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2018年11月23日山北町パネルディスカッション「蒸気機関車再び・新幹線開業と東京オリンピック」

2018年11月23日金曜・祝日に神奈川県山北町の生涯学習センターで開催されたパネルディスカッション・トークショー「蒸気機関車再び・新幹線開業と東京オリンピック」を聞いてきました。2016年のD52蒸気機関車の復活運転から2周年記念、また当日の山北町の産業まつり開催にあわせたイベントのようですね



今回このディスカッション・トークショーを紹介します



入場料は300円。チケット代わりに鉄道公園見学記念の入場券をもらいました。
この入場料300円はD52機関車の線路延伸費用の寄付金に全額充当されるとのこと。
以下当日のメモを元に講演の要旨を紹介します。

14時30分に開演。最初に湯川山北町長の挨拶
(鉄道関係で)年に一つは新しいことをやりたいと考えている。D52の復活運転、資料館、そして今回初めてこのようなパネルディスカッションを開催できて光栄である

第1部「蒸気機関車再び」のパネルディスカッション

ディスカッションの4人の自己紹介。
まずは司会役の前橋氏。鉄道総合技術研究所で新幹線の研究など。後年になってSLの研究をやることになった。現在は東京交通短大の非常勤講師も務めている。

関亀夫氏。国鉄に入り茅ヶ崎機関区に配属。最初はSLのロッド磨き

大石和太郎氏。国鉄で機関助士に。東京から水戸や宇都宮への貨物列車に乗務。片道4時間で石炭2トンを焚く重労働。水戸線では単線でタブレットのやり取りもあり忙しかった。

関根氏S39年に国鉄に入り、支線用SLのメンテナンスを5年ほど。その後DLの業務に。後年、秩父鉄道やJR東日本の復活SLの整備など。定年後は秩父鉄道、有田川鉄道公園のD51に携わる。

パネリスト各氏のSLの思い出、係わりなど
SLの他に暖房車の缶焚きもする。トンネル内は釜焚きが禁止されていたが、長い丹那トンネルではボイラー圧が下がるので途中から焚くが煙で後続列車は信号が見づらくなる。後で怒られるがしらばっくれてやり過ごすなど
当時の電気機関車列車は客車の暖房用に暖房車が必要だった。小型のB6機関車のボイラーを流用した暖房車がいた(関氏)

東京工業大学で機械工学の教材としてミニSLを製作している。1000分の1ミリ単位の精度が要求される。ミニSLといっても単純に本物を縮小すればいいというわけではない。ミニSLは設計が難しい。更に作るのも難しく走らせる広い場所も必要(大石氏)

釜石線のSLでは第4動輪の発熱で車軸のパットが焦げて釜石到着6時間遅れ。その後一睡もせずに朝まで修理する大変だった思い出がある。SLは生き物のよう。給水する水の水質も場所によって違いその影響もある
山手線(田端~品川?)のSLの貨物列車を運転もしていた。五反田・目黒付近を初め勾配など意外に難所が多い。原宿の宮廷列車のホームを煙で汚さないように気を使うことも。
D52形機関車(山北で保存されている形式)
戦時中職員が兵隊にと取られるなどする中で輸送力が必要で開発された。D51よりも出力が強化されているが、戦時製造で安普請。285両製造された。戦後、貨物輸送から旅客輸送にシフトし49両がC62に改造された。
日本最後の大型SLである
(関根氏)

研究所勤務時代、後年にSLの仕事が舞い込む。圧搾空気でSLを動かしている常松氏と知り合い、山北のD52はコンデションが良く動かしてみたいという話を聞く
(前橋氏)

蒸気でSLを動かすにはお金がかかる→山北では国から地方創生でお金が出たのでリーズナブルな圧搾空気で動かす方法。現在の12m動くだけでは短い。100mぐらいになれば機関士の養成も出来てよい
(関氏)

SLは人間に近い。今の電車に較べて凄い手間がかかり、生き物のようだ。手間がかかる分愛着が沸く。
(蒸気での動態保存は)月1程度の運転は少ない。運転しない間、水を入れたまま(湿式)か水を抜く(乾式)でも違いがある。
(大石氏)

山北の圧搾空気で動かす方式では本線走行は難しい。コンプレッサーの容量の問題があり速度も出ない。御殿場線でのSL運転はトンネルの煙の問題もある。
勾配はSLは低速の粘りが凄い、登り勾配を3~4km/hで登ることも出来る。電気機関車ではこのレベルの低速は空転等で無理。
(関根氏)

今後の保存活動について
人材養成が必要(大石氏)
D52が動くのは山北だけ。大切にしないといけない。若い方に参加して欲しい(関氏)
(蒸気運転の)動態保存にはお金がかかる。全検(車の車検のような法定検査。7~8年に1回)費用が1.5億。1両手放した真岡鉄道などかなり苦労している(関根氏)
リーズナブルな保存方法。および後継者の養成が必要(前橋氏によるまとめ)



ここで休憩をはさみ第2部に。
「新幹線開業と東京オリンピック」がテーマのトークショー

第2部では勝間田氏(鉄道技術研究所・山北D52会会長)の司会で、東海道新幹線開業日の上り1番列車の運転士を務めた大石和太郎氏と関亀夫氏のトークショー。(当時の新幹線は運転士は全区間2人ペア乗務。途中で交代した)

なぜ自分が1番列車の運転士に選ばれたのか??
新幹線50周年のテレビ取材などで何回も聞かれて困ってる(笑)
当時の国鉄の慣例で下り1番列車はベテラン(50代?)が選ばれた。上り1番列車の自分達は2人とも31歳の同年齢の若手。

新幹線建設に当たって十河総裁はローカル線の建設をストップして新幹線を強行するなど政治問題。資金不足がわかっていながら着工するなど。国会議員の反対もあり政治問題、国鉄内部の派閥問題もあった。
開業時に200km/h運転を行いたいという現場の期待。一方で新幹線をよく思わない国鉄上層部では160km/h運転を指示していた。→そこに若手2人なら「200km/hをやってくれる」という期待で、同年齢の若手2人が選ばれたと思う。同年齢なので先輩後輩のような関係もない。当時の所長の談「関は物事に動じない性格だ」

司会の勝間田氏から
「手持ちのスマートフォンなどでgoogle検索で『大石 関 新幹線 朝日』で検索して欲しい。一番列車運転直後の颯爽とした?ふてぶてしい??姿の当時の写真が掲載されている」

東京オリンピックについて
今回のトークショーのテーマに「東京オリンピック」があるが、当時忙しくてイメージがない。大阪万博の方は16両化や大混雑など印象がとても強い。運転席直後のデッキまで満員で仕切りのドアを開けられないぐらい。

昭和39年7月25日にようやく新幹線のレールが繋がった。8月25?26?にATCでの訓練運転開始の予定が台風で9月にずれ込む。9月10日に大石氏の運転で世界銀行の視察団の試乗。15日に国鉄の監査。など突貫のスケジュールだった。「10月1日によく間に合った」という印象

この時期に非公式ながら試運転で東京~新大阪2時間54分運転に成功した(1回は停電で失敗)→3時間10分運転(210km/h)の自信を持ったが全体的に訓練不足だった
新人の指導などもあって関氏は開業前に2~3回しか運転してない(大石氏はそのことを知らず「関さんは慣れてる」と思ってた)

予算不足で6両か12両の決定が遅れた。こだまのみ停車の駅はホーム上屋が短かったのはその名残。

10月1日新幹線開業当日の話
列車は4時間運転(160km/h程度)のダイヤが設定され、最高160km/h運転で行う旨の通達が出されていた。
200km/h出すなら乗客が飽きる前、京都を出たら早々にやりたい。食堂車に速度計がありマスコミが詰めている。
予定より早く着きすぎない為に京都を出てすぐの東山トンネルや次のトンネルで徐行して時間を稼ぐ(トンネル内は徐行しても乗客にバレにくい)
滋賀県に入って一気に加速して200km/hついでに+10km/hおまけして210km/h達成。
滋賀県区間は試運転時の経験で路盤が安定しているので自信を持っていた。ただ車窓は近江平野なので速い感じがしない。米原駅通過時も210km/hを出した。
結果的に名古屋には3~4分早く到着したが、セレモニーで花束贈呈などもあり丁度良かった。セレモニーは聞いてなかった。浜松付近で関さんに交代。関さんは慣れてると思ってたけど・・。

品川付近の八ツ山トンネルなどで時間を稼ぐがダイヤよりも早すぎる。更に新橋付近から最徐行。山手線にも抜かされるが、車内の乗客や線路沿いのビルの人などが沢山手を振って出迎えてくれる。徐行がいい演出になった。

この上り1番列車の210km/h運転は、指令所や変電所などを新幹線推進派で抑えたクーデターのようなものだった。のろのろ運転の時間稼ぎなど指令にはバレてるはずだが、咎める電話(無線)連絡は全くなかった。同乗していた指導助役の田口氏も黙っていた。
東山トンネルの徐行運転は「架線電圧が急激に下がったので徐行した」という言い訳を用意していた。実際は下がってない。贈呈の花束などでメーターもよく見えなかった。

この後は会場の質疑応答にこたえる形でトークを展開
→新幹線の設計をしたという三木氏が一番列車に乗っていたという話だが
初日は座席は完売したが実際はガラガラ。切符をコレクションする為に買っても乗らない人が多かった
島氏・十河元総裁など開業時には国鉄を退職していた。

→一番列車は世界から注目されていたと思うが特別な思いなどはあったか?
10月1日以前に試運転で何回も乗っていたので特別な感情はなかった。関氏と大石氏の2人は事前にはあまり顔をあわせてなかった。

→前日(9/30)から当日(10/1)の2人の行動
大石氏
試運転のこだま号で名古屋に寄ってから新大阪に入った。当日の朝のセレモニーがあるとは聞いてなかった。30分早出を指示されて「寝る時間が短くなる」とぼやいた。運転後は赤飯を食べて帰宅。(当日朝の朝食は食べていない)

関氏
試運転列車の便乗で新大阪に入る。一番列車の本務(リーダー)は大石氏。何かあったとしても怒られるのは大石氏と思い安心!?
東京到着後、大石氏は本社に挨拶に行くといったが付きあわず、迎えに来た友達と東京駅近くで終電までマージャンをしていた。

→途中の時間調整のノロノロ運転などで定時に到着させるための計算は??
ヤマ勘でやっていた。名古屋到着前に稲沢付近から徐行したが早着した。

→新幹線(試運転列車)に最初に乗った時の印象などは?
関氏
鴨宮実験線の試験車両A編成・B編成などは気密が不十分でトンネルの「耳ツン」が激しかった。
エラい乗物に乗ってしまった・・というのが第一印象

大石氏
自分は色々運転するのが好きでセスナ機の免許も取った。新幹線はつまらない。速いと思うのも最初だけで下りで新横浜を過ぎる頃には単調で速いという感覚もしなくなる。
新幹線は踏切がないのはありがたい。運転士は踏切は気をつかうので・・。新幹線はつまらないが仕事だから仕方がない。
旧型国電は運転してる感があって楽しかった。ラッシュ時になかなか効かないブレーキなど。モーター音も好き。ディーゼルカーも好きで、新幹線の運転を辞めたら小海線などでディーゼルカーを運転したかった。液体変速の音もまた良い

といったところで、予定時刻から2分ほど過ぎたところで終了。
主催者側は他にも面白いトークのネタを用意していたようですが、時間の都合で披露されなかったのは少々残念ですね。この後は舞台上の大石氏・関氏の2人を写真撮影出来るコーナーに。



今回、講演中の一般参加者の会場内の撮影等は禁止となっていましたが、最後に記念に撮影出来る時間が用意されたのは嬉しい試みですね。また特に第1部の司会の前橋氏は短大の講師も務めているというだけあって?進行や出演者の話の引き出し方が上手でディスカッションを上手く盛り上げていたのが特に印象的でした。



ちなみに新幹線1番列車運転士の関氏は現在山北町に在住しみかん農家をやっていて、会場では関氏のみかんが「超特急みかん」として販売されていました。他にD52グッズの販売などもありました。

第2部の方は、特に最後の辺り今回のテーマを考えると身も蓋もないような感じにもなりましたが、実際の「率直な感想」ということで、こういった生の声はなかなか貴重なものです。
特に10月1日の210km/h運転をする為の徐行運転の話など「徐行して調整した」ような話は他でも読んだことがありますが、今回の話のような生々しい話や国鉄内部の反発の部分など、リアルな話が聞けたのは面白かったです。

一方で第1部・2部共にレジュメの配布がなかったこともあり、鉄道に関してある程度の予備知識がないと理解しづらい部分も少々あり、鉄道に詳しくない人には今一つな部分があったかも?というのは心配です。

鉄道(趣味界)はやはり「車両研究こそが王道」といった部分が多かれ少なかれ存在して、特に今回のような当時職員だった人の生の声。というのは貴重でありながら記録に残りずらく、ともすれば時代とともに忘れ去られてしまうことも多々あることも多いでしょう。こういった貴重な「当時の現場を知る人の生の声」が聞けたのは良かったです。

実のところ私は今回の講演は付き合いのようなもので参加した部分があり、あまり期待していなかったのですが、嬉しい方向に予想が外れたといいますか行って良かったです。
神奈川新聞などでも事前に紹介されたそうですが、会場には結構余裕があったので、もっと前広に告知出来れば尚よかったなと思います。


注:新幹線開業時の4時間(160km/h)運転は公には建設直後で路盤が安定していない為。とされているが、新幹線建設を強行した十河総裁への反発など国鉄内外の新幹線反対勢力の意趣返しという「外圧」が強く影響していたのではないか?という大石氏の談が2014年10月1日の読売新聞記事でも記されている
https://www.sankei.com/west/news/141001/wst1410010017-n1.html

トークの順番などは一部分かりやすくするために変えています。
当日のメモを元に書いていますが、実際のトークとニュアンスが変わっている部分などある可能性がありますが了承願います。

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2018/11/25 2:45(JST)
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