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And This Is Not Elf Land

The Vocalist Ⅱ, Self Portrait

The Vocalist Ⅰ


稲垣潤一1990年3月発表のアルバム。これが10枚目のオリジナルアルバムでした。
収録曲は…

1. SHINE ON ME
2. 1969の片想い
3. 夏が消えてゆく
4. いちばん近い他人
5. 心からオネスティー
6. この空
7. 恋するカレン
8. YES,SHE CAN
9. The Love Is Too Late

私はこれが一番好きです。
でも、かなり「濃い」ファンの間でも、これが一番好きだというと珍しがられましたね。
濃いファンの皆様、お元気~再度のお手振りでございます~

私にとってはこれが一番「ベストバランス」のアルバム。
私の一番好きな稲垣さんが聴けるアルバムです。

この年、ツアー日程が急に変更になりました。なんでも「本人の体調により…」とのアナウンスメントがあって心配したのですが、実は声帯ポリープの手術をしていたとのことでした。手術後、完全に回復して地元に来てくれましたが、そのときの「声」は…これはもう、なんと例えていいのか…。よく、声帯ポリープの手術をした後は「面白いくらいに」声がよく出ると言われますが、このときの稲垣さんの声はそんな感じでしたね。透明感があって、よく伸びて…素晴らしい声でした。今でも耳に残っています。

稲垣さんの最大の魅力は何と言っても、あの「声」。ライブで最初のフレーズを耳にした瞬間から「持っていかれてしまう」ような、あの感覚がのめり込んでしまって、何十回ライブに行ったことか…。ただ、少し冷静に分析してみると、稲垣さんの声が一番魅力的な響き方をする音域って割りと狭い感じがします。特に低音部が響かないのがちょっと物足りなかったことがありました。また、独特の声の響きが「売り」のsingerであるだけに、その時によって、特にテレビ出演時の、歌唱に少しムラがあるのは避けられなかったかも。

さて、このSelf Portraitの話に戻りますが、1曲目のSHINE ON MEと次の1969の片想いは共に桑村達人さんの曲です。稲垣さんは他にも桑村さんの曲を歌っていますが、とにかく、この桑村メロディーというのが、「湿気ゼロ」みたいな、非常に心地よい感触のものでした。稲垣さんはよく「ダンヒル系の音を作りたい」と言っていましたが、Dunhillの音は、私の年代には懐かしい70年前後の洋楽の香りがするような、懐かしくて、新しくて、幸せな気分を運んでくれるサウンドであり、(ダンヒルについて…詳しくはここで)桑村さんの作品は、そんな世界を再現してくれていました。

夏が消えていくいちばん近い他人は共にMAYUMIさんの曲。稲垣さんはMAYUMIさんの曲も数多く歌っていました。ファンの間でも人気の高い時を越えてもそうです。MAYUMIさんの曲には、「おお、そう来ますか~」というような独特のメロディーラインがあって、これまた独特の世界を表現していました。曲によっては、「ちょっとマニアックすぎる」と感じるものもありましたが。

夏が消えていくはこの年のツアーでのオープニングの曲だったと思います。私の好きな曲です。夏の終わりの、心と空気の変化をイメージした歌詞といい、サウンドとヴォーカルの溶け合い具合といい…いい曲です。

いちばん近い他人は単発ドラマの主題歌にもなりました。稲垣さんの曲にはロング・バージョンを初めとしたマイナー・バラードの王道路線がありますが、その中でもこの曲は最高レベルじゃないでしょうかね。ま、よく言われてたことですが、稲垣さんはこういう曲を歌ってもドロドロしない。

心からオネスティーは今は亡き大津あきらさんの詩に松本俊明さんの曲。こういうロマンティックなラブ・ソングは、私としては特別真新しくもなく、さほど第一印象はよくなかったのですが、当時、一日中稲垣さんのCDを聴かされていた家族は「この曲が一番いい♪」と絶賛していました。

この空は松尾清憲さんの曲で、稲垣さんの曲としては非常に珍しいタイプのものでした。ま、分かりやすく言うとフォークっぽい…。「うわー、ついに来たか!!」と、最初に聴いたときはたまげてしまいましたよ。でも、そのうちに、ほとんど抵抗がなくなりましたけれど。稲垣さん独特の、歌の中の人物に「なりきらないで」歌う…歌の世界と一定の距離をとる…というスタイルがプラスに働いて、このアルバムの中でも出色のナンバーになっています。

そこから、インパクトのあるイントロと共に恋するカレンに入るところは、今聴いてもしびれますね。この曲は大瀧詠一さんの名曲のひとつです。大瀧さんの歌で耳に馴染んでいる人のほうが多いかもしれません。稲垣さんはバチェラー・ガールも歌っていますし、とにかく大瀧メロディーとは相性がいいです。

YES, SHE CANは当時テンポラリーセンターのCMに使われていました。派遣会社の先駆けのような会社でしたね。派遣社員の待遇などが社会問題化してきている今は、こういうCMは作りにくいかもしれません。時代は変わりました…。この曲は私好みなんですが…ファンの間では、あんまり人気はなかったみたいですね。なんでだろ?

最後はThe Love Is Too Late。当時の私は「稲垣さんは、もうこういう曲から卒業してもいいんじゃないか…」と感じていたので、実際、あんまり聴いていない。


前作のHeart & Seoulは、ま、当時のバブルに浮かれていた日本の空気に上手くマッチしていましたが、私としてはちょっと違和感がありました。「絵空事が過ぎる…」というか…。もっとも、稲垣さんの音楽世界は「絵空事」抜きには語れないんですが、分かっているんですけどね~…それでも私の中では常に「こだわりのブレンド具合」ってものがあったのですよ。93年のFor My Dearestも同様、ちょっと違和感があるアルバムでした。

Heart & SeoulFor My Dearestも、前年に稲垣さんがヒットを飛ばしてして、注目を浴びていた中でリリースしたものでした。そういう時期に発表したものが、こういう感じのものだった…っていうのが、今となれば、残念な気がします。その後の方向性を決定付けるものだっただけに。かえって狭めたんじゃないかと…

さて、Self Portraitの後は、Will(91年)、Sketch of Heart(92年)とリリースしましたが、なんかもう~、「守り」に入ってしまったような印象が強いです。

Self Portraitで、稲垣潤一さんは一つの頂点を極めてしまったのだろうと、今でも思っています。

コメント一覧

master of my domain
私は「この頃までの」記憶は凄かったのです(笑)。どうでもいいコトに関する記憶に限られていますがネ。次回はMind Noteあたりを取上げますので、ヨロシク☆
aoniyoshi
失礼しました
いきなり本文から入力したので、Unknownになってしまった。(*^_^*)
あわてもののaoniyoshiです。
Unknown
なんか、呼ばれたような気がして出てきました。
わたくし、稲垣潤一さんの濃いファンと自認していましたが(過去か~)、master様の想いの深さには到底かないません。15年前のアルバムがこんなに鮮やかに熱く語れるなんて、すご~い。
そうそう、私は大津あきらさんのロマンチックなラブソングのファンでもありました。彼の歌詞で歌われる男性が好きだったなぁ
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