街の風景

東京は大嫌い

『竜馬の妻とその夫と愛人』

2005年09月19日 00時15分13秒 | 映画
三谷幸喜作品は映画に限らず、舞台も良く観る。初めて観た彼の作品は映画『12人の優しい日本人』である。なんとも不思議だが面白いというのが印象だった。勿論、その頃は三谷幸喜という天才が書いた本であることなんて知らなかった。後に舞台を映画化したのだと知ったとき「あぁ、なるほどな」と納得したことを思い出す。その後、三谷幸喜作品は『君となら』(1994年)、『巌流島』(1996年)、『バッド・ニュース☆グッド・タイミング』(2001年)、『その場しのぎの男たち』(2004年)を観た。いずれも傑作だ。

『竜馬の妻とその夫と愛人』は三谷幸喜が2000年に東京ヴォードヴィルショーのために書き下ろしたコメディを2002年に市川準監督が映画化した作品である。竜馬の13回忌を迎えた未亡人おりょうと再婚した夫、そして愛人をめぐる、おかしくも切ない物語である。

おりょうを演じた鈴木京香が最高に良い。竜馬が死に、ひとり生き残ってしまった未亡人の悲しみが伝わってくる。松兵衛のどうしようもなさと惚れた男の情けなさが良い。キャスティングは素晴らしく良いのだが、何か少し物足りない。

三谷幸喜作品は映画よりも舞台で観るべきだと思う。勿論、映画が全てダメだというつもりもないが、より舞台の方が彼の綴った言葉たちが活きる。役者の力も大きいのだろうが、それを際立たせる三谷幸喜の言葉たちはスゴイのだ。

2005年10月に『竜馬の妻とその夫と愛人』が東京ヴォードヴィルショーにより再演される。映画と舞台を比較するためにも、僕は観に行きたいと思っている。

『半落ち』

2005年08月15日 22時58分30秒 | 映画
映画のタイトルである「半落ち」とは何だろう?と思っていた。映画を観て分かったのだが、警察用語で「一部自供した」という意味らしい。ちなみに「全部自供した」は「完落ち」という。映画の冒頭にこの言葉が連発したので分かりましたが、小説と違い、映画で言葉の意味をそれとなく説明するのは難しいことなのです。

ベストセラーミステリーを映画化した『半落ち』は第28回日本アカデミー賞最優秀作品賞に選ばれました。僕は公開されたときから興味がありましたが観る機会がなく、先日DVDで観ました。DVDだからではないと思いますが、最初のあたりは台詞が聞き取れないほどの小さな声で会話するシーンが多く、聞き取れないたびに少し戻しては聴きなおす作業が面倒で、なかなか映画に入り込むことが難しかったのです。

観ていない方のためにあらすじだけ。
寺尾聡扮する元警部・梶聡一郎が妻を殺し、自首するところから映画は始まる。梶は7年前に息子を白血病で亡くしている。妻はショックでアルツハイマー病になる。日に日に息子のことを忘れていく妻は、息子のことを憶えているうちに殺してくれと夫に嘆願する。夫は妻を殺す。梶は「嘱託殺人」という重罪を犯してしまう。妻を殺してから自首するまでの「空白の二日間」が大きな問題となる。

夫は妻を殺せるのだろうか?自分に置き換えて考えてみると難しい問題である。愛する妻がアルツハイマー病で壊れていくのをそばで見続ける辛さ。自分が壊れていくのを自覚し、息子のことを忘れていく妻の辛さ。どうしようもなく悲しい状況だ。

この物語は、やはり小説で読むべきものだと思う。約二時間の映画という枠の中ではディテールが失われている。梶が何故あと一年生きようとしているのか、そこが最後までハッキリしない。理解できるのだが、しっくりこない。ベストセラーミステリーを映画化したのだから、ラストシーンに大いに期待したのだが、あっけなく終わってしまった感がある。残念だが、映画は小説を超えられない。

追記
森山直太朗が歌う主題歌が流れたとき興醒めした。ラストシーンにあの歌声はないだろう。選歌人ミス。

『いま、会いにゆきます』

2005年07月02日 13時33分36秒 | 映画
この小説が世間で読まれている頃、僕は猛烈に仕事が忙しく、小説を読むなんてことより、少しでも長い時間寝ていたいと思うばかりの毎日でした。でも僕はこの小説が読みたくて仕方なく、買うだけは買って、本棚にしまいこんでいました。映画化されることを知り、映画館で観たいという思いがありました。でも映画館に行ってこの映画を一緒に観てくれる人がいませんでした。だから結局行けないまま上映が終わってしまいました。忘れていた頃に、その映画がDVDで発売されるということを知りました。やっと観れる。2005年6月を僕は待っていました。

まず映画を観る前に小説を読みました。そこには家族愛、夫婦愛がありました。僕は素直に泣きました。電車の中でも泣きました。サラリーマンが通勤電車の中で泣いているなんて恥ずかしいと思ったのですが、涙が溢れて止まりませんでした。日常の中に愛があります。みんな当たり前すぎて気付いていないだけなんです。

発売日にDVDを買いました。さっきDVDを観ました。小説に少しだけ脚色が入っていましたが、期待を裏切るものではなく、素晴らしい映像と感動がそこにありました。(まだ観ていない方のために内容は書きません)

僕は日本映画が好きです。竹中直人さんの『東京日和』という作品も淡々とした日常を描いていて大好きな作品です。妻ヨーコへの島津の愛は静かで深いものです。外国映画にありがちなファンタジーやアクション物も面白いと思いますが、僕は日常を切り取った映画が好きです。僕はこれからも愛が感じられ、静かに感動できる作品を観ていきたいと思います。そしてひとりでも映画館に行って映画を観ることができるようになりたいと思います。