非正規男性の婚姻率が低い。そんなニュースが流れている。
夫は非正規労働者である。昔は零細企業をクビになったり正社員登用ありの会社でいつまでもバイトのままだったり、転々として働いていない時期も長かったが、某上場企業へ非正規入社をした。社内に契約や派遣の非正規女性はかなり多い。定年後に年金をもらいながら嘱託勤務の高齢男性もいる。しかし、60歳未満の男性雇用者で非正規雇用なのは夫ただ一人だけだ。
零細企業にいた頃は、社内で女性従業員といえばバブル前期に入社した自分よりも年上の事務員が1人、2人いるだけだったらしい。家族経営なので、社長の奥さんが重役出勤でたまにやってきて経理をやってるとか、差し入れをしてくれるとか。社長が年上なので社長の奥さんも年上。そんな環境にいた。
ところが、今の会社に来てから初めて自分よりも若い女性社員がいる環境にやってきた。2010年代の団塊退職に伴う新卒就職の大幅好転で、上場企業に若い新入社員が大勢入社してくる。自分よりも10歳も20歳も若い女性従業員に囲まれた環境になったのだ。
夫にお気に入りができたらしい。夫よりも一回り以上若い正社員女性である。自分に好意を持っているのだと言い張る。告白されたわけでもない。プライベートでの付き合いもない。ただ会社で勤務中に親切にされただけである。
夫の会社には夫よりもずっと若く、給料もいい正社員男性が大勢いるのである。非正規おじさんなんて相手にされてないよ、と言っても、若い女性はおじさんが大好きなんだ。うちの会社の正社員女性は新卒でも俺よりもずっと給料がいいから、俺を養うことができる。だから男に金なんか求めていないと言い張る。いや、会社で唯一の非正規おじさんなんてどう扱っていいかわからないではないか。新卒女子社員よりも給与も低く役職もなく、すべての正社員より立場が下であり新卒にとってすら部下に当たる。ただ年齢がずっと上なのでタメ口で接するわけにもいかず、丁寧な口調になるしかない。
案の定、そのお気に入り女子社員は若い正社員男性と社内結婚した。夫は落ち込むどころか鼻息荒い。彼女は自分のことが好きだったのだが、自分が既婚者だから泣く泣く諦め、その男と仕方なく結婚したのだと言い張る。おじさんの妄想は怖いのである。