今回は、メタルマーキングコンパウンドについて、です。
この製品、レーザーマーキング剤等の呼び名がありますが、LASER MARKING MATERIALというのが正解かもしれません。 このマーキング剤、加工まで手間がかかるということと、素材への直接マーキングと違い、剥離する懸念があるため、個人的にはあまり使うことがありません。
これが、そのLASER MARKING MATERIAL。メーカーは米国TherMark社です。巷に出回っているマーキング剤のほとんどは、このメーカー製ではないかと思います。(私の知る範疇において、他に聞いたことがありません)
マーキング剤は、対象物や供給スタイル(ペースト、スプレー缶、バックテープ付き等)によって、いろいろな種類があります。この画像の製品は、水ベースのペースト状でLMM14というものです。 また、当社が取り扱うバーサレーザー(CO2レーザー)はもちろんのこと、YAGレーザー、ファイバーレーザーにも対応しています。
LMM14はペーストタイプです。この商品は50g入りで、最大1,200平方インチの塗布が可能ということです。使用の際はアルコールもしくは水で薄めて使用します。 メーカーサイトでは、塗り方にもよりますが1:1もしくは2:1の割合で薄めるように、と記されています。
また、塗った後、乾燥させる必要がありますが、ドライヤーの使用が可となっています。
加工方法は至極簡単で、このペーストを素材となる金属板に塗布、乾燥させた後、レーザーを照射し、水で洗い流せばマーキングの完成・・・なのですが、これだけでは芸がないので、マーキングの仕組みを説明します。
マーキング剤は、ガラスや顔料の化合物です。含有されている吸収材を媒介にしてレーザーで過熱することによってガラスフリット(粉末ガラス)を溶かして材料に固着させるという原理になっています。
単にガラスを溶かして溶着するというわけではなく、ガラス(二酸化ケイ素=SiO2)と酸化金属の間で分子の結合が起き、ガラスフリットと基材が固着するので、一般的な塗装と比較した場合、耐久性に優れます。
ということで、今回は、ステンレスのプレートにロゴをマーキングしてみました。材料は100円ショップで入手したものです。
今回は、ペーストタイプのLMM14と、ドライタイプ(紙テープバック付き)のLMM6018.LFの2種類で試してみます。
それぞれを、ステンレスプレートに塗ります。(LMM6018.LFは貼り付け)
ペーストタイプは筆塗りの場合、多少コツが要ります。塗膜の厚みによって出来栄えが左右されることがあるからです。可能であればエアブラシを使った塗布が最適です。実際、塗りムラが出たので何箇所にも塗ってしまいました。ちなみに、塗る厚みは25-50 μmが最適と記載されています。塗りたくれば良い、というものではありません。 今回も、かなり薄めに塗っています。
あとはレーザーのパラメーターを設定して、レーザーを当てるだけです。尚、加工のパラメーターは米国TherMark社のサイトからPDFでダウンロード出来ます。
ちなみに、紙テープバックのタイプは炎が上がりますのでエアアシストが必要になります。ペーストの方はアシストなしで大丈夫です。
加工中の動画(ペースト)
http://www.youtube.com/watch?v=1NB3l_1EBo0
LMM14での加工後
LMM6018.LFでの加工後
LMM14の水洗い後
各段は、レーザーの出力固定で、照射時間を変えてあります。下に行くほど照射時間が長くなっています。 ご覧の通り、色合いが徐々に濃くなっています。
バックテープ付きは、剥がすのが大変でした。洗い方が悪いのかどうか分からないのですが、剥がすのが一苦労です。
比較のため、バックテープつきもペーストタイプと全く同じ設定で加工したのですが、1,2段目は固着が出来ていなかったようです。
巷に多く出回っているマーキング剤はアルコールベースのLMM6000というもので、LMM14よりも強固に固着します。
こういったマーキング剤は、加工が適切であれば十二分に実用可能です。今回、加工後に爪やプラスチック板で擦って、強引に剥がそうと試みましたが、剥がすことが出来ませんでした。 しかし、気をつけなければならないのは、加工設定が適切でなかったり、対象素材の種類によっては、指でこする程度で、いとも簡単に剥がれてしまうということです。(もちろん経験済みです)
ゆえに、マーキング剤を使う場合は、何度もテストを重ね、適切な加工設定を導き出してから実用可の結論を出す必要があるということです。全ての金属に対して万能というわけではないのです。
ちなみに、メーカーサイトでは、このLMM14の対象素材は、
ステンレス
クロムめっき
ニッケルめっき
亜鉛めっき
真鍮
銀めっき
アルミ
チタン
銅
錫(スズ)
となっています。
今回、LMM14はTherMark社のサイトから直接購入したのですがLMM6000はHAZMAT(危険物扱い=アルコールベースのため、機内の与圧によって破裂の危険がある)なので、航空便でのデリバリーが出来ず、シッピングコストが高額のため、今回はあきらめました。
ちなみに、このTherMark社製品、日本の場合、フェロジャパンで入手可能です。もちろんLMM6000についても、です。ただし、1kg単位なので価格は数万円となります。非アルコールベースであれば、グラム単位でTherMark社のサイトで購入可能です。
ただしオーダーややり取りは、全て英語になりますが・・・。
詳細はレーザーワークスまで