万葉集ブログ・3 まんえふしふ 巻十一~巻十四

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2746 作者未詳

2008-01-31 | 巻十一 寄物陳思・2
庭浄 奥方榜出 海舟乃 執梶間無 戀為鴨

庭清み 沖へ漕ぎ出(づ)る 海人(あま)舟の 楫(かぢ)取る間なき 恋もするかも

2744 作者未詳

2008-01-29 | 巻十一 寄物陳思・2
鈴寸取 海部之燭火 外谷 不見人故 戀比日

鱸(すずき)取る 海人の燈火 外にだに 見ぬ人ゆゑに 恋ふるこのころ
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「スズキ漁をする、漁師の灯火のように、(恋人との)距離が遠く、会うことすらままならぬがゆえに、恋に落ちる今日このごろだ」

2743 作者未詳

2008-01-28 | 巻十一 寄物陳思・2
中々二 君二不戀者 枚浦乃 白水郎有申尾 玉藻苅管

なかなかに 君に恋ひずは 比良の浦の 海人ならましを 玉藻刈りつつ

或本歌曰

中々尓 君尓不戀波 留牛馬浦之 海部尓有益男 珠藻苅々

或本歌曰 なかなかに 君に恋ひずは 縄の浦の 海人にあらましを 玉藻刈る刈る
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「なまじっか、あなたに恋をするくらいなら、比良の浦の、海女になって、玉藻を刈るでしょう」

或る本の歌に曰く

「なまじっか、あなたに恋をするくらいなら、縄の浦の、海女になって、玉藻を刈りつつあるでしょう」

・比良の浦:琵琶湖湖畔。滋賀県大津市(旧・滋賀県滋賀郡志賀町)

・縄の浦:兵庫県相生市金ヶ崎


2742 石川君子

2008-01-27 | 巻十一 寄物陳思・2
壮鹿海部乃 火氣焼立而 燎塩乃 辛戀毛 吾為鴨

志賀(しか)の海人(あま)の 煙(けぶり)焼き立て 焼く塩の 辛き恋をも 我れはするかも

右一首或云石川君子朝臣作之
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「志賀(島)の漁師が、煙をたてて、焼く塩のように。辛い恋をする、俺なのさ」

右の一首は、あるいは云く、石川君子朝臣が作る

・志賀:志賀島(しかのしま) 福岡県福岡市東区