【埋め草ーMuseの場合 2016年6月27日号】《Ni-Zn蓄電池が本命のPHV電気自動車 Part V》
今回の国際商談では、日本、ドイツ、フランスの3国とも大気独立型推進=AIP潜水艦を
ベースに、プラスアルファの機能を付加する戦いとなったのでは?
Posting in June 26, 2016
PHV ;Plug-in Hybrid Vehicle
AIP ; Air Independent Propulsion
日本のAIP潜水艦は、スウェーデン海軍開発のスターリング・エンジンを推進機関に採用
して、その高い静粛性によって相手のソナー=音響受信装置では探知不能?を誇る。
ドイツは、AIP潜水艦として世界各国の海軍に向けて、水素ガスと気化した液体酸素に
よるPEM=Polymer-Electrolyte-Membrane型常温燃料電池が発生する電力で推進力を得る。
水素ガスは液化が困難なため、水素吸蔵合金に貯えて艦内利用を容易にしている。
開発は1980-1986年で、ドイツHDW社/シーメンス社が担当。もう一つの騒音源である
電動モーターはシーメンス社開発のパーマシン・モーターにより、従来の直流モーター
と比べ、重量・容積とも40%近くの低減を実現。しかも、発生騒音も少ないという。
ドイツ海軍は「212A型攻撃型潜水艦 U31」を2005年10月から就役させ、2006年9月
までに合計4隻が就役、さらに2013年に2隻が就役の予定。
そして、イタリア海軍では212A型を合計4隻が就役。また、イスラエル海軍も212A型を
ベースに建造する、とのこと。
ただし、燃料電池の出力は120kW x 2により総出力は240KWであり、日本が採用の
スターリング・エンジンの300kWよりも低いが、水中最高速度は20ktで日本と同じ
数字を公表する[*1]。
一方、フランスのAIP潜水艦は、輸出用潜水艦「スコルペン級攻撃型潜水艦」のオプション・
エンジン搭載として位置付けられる。同潜水艦はフランスDCN社(現DCNS社)とスペイン
のバサン社(現ナヴァンティア社)と共同で、輸出用の攻撃型ディーゼル電気推進潜水艦
(SSK)「スコルペン」Scorpene級を開発したもので、最初はチリ海軍が採用し、2005年9月
に就役、マレーシア海軍に2隻納入、インド海軍は6隻を発注したほかブラジル海軍も
4隻を発注し2015年の就役を予定。「スコルペン」級は、ユーザー海軍の意向で水中動力
としてAIP方式のエンジンとして、MESMA方式エンジンを選択できる。
MESMA方式とは、Module d'Energie Sous-Marine Autonomeの略で、それは、気化した酸素
とエタノールとの混合ガス燃焼による燃焼ガスによる約700℃で水蒸気を発生させ、蒸気
タービンで回転動力を得る。パキスタン海軍はこのMESMA方式のAIP潜水艦を「アゴスタ90B」
級として2008年9月に就役。本艦は水中最高速度20kt、最大潜航深度350m、乗員36名で
ドイツも37名で運用。日本の「そうりゅう型」の乗員は65名とは対照的。艦内での機械化や
自動化が相当に進んでいるのが印象的[*2]。
かくて、日独仏の3国が運用するAIP潜水艦はその潜航時に駆動するエンジンを比べると、
フランスのMESMA方式は、原潜と同じ蒸気タービンで海中を疾走する性能を発揮できる
点だけでも、オーストラリア海軍高官にとって魅力的と映るのではないでしょうか。
何故なら、燃料のエタノールと液体酸素を計画にしたがって艦内に貯蔵するなら計算通り
の水中速度と潜航距離が得られるはず。しかも、フランスのAIP潜水艦は少数の乗員を
要求する点も見逃せないように思いますが・・・。
しかも、その推進力は原潜と同じジェット噴流方式なので、相手潜水艦のソナー探知で「原潜?」と誤認させる効果も生ずるかも。
さて、今回の商談で勝者となったフランスは、米英とは異なる核戦略を構築し、南太平洋のタヒチ島近辺(フランス海外領土)で大気圏核実験を繰り返し、その結果、フランスは「ル・トリオンファン」級戦略原子力潜水艦の就役となります。
本艦のスペックは[*3]、
水上排水量 ; 12,843t 水中排水量 ; 14,565t
全 長 ; 138m
推進系 ; K15加圧水型原子炉1基/蒸気タービン発電機2基(合計出力41,500馬力)、
1軸ポンプ、ジェット駆動
最大水上速力; 不明
最大水中速力; 25kt
最大潜航深度; 500m
兵装 ; 弾道ミサイルM51(「ル・テリブル」2010年9月就役に搭載)/
垂直発射筒16基、533mm長魚雷F17/対艦ミサイル・エグゾセSM39/
発射管4基
乗員 ; 111名
と紹介されてます。
このタイプのみが、ジェット駆動方式なので、オーストラリア海軍が注目したモデルのように
思います。推進機関のみを変更したとすれば、水中最高速度25ktや最大潜航深度500mのデータ
を持つオーストラリアの新型潜水艦の登場に西側陣営は心強く思うでしょう。
《参照文献》
『世界の戦闘艦カタログ』 多田智彦 著 アリアドネ企画 [発行] (株)三修社 [発売]
2012年12月10日 第1刷
を参照しました。
[*1] 「212A型攻撃型潜水艦 (ドイツ)」 同書 p.186-187
[*2] 「スコルペン級攻撃型潜水艦 (フランス/スペイン)」同書 p.182-183
[*3] 「ル・トリオンファン級戦略原子力潜水艦」同書 p.178-179
kt5muse in June 26, 2016
今回の国際商談では、日本、ドイツ、フランスの3国とも大気独立型推進=AIP潜水艦を
ベースに、プラスアルファの機能を付加する戦いとなったのでは?
Posting in June 26, 2016
PHV ;Plug-in Hybrid Vehicle
AIP ; Air Independent Propulsion
日本のAIP潜水艦は、スウェーデン海軍開発のスターリング・エンジンを推進機関に採用
して、その高い静粛性によって相手のソナー=音響受信装置では探知不能?を誇る。
ドイツは、AIP潜水艦として世界各国の海軍に向けて、水素ガスと気化した液体酸素に
よるPEM=Polymer-Electrolyte-Membrane型常温燃料電池が発生する電力で推進力を得る。
水素ガスは液化が困難なため、水素吸蔵合金に貯えて艦内利用を容易にしている。
開発は1980-1986年で、ドイツHDW社/シーメンス社が担当。もう一つの騒音源である
電動モーターはシーメンス社開発のパーマシン・モーターにより、従来の直流モーター
と比べ、重量・容積とも40%近くの低減を実現。しかも、発生騒音も少ないという。
ドイツ海軍は「212A型攻撃型潜水艦 U31」を2005年10月から就役させ、2006年9月
までに合計4隻が就役、さらに2013年に2隻が就役の予定。
そして、イタリア海軍では212A型を合計4隻が就役。また、イスラエル海軍も212A型を
ベースに建造する、とのこと。
ただし、燃料電池の出力は120kW x 2により総出力は240KWであり、日本が採用の
スターリング・エンジンの300kWよりも低いが、水中最高速度は20ktで日本と同じ
数字を公表する[*1]。
一方、フランスのAIP潜水艦は、輸出用潜水艦「スコルペン級攻撃型潜水艦」のオプション・
エンジン搭載として位置付けられる。同潜水艦はフランスDCN社(現DCNS社)とスペイン
のバサン社(現ナヴァンティア社)と共同で、輸出用の攻撃型ディーゼル電気推進潜水艦
(SSK)「スコルペン」Scorpene級を開発したもので、最初はチリ海軍が採用し、2005年9月
に就役、マレーシア海軍に2隻納入、インド海軍は6隻を発注したほかブラジル海軍も
4隻を発注し2015年の就役を予定。「スコルペン」級は、ユーザー海軍の意向で水中動力
としてAIP方式のエンジンとして、MESMA方式エンジンを選択できる。
MESMA方式とは、Module d'Energie Sous-Marine Autonomeの略で、それは、気化した酸素
とエタノールとの混合ガス燃焼による燃焼ガスによる約700℃で水蒸気を発生させ、蒸気
タービンで回転動力を得る。パキスタン海軍はこのMESMA方式のAIP潜水艦を「アゴスタ90B」
級として2008年9月に就役。本艦は水中最高速度20kt、最大潜航深度350m、乗員36名で
ドイツも37名で運用。日本の「そうりゅう型」の乗員は65名とは対照的。艦内での機械化や
自動化が相当に進んでいるのが印象的[*2]。
かくて、日独仏の3国が運用するAIP潜水艦はその潜航時に駆動するエンジンを比べると、
フランスのMESMA方式は、原潜と同じ蒸気タービンで海中を疾走する性能を発揮できる
点だけでも、オーストラリア海軍高官にとって魅力的と映るのではないでしょうか。
何故なら、燃料のエタノールと液体酸素を計画にしたがって艦内に貯蔵するなら計算通り
の水中速度と潜航距離が得られるはず。しかも、フランスのAIP潜水艦は少数の乗員を
要求する点も見逃せないように思いますが・・・。
しかも、その推進力は原潜と同じジェット噴流方式なので、相手潜水艦のソナー探知で「原潜?」と誤認させる効果も生ずるかも。
さて、今回の商談で勝者となったフランスは、米英とは異なる核戦略を構築し、南太平洋のタヒチ島近辺(フランス海外領土)で大気圏核実験を繰り返し、その結果、フランスは「ル・トリオンファン」級戦略原子力潜水艦の就役となります。
本艦のスペックは[*3]、
水上排水量 ; 12,843t 水中排水量 ; 14,565t
全 長 ; 138m
推進系 ; K15加圧水型原子炉1基/蒸気タービン発電機2基(合計出力41,500馬力)、
1軸ポンプ、ジェット駆動
最大水上速力; 不明
最大水中速力; 25kt
最大潜航深度; 500m
兵装 ; 弾道ミサイルM51(「ル・テリブル」2010年9月就役に搭載)/
垂直発射筒16基、533mm長魚雷F17/対艦ミサイル・エグゾセSM39/
発射管4基
乗員 ; 111名
と紹介されてます。
このタイプのみが、ジェット駆動方式なので、オーストラリア海軍が注目したモデルのように
思います。推進機関のみを変更したとすれば、水中最高速度25ktや最大潜航深度500mのデータ
を持つオーストラリアの新型潜水艦の登場に西側陣営は心強く思うでしょう。
《参照文献》
『世界の戦闘艦カタログ』 多田智彦 著 アリアドネ企画 [発行] (株)三修社 [発売]
2012年12月10日 第1刷
を参照しました。
[*1] 「212A型攻撃型潜水艦 (ドイツ)」 同書 p.186-187
[*2] 「スコルペン級攻撃型潜水艦 (フランス/スペイン)」同書 p.182-183
[*3] 「ル・トリオンファン級戦略原子力潜水艦」同書 p.178-179
kt5muse in June 26, 2016