このエピソードは本ブログ開設間もないころ、GeorgeをBiffと呼ぶシーン(つまり、同時に「セールスマンの死」に言及している台詞)が多かったことで取り上げています。
この4人が地下鉄に乗っている絵はSEINFELDを象徴するimageとしてよく使われます。SEINFELD and Philosophy という本の表紙にもなっていますし。

このエピソードでは、4人が珍しく地下鉄に乗って、それぞれの用事に出かけるのですが、それぞれが何らかのトラブルに巻き込まれてしまって、結局、みんな目的が果たせなかったいきさつが群像劇のように見せられていきます。こういうのって、コメディによくあるパターンですね。
さて、このころのSEINFELDでは、エンドクレジットでスタッフが紹介されるときJanet Ashikagaという日本の苗字を持ったの名前があったことに気付いた人は少なくないと思います。彼女(きっと女性ですよね…?)はカメラ編集に携わっていて、このThe Subwayで初めてエミー賞を獲得しています。その後もノミネートでは常連、The Opposite, The Diplomat Clubでは再びエミー賞を獲得しています。
猥雑な地下鉄の雰囲気が臨場感たっぷりに見せられていて、4つの話が同時進行で進んでいることをリアルに見せるテクニックなどが評価されたのでしょう。
さて、この中でElaineはレズビアンの結婚式に行くのです。なんでも、彼女はbest man、つまり、花「婿」の介添人になるんだとか…
GEORGE: Lesbian wedding. How do they work bride and groom out, what do they flip a coin?
(レズビアンの結婚式ってさ…。花嫁と花婿ってどうやって決めるのさ?コインの裏表で??)
ELAINE: Yeah, they flip a coin.
(ええ、コインの裏表よ!{ムッとしてる})
GEORGE: What, was that not politically correct? It's a legitimate question.
(ちょっと、これって考え方の上で正しくない質問なわけ?筋の通った疑問なんだけど。)
Georgeのレズビアン・カップルに対する「ちょっとした好奇心」は今後のエピソードでもちょくちょく出てきます。
GEORGE: I get the feeling when lesbians are looking at me, they're thinking: "That's why I'm not heterosexual".
(レズビアンの人が僕を見ながら「だから私はレズビアンになったのよ!」なんて思っているんじゃないかと思ってしまうんだ。)
相変わらずのGeorgeです。しかし、当たらずとも遠からずな現実が待ち受けていることになります。
4人揃ってアップタウンから地下鉄に乗り、42丁目でそれぞれの路線へと分かれていきます。Elaineは指輪やプレゼントを持って地下鉄に乗り込むのでした。同じ車内に、地下鉄の乗客としてはふさわしくないような、身なりのいい年配の女性が乗っていて話しかけてきます。
WOMAN: I started riding these trains in the forties. Those days a man would give up their seat for a woman. Now we're liberated and we have to stand.
(40年代から地下鉄を利用しているんですけどね、当時は男性は女性に席を譲ったものよ。今じゃ、女性は自由になったけど席を譲ってもらえなくなったわ。)
ELAINE: It's ironic.(皮肉ですね)
Women: What's ironic?(何が皮肉なの?)
ELAINE: This, that we've come all this way, we have made all this progress, but you know we've lost the little things, the niceties.
(私たちが長い道のりを経て前進したわけだけど、でも確かに小さなことは失ったかも、上品なマナーとか)
WOMAN: No, I mean what does 'ironic' mean?
(違うの!ironicという言葉自体がどういう意味かって訊いてるの!)
おっと…
でも、脚本家はどういう意図でこの台詞を言わせたんでしょうね。
SEINFELDに嵌ってン年になる私も、スラッと自分の考えをまとめられないのが情けないですわ…
Elaineも言葉に詰まってしまいます。でも、女性は話題を変えてくれました。
WOMAN: Where are you up to, with such a nice present, birthday party?
(そんな素敵なプレゼントを持って、誕生日のパーティーにでも行くの?)
ELAINE: A wedding. (結婚式なの)
WOMAN: Hah, I didn't know people still get married. It's hard today with men and women.
(えっ!人々がいまだに結婚に興味を持っているなんて思わなかったわ!今の時代、男と女って大変でしょ?)
ELAINE: You're telling me.(ですよね)
WOMAN: So, are they a nice couple?
(素敵な人たちなの?)
ELAINE: Oh, very nice.(ええ、とっても。)
WOMAN: What does he do, if you don't mind me asking?
(伺ってよろしいかしら…男の方は何をしていらっしゃるの?)
ELAINE: She.(女性の方なんです)
Woman: She? She works, he doesn't. He sounds like my son.
(女性?ああ、奥さんが働いて旦那さんは働かない。うちの息子みたいなのね。)
ELAINE: There is no he.(男性はいないんです。)
Woman: There is no he. So, who's getting married?
(男性がいない?じゃあ、誰が結婚するの?)
ELAINE: Em, two women. It's, eh...lesbian wedding.
(ええ、女性同士のレズビアンの結婚。)
Woman Lesbian wedding. My luck. I don't talk to a soul in the subway for 35 years. I get a best man at a lesbian wedding.
(レズビアンの結婚ですって!何てことかしら!35年ぶりに地下鉄の中で人と話したって言うのに、それがレズビアンの結婚式に行く介添え人だったなんて!)
と、怒って去っていってしまったのでした。
このあと、地下鉄内が停電になったり急停止したり…散々な目にあってしまうことになります。
他にも面白い話は詰まったエピソードなのですが、今回はこのくらいにします。
KramerがConey Islandへいく路線を長々と説明したりするところとか、Kramer席取り、地下鉄の急発進でみんな倒れそうになるところなど、本当のNew Yorkerなら、にやっ!とするシーンなんでしょうね。
JerryがConey Islandへ行くまでに寝てしまうっていうのも、あそこへいくまでの「長さ」を皮肉っているみたい。マンハッタンから直通でも1時間はかかります。私も1度行ったことはありますが、そのときは車でした。でも、地下鉄で行くとなると、怖くはないんですけど、あまりに時間の浪費のような気がして、その後は行っていません。
Coney Islandはレトロな遊園地と例の有名なハンバーガー早食いコンテストが開かれるNathan’s があるところ。とても味のあるいい場所です。でも、いくらNYが安全になったとは言え、Jerryみたいに地下鉄でむやみに寝ないほうがいいと思いますよ。気付いたら、前に裸男がいるかもしれませんしね(?)