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ブックオフ小禄店&マンガ倉庫那覇店

2013-09-26 11:09:48 | レコードショップ/中古屋放浪の旅 

諸々の関係で東京から沖縄にしばらくいることになっていて,東京の中古屋巡りができずフラストレーションが溜まり気味だったので,小禄の方に足を伸ばしてみた。車も原付もないのでバスとモノレールで移動。東京と違って双方運賃がバカ高いのが辛い。我が地元の「往復400円ちょっとで東京に買い物に行ける!」というあの幸福感はまず味わうことができない。
今回巡ったのはブックオフ小禄店とマンガ倉庫那覇店。




住所:沖縄県那覇市赤嶺 2-1-7
規模:中型店舗(大蔵多摩堤通り店 相模大野店 などと同規模)
取り扱い:古本 古CD/DVD その他(古着等)

中古屋巡りをする上では良くも悪くも標準と定めるのがブックオフ。この小禄店はB・STYLEとスペース共用らしいがそちらはここでは言及しない。
一見CD,古本共に一般的なブックオフという感じだが,細かく探してみると目に付くものが色々ある。特に洋楽にそういうものが多い。邦楽の掘り出し物が著しく減ったのはここ数年どこのブックオフでも同じではあるけど。やはり規模が大きいと大きいだけめぼしいものが集まってくる。ただ,60'sロックはあまりおいていなかった。長田店がそっちの方でかなり在庫があったので期待していたのだが,それほどという感じ。邦楽でもアイドル歌謡などはあまり置いていない。フォーク系はまあまああったかも。でも,ゴールデンハーフのベスト盤にはちょっと触手を動かされた。しかしオリジナルアルバムが既発なのでパス。
しかしそうは言いながらなんとThe Seedsのレアトラック集『Travel With Your Mind』を発見。サイケ/ガレージ方面の偉大なバンドらしいが今まで全然しらなかった。名前は聞いたことがあるような気もするけど勘違いかも。カップスとかパワーハウスとかビーバーズとかGS関連のサイケグループなら少しは知っているつもりだけど,海外はまだまだ勉強不足(The ByrdsとかThee Headcoatsくらい?)
とりあえずThe Seedsは即買い。そのうち西新宿のバーンホームズにでも出向いてオリジナルアルバムの一枚でも二枚でも買わなければ。
漫画では諸星大二郎の『不安の立像』を買う。諸星大二郎はちょくちょく見かける。実家の方の古本屋に大量に置かれていたのが今度の帰省中にごっそりなくなっていたけど,まとめ買いした人がいるんかね。那覇のジュンク堂にやたら在庫があるので結構持っているけど,絶版のは運よくこうして見つけないと手に入らないので今回はラッキー。秋葉原のまんだらけに大量に置いてあったけど,帰省中に買えなかったのが悔やまれる。町田の高原書店にも何冊かあったなあ。




住所:沖縄県那覇市高良3丁目1-12
規模:大型店舗(ブックオフ町田店と同程度規模か)
取り扱い:古本 中古CD/DVD その他(楽器 古着など)

色々なところで評判のよくないマンガ倉庫。関東以北には店舗がないので沖縄に来て初めて訪れた。
入ってすぐにCD棚に直行。マンガや文学がイマイチ充実していないのは以前に確認済み。今回はCD漁りに重点を置く。
在庫そのものはブックオフよりも質が高いだろう。ひょっとするとRECOfanの小規模店舗よりも上かもしれない(旧町田店とか。西友内にあった頃。しかしツインズに移ってからも在庫は微妙だった。旧下北沢店には負ける。旧ばっかりだ。まさか二店舗閉店とは思わなかった)
棚の整理のされかたがどことなくRECOfanに似ているけどまさか意識してはいまい(沖縄には当然RECOfanはない)
マンガ倉庫ってもっと種種雑多なイメージだったんだけど,つまりブックオフ町田店250円棚みたいな「知っているアーティストのCDが一割程度しかない!」みたいな在庫を誇っていると思ってたらわりと良心的な品揃えなのね。でも超大型新古書店なんだからもっと玉石混合の凶悪なワゴンとかがあった方が特徴付けられて良いような気がしないでもない。大体,CD棚の小分けのタグに"ガセネタ"とか"タコ"とか"裸のラリーズ"とかあったけど,そんなのが入荷することはあるのかね。暗黒大陸じゃがたらとあぶらだこさえ入っていないというのに,それは無茶というもんではないかい。ラリーズなんて正規音源なんて当然入らないだろうからブートということになるんだろうけど,沖縄でラリーズのブートなんて持っている人いるのかね。
でも,ここの在庫は侮れん。まず初っ端に目についたのはスクーターズ。そう『娘ごころはスクーターズ』ですよ。まさかこんなものにお目にかかるとは。しかもそれほど高くない。ディスクユニオンでは大体中古価格が1000円を越えてくるのだが,それと比べれば遥かに安い。早くも当りを引いてしまったわけでありますが,すこし探していると今度はSuzy Susieを発見! こいつぁ驚いた。少し言及しておきますとこのバンド,シナロケの『You May Dream』とかフランス・ギャルの『夢見るシャンソン人形』とかをカバーしているファッキン・グレートな(昔punkファンだった頃によく見かけた表現)ガールズ・バンドなのです(ちなみに元シナロケの東川元則がプロデュースしたSuzee Suzyというバンドもありますが,あれとは全く別のバンドです)
個人的にはギャルよりもシルヴィ・ヴァルタンの『アイドルを探せ』を日本語カバーしているのが決め手。私としては『夢見るシャンソン人形』のカバーは小林麻美と南沙織のものが双璧かと思う。
「いやあ,入れ食いだなあ」なんて思っていると,今度はドアーズの1stを見つける。別に珍しいものではないが480円とやたら安い。どうも盤に傷アリの模様。店員に言って見せてもらうと,再生には問題なさそうなくらい,ブックオフだったらなんの断りもなく出しているくらい些細な傷だったので即購入を決める。
ドアーズを見つける前にはな,な,なんとSlaughter&The Dogsの初期音源集を見つけていた。こんなものがここにあるなんて,というかなんでマンガ倉庫なんかに売ったのだ? Sonic Surf Cityもあったけど本当に不思議。でももうpunkが聞き続けられなくなった身(アルバム一枚を通して)としてはここはパス。欲しいけど,買っても飾っておくだけになるだろうし。東京Rockers方面だったらまだ聴くんですがね。



今回の収穫

『不安の立像』 諸星大二郎著 ジャンプスーパーエース 集英社 第九版
『Travel With Your Mind』 The Seeds DOCD-1984
『ハートに火をつけて』 The Doors 2OP2-2344
『スージー・スージー・コレクション ~'93春~』 Suzy Susie BRCA-5101
『娘ごころはスクーターズ』 スクーターズ TKCA-30540


規格番号は検索時に便利なので一応記載。


東映・大映時代劇 15選

2013-09-13 21:03:22 | 映画(邦画)トーキー

東映/大映の時代劇映画から15本のこれぞ,という作品を選んでみようと思う。日活と東宝の作品はまだそれほど見ていないので外すとして,任侠物も今回は対象外とする。山下耕作や加藤泰,マキノ雅弘の股旅物,任侠物はまだ未見の作品が多いため。


『宮本武蔵』(61年 監督:内田吐夢 主演:中村錦之助)
『水戸黄門 天下の副将軍』(59年 監督:松田定次 主演:月形龍之介)
『眠狂四郎 女妖剣』(64年 監督:池広一夫 主演:市川雷蔵)
『眠狂四郎 炎情剣』(65年 監督:三隅研次 主演:市川雷蔵)
『斬る』(62年 監督:三隅研次 主演:市川雷蔵)
『剣鬼』(65年 監督:三隅研次 主演:市川雷蔵)
『十三人の刺客』(63年 監督:工藤栄一 主演:片岡千恵蔵)
『幕末残酷物語』(64年 監督:加藤泰 主演:大川橋蔵)
『さくら判官』(62年 監督:小沢茂弘 主演:片岡千恵蔵)
『仇討崇禅寺馬場』(57年 監督:マキノ雅弘 主演:大友柳太朗 千原しのぶ)
『忍びの者』(62年 監督:山本薩夫 主演:市川雷蔵)
『座頭市物語』(62年 監督:三隅研次 主演:勝新太郎)
『鳳城の花嫁』(57年 監督:松田定次 主演:大友柳太朗)
『風流使者 天下無双の剣』(58年 監督:松田定次 主演:市川右太衛門)
『ポルノ時代劇 亡八武士道』(73年 監督:石井輝男 主演:丹波哲郎)


とりあえずこんなところだろうか。
『宮本武蔵』は東映唯一の"巨匠"であった内田吐夢の傑作五部作の第一作で,芸術性と娯楽性を兼ね揃えた東映時代劇随一の名篇。内田吐夢の戦後第一作である『血槍富士』が見たいところだが,未だ機会に恵まれない。
『水戸黄門 天下の副将軍』は東映のエース松田定次が武蔵五部作に劣らぬ見事な仕事ぶりを見せた一作で,東映(セミ)オールスター映画の最高傑作。脚本が小国英雄であるので意表を突く展開,謎が謎を呼ぶ物語,スピーディーかつ歯切れの良い立ち回りと娯楽映画の全てを押さえた出来栄え。東映明朗時代劇の真髄ここに極まる。
『眠狂四郎』のシリーズは大映末期のドル箱シリーズで,中でもここに挙げた二本がとくにクールなスリラーとして成立した名篇。有名な円月殺法のストロボ撮影は三隅研次でなく池広一夫が始めたもの。雷蔵の眠狂四郎は一部では評判が悪いが,しかし映画としての出来は別であろう。
『斬る』『剣鬼』は"剣三部作"のうちの二本で,残りの一作は時代劇ではない。この時期の三隅研次・雷蔵コンビの仕事振りは鬼気迫るものがあり,どの作品も異様な緊張感に包まれている。その最高潮は多分『薄桜記』(58年 監督:三隅研次 主演:市川雷蔵)なのだろうが私はまだ見ていない。
『十三人の刺客』『幕末残酷物語』は東映の集団時代劇のうちでも特に傑作とされるもので,前者はアラカンの壮絶な殺陣,千恵蔵・月形のそれまでと違う感情を押し殺した演技が見物,後者は戦時下の軍部の圧政,または後の学生運動や連合赤軍における内ゲバを予見したような新撰組の殺人集団としての暴走を描いた加藤泰の異色作。私はこれを大映の『新撰組始末記』(63年 監督:三隅研次 主演:市川雷蔵)の後に見たが,『始末記』の終幕と本作の開幕が繋がっているので最初はまるで続編を見ているような錯覚に陥った。ちなみに『始末記』で雷蔵が演じた山崎烝は本作では内田良平が配されており,とてつもなくおっかない山崎であった。山南敬助を大友柳太朗が演じており彼の殺害される直前に中村竹弥演じる近藤勇に向って放った「試衛館の頃が懐かしいですな」という一言が特に際立って空しく響く。ちなみに集団時代劇としてその方法論の上で最も忠実かつ成功しているのは工藤栄一の『大殺陣』(64年)であるが,とはいえ劇場映画作品として成功しているとは言い難いものだった。しかしとても強い印象に満ちた作品ではあったので,一見の価値はある。
『さくら判官』は集団時代劇前夜の傑作。千恵蔵の遠山の金さんシリーズの最終作で,人気連作のうちでこんなに型破りなものを作って良いものかと驚かされる。東映時代劇数多かれどこれだけ異色な映画も珍しい。テイストとしては時代劇というより後の任侠路線に近いのかも。なんといって監督が『博徒』(64年)の小沢茂弘だし。
『仇討崇禅寺馬場』はマキノ雅弘の普段とは一寸違った印象を残す作品。私にとってはこれが最初のマキノ作品であったので,長いことこの監督の特徴を誤って見ていた。内容としては驚くほど冷徹な映画で,これだけカメラがクールに佇む作品もそう多くはないだろう。
『忍びの者』は御存知忍者ブームの火付け役。とはいえ期待したよりも地道に演出された作品で,娯楽性を求めるなら『十七人の忍者』(63年)の方が上だと思う。この時期の忍者映画には他にも『梟の城』(63年 監督:工藤栄一)や『忍者武芸帳』(67年 監督:大島渚 ATG作品)などがある。
『座頭市物語』はこれまた御存知勝新太郎のドル箱連作で,天保水滸伝を下に脚色した作品。市と平手造酒の友情を描いた作品で,造酒を天知茂が好演している。本作での平手造酒はニヒルではあるが『地獄の剣豪』(54年 監督:滝沢英輔 主演:辰巳柳太郎)ほど退廃的でない人間的に魅力のあるキャラクターとして描かれている。ただ,史実とは異なり大利根河原の決闘で繁蔵は殺されてしまう。実際にはこのとき笹川方で死んだのは造酒を含む数人で,繁蔵の圧勝に終わっているのである。
『鳳城の花嫁』は東映スコープ(シネマスコープ)第一作で,新東宝が『明治天皇と日露大戦争』(57年 監督:渡辺邦夫 主演:嵐寛寿郎)でシネスコを導入するのを知った東映がそれに先駆けんとして早撮りで製作した野心作で,主演には大御所と新人の丁度狭間にあった大友柳太朗があてられた。
『ローマの休日』や『或る夜の出来事』タイプのロマンティック・コメディで,前半はそれで散々笑わせておいてクライマックスに松田定次御得意の大立ち回りを魅せるという絶好の出来栄え。この立ち回りが大友先生の東映出演作の中でも出色の大暴れ。"決めるトコは決める"という松田定次らしい仕事振り。
『風流使者 天下無双の剣』 これは東映チャンバラ映画の集大成的作品といえる。市川右太衛門の『旗本退屈男』のシリーズは随分見たが,この人の立ち回りの真価はむしろ他の作品にあることが多い。その真骨頂は『任侠中仙道』(60年 監督:松田定次)なのだが,作品の出来も伴っているのは本作。市川右太衛門,大友柳太朗,若山富三郎,月形龍之介,桜町弘子というスター中のスターが勢ぞろいして剣の舞を踏む。こんな映画,今じゃ絶対作れないだろう。
『ポルノ時代劇 亡八武士道』は東映が,日本映画界が既に斜陽期に入ってからの作品で,この頃には東映はすでに時代劇の覇者ではない。丹波哲郎本人が企画を持ち込んだという本作はエロ・グロの極みであり,見る人を選ぶが,映画というのが本来見世物であることを知っている人なら楽しめるはずだ。かつて『ウルトラセブン』でアンヌ隊員を演じたひし美ゆり子が前張り一枚の熱演を見せているが,かつてのファンはこういう彼女の姿をどう思ったのだろう。メイクバリバリの伊吹吾郎とか不自然すぎる遠藤辰雄とか濃すぎるキャラが大量に登場。如何にもな東映バイオレンス・ポルノ・フィルムである。


以上,15選。『維新の篝火』とか『女狐風呂』とか入れられなかった作品は多いが,この辺で手を打つことにしよう。


*本文中敬称略


アイドル歌謡の面白さ

2013-06-30 01:20:15 | 日本の音楽

アイドル歌謡ってのはいつの時代も"本格派音楽ファン"という人たちに蔑まれるものなのでしょうが,改めて聴いてみるとやはりなんともいえぬ良い気分になれるものですな。特に風邪で寝込んでいたり,気分が落ち込んでいるときにはこういう曲が一番ではないですか。
ということで,アイドル歌謡10選を決めてみることにした。これを聴けば安眠間違いなし,というどこぞの御札のような代物だ。

1. 街角のラブソング 南沙織
2. 私の彼は左きき 麻丘めぐみ
3. ひと夏の経験 山口百恵
4. ロマンス 岩崎宏美
5. 春一番 キャンディーズ
6. 風の谷のナウシカ 安田成美
7. 夏の扉 松田聖子
8. 雨のフリージア 荻野目洋子
9. センチメンタル・ジャーニー 松本伊予
10. cherry YUI


1)は南沙織のどちらかといえば異色な曲。つのだひろが作詞作曲をしている.2)は世代を超えて知られる麻丘めぐみの最大の名曲。大体録音版よりテレビ版の方が歌が良い.3)は山口百恵の初期の曲で,この曲のヒットによりスターダムにのしあがった.4)いわずとしれた岩崎宏美のデビュー曲.5)元はアルバム曲だが人気が出たことでシングルカットされた.6)映画のイメージソングとして録音されたが結局劇中では使われず。安田成美はこの曲で歌手デビュー.9)松本伊予の多分唯一現在でも知っている人の多い曲。残念ながらこの人は現在だとあまり評価が芳しくない気がする。


ファンタジー時代劇の残党 『るろうに剣心』

2013-05-27 00:29:48 | 映画(邦画)トーキー




『るろうに剣心』 2012年 日本映画

監督:大友啓史
脚本:大友啓史/藤井清美
撮影:石坂拓郎

出演者 佐藤健 武井咲 青木崇高 蒼井優 江口洋介



たしか小学生の時分だった。『陰陽師』なる映画が公開されたのは。
おどろおどろしい予告編から,本格オカルト映画であると誤解した小学生のわたしは,母親の知り合いがスカパーで録画したというビデオを借り,怖がりなのにこれを見て,そして絶句したのだった。きっとおっかない化け物映画だと思っていたそれは,少女趣味全開のまるでセンスのないファンタジー映画であったのだ。この経験から,わたしはこの系譜にある『SHINOBI』だとか『あずみ』だとかいった"最近の若者向け時代劇映画"を「ファンタジー時代劇,略してファンタ時代劇」と称呼することにした。
何が酷いってアレだよね。特撮技術のかなり進んだ現在の映画で,なんで『妖蛇の魔殿』みたいな荒唐無稽ながら単純に面白い,てな具合の映画が一本も作れないのかね。山田洋次が時代劇映画の衰退について「古いチャンバラ時代劇の伝統を引きずりすぎている。新しいものをつくらないのは製作者の怠慢」てなことを言っていたが,それは作り屋売り屋の意見であって,一看客たるわたしからすればそんな単純なチャンバラ劇でさえまともに作れない現段階で,新しくて面白いものをつくるというのは先ず無理なんじゃないのか。本当に単純明快なチャンバラひとつ作れないもんね,今の日本映画界は。腐敗の極みと化したテレビ時代劇の終焉を見るとそれがよくわかる。まあ,大体テレビ時代劇ってどれもスケールが小さくて貧相で嫌いなんですけどね,わたしは。水戸黄門の最終回なんて本当に酷かったもん。これが四十数年続いたシリーズの最後かって,本気で思いましたもん。
で,来る2012年に公開されたファンタ時代劇の新作がこの『るろうに剣心』でありました。原作は御存知週刊少年ジャンプの暗黒期を支えた看板作品であります。ジャンプ歴代漫画の中でも屈指の名作と評されるほどの人気がある。
ただ,わたしは原作自体あまり好きではなかった。幕末から維新後の歴史の中で面白そうな部分だけを切り取ってきて,社会派っぽく味付けしてストーリーにしていくというのは思春期の子供相手には巧妙な手法だろうが,後になって考えれば新聞片手に歌詞を練るパンク・ロックのごときあざとい世界だ。ジャンプという漫画雑誌,そしてその講読層に一番ふさわしいのは荒唐無稽に荒唐無稽を重ねた『ドラゴンボール』や『北斗の拳』のようなギャグ・アクション漫画の方がよっぽど似合っていたように思う。
そんな具合だから,世間の言うような「原作とのイメージの差異」だとか「配役が合っているか否か」とかいったことには全く興味は持てなかった。まあ,普段からそういうことはどうでもいいと思っているほうだが,今回はなお更だ。
このような決して良いとは言えない前印象の映画化だったのだが,映画館に入って,席に座ってからはかなり期待していたのだ。なにせ,チャンバラ映画を映画館で見るのはこれが始めてであったから。わたしは平成生まれの若輩者故,東映や大映の時代劇を劇場で鑑賞するという機会に恵まれていなかった。また,チャンバラ映画を見ずに人情時代劇を見る気にもなれなかったのだ。
役者は揃った,さあ来い,チャンバラよ。この胸の高まりは開幕5分で早くも鎮まり始めた。なんだ,これは。主人公がどのように動いているのかまるでわからない。何がなんだかわからないうちに敵(と思しき侍)が斃れたり飛んだりするのだ。これは,迫力があるというよりも,むしろ「わからない」と言った方が良い。カメラもまるでセンスがなく,接写しかしない。ある程度距離を置いて役者の立ち回りを魅せるということをしない。製作者はチャンバラ映画を見たことがないのだろうか。
わたしは意気消沈して劇場を後にする。人生初のチャンバラ劇観賞がまるで陳腐な遊戯に摩り替えられてしまったのだ。不細工な娘相手には顔隠して妄想しなければ勃たんというが,こいつばかりは何をしたって勃ちやしねえ。今夜は何杯か呷らないと眠れそうにない。

*本文中敬称略



なんとなく『フリージアの雨』

2013-05-23 00:10:05 | 日本の音楽

どうにも最近体調が良くないため,就寝前に音楽を聞いたりすることが多い。普段は古いロックだとか,カルメン・マキや浅川マキのようなどうカテゴライズして良いのかわからないものばかり聴いているくせに,こういうときにはアイドルポップス,歌謡曲ばかり聴いてしまっている。
わたしは日本のロックのある意味一番それらしかった時代というのは,ニューロック前夜から72年前後までの短い期間のことで,それ以降のものはロックというよりニューミュージックとその残党だと思っている。近年人気の若手ロック・バンドたちとゴールデン・カップスの『スーパー・ライヴ・セッション』などを聴き比べればそれがわかる。結局,日本のロック・シーンというやつは私の知らない時代にすでに終わってしまっていたのだ。
それに比べるとアイドル歌謡とかポップスといったやつは,やはり生まれたときから耳にしていたものであるためか,本当にぶっ倒れそうなときに一番力をくれるものだ。歳をとるごとにわたしはこういうのを日増しに求めるようになっていくようだ。

そこで最近見つけたなかなか捨て難い盤の一つに,荻野目洋子の2ndアルバムである『フリージアの雨』がある。これがなかなか良いんだよ。荻野目洋子といえば『ダンシング・ヒーロー』とかでヒットを飛ばしたアイドル歌手だが,この初期のアルバムではあんな暑苦しいサウンドでなく,もっと風通しのよい爽やかな心持が歌われている。
歌われている世界は単純な若い恋の歌ばかり。ただ,実体感のないサウンドと詞がうまく合っていて,絶妙な浮遊感をかもし出している。とくに80年代の少女小説や少女漫画の世界観を彷彿とさせるタイトル曲が良い。眠りに落ちる寸前の自我の消失の中で,ともすると苦痛として印象付けられそうな日々の生活が,この無責任なまでの浮遊感というやつに清らかに洗い流される思いがする。実に気分の良いサウンドではないですか。




荻野目洋子 フリージアの雨