林真理子『ミスキャスト』講談社文庫、2003年
正直、途中で読むのをやめようかと思ったほど、最悪な男が主人公だった。
よくこんな身勝手な男を女性の作家が描けたな、と思うほどだ。
というより、女性の恋愛の心の機微を描いた小説は山ほどあるが、
男性の恋愛の心理をここまで赤裸々に描いたのを読んだことがなかったと思う。
そして、その男は私の予想を超えて計算高く、心とは裏腹に甘い言葉を紡げる男だった。
更に、自分は2人同時に浮気をしながら、妻の浮気は絶対に許せない、という男だ。
なんていう身勝手さ!
「こんな、はずじゃなかった」
とは、彼の心に常に宿るセリフだ。
しかし、そこにあるのは悔恨ではなく、
「なんで、こうなるんだ」という、戸惑いや苛立ちのように思える。
この男は、窮地となると、途端に保身へと転じるか、
思ってもない甘い言葉で取り繕い、それが自分の首を絞めていく。
結局、その時、その時の快楽を選択していくことで、
彼はいつの間にか、自分の本意ではない人生を歩み続けているんだろう。
それが、「おい、どうにかしてくれ。こんなはずではなかった」と、
心で叫んでも、どうにもならない。
正直、途中で読むのをやめようかと思ったほど、最悪な男が主人公だった。
よくこんな身勝手な男を女性の作家が描けたな、と思うほどだ。
というより、女性の恋愛の心の機微を描いた小説は山ほどあるが、
男性の恋愛の心理をここまで赤裸々に描いたのを読んだことがなかったと思う。
そして、その男は私の予想を超えて計算高く、心とは裏腹に甘い言葉を紡げる男だった。
更に、自分は2人同時に浮気をしながら、妻の浮気は絶対に許せない、という男だ。
なんていう身勝手さ!
「こんな、はずじゃなかった」
とは、彼の心に常に宿るセリフだ。
しかし、そこにあるのは悔恨ではなく、
「なんで、こうなるんだ」という、戸惑いや苛立ちのように思える。
この男は、窮地となると、途端に保身へと転じるか、
思ってもない甘い言葉で取り繕い、それが自分の首を絞めていく。
結局、その時、その時の快楽を選択していくことで、
彼はいつの間にか、自分の本意ではない人生を歩み続けているんだろう。
それが、「おい、どうにかしてくれ。こんなはずではなかった」と、
心で叫んでも、どうにもならない。