2440 柿本人麻呂歌集 2007-03-31 | 巻十一 寄物陳思 近江海 奥滂船 重下 蔵公之 事待吾序 近江の海 沖漕ぐ舟の いかり下ろし 隠りて君が 言待つ我れぞ 「琵琶湖の、沖を漕ぐ舟の、碇が(水中に)潜るような、(家に)隠れるきみの、言葉を待つ私である」
2439 柿本人麻呂歌集 2007-03-30 | 巻十一 寄物陳思 淡海 奥嶋山 奥儲 吾念妹 事繁 近江の海 沖つ島山 奥まけて 我が思ふ妹が 言(こと)の繁けく 「琵琶湖(に浮かぶ)、沖島よ。遠くから、僕が片思いする相手には、(常に男の)噂が絶えない」 ●2728 に類歌がある ●沖島(おきしま):琵琶湖の有人島 滋賀県近江八幡市沖島町
2438 柿本人麻呂歌集 2007-03-29 | 巻十一 寄物陳思 人事 □吾妹 縄手引 従海益 深念 人言は しましぞ我妹(わぎも) 綱手引く 海ゆまさりて 深くしぞ思ふ 「世間の噂は、しばらく続くぞ僕の妻よ。船の綱手をひく、海よりも勝るほど、深く(きみを)思っているよ」
2437 柿本人麻呂歌集 2007-03-28 | 巻十一 寄物陳思 奥藻 隠障浪 五百重浪 千重敷々 戀度鴨 沖つ裳を 隠さふ波の 五百重波 千重(ちへ)しくしくに 恋ひわたるかも 「沖の藻を、隠す波が、幾重にも重なった大波よ。絶え間なくいくつも重なるように、(私は)恋をわずらう」
2436 柿本人麻呂歌集 2007-03-27 | 巻十一 寄物陳思 大船 香取海 慍下 何有人 物不念有 大船の 香取の海に いかり下ろし いかなる人か 物思はずあらむ 「“大船の” 香取の海に、碇を下ろす。どんな人でも、物思いに耽けないことはない」 ●香取:琵琶湖西岸の古地名 香取の浦