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「ハムレット」 舞台内容 一幕一場

2009-09-08 00:01:48 | 「ハムレット」

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 城の番兵のフランシスコウが、城壁で深夜の見張りについているところに、十二時の鐘が鳴って、交代の番兵バーナードウがやって来る場面から始まる。


 ここでバーナードウが動き回っているフランシスコウを見て驚き、「誰だ、そこにいるのは?」と訊ねる。
本来なら番をしていたフランシスコウから訊ねるのが普通であるが、これはバーナードウが何かにビクついているからなのだ。




 彼が恐れているものは何か?それは前夜の夜に目撃した亡霊のせいで、フランシスコウが立ち去ろうとすると、バーナードウは心配となり夜番を共にするホレイシオとマーセラスに急いで来るようにと託けするのである。


 時間通りにホレイシオとマーセラスは現れるのだが、この二人の態度が対照的で、マーセラスは重々しくて、ホレイシオは陽気な態度である。
これは、マーセラスは、前夜の亡霊をバーナードウと共に亡霊を目撃していて、ホレイシオは、二人の話を聞いて、それが事実なのかを確かめに来たからだ。




 一時の鐘が鳴りると同時に亡霊が現れる。


 しかも亡くなった国王にとても似ていた。ホレイシオは直ちに亡霊に話しかけるが、亡霊は彼の言葉を無視して歩き去ってしまうのだった。
 ここでバーナードウとマーセラスは、ホレイシオに、亡霊が亡くなった国王に似ていることについて、その意味を訊ねる。そして議論する。




 彼らは、その議論において、近い将来に国家に良からぬことが起こる前兆であるのではないかと予測した。
 それは亡くなった先王がノルウェイのフォーティンブラス(シニア)から、領地の一部を奪い取ったことに恨みに思った彼の息子フォーティンブラス(ジュニア)が取り戻そうと企んでいるからだとした。


 その時、再び亡霊が現れた。


 そしてホレイシオが、また、亡霊に話しかけるのだった。
ホレイシオは、当時の迷信で亡霊が現れる理由とされる三つをあげる。



1.If there be any good to be done, that may to thee do ease and grace to me, speak to me.
(もしもお前の心を安め、また私の幸福をもたらすためになすべき、何か良いことがあるならば語れ)

2.If thou be privy tothy country's fate, which happily, foreknowing may avoid, O speak!
(もしもお前が国の運命を密かに知っており、予知をしたなら、多分、それが避けれるかもしれないというのであったら、さあ、語れ)

3.If thou hast uphoarded in thy life extorted treasure in the womb of earth――
(もしもお前が生きている時に、強奪した宝物を地中に蓄えておいたなら――)




 しかし、亡霊は何も語らずに、一番鶏の鳴き声を聞くと消えてしまった。


 そこで三人は事の次第をハムレットに語ることを決める。
われわれには何も語らなかった亡霊も、ハムレットであれば、語るかもしれないと思ったからであった。



ここで特筆すべきは、彼らが重要な事柄について思いつかなかったことである。それは、国王の死に不正(犯罪)が絡んでいるかもしれないということである。

 このことはデンマークの国民が現国王であるクローディアス新王を信認しており、新王を全く疑っていないことを意味する。つまり国民は、クローディアス新王を歓迎していたということである。




 さらにいえば、常に不安をもって眺められるのは、過去ではなく、未来であるということなのだ。 


 



「ハムレット」 舞台内容 あらすじ

2009-09-07 11:57:32 | 「ハムレット」

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 デンマークでは、先王ハムレットが亡くなり、弟のクローディアスが国王となり、先王の妃だったガードルードを妃にしてしまった。
 留学先の大学から帰国した先王の息子ハムレット王子は、父の死と早すぎる母の再婚のために深く落ち込んでいた。
 そんな折、先王の亡霊が現れ、自分が弟のクローディアスに毒殺されたことを語り、王子ハムレットに復讐を命じたのだった。


 一方、宮内大臣ボローニアスは、息子のレイティーズがフランスに戻ることから、彼に色々とアドバイスを送り、ハムレット王子に言い寄られている娘のオフィーリアには、今後一切ハムレットとは関りを持ってはならないと、言い渡す。


 ハムレット王子は、父の復讐を果たすため狂気を装うが、彼の周囲は、その原因を探ろうとした。
宮内大臣ボローニアスは、オフィーリアに失恋したためだとクローディアス新王に進言。
 しかしクローディアスは納得せずに、ハムレットの学友ローゼンクランツとギルデンスターンにハムレットの狂気の真意を探らせた。


 ハムレットは、たまたまデンマークに訪れていた旅役者たちを使って、父の亡霊が語った暗殺の経緯が真実かどうか確かめようと計画する。
 直ちに復讐することが出来ず苛立つハムレットは、オフィーリアに辛く当たってしまう。
 しかしこの様子を陰から覗っていたクローディアス新王は、ハムレットの狂気が芝居であると気がついてしまったのだ。


 片やハムレットが旅役者たちに、先王毒殺の様子を似せた芝居を演じさせると、それを観たクローディアスは取り乱し、席を立ってしまう様子を見て、亡霊の言葉が真実であることを確信した。


 芝居の後、母ガードルードに呼ばれたハムレットは、母の寝室へ向かう途中、兄殺しの罪を悔いて神に祈ろうとしているクローディアスに遭遇。
 背後から密かに近づいて父の恨みを晴らそうと剣に手をかけるが、祈っているときに殺してしまっては天国に送ってしまうことに気付き、思い止まってしまうのだった。


 ハムレットは母の寝室に出向くと、カーテンの陰に隠れていたボローニアスをクローディアスと間違えて刺し殺してしまう。
 さらに先王である父の死後、直ぐにその弟と再婚した母の不実を激しくなじる。
そこに父の亡霊が現れて、母には優しくしてやれとハムレットに告げる。しかし、ガードルードには亡霊の姿が見えない。


 ボローニアスを殺されたことでクローディアスは、ハムレットに対する危機感を強め、彼を謀殺しようと企み、イングランド国王への親書(ハムレットを殺害を依頼する内容)と共にイングランドへ送りだした。
 イングランドへの旅の途中で、ポーランドへの戦争へ向かうフォーティンブラス率いるノルウェイ軍を見たハムレットは、その勇ましい姿に感動し、自分も心を鬼とし復讐を成し遂げようと心新たにした。


 一方、愛するハムレットに父ボローニアスを殺されたオフィーリアは、とうとう気が触れてしまう。
父の突然の訃報にフランスから帰国したレイティーズは、一旦は暴徒を率いてクローディアスに詰め寄るが、オフィーリアの狂乱ぶりにショックを受け、クローディアスに丸め込まれて、ハムレットに復讐するように仕向けられてしまった。
 そこへガードルードがやって来て、オフィーリアが溺死したと知らせる。


 ハムレットは、イングランドへ向かう船旅の途中で、イングランド国王への親書の内容を知り、お供の学友ローゼンクランツとギルデンスターンを即刻処刑するように、という内容の親書とすり替えた。
 その後、船は海賊に襲われるが、これを退けてイングランドへ到着。しかし、その時ハムレットは、ひとり海賊船に乗り移りデンマークへ戻ってくるのだった。


 デンマークへ戻ったハムレットは、たまたま通りかかった墓場でオフィーリアの埋葬に出くわす。
思わず飛び出した彼と、その場にいたレイティーズが掴み合いの喧嘩となった。


 宮廷へ戻ったハムレットは、ホレイシオに事の顛末を語るが、そこへクローディアス新王の使者がやって来て、レイティーズとの剣術の試合をすることになってしまった。
 罠であると心配するホレイシオに、ハムレットは「雀一羽が落ちるのも、天の摂理が働いている、覚悟が全てだ」と試合を受けてしまう。


 試合に際して、レイティーズは剣に毒を塗って臨み、さらにクローディアスは、毒入りの杯を用意する。
 毒を塗った剣で、ハムレットとレイティーズのふたりともが致命傷を受け、ガードルードは、ハムレットに盛られた毒酒を知らずに飲んでしまい息絶えた。
 死の際のレイティーズは、すべての陰謀の張本人がクローディアスだと暴露し、ハムレットは、最後の力を振り絞って、毒剣と毒酒でクローディアスに復讐を果たした。


 そして死に際に事の顛末を世に伝えて欲しいとホレイシオに頼み、次の国王はフォーティンブラスであると、言い残して息絶えたのであった。
 最後にポーランド遠征から帰還したフォーティンブラスが、ハムレットの葬儀を厳かにおこなうようにと命じて、幕が閉じる。



「ハムレット」 舞台設定 世界観

2009-09-03 15:16:11 | 「ハムレット」

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「ハムレット」は、サクソ・グラマティクス編纂した「デンマーク人の事績」の中の「アムレート」がモデルになっている。


『オーウェンディルとフェンギという2人の兄弟がデンマーク王ロェリック・スリュンゲボンドからユトランドを譲り受ける。
オーウェンディルはロェリックの娘ゲルータと結婚し、二人の間にアムレートが生まれる。また一人子でもあった。
フェンギは彼らの結婚に憤慨し、そしてユトランドの支配権を一人で握るために、オーウェンディルを殺害。
短い喪ののち、フェンギはゲルータを娶り、ユトランドの単独支配を宣言するが、アムレートがフェンギに復讐を果たし、ユトランドの新しい、そして正統な王となる』という内容になっている。


このように話の展開はよく似ているが、シェークスピアは、ただ単に模倣したのではなく、「ハムレット」に書き直すことで、当時のイギリス情勢を風刺したと、十分に考慮できるのだ。


では当時のイギリスはどうであったのか、考察してみたい。


シェークスピアが活躍した時代のイギリスは、ルネッサンスの風に多き影響されており、海外の作品(いわゆる文芸作品)が翻訳(もちろん英訳)されて、国内に広がった。
よって国内でも文芸活動が盛んになっていった。
サクソ・グラマティクス編纂した「デンマーク人の事績」もその一つ。


イギリスのルネッサンスが活発になったのは、エリザベス朝下にあって対外的にはスペインの無敵艦隊を破るなど国威を示し、内政的にはプロテスタントとカトリックの対立を終息させ、国力を充実させたことが大きい。
また、女王登場によりスコットランドとイングランドの同君連合が事実上、成立するのだ。


ただ、光ばかりではなく、影の部分も存在する。
先ず、エリザベス女王の父、ヘンリー8世の我儘から生じた(熱心なカトリックであったが、カトリックでは離婚が認められていない。そこで彼は新しくイギリス国協会をを造り、キャサリン王妃との離婚およびアン・ブーリンとの再婚を巡る問題を引き起こす)宗教問題が尾を引いていた。(当然、プロテスタントとカトリックとの対立も根強く存在する)
さらに、50年という月日が流れているとはいえ、ばら戦争の影響も残っていた。


この時代の人々は、亡霊や妖精、魔女といった存在を信じていたし、国王の奇跡といったモノを信じていた。(いってみれば、現在より迷信深かったし、信心深い人たちだった)
だが、一方でルネッサンスによる啓蒙思想の浸透で自我の開放という潮流にも乗っていたのである。


当時のイギリスは、相反する事柄が、より鮮明で世の中に投影されていた。
つまり、大きな矛盾を個人も社会も抱えていたのだ。
そして、その矛盾を投射された人物がハムレットだったのである。



「ハムレット」 舞台設定 倫理観

2009-08-25 17:04:39 | 「ハムレット」

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「ハムレット」は、シェークスピアの四大悲劇の1つである。
シェークスピアの作品は、主に劇文学であるから役者の台詞が殆どであり、場面の説明が最小限に抑えられている。
よって役者の台詞にて状況説明等をおこなっている為、膨大な台詞量になっている。
読者は、この膨大な台詞を読んで理解し、場面状況、人物の心情・意図などを把握するのはかなりの努力を要する。
しかるにシェークスピアの劇文学をよく理解するには、その作品の背景(いわゆる間テクスト)の理解が必要不可欠なのだ。


そこで「ハムレット」を取り上げるに当たり、その舞台であるデンマークについて(あくまでも舞台におけるデンマークのことで、実際のものとは違う)を自分なりに考察してみたい。


劇中におけるデンマークは、道徳観念、倫理観が低下している。
王妃が夫である先王の死後、1ヶ月あまりで先王の弟と結婚し、その弟が王位についているのだ。
現在であっても夫の死後、1ヶ月で再婚するのは、なかなか勇気がいるものだ。しかも王妃という立場であるからして、注目度が高い。


さらにいえば、当時のキリスト権社会にあって、例え義理の弟(血の繋がりがない)であっても親族とされて、これら同士が婚姻を結ぶことは不義理とされた。いわんや王族(ロイヤルファミリー)は聖家族とされており、なお更、厳しかったはずである。


よって世間(民衆、教会等の)といった世論が黙っていないと思うが、なんと、このデンマークでは大いに歓迎されてしまったのだ。つまり世論が認めてしまったことを意味する。


それだけデンマーク社会全体が、モラルハザードを起していて退廃していた。


一方、近隣諸国との情勢は、有力であった。
イギリスに対して、かなりの融通が利くようだし、隣国のノルウェーにおいても優勢であったと思われるのである。
これも偏に先王のハムレットの勇猛果敢さであった。


本来であれば、この先王の死を悲しむはずであるが、概ねデンマーク全体は新王クローディアスを歓迎されており、その実情をハムレットが目の当たりを見て違和感を感じたに違い。
国中の雰囲気を感じ取ったハムレットは、言い表わせない不信を抱いたのは容易に想像できるのだ。