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And This Is Not Elf Land

ブロードウェーの流血事件

19世紀の半ば、アメリカ演劇史上最悪の流血事件が起きました。

この事件の核となったのは、当時の、米英それぞれの人気俳優、エドウィン・フォレストとウィリアム・チャールズ・マクレディでありました。

大西洋をはさんで人気を二分していたお二人でしたが、

フォレストさん↓の方は、


どちらかと言えば、肉体を誇示したマッチョな魅力で観客を圧倒、アメリカの労働者に人気があったと言われます。


一方、イギリスのマクレディさん↓は

正統で、上流好みの演技が魅力だったと言われていて、本国イギリスだけでなく、アメリカの上流階級の人にも支持されていました。


1820年代のあるとき、マッチョなアメリカ人俳優のフォレストさんが、ロンドンへ遠征公演したところ、現地で、けちょんけちょんに貶されまして、フォレストさんは「これはマクレディの陰謀に違いない!」とマクレディさんを逆恨みしてしまったのでありました(なんか、発想がスゴイ…)


で、運命の1849年~

今度はイギリスのマクレディさんが、NYのアスタープレイス劇場で「マクベス」を上演すると発表しました。そこで、面白くないのがフォレストさん!フォレストさんの方も、ロンドンでの恨みを晴らすべく「俺も(同じくNYの)バワリー劇場でマクベスをやってやる~!!」と宣言したのでありました。

おお~

マッチョなフォレストさんには、労働者階級の熱狂的なファンがたくさんついていたそうです。(ファンというよりは支持者と呼ぶ方がいいのかも)で、フォレストさんのファンたちはマクレディさんのマクベス公演に押しかけ、腐った卵やジャガイモ、椅子やテーブルなどを投げつけ、マクレディさんのマクベスを滅茶苦茶にしてしまいました!



あのねぇ…、
ファンなら自分の贔屓の俳優だけを見に行けばいいだろうがw~

ぶち壊すだけのために、ライバル俳優のショーへ出かけるなんて…信じがたいですね。(「お金とエネルギーの無駄」以外の何でもないし~)こういうのって…単なるファン心理とか、贔屓の引き倒しなどという「枠内」では到底理解できません。それ以上の何かが背景にあったとしか思えません。

事実、この騒動は、単なる二人の俳優の対立のみならず、英国びいきの裕福な人たちと貧しい労働者たちの根深い対立が根底にあったようです。

自分のショーを滅茶苦茶にされたマクレディさんは、NYでの残りの公演をキャンセルすると発表しました。しかし、当時の著名人たちが、このような暴徒に屈せずに公演を続けるようにマクレディさんに嘆願しました。

暴徒を煽動したのは、当時の過激集団のリーダーの男でしたが、この人が本当にフォレストさんの大ファンだったのかどうかは不明…とにかく、彼とその仲間たちは、英国びいきの富裕層に反感を持っていたのは事実のようです。

で、マクレディさんが、著名人の支持に後押しされて、公演を再開を決意したのはいいけれど、この集団が黙っているわけはない。みんなでアスタープレイス劇場に押しかけたのでした。そればかりでなく、マクレディさんの公演続行を嘆願した著名人たちを「非国民呼ばわり」、しまいにはその著名人たちの自宅にまで、抗議に押し掛けたそうです。

で、アスタープレイス劇場の前には、治安維持のために集まった民兵たちが待ち伏せておりました。しかし、睨み合いの果てに、結局は流血の惨事となり、20余名の犠牲者が出ました。


この騒動には謎が多いようで、扇動の張本人はマッチョのフォレストさんではないかという説もあるそうです。

19世紀の話だとは言え、夢と喜びの象徴のようなブロードウェーで、こんな事件があったなんて信じられません。

9月にはジュード・ロウの「ハムレット」も始まりますしネ…その向こうを張って、アメリカ出身の俳優による別プロダクションのものも同時上演してくれれば、それはそれで面白いと思いますけど~

ファンであれば、「贔屓」があるのは当然ではありますが、それはそれでシアターを彩るエピソードとしては悪いものではありませんでしょう。

しかしながら、どこにでもある「ファン心理」がそれ以上のものに化けてしまうことがないように…みんな当たり前に舞台を楽しめるような、安定した世の中が続いてほしいものです…

詳しい話はここ

コメント一覧

master of my domain aka Elaine's
おお~
brown potさま、こんにちは!

brown potさまの「妄想」を覗かせていただきたいですやはり、イギリス人俳優は「あの方」でいらっしゃいますでしょうかで、一方のアメリカ人俳優役は…まぁ、私の好みの方には「マッチョな人」はいないので、どなたでもOKですよ
おお「哀愁」を調べてくださってありがとうございました。他の劇場でしたかウォータールー橋で「もう少しで劇場につくのに」とか言っている団員がいたように記憶していて、勝手にライシアムだと思い込んでいたようです(汗)
brown_pot
うわ~、こんな事件があったんですね 
Elaine'sさま、こんにちは。
当時はきっと大変な騒ぎだったのでしょうけれど、今考えると映画の題材になりそうなエピソードではないですか~。
社会的な思想の対立なども背景にあるとすると安易には扱えないかもしれませんが、脚本と演出次第で絶対イケると思うのですが・・・。
2人の役者を演じるのはだれがいいかな~などと、昨夜から妄想を繰り広げております

それから、「哀愁」のDVDを借りて観てしまいました。(笑)
冒頭の劇場は“オリンピックシアター”という名前で登場していましたね。
今のロンドンにはない劇場ですので少しだけ調べてみたところ、オリンピックシアターそのものは実在したものの、都市開発の影響もあって1899年に閉じてしまったようです。映画に登場する劇場は、この劇場をモデルにしていたということなんでしょうか。
実在していた場所がストランド界隈。ということは、ライシアムシアターのすぐ近くですね~。
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