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「マクベス」 舞台内容 三幕二場~三幕三場

2009-11-16 10:45:41 | 「マクベス」

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・三幕二場
 前場と同じく宮殿内、マクベス夫人が従者を引き連れて登場する。
彼女も夫と同じように、バンクォーの存在が自分たちの運命の享楽に影を落としていると感じていた。
 'Nought's had, all's spent,
   Where our desire is got without content:
   'Tis safe to be that which we destroy,
   Than, by destruction, dwell in doubtful joy.'
 (望みは達せられても、
 満ち足りた安らぎが得られなければ、
 何もならない、全てが無駄になってしまう。
 一層殺された方が、まだ気楽です、
 殺しておいて、あやふやな喜びの中で暮らすよりは)


 悔恨の情は、マクベスより彼女の方に起こりやすく、とかく二人が一緒にいる時は、快活な顔を見せるのは夫人である。




 ダンカン国王殺害以来、マクベス夫妻は少しずつ心が離れていく。バンクォーに対する陰謀も、マクベスは妻に相談することなしに企てた。


 それどころか、彼は故意に彼女から隠している。バンクォーに対する接待について、陰謀を企てているのに優待するように言う。
 'Let your remembrance apply to Banquo;
   Present him eminence, both with eye and tongue.'
 (バンクォーの前では、十分に気をつけて
 目も口も敬意を忘れぬようにしてくれ)


 マクベスは黙っているつもりだったが、用心しながら、これから起こるであろう事件(バンクォー親子の暗殺)のことについて話し始めてしまう。


 妻は、それを聞いて驚くが、その驚きをマクベスは、彼の賢さと決断に対する賛美と受け取るのだった。
 'Thou marvellest at my words: but hoid thee still;
   Things bad begun make strong themselves by ill.'
 (お前は俺の言葉に驚いているな、大丈夫だ、安心しろ。
 一度悪事に手を着けたら、最後の仕上げも悪の手に委ねることだ)


 目的のためには手段を選ばない。




 彼の幸運は、尽きておらず、ダンカンは彼の居城に訪れ、杜撰な殺人の計画は成功し、マルカムとドナルベインは逃亡して国王殺害の嫌疑を掛けられた。


 バンクォー親子は遠乗りに出掛け、陰謀のチャンスを与えられたのだ。これらはマクベスが運命の寵児であることを現わしていた。



・三幕三場
 宮殿近くの森の中、坂道は宮殿に続いていたが、宮殿からは少し離れている。
三人の刺客たちがバンクォー親子を待ち伏せをしていた。


 刺客たちの予想通り、バンクォーと息子のフリーランスは、馬から降りて徒歩で城へと向かう。
バンクォーと、松明を持ったフリーランスが、坂道に差し掛かった時、攻撃が加えられた。


 バンクォーは刺客たちの手によって殺害されるが、幸か不幸か、刺客の一人が松明の明かりを消してしまったため、フリーランスを取り逃がしてしまったのだった。
 'Banquo is down, Fleance is fled.'
 (バンクォーは斃(たお)れ、フリーランスは逃げ延びた)


 マクベスの思惑は、半ば成功し、半ば失敗した。
 これはマクベスの手落ちではない。彼は万全を期するため刺客の数を増やし三人でバンクォー親子を襲わせたのだが、第一の刺客のへまにより、フリーランスを取り逃がしてしまう。

 しかし、これこそが運命の寵児であったマクベスの運命の変わり目であったのだ。





「マクベス」 舞台内容 三幕一場

2009-11-13 11:31:52 | 「マクベス」

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 数週間という時間が経過した。フォレスの宮殿謁見の間、バンクォーが登場する。
マクベスにとって魔女たちの予言が全て実現したということは、バンクォーにも当てはまる。
 ここまではマクベスが予言を実現していったプロセスを見てきた。
ここからは、その予言に逆らっていこうとするマクベスの姿を見ていくのだ。




 当然マクベスは気にならない筈もなく、特に「マクベス様より小さいが、それでいてずっと大きい。それほど幸運ではないが、遥かに幸運だ。あなたは国王にはなれないが、子孫が国王になる」により、バンクォーの息子フリーランスの動静を知りたがる。
 'Ride you this afternoon ?'
 'Is't far you ridee ?'
 'Goes Fleance with you ?'
 (昼から何処かへ出掛けるのか?)
 (遠方へお出掛けか?)
 (フリーランスも連れて行くのか?)


 バンクォーが出掛けるため、その場から退出すると、今得た情報を早速活用する。
彼は従者に命じ、彼の命令を極秘裏に遂行する者たちを呼び寄せる。つまりバンクォー親子の殺害である。
           'To be thus, is nothing;
   But to be safely thus:――Our fears in Banquo
   Stick deep; and in his royalty of nature
   Reigns that which would be feared: 'tis much he dares;
   And, to that dauntless temper of his mind,
   He hath wisdom that doth guide his valour
   To act in safely. There is none but he
   Whose being I do fear……
   …………
   They hailed him father to a line of kings:
   Upon my head they placed a fruitless crown,
   And put a barren sceptre in my gripe,
   Thence to be wrenched with an unlineal hand,
   No son of mine succeeding.'
         (ただこうしているだけでは、
 何もならぬ、何ら不安なしにいられるのでなければ。
 ――怖ろしいのはバンクォーだ、
 生まれながらの気品というやつ、俺はそれが恐い。
 あの男には、どんなことでもやり遂げる不屈の魂、
 それに加えて、己の勇気を巧みに御する分別を兼ね備えている。
 奴ほど俺にとって恐い存在はいない……
 ……
 魔女たちは、奴に子孫が代々王になると
 祝いの言葉を浴びせかけた、
 この俺は、頭上に実らぬ王冠を載せ、
 手には不毛の笏を握らせた、
 つまりは赤の他人にもぎ取られ、
 一代限りで終わらせようとする魂胆か)


 バンクォーに対するマクベスの敵意は、現在における恐怖と未来に対する羨望から来ているのだ。


 'For Banquo's issue have I filed my mind;
   For them the gracious Duncan have I murdered――
   ……
   Only for them.'
 (バンクォーの子孫のために、俺はこの手を汚し、
 奴らのために、慈悲深いダンカン国王を殺したということ――
 ……
 ただ奴らのために)


 もしマクベスが、冷静で論理的な判断が出来ていれば、違った対処もあった筈であるのだが、ここは魔女の予言に反して運命に逆らうのだ。


 'Rather than so, come, fate, into the list,
   And champion me to the utterance.'
 (その手は食わぬぞ、運命め、さあ、姿を現せ、俺と勝負しろ、
 最後の決着をつけてやる)


 二人の刺客が登場する。何れもマクベスの腹心で、策はすでに授けてあった。
そしてバンクォーと共に息子のフリーランスも確実に殺害するように念を押す。


 刺客はこの場を去り、
 'It is concluded: ――Banquo's flight,
   If it find heaven, must find it out to-nibht.'
 (これで決まった、――バンクォー、
 もし貴様の魂が天国行きをお望みならば、
 今夜のうちに道を探し出さねば間に合わぬぞ)





「マクベス」 舞台内容 二幕三場~二幕四場

2009-11-09 10:56:15 | 「マクベス」

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・二幕三場
 国王殺害は自然の形で知られることになる。


 マクダフとレノックスは、朝早くダンカン国王に奉仕するよう命じられていた。彼も、その家来たちも、城外に宿泊していて、決められた時間に眠っている門番を起こし、その時の騒ぎでマクベスが起きて、門のところまで行き、彼らを迎え入れるのだった。
 これは、この後にマグタフたちが、ダンカンが殺されているところを発見する時に、自分は何も知らなかったということを印象付けるためなのだ。

 ただ、レノックスが昨晩は嵐が吹き荒れ、不気味で不吉な夜だったと、述べたことに対し、「荒れた夜だった」と、自身の心情を吐露するのだが、もちろん周りは気が付かない。




 そしてマクダフは、ダンカンの部屋に入り、直ちに怖れ驚き二人の元へ駆けつけて、惨劇を報告する。
それを聞いたマクベスは、レノックスと共にダンカンの部屋へ急行し逆上を装って、罪を着せられた二人のお附きの者を殺してしまう。
 いわゆる口封じなのだが、ごく自然の形で行なっていることが鮮といのだ。しかも、そのことをマクベスひとりではなく、レノックスも目撃させているところが狡賢いのだ。


 'Those of his chamber, as it seemed, had done it:
   Their hands and faces were all badged with biood,
   So were their daggars, which, unwiped, we found
   Upon their pillows: they stared, and were distracted;
   No man's life was to be trusted with them.'
 (国王の部屋のお附き者たちがやったようだ。
 彼らの手も顔もべっとりと血の跡、用いた短剣もそのままだった。
 短剣は枕元に転がっておりました。両人とも、
 まったく乱心のてい、目を大きく見開いて、おろおろするばかり、
 到底、人の命を預けるに足る者とは思いませぬ)


 マグタフがマクベスの行動を見て、疑惑を感じなかったどうかは、よく分からない。
なぜなら、マクベス夫人が、殺人などということに最も縁遠い人のように振る舞い、殺人が発見されると、策略的に失神して、周りの人の注目を惹きつけていたからである。


 さらにダンカン国王の二人の息子たちは、ことの次第にびっくり仰天し、バンクォーの「この問題を論ずる前に先ず着物を着よう」と散文的な台詞を機に、それを利用して逃げでしたことでマクベスに有利に働いた。



・二幕四場
 城の前、この場で直ぐに十分な調査が行なわれたらば、マクベスは嫌疑をかわすことは不可能だったが、国王の二人の息子が逃亡したので、嫌疑の矛先は彼らにかけられた。


 そして、これ以上の捜査は必要ないと打ちきられてしまう。さらに順調にマクベスは王位に就き、ダンカンの遺骸は急いで葬られるのだった。


 これでマクベスの運命の絶頂が達せられる。彼に関する限り、魔女の予言は実現した。ダンカンは彼の手中に入って殺され、人々の注目は、真の殺人者たる彼から脇へ逸らされたのだ。


 また、ダンカンが後嗣として指名した王子は国外に逃亡。貴族の中には一致した意見はなく、ロスはマクベスの戴冠式に出席し、マグタフは別荘へ退いた。彼らは、仮令疑惑を持っていたにしても、それを口することはなく、マクベスは幸運だったのだ。
 そしてこの幸運が何時まで続くのか、ということがこの劇おける観客の注目となる。




これで二幕は閉じる。
 



「マクベス」 舞台内容 二幕一場~二幕二場

2009-11-04 15:39:26 | 「マクベス」

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・二幕一場
 前場から1,2時間後、マクベスの居城の前庭においてバンクォーと、その息子のフリーランスは、まだ起きていて歩き回っていた。


 バンクォーは、魔女の予言を聞いていて以来、心の落ち着きを失っており、独りで思いにふける恐さに、眠くても床に就くまいと、寝所に行くまいとしているようだった。


 マクベスが登場し、魔女の予言がバンクォーにどのように影響しているかを探ろうとする。
それはバンクォーが相棒になってくれるかもしれないと考えてのことだったが、彼はその申し出を断った。
                        '[I] still keep
   My bosom franchised and allegiance clear.'
             (わしは常に
 心にやましいことを感ぜず、臣下の道を外れぬ)


 つまりバンクォーは、謀反に手を貸すつもりはないと暗に言っているのだ。




 マクベスは、バンクォーに親しく「ゆっくり休んでくれと」言って別れ、その後に従者を退けて仕事にかかるが、自身の前兆に不吉さを覚えるのだった。
 'I go, and it is done; the bell invites me.
   Hear it not, Duncan; for it is a knell
   That summons thee to heaven or to hell.'
 (さあ、行くのだ、そうすれば片付く。
 鐘が俺を呼んでいる。ダンカンよ、あれを聞くな。
 あれは貴様を天国か地獄へか招く弔いの鐘だ)


 しかし、マクベスは勇気を振り絞り、大胆に一歩を踏み出そうとする。
そして妻が役割を果たした合図のために鳴らした運命の鐘が鳴り響く。



・二幕二場
 マクベス夫人が手にコップを持って登場する。彼女は、ダンカン国王の家来に睡眠薬を飲ませ、家来たちを眠らせてしまった。


 そして夫が忍び込めるように戸を開けておく。短剣は、眠っている二人の家来の傍ら置いた。後は、眠っているダンカンに斬りつけるだけだ。


 もしもダンカンの寝顔が彼女の父親に似ていなかったら、そのまま彼女が斬りつけていたであろう。
 何でもないように思われることだが、このことが後々に彼女の精神に影響を及ぼすのだ。




 やがてマクベスが、手を犯行の血に染めてダンカンの部屋から出て、妻に会う。
マクベスは、世の迷信と未知の世界の恐怖にとり憑かれており、すっかり勇気を挫かれていた。


 狼狽するマクベスは、計画の細部を忘れ、家来の傍らに残しておく筈だった血だらけの短剣をもって来てしまったのだった。


 それを元に戻す必要に迫られるが、
        'I'll go no more;
   I am afraid to think what I have done,
   Look on't again I dare not.'
        (もう行くのは嫌だ。
 自分のしでかしたことを思うとぞっとする、
 それをもう一度見るなどと、とても出来ない)


 それに反して、夫人は少しも怯まず、迷信にも悩まされない。ダンカンが殺されてしまえば、彼の死体を見ることに恐怖を感じず、「絵のような」ものだと。
              'the sleeping and the dead
   Are but as pictures: 'tis the eye of childhood
   That fears a painted devil.'
        (眠っている者と死人は
 絵のようなものです。子供でもなければ、絵に描いた
 悪魔を恐がるものですか)


 マクベスの臆病を嘲笑って、彼の手から短剣を引ったくり、ダンカンの傷口から取った血を塗り、家来の傍らに置く。


 その間、マクベスは迷信的な恐怖のために、手から血に痕を洗い落とすことが困難であると想像して怯えるのだった。
 この辺りが、マクベスと夫人が、余りにもマクベスの怯えようと夫人の勇ましさが対称的に描かれているが、話が進むに従って、逆になるのだ。




 マクベス夫人は戻ってくると、夫をリードし、眠っていたように装うために寝間着を着るように忠告する。
 ただ、普通なら、この殺人は不細工であって巧く行く筈がない。
家来たちが泥酔していたことは、彼らにとって有利に働くだろうし、誰かが睡眠薬を飲ませたかは明白だ。
 さらにマクベスが眠らずにいたことを、バンクォー父子と召使が目撃しているのだが、ここは劇であるので、幸運にも誰もマクベスを疑わなかったのだ。





「マクベス」 舞台内容 一幕七場 (2)

2009-11-01 12:05:31 | 「マクベス」

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 マクベスは妻の顔を見ると、国王殺害を止めようと話す。
 'He hath honoured me of late; and I have bought
   Golden opinions from all sorts of people,
   Which would be worm now in the newest gloss,
   Not cast aside so soon.'
 (王は栄進を計ってくれたのだし、俺は国民から
 最高の評判を勝ち得た。折角、手に入れた新しい
 金襴の衣装をむざむざと急いで脱ぎ捨てることも
 あるまい)


 しかし、夫人は、直ぐに夫の言い訳を見破ってしまう。彼女は、夫の言葉を無視し、正確にマクベスの心中を指摘するのだった。
             'Art thou afeard
   To be the same in thine own act and valour,
   As thou art in desire ?'
             (あなたはこうしたいと
 望みながら、いざとなると勇敢に行動することが
 恐いのですか?)


 マクベスは基本的に臆病者で、大きな望みを抱いていても、それに向かってがむしゃらに行動することが出来ないタイプで、そのことを妻はよく知っているのだ。

 そこで彼女は、この臆病な夫の尻を叩くのだが、その思いのほどが凄まじいのだ。


                    'I have given suck, and know
   How tender 'tis to love the babe that milks me:
   I would, while it was smiling in my face,
   Have pluck'd my nipple from his boneless gums,
   And dash'd the brains out, had I so sworm
   As you have done to this.'
           (私は赤ん坊に
 お乳を飲ませたことがあるから知っている、
 自分のお乳を吸われる愛おしさを。
 それでも、笑みをかけてくれるその子の歯のない
 柔らかな歯茎から乳首を抜き取って、脳みそを抉り出して見せましょう、
 さっきのあなたのように、一旦、こう誓ったからには)


 恐いですね~ 怖ろしいですね~ 尋常の域ではないです。もはや狂気に取り付けれている。




 マクベスは妻の剣幕にたじろぎながら尋ねる。
 Macbeth:          If er should fail ?
 Lady M.: We fail ?
        But screw your courage to the stigking-place,
        And we'll not fail.
 (マクベス:       もしも俺たちが失敗したら?
 夫人:私たちが失敗する、ですって?
   勇気の弓を目一杯に引き絞れば、
   失敗なんかするものですか)


 計画は簡単で、ダンカン国王の家来は睡眠薬を飲ませ、殺人が行なわれたら、罪を彼らに擦り付けるという手筈になっていた。
 余りにも杜撰な計画だけれども、妻の迫力に押されて、すっかりその気になってしまうマクベス君なのだ。


              'I am settled, and bend up
   Each corporal agent to this terrible feat.
   Away, and mock the time with fairest show;
   False face must hide what false heart doth know.'
                (俺は肚を決めた、
 力を振り絞って、この怖ろしい仕事に立ち向かうぞ。
 さあ、平静を装って、世を欺こう。偽りの顔で、
 偽りの心の企みを隠すしかない)


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