街の風景

東京は大嫌い

家族

2006年10月18日 12時58分26秒 | 告白
「あなたの夢はなんですか?」「家族を持つことです」テレビを観ていたら、誰かがそう言ってた。ボクの夢も家族を持つことだった。ボクは確かにそんな夢を持っていた。そんな夢を持っていたことさえ忘れていたことに気付いて愕然とした。

ボクは田舎で育った。夢はなかった。平凡な高校生活を送り、大学進学と同時に独り暮らしを始めた。そのときボクは二十歳だった。下宿の六畳間はボクにとって楽しくも苦しい孤独の始まりだった。田舎育ちのボクにとって地方とはいえ、都市化された街に住むのは刺激的であり、様々な誘惑があった。浪人までして行かせて貰う大学だ。両親のためにもボクはマジメに大学に通うことが当たり前だと考えていた。しかし現実は違っていた。学校をサボって遊んでいる同級生たち。ボクを呼び捨てにする年下の同級生たち。大学生活に居心地の悪さを感じていた。

早く大学なんて下らないところから抜け出したかった。早く自分の力で金を稼いで親に楽をさせたかった。ボクは大学から遠ざかり、バイトばかりするようになっていた。夜遅くまでバイトをしているから、早起きできなくなり、一限目の授業に行かなくなった。唯一仲良くしてくれていた同級生が起こしに来てくれても熟睡しているふりをした。ボクは彼の好意を無にしたのだ。たまに授業に出ると「めずらしいな」と揶揄される。それでいよいよ大学に行けなくなってしまった。両親に申し訳ないと思いつつ、どうしようもない状態になってしまっていた。原因は自分にあり、自分でどうにかしなければいけなかったのだろうが、ボクはまだ精神的にも幼く、現実から逃げることしかできなかった。

普通に生きていれば、いつかは家族を持ち、両親に孫の顔を見せてあげられると思っていた。しかし現実は、そんな普通のことさえ手に入れることも出来ない。こんな小さな願いさえ叶えて貰えないほど、ボクは罪を犯したのだろうか。何が間違っていたのだろうか。生きていく上で、ボクは何度も分岐点に立ち、進む道を自分で決断してきた。どこで間違ったのだろう。自問自答の毎日だ。

一回しかない人生なのに、ボクは道の選択を間違ったようだ。小さい頃から感じていた孤独を友達に、ボクは一生を送るのだろう。そして独り死んでいくのだろう。あまり上手に生きられなかったボクの一生は、家族にも見守られず、そっと終わることだろう。家族が欲しい。簡単そうで難しい願いは届かない。