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メイサと7人の外国人たち

アラサー元お水とキャラの濃い外国人達の冒険記

「船に乗らない?」

2019-07-12 01:59:37 | アイアン


アイアンが指定したベンチからは埠頭が見えて、そこにはまぁまぁ大きいフェリーが停泊していた。
おっ船が見えるじゃん、と彼は声を上げた。




「メイサ、船乗ったことある?」

「ここで?ないわ」

「乗ったほうがいいよ!楽しいよ。俺もそんなに何度もないんだけどさ。
数年前に一回か二回くらいよ。
パーティーがあったの」

「ふーん」

「なかなか良いよ。今度一緒に乗ってみようよ、どう?」




へ?



私は内心キョトン顔だ。
あんた私と船に乗ってどうすんの?
車ならともかく船で何やら愛を営むのは無理なんじゃないか?
言ってるだけか?


私が黙っていると、彼は話し続けた。
アイアンはとにかくよく喋るのだ。



「天気がいい日なんか最高。
今日なんかいいよね。寒いかと思ったけどそうでもないし」

「そうね」

「君のコートいいね。めっちゃ暖かそう!」

「あなたコートは?そのニットだけ?」

「うん、コート無しよ。全然まだまだコートなくていいのよ。
俺グリーンのコート持ってんだけど、それがまためちゃくちゃ暖かいのよ。
それは真冬用。俺は12月までコート着ないよーん」




Wait, seriously?と私が怪訝な顔をしても、Sure!とヘラヘラしていた。
12月までコート着ないって、あんた大丈夫なの?
……はっはーん。
私は彼のお腹に手を回した。



「暖房がついてるからじゃないの?」

「ちょっやめて!触らないでホント」

「これコート?あなたの内臓を守ってるの?」

「そーだよ!俺守られまくってんの!ったく…」




とアイアンがちょっとブスッとしたので、私は満足げにニヤついた。




「船は、どうして乗ったの?」

「パーティーがあったんだよ」

「それは聞き取れたよ。何のパーティーだったのって聞いてるの」

「あぁ!いやー忘れちゃったな、俺呼ばれただけだから。
多分友達の友達の誕生日とかそんなんじゃない?(笑)」

「(笑)あなた船酔わないの?」

「俺大丈夫!乗り物酔いはないね」

「そっかぁ。実は私はあんまり得意じゃなくて。
飛行機とかはダメなんだよね」

「あーわかるわかる。
俺今は大丈夫だけどさ、子供の時とかバス乗るたびに気持ち悪くなってたよ。
だから全然わかるよ!」


アイアンはいつも、基本的にこんな感じだ。
否定的なことはほぼ言わない。
営業マンぽいっていうのかなー。
どうも薄っぺらく感じるのはネックだけど(笑)
私は埠頭の船を指した。



「でも、大きい船なら大丈夫だと思うの、そんなにその…」

「揺れないよね」

「そうそれ。それに、飛行機と違って新鮮な空気も吸えるし」

「だね。じゃぁ今度乗ってみようよ」




私は彼の方を向いた。
彼は首を傾げて、どう?と訊いた。
ニヤニヤしてなかった。
デートに誘ってるみたいだった。



「うん。乗ってみたい」

「オッケー、決まり。いいねいいね。」

「初めてだから嬉しいわ。あなた、私に初めてのことを沢山経験させるわね(笑)」

「そう?俺が?」

「うん。船でしょー、トイレでキスするでしょー、それからシャワ…」

「シーッシーッ!!大きな声で言わないで!!」




とアイアンは私の口を塞いだ。
私はケラケラと笑った。


アイアン、今でもこの時を思い出すと
私は笑顔になるよ。




続きます。



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