンパイアって、どう思う?」



(°▽°)(°▽°)



「………あなたヴァンパイアなの?」



ブーッ!と電話の向こうで咲人が吹き出すのが聞こえた。



「(笑)」

「私のこと噛みたいの?(笑)」

「いや…(笑)」



ふふ、と笑いながら私は大きく伸びをして、肩まである髪をかきあげた。



「今すぐ飛んで来て、私の首を噛んで」



咲人が言葉に詰まっているのを感じた。



「…今は行けないよ。ここからそこまで飛んで行くにはだいぶエネルギーを使うからね」

「(笑)」

「でも約束するよ。君が俺に言ったこと、覚えているから。
会った時にはその望みを叶えるよ」





彼は覚えているだろうか。

私が、耳と首を噛まれるのが好きだと言ったことを。

もちろん

セクシャルな意味で言ったのを。




「メイサ、もう1つ質問がある」




なぁにと私が問うと、咲人は尋ねた。



「今何時?」



ふと見ればもう夜中の3時だった。
相変わらず彼と話していると時間が経つのがあっという間だ。



「もう3時だわ!ってことは、そっちは4時?」

「その通り」

「どうりで眠いわけだわ。。。」

「そうだ。メッセージにも書いたけど、このままじゃ君の健康に良くないから今度は昼間に話そう」



昼間?



「まぁ、いいけど?」

「明日話せる?」

「無理。」

「明日の夜は?」

「あんた今昼に話そうって言ったんじゃないの?(笑)」

「言ったな(笑)」

「(笑)昼間に話すなら、水曜日まで無理よ。」

「水曜日?!」




マジか、と言わんばかりに咲人は声を上げた。
この時、日曜日だった。




「おいメイサ、君は相当忙しいんだな」

「は?!(笑)水曜なんてすぐじゃない」

「まぁ、まぁ、そうだ、けど」

「思ってないわね」

「いや、君がそう言うならもちろん水曜日に話すよ。当たり前だろ」

「もっと早く話したいの?」



咲人は真剣な声で答えた。



「明日電話していい?」



プーッ!!と私は吹き出した。



「ダァーメだって言ってるじゃん!(笑)あなた私と話したがりすぎ!(笑)」

「たしかに。」

「まぁ、明日は我慢してよ」

「まぁどうなるか見てみよう」



何それ?!と私はまた笑った。
私は咲人との会話を心から楽しんでいた。
この人は、先ほどあんな揉め事があったにも関わらず、そんなに私と話したいのか。
そしてその伝え方もリアクションも、とても可愛く感じた。
相変わらず、マイルドで落ち着いた語り方だけれど。
そして、キザな声。←それは生まれつきなのでは…




「見てみよう見てみよう」

「わかったわよ!笑」

「じゃぁまた明日」

「うん」




私は微笑んだ。




「おやすみ、咲人」

「おやすみ」




おやすみ

私のヴァンパイア。




続きます。