好き勝手カルチャー論

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<レベルE> 知る人ぞ知る全3巻の最強漫画

2017年02月05日 | 漫画
『レベルE』
作者:富樫義博
掲載雑誌:週刊少年ジャンプ
製作年:1995~1997



「どんな漫画が好きか」と質問して「レベルE」と言われたらそれだけで何かが通じた気になる、そんな漫画です。



一番最初に好きになった漫画が、当時連載がはじまったばかりの「HUNTER×HUNTER」でした。
兄が集めなくなったのを私が引き継いで以後熱心に読んだものです。
たくさんの漫画がある中で特に「HUNTER×HUNTER」が好きだったのは、キャラクターが魅力的だったからです。
中でも中性的な甘い容姿にかかわらず、主要キャラクターの中で一番の激しさと厳しさを持ったクラピカが好きでした。

次になぜか親戚が送ってきた「幽☆遊☆白書」に出会い、これまたドはまり。
ここで初めて冨樫義博という名前を意識します。

そして忘れもしない小学6年生の夏休み、知り合いのお姉さんが私が好きそうだからと送ってくれたのが「レベルE」でした。
これで晴れて私も冨樫義博の熱狂的ファンと相成る訳であります。
それから20年以上経ちますがそのときの新鮮さをそのままに、バイブルあるいはお守り的な存在として本棚に置いております。



レベルEは知る人ぞ知る名作漫画ですが、HUNTER×HUNTERや幽遊白書に比べると知らない人も多いかと思います。
知名度が低いと言うよりは、他の代表作2作があまりにも有名すぎるということでしょう。

もしかしたら黒を基調としたコミックの表紙を見て尻込みする人がいるのかもしれません。
しかしひとたびページをめくれば、きっと出会ったことのない世界が広がっていることでしょう。
以下少しだけネタバレありです。



1巻を広げるとまず目に入るのがカバーのそでに書かれたコメント。
「がっかりである。今年で、もう30歳だ。」
まずこの部分に感激すると同時に、それに近づく自分の年齢を重ね落ち込みます。



さらにページをめくると冒頭、
「現在 地球には数百種類の異星人が行き交い生活している
 気づいていないのは地球人だけなのだ………」

とあるように、レベルEは異星人とそれに耐性のない地球人との交流を時にコミカルに、時にシリアスに描いたSF作品です。
この作品は魅力的なキャラクターが物語を思いもしなかった展開へ導いてくれます。

主人公的存在であるドグラ星の第一王子(本名バカ=キ=エル・ドグラ)、
通称バカ王子は宇宙一の頭脳を持ちながら部下に悪魔と言わせしめる程のねじ曲がった性格の持ち主。
バカ王子の行動に対して部下のドグラ星王立護衛軍隊長のクラフト隊長(王子護衛歴10年)が、
「あいつの場合に限って常に最悪のケースを想定しろ。奴は必ずその少し斜め上を行く!!」と言う名言を残している程です。

彼に巻き込まれた人々の苦悩や、彼が解決していく宇宙レベルの難題、どれをとっても異次元で面白い。


バカ王子↑



最近発売された『ジャンプ流!秘伝ガイド Vol.21』に富樫さんのコメントが載っていたので少しだけ紹介します。
'94年人気絶頂の中幽遊白書が連載を終え翌年、富樫さんは当時の担当さんに「票を取らないような漫画を描きたい」と言ったそうです。

「でもそれは、『幽白』で王道マンガは描ききったと思えたからこそ、次は打ち切りでもいいから自分のいろんな面を見せたいという希望だったんです。
 読み切りの型で、ベタにはめたやつだとか、少し曲げたやつだとかを全12話くらいで、と。
 ”自分の引き出しはこんなのもあるよ”って、一度読者に提示したかったんですね。
 その後にはいわゆる王道作品をきちんと描きますから…とお願いして、『レベルE』を描きはじめました。」

『ジャンプ流!』ですが、ちょっとした裏話と富樫さんがクラピカを描いている映像が収録されたDVDがついてくるので、好きな方には結構おすすめです。
なんと言っても1,290円とお安い。





実に少年漫画らしからぬ不誠実で憎たらしく胡散臭くて笑える漫画です。
富樫さんの予想に反して人気が出たのは言うまでもないですね。
それでも王道から外れたからこそ生み出せたキャラクターやストーリーだと思います。
少年漫画によく出てくるまっすぐで一生懸命な人は一切出てきません。
だからこそ盛り上がる壮大な知能的ギャグ。

レベルEという作品自体が富樫さんの本気の悪ふざけという感じがしないでもありません。



たった3巻でこれほど満足感を与えてくれる漫画は他にありません。


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