糸乃こまりのストーリー

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12 横浜港大桟橋

2024-10-07 18:09:05 | 世界一周ひとり旅
いよいよの朝。パタパタと支度をしている裕子。聡美は内階段を二階に上がって行く。そして裕子のリビングルームのドアを叩いた。

「ハイハイ」

と裕子の声。聡美はドアを開け

「お母さんお気を付けて。私は用事があるから横浜港には行けないけど」

「いいのいいの」

「時々は窓開けて空気の入れ替えしておきますから」

「ホントにいいお嫁ちゃんで良かった良かった」

 と例のセリフで笑顔たっぷりの裕子だった。

 聡美は笑顔を軽く流してトントンと内階段を降りた。そして一階のリビングルームのソファに座って大あくびの聡美。しばらくしたら外階段のカツンカツンと降り音に聡美は小声で

「行ってらっしゃい」

 一方裕子のニ階の静けさ。少し乱れたベッドの隣のテーブルの上に花がらで包んだ位牌があった。

 そして聡美はソファですやすや眠っているが近づいてくる車の音で目を覚ます。車が止まる音。ドアが開く音。裕子の声

「お願いよ。待っててよ」

 外階段を上がる音。カツンカツンカツンカツンカツンカツン。しばらくして降りてくる音。

 「いつもお騒がせ」

聡美は小声でクックッククックックと笑っていた。車が再び走り出した。

 横浜港大桟橋全景。入口では自動車やタクシーが並んでいる。大きめのバッグを抱えている裕子は途中でタクシーを降りたらしい。鞠子は裕子に気づいたようで少し離れたところから飛んで来た。

「ママ、遅い」

「忘れ物しちゃって」

「マサカ、パパ?」

「そんなわけないでしょ」

「なんでもいいけど、遅い遅いって叔母様ご立腹よ」

 話しながら走って進む二人。当たり前だけど人があふれている。集合場所に飛び込むと遠くから手を振っている喜子。

「裕ちゃん遅い遅い」

「ごめんなさい、お姉ちゃん」

「ママ、もう出国ゲートに行かなきゃ」

「そうね」

 裕子は改めて喜子の両手を握る。

「お姉ちゃん、色々ありがとう。いつまでも元気でいてね」

「なぁに?」

 裕子は今度は鞠子に

「私がいなくなったら弁護士さんに会って」「わかったわよ」

 喜子は怪訝で

「弁護士?」

 慌てて一方的に「じゃあ」と叫びバタバタと小走りになる裕子。彼女の背中を眺めている鞠子と喜子。裕子は出国ゲートに入って行くのが見えたがもう裕子に話しかけている男性がいたのが見えた。

「もう彼ができたの?」

「マサカ」

「それより裕子が弁護士って何!?」 

「叔母様〜美味しいランチをいただければ告白しますよ」

「そういうところが裕ちゃんにそっくり」

と呆れ顔を、。

 出国ゲートでは白髪の男性が裕子と話していた。御愛想の裕子はあまり知らない人でもニコニコするのが得意。挨拶する彼に

「どこかでお会いしたことありますよね」

「あそこのスポーツクラブですよ」

 と港と反対側を指さした。

「あぁ~そうでした」

「いつもお友達と出ていらしてた」

 二人は話しながら出国ゲートに進む。

「彼女体調悪くして私も行かなくなっちゃいました」

「そうですか、私の友人も突然死。明日は我が身! あっ、すいません。楽しい時間に」

「私もよくわかります。あっ! だけどお名前!? 私は片山です」

「私はつまらない名字の鈴木です。今、鈴木さんと呼べば何人もの人が振り向きますよ」

 裕子はクスクス笑いながら

「慌てて来たけど、いよいよ世界一周!!」

 少し大きな声で叫ぶ裕子。舌を出すが回りの人たちも裕子に大きく拍手していた。鈴木もあふれた笑顔を裕子に送っていた。

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11  ラブストーリー

2024-10-07 18:00:12 | 世界一周ひとり旅
裕子の二階の玄関である。

 若い宅急便屋が山ごとの段ボールをチェックしている。

「引っ越し用ハンガーボックス3、段ボール大4、中4、キャリートランク1、計12以上」

「お兄さん、オーケー」

 裕子はかなり上機嫌。外階段で宅急便屋を見送ったが電話の音で慌てて室内に駆け込んだ。相手は鞠子だった。 

「段ボール出したところ」

「とりあえず完了ね」

「フォーマルは8回あるから着物入れちゃった!」

 チワワを抱いて電話している鞠子。クスクス笑いながら

「ママ、タイタニック号思い出してよ」

「もうイヤね! また沈む話?」 

「違うわよ。映画だってラブストーリー。船で恋が生まれたでしょ」

「そうだったわね」

「ママだってできるかも」

「ママは未亡人よ」

「未亡人だって恋はできる」

「無理無理。まだパパがいなくなってまだ3年」

「じゃあ、パパも連れて行かなきゃ」

「えっ!?」

 鞠子との電話中にベランダを開けて空を見上げる裕子。

「だってパパはあそこ」

と空を指差す」

「家の中にいるでしょ」

と鞠子。

 裕子絶句。家中眺めるがわからず

「幽霊?」

 またクスクス笑う鞠子。

 夜になってベッドルームで鏡に向かっていた裕子。ネグリジェ姿でパックをしていた。肌が乾燥しているから無表情で裕の位牌を立てたり横にしたりする。それから裕の位牌を花がらのハンカチで包んでベッドの横のテーブルに置いた。






 
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