Light Forest

読書日記

阿Q正伝

2009-06-28 | 中国
魯迅(増田渉・訳)『阿Q正伝』角川文庫

魯迅と言えば、文筆活動を通じて革命に寄与した文豪として有名であるが、
中国の歴史とその背景に疎い私からすれば、その意味ではよくわからなかった。

でも、教科書に出てくるような昔話のようで、それはそれで面白い。
故郷や、眉間尺、孔乙己など、印象深い。

またいつか読み直してみようと思う。

大地

2009-06-18 | 中国
パール・バック(小野寺健 訳)『大地』(一) 岩波文庫

三部作すべてを読んでから感想を…と思ってたけど、まず第一部で
書き留めることにする。
第二部をあまり読む気がしないから…。でもそれは、面白くないからじゃなく、
勝手な想像で先が思いやられるから。

一部は王龍(ワンルン)が貧しい百姓だった時代から一代で大地主へと富を築く一生が描かれている。
若い時に、大家で奴隷として働いていた阿蘭(オラン)を妻として迎えてから、
運が向いてきたように、豊作の年が続き、息子たちが次々と生まれる。
阿蘭は器量はよくないが、働きもので、家事に長け、愚痴も言わず、黙々と
働き続け、子供たちを生み続ける。一家の繁栄の土台を築いたといってもよい。
そして王龍を支え続けたものは、土地への執着、愛着であった。
人生が厳しく見えたとき、生きる気力が失われかけた時、彼に希望や活力を
与えるものは土地だったのである。土地を持っている、ということが彼の
すべての生きる源であったのだ。

しかし、自らと異なって貧乏の家ではなく、財を成した家で育った息子たち
には百姓やその土地が父親のような意味をなさない。
大家であることの世間体や女性のことばかり気にしてお金を湯水のように
使う学者風の長男や、お金の計算には抜け目がない商人の次男…、彼らが
第二部の主人公となるのであろうが、特に長男は嫌気がさすほど嫌いなタイプ
なので、なんとなく読む気がすすまない。
王龍も金持ちになり、小作人に田畑を任せるようになり、自らがあまり
働かなくてもよくなった時から、することがなく、女性に溺れる様子が
描かれているが、やはり土地への愛着が体から離れることはなく、完全に
人間が腐るところまでは落ちなかった。
やはり、人間、働かないと堕落するだけだと感じる。

恩を忘れないところも感動した。
村が大飢饉に見舞われた時、王龍に一握りの豆を青(チン)からもらう。
この背景には色々とエピソードがあるが、誰しも食べるものが何日もなく、
自分の子供まで食べるというような地獄の時代に、一握りの豆をくれた青を
王龍は忘れることなく、その後、その恩に報いたのである。

自分が苦しいときに、人を助けることも、
自分が楽になったときに、人の恩を忘れないことも大切だと学ぶ。




アンの幸福

2009-06-10 | アンシリーズ
モンゴメリ(村岡花子 訳)『アンの幸福』新潮文庫

もはや、アンシリーズの第5弾に突入。

ギルバートとの婚約時代で、アンが校長として赴任した町での生活
が描かれている。

だんだんと大人になったアンが伺えるが、やはり彼女の魅力的な人間性は
変わることなく、人々に幸せをもたらす。

皮肉な態度しかとれないキャザリンの心を溶かし、愛されずに育つ小さな
エリザベスに笑顔を与える。
この「小さなエリザベス」として描かれる少女もまた、とても可愛い。
モンゴメリは、幼い子どもを愛らしく描くことにかけては私がこれまで読んだ
中でも一番印象に残る。

そして、これは第5弾に限ったことではないが、自然の美しさの描写力と
そこに生きる人間の生活の美しさ。
月夜の散歩の楽しさや、嵐の夜に温かい家の中でゆっくりする楽しみ…、
こんな時にはこうしたい!と思うことがとっても共感できる。

心に余裕をもって毎日を楽しみたい。