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きらっとダンススポーツ

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「Shall We ダンス?」 振り付け著作権めぐり提訴

2008年06月27日 21時16分04秒 | ダンス雑感
 

旧聞に属しますが、5月25日付け産経新聞朝刊にこのような見出しの記事が掲載されました。
 内容を紹介してみますと、次のような記事でした。

       

 社交ダンスブームを生み、ハリウッドでもリメークされた映画「Shall We ダンス?」(周防正行監督)のダンスシーンの振り付けを担当した舞踏家、わたりとしお氏が「無断でテレビ放映やDVD化など二次利用され、著作権を侵害された」として、映画を製作した「角川映画」に約5300万円の損害賠償を求める訴えを東京地裁に起こしたことが24日、分かった。

(中略)

 わたり氏は、全日本ダンス選手権で3年連続優勝し、テレビのダンス番組などにも出演する著名なダンサー。訴えによるとわたり氏は平成7年2~9月、角川映画の委託を受けた映画制作会社の要請で、登場人物に合わせたダンスの振り付けを創作して指導。ダンス指導料として約150万円を受け取った。
 
 作品は8年1月に公開されて大ヒット。米国でも公開され、ハリウッドでリメイク版も製作された。しかしテレビ放映やDVD化など、作品が二次利用された際、わたり氏には二次使用料が支払われなかった。
 わたり氏は、作品中のダンスは社交ダンスの基本ステップにない振り付けも多く、「独創性や創作性は明らかで、私が振り付けの著作権者」と主張。角川映画と振り付けに関する契約書は交わしていないが、脚本家と同様に二次使用料を受け取る権利があるとしている。

 一方、角川映画側は今月20日の第1回口頭弁論で「わたり氏は著作権者とはいえない」と反論し、争う姿勢を示している。

 関係者によると、映画界では契約書などを交わさないケースも多く、日本振付家協会の宮崎渥己理事長は「振付家の著作権は規定が確立されておらず難しい問題。最初に書面を交わすなど、振付家側も意識を高めないといけない」としている。

      


 この記事に関連し、弁護士の山口勝之氏(西村あさひ法律事務所所属)が日経パソコン6月23日号に「シャル・ウイ・ダンス事件の波紋」と題する次の一文を寄せています。
長文になりますが、再録してみます。

       

 <新聞記事を紹介した後に>
 では、メイクの人が「私のメイクは創作性がある」と言い出したり、美術担当が「私の舞台セットは芸術だ」と言い出したらどうなるのかとある人に尋ねられた。確かに気になると思い調べた。
 この問題を考えるに当たっては、振り付けが著作物に該当するか、該当するとして誰が著作権者か、舞踏家が著作権者の場合に映画製作会社に二次利用権があると言えるか、という順番で検討する必要がある。

 まず振り付けが著作物に該当するかだが、著作権法において著作物は「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」と定義されている。表現の方法や形式は限定されていないので、身振りや動作であっても思想や感情が表現されていればれっきとした著作物であり、舞踏著作物と呼ばれている。過去にバレエ作品について争われた裁判があるが、その裁判でも振り付けの著作物性そのものについては当事者間で争いがなく、別の争点が議論された。創作性のあるダンスの振り付けが著作物であることに疑問をはさむ余地はあまりなさそうである。

 次に誰が振り付けの著作権者であろうか。著作物を創作した者が著作者であり、著作権は著作者が取得するのが原則であるから、本件の場合、振り付けの著作権者は原則として舞踏家である。ただし法律はその例外を定めていて、例えば舞踏家がその映画製作会社の従業員などであれば会社が著作権者となる。もう一つの例外が映画著作物の場合で、監督などその映画の製作において全体的形成に創作的に寄与した者は本来著作者であるが、著作権(財産権)自体は映画会社などの映画製作者が持つことになっている。

 ただし、これはあくまでも映画著作物の著作権であって、映画の中で使われている音楽・美術その他の個別の著札物はこの限りでない。これらの著作物には映画著作物とは別に独立した著作権が成立し、その著作者(クラシカル・オーサー) は映画製作者とは別に著作権を行使できる。もっとも単に助手として関与するような場合は著作者とはならないので、例えば美術監督の指示の下に助手が舞台セットを造り上げた場合は美術監督だけが著作者となる。

 本件においては映画製作者と舞踏家の関係が不明であるためコメントは差し控えたいが、一般論としては、舞踏家が監督などからどの程度の指示や監督を受ける立場にあったかによって、振り付けの著作権者が舞踏家か映画製作者かの判断がわかれるものと思われる。

 最後に、仮に舞踏家が著作権者であるとした場合、映画製作会社はどの範囲でその振り付けを利用する権利譲渡または権利許諾を受けていたと言えるであろうか。これは契約の話となり、結局は、舞踏家と会社との間でどのような合意がなされていたかに尽きる問題である。

 理想としては、契約書においてその映画に限るのか、それともDVD化やテレビ放送、リメイクなども含むのか、あるいはオンデマンド提供や現時点では想像できないような他のあらゆる利用手段まで含むのか、詳細な取り決めを行っておくことが望ましい。本件で取り交わされた契約内容は報道からは不明だが、もし何も取り交わされていなかったとすれば、一体どの範囲での利用について合意があったかは、権利譲渡は著作権法61条の推定規定を踏まえて、裁判所が苦労して決めることになるであろう。

 その場合、映画製作時点で舞踏家が通常予想できたはずの映画の利用範囲というものが、一つの目安になると思われる。

     

 長々と記してきましたが、この問題、皆さんはどう思われますか。


 

 
 
 

 



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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
著作権 (toto)
2008-07-02 11:29:51
わたりさんのような芸能活動?をしてる人は広く宣伝されたという効果もあるので本件(著作権の主張)は私には疑問です  ダンサーとしてのわたりさんは認めますが…
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Unknown (ksafmt)
2008-07-03 09:49:05
toto 様

コメント有難うございました。
振付家の著作権が確実に保証されていない現状では、それを主張するのは、無理のような感じを受けますね。

映画「シャル・ウィ・ダンス?」のブームが去って数年、わたり氏の中に何が起きたのでしょうか。
それが知りたいです。 
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