日本の一人当たりGDPは世界27位で、先進国中ほぼ最下位である。日本はかなり貧しい国である。
しかし、実感している人は少ない。日本はいまだに豊かな国であると妄想している人が多いのである。日本人に実感が少ないのは、正社員の給与はまだそれほど悪くはないこと、大企業正社員と公務員は終身雇用が守られているからである。
一方で、終身雇用から外れた女と学生といった扶養家族に金は必要なく、非正規労働者として低賃金に甘んじることで、男性正社員の給与はそれなりの水準を維持してきた。官僚にとっても自身の給与算定基準となるのは大企業正社員給与だけなので、それ以外(非正規・中小零細企業)の給与は全く興味関心がない。
今の日本は男女問わず、すべての従業員の正社員雇用が義務付けられた。男性が家事をするのは当然のことであり、女性は家事労働から完全に解放された。手厚い育児介護休業制度や短時間勤務制度の充実で、たとえパート並みの短時間勤務でも正社員として賞与や退職金にありつける恵まれた国になった。だから貧困は起こらない。果たしてそうであろうか。
女性の就業率は6割、うち非正規率は7割である。企業は非正規を減らすなどと言っていない。むしろ、正社員に手厚い給与と待遇を保証するため、最低賃金で働く人、正社員が休業した時のみ雇用されて復帰と同時に解雇される人はますます必要不可欠になっている。アベノミクス末期に盛んに人手不足が宣伝されたが、こういう人が足りなくなったと騒いだのである。不景気の時ですら人手不足だ、若者は仕事を選び過ぎだと喧伝されて、賃金が低くすぐに解雇される仕事に就かされたのである。
日本の失業率が非常に低い。女は就職できなくても失業しても、けして表に出ることはない。日本で失業者として数えられるのは、ハローワークに求職登録して就職活動している者だけであり、家庭に入った者は統計に出ないからだ。男女共同参画会議は独身を令和の日本人の標準的生き方と定義した。しかし、この数を表に出すことなどできるはずもない。発展途上国より悲惨な日本の現状は隠さなければならない。
地獄はこれからである。これからはより多くの人が日本がいかに貧困国であるかを実感するようになるであろう。
日本はとても貧しい国である。