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週刊 調査士日報

お時間のある方は『第1回 不動産表示登記ってなに?』からご覧ください。

第38回 具体例【分筆地と周囲の土地の所有者が同じである場合の問題点】

2005-10-05 | 具体例

土地の分筆を依頼されるとき、周りの土地が分筆地と同じ所有者のものである場合は、そうでない場合に比べて境界を確定が簡単にできると思っておられるふしがありますが、これが意外と思い通りにいかないという例です。

一人の所有者が持っている土地で大小あわせて15筆の土地があり、隣接地はその人の兄弟の土地、そしてそれらの外側ぐるりが道路や里道・水路になっているところで、道路に面した中ほどの土地を分筆することになりました。

法務局にあった資料には、縮尺不明の公図と昭和49年に市道を分筆した測量図、平成に入ってから依頼者の他の土地を分筆した測量図、兄弟の土地の分筆図面などがありました。地積測量図は登記法の改正に伴って内容が整備されてきており、現在では分筆する土地1筆を確定してから分筆したいところを切りますが、昭和49年の道路の分筆図面では、分筆する部分に寸法が入っていればよく、残った土地(残地)は形だけを書いた状態です。

もちろん、どの時期のものでも分筆部分そのものは現地に復元しなくてはいけませんが、問題はその『形だけの残地』が正確なものといい加減なものとが渾然一体となっていることで、「どうせ書いてあるだけだから」とないがしろにすることもできません。ここの現場では、資料や現地の様子、依頼者のお母さんの話などから、どうやらちゃんと測量をしたうえで残地を書いたものと思われたので、それをふまえて境界を考えることにしました。

現地の様子について言えば、その一帯が自分の土地である場合、地主さんは“田んぼ”にしろ“庭”にしろ使いやすいように形を変えてしまい、おまけにどこをどういじったかも忘れてしまいます。そして、いつのまにか公図や地積測量図の残地と見比べてもまったく地番境がわからない土地になってしまいました。どこか適当に境界を決めてもいいじゃないかと思われたようですが、土地は必ず所有者が代わります。将来を見据えて考えれば他の筆を境界確定しても面積や地番のならびに大きな食い違いがないように確定する必要があるのです。

そこで道路・里道・水路に囲まれた部分全体を測量し、大きさや位置がわかっている筆とそうでない筆が現地にきちんとおさまるようにしたうえで、目的の土地を確定し分筆登記をしました。地主さんには、作業中もなにかとそのことについて説明したのですが、全部の土地の地番を配置した図面を見て初めて何を言っていたかわかってもらえたようでした。

このように同じ所有者の土地同士は境界があいまいになることが多く、所有者が違う土地同士の場合より慎重な扱いが必要な場合もあります。


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