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検索ワード「 ウイスキー 」

2022-10-28 17:22:01 | 検索するだけの人
検索ワード:  ウイスキー ウヰスキー ウィスキー ウイスキイ ウヰスキイ  
ヒットした短歌: 16件


ウィスキーの零にすがり離れざる蟋蟀つひにその四肢伸ばす
窪田空穂 『老槻の下』, 1958, 1960


ウイスキーの強くかなしき口あたりそれにも優して春の暮れゆく
北原白秋 『桐の花』, 0000, 1913


若い虹鱒のやうな青年とゐて、ウヰスキーの味覚がさらに新しく
前田夕暮 『水源地帯』, 1930, 1932


ウヰスキイに煮湯そそげば匂ひ立つ白けて寒き朝の燈かげに
若山牧水 『黑松』, 1923, 1938


死にしやと見し蟋蟀はウィスキーに醉へるなりけり覺めて逃げ去る
窪田空穂 『老槻の下』, 1958, 1960


寂しき日ウヰスキイの酒さりげなく強ひたまふにぞ涙ながれぬ
北原白秋 『明治42年5月1日「スバル」5号』, 1909, [1909]


疲れ果て眠りかねつつ夜半に飮むこのウヰスキイは鼻を燒くなり
若山牧水 『くろ土』, 1919, 1921


とろりとしたウヰスキーの酔がまだ残つてゐる―蕗の葉の日の光だ
前田夕暮 『水源地帯』, 1930, 1932


いつ注ぐもこぼす癖なるウヰスキイこぼるるばかり注がでをられぬ
若山牧水 『山櫻の歌』, 1921, 1923


牧草のぷんぶんにほふそばをとほりながら、しきりにウヰスキーを思ひ出してゐる
前田夕暮 『水源地帯』, 1930, 1932


ウヰスキイに溺れてし夜にただひとつかなしきことをのたまひしひと
北原白秋 『明治42年5月1日「スバル」5号』, 1909, [1909]


いとはだらに鬢の毛白き老敎授はウヰスキイを呼ぶわれも然かせむ
若山牧水 『山櫻の歌』, 1922, 1923


たのしみは多く得がたし夜為事の後のウヰスキイなどそのひとつならむ
若山牧水 『歌集未收録歌』, 1919, [1919]


夜為事のあとの机に置きて酌ぐウヰスキイの杯に蚊を入るるなかれ
若山牧水 『くろ土』, 1919, 1921





検索ワード「 朝湯 」

2022-10-28 15:04:42 | 検索するだけの人
検索ワード: 朝 and 湯
ヒットした短歌: 65件


峡ふかく元湯湯の井をうかがへば朝寒を来し面ほてるかも
新井洸 『微明』, 0000, 1916


深き湯の蒼き水底に七色の光ゆらげり透きさす朝影
伊藤左千夫 『[左千夫全集]』, 1909, [1909]


仙石の元湯下湯もうす雪をわがごと見つつ人浴びん朝
与謝野晶子 『冬柏亭集』, 0000, 1933-1934


たまたまに朝早く起き湯など浴び獨り座りてむく林檎かな
若山牧水 『死か藝術か』, 1911-1912, 1912


春早き山のひびきを聞く如し。睦月の朝を 湯のたぎり来る
釈迢空 『倭をぐな』, 1950, 1955


ほのぼのと匂ひぬくとき秋草のなかをながるる朝のこぼれ湯
前田夕暮 『原生林』, 1921, 1925


二つ嶽むし湯の宿の朝月夜下つ毛人とほととぎす聞く
佐佐木信綱 『新月』, 0000, 1912


湯を出でて冷えびえしけれこの山の若葉の上にはるる朝空
島木赤彦 『太虗集』, 1923, 1924


朝の湯の/湯槽のふちにうなじ載せ/ゆるく息する物思ひかな
石川啄木 『一握の砂』, 1908-1910, 1910


いかづちの生るる熱き湯の音をかたへにしたる朝のくろ髪
与謝野晶子 『太陽と薔薇』, 0000, 1921


山の湯の朝のきさはしふらんすのマドモアゼルの肱に觸れつる
与謝野晶子 『心の遠景』, 0000, 1928


僧坊の岩湯の暗し朝の日は三千餘尺下を步めり
与謝野晶子 『白櫻集』, 0000, 1942


山なかは朝寒けし湯の底に白くし見ゆるわが足の色
島木赤彦 『柹蔭集』, 1925, 1926


山深みひたとしみ入る朝寒にはだかとなれば湯の気親しも
新井洸 『微明』, 0000, 1916  


春湯いでて二人朝きる恋衣や阿蘇は美渓の緋さくら霞
北原白秋 『明治36年12月15日「常盤木」5集』, 1903, [1903]


いまじぶん藤枝は三味をさらふらむお繁は朝の湯をつかふらむ
与謝野鉄幹 『相聞』, 0000, 1910


初秋や朝睡の君に御湯まゐる花売るくるま門に待たせて
増田雅子 『恋衣』, 0000, 1905


おのづから朝とく覺めつ窓おせば山をおほひて湯のけむり白し
古泉千樫 『靑牛集』, 1920, 1933


朝早やもたぎる風呂釜の湯を浴ぶとひたかぶる時し我適きにけり
北原白秋 『黒檜』, 1937-1940, 1940


百合さげて窓によりたる君が手を罪ぞと取りし湯宿の朝よ
前田夕暮 『歌稿 靑あらし』, 1905, [1905]


検索ワード: 朝湯
ヒットした短歌: 8件


湧き出づる十億劫の湛へ湯の蒼き湯つぼに朝湯あみ居り
伊藤左千夫 『[左千夫全集]』, 1909, [1909] 


沸かしたる山の朝湯に蜘蛛も蟻も命終りて浮びゐにけり
島木赤彦 『柹蔭集』, 1925, 1926


くろ髮も鷺の頭になしはてぬ雪の奥にて朝湯の立てば
与謝野晶子 『心の遠景』, 0000, 1928


すこやかになりたりと思ふ朝湯いでて山葵莖漬かみつつあれば
古泉千樫 『靑牛集』, 1926, 1933


錢入にただひとつありし白銅貨てのひらに載せ朝湯にゆくも
古泉千樫 『靑牛集』, 1918, 1933


群肝の心もゆたに朝湯出てて四方の雪山見るらむおもほゆ
伊藤左千夫 『[左千夫全集]』, 1907, [1907]


この熱い朝湯よ汗は出てしまへ靑の木の葉の如くなりてむ
若山牧水 『死か藝術か』, 1911-1912, 1912


朝湯あみて廣き尾のへに出でて見れば今日は雲なし立科の山
伊藤左千夫 『[左千夫全集]』, 1906, [1906]


検索ワード: 朝風呂
ヒットした短歌: 3件


朝早やもたぎる風呂釜の湯を浴ぶとひたかぶる時し我適きにけり
北原白秋 『黒檜』, 1937-1940, 1940




検索ワード「 朝酒 」

2022-10-28 14:50:33 | 検索するだけの人
検索ワード:  朝酒
ヒットした短歌: 10件


ふるさとの家のうからが祝ふ朝酒、われ独り飲みつつさぶし。年の朝酒
釈迢空 『短歌拾遺』, 1920, [1920]


朝酒はやめむ晝ざけせんもなしゆふがたばかり少し飲ましめ
若山牧水 『くろ土』, 1918, 1921
 

千曲川瀨々の流の氷りたる音ききながら酌める朝酒
若山牧水 『歌集未收録歌』, 1923, [1923]


牧水は朝酒三本すでにのみぬ山いたどりの鹽漬かみて
古泉千樫 『書簡にあらはれたる歌』, 1926, [1926]


時雨るるや朝酒ながきならはしの江塘が家の古板廂
若山牧水 『歌集未收録歌』, 1922, [1922]


秋の朝酒場の鏡に見入りたるわれのひとみの靜かなるかな
若山牧水 『砂丘』, 1914-1915, 1915


わが顏に川なみ映ゆれ朝酒に醉ひてたぬしくうつつ眠しも
中村憲吉 『しがらみ』, 1921, 1924  


あきびとの家に生れて、家さかり居り。親ふたりなき家を思ふ。年の朝酒
釈迢空 『短歌拾遺』, 1920, [1920]


おほらかにありつる昨の朝酒と再眺めして名護屋にぞ居る
北原白秋 『夢殿』, 1927-1939, 1939




検索ワード: 朝 and 酒
ヒットした短歌: 15件

梨の果の舌ざはりさへうとましきわが靜ごころわが朝の酒
若山牧水 『秋風の歌』, 0000, 1914


ひがし山大きくかすむ朝のかげ旅に遇ふ友と酒汲みしたしむ
中村憲吉 『しがらみ』, 1921, 1924


草ふかき富士の裾野をゆく汽車のその食堂の朝の葡萄酒
若山牧水 『別離』, 1904-1908, 1910


朝ぐもりはれゆく空に風見えてさびしさに酒をわがのめるかな
若山牧水 『秋風の歌』, 0000, 1914


酒買ひに朝はやくより來る子あり德利を提げてふるへてきたる
中村憲吉 『中村憲吉集(改造社版現代短歌全集)』, 1920, 1930


かたはらの女去りたるこころよさなみだのごとき朝の酒かな
若山牧水 『路上』, 1910-1911, 1911


一杯をおもひ切りかねし酒ゆゑにけふも朝より醉ひ暮したり
若山牧水 『白梅集』, 1916-1917, 1917


酒買ひに朝早くより來る子あり徳利を抱きて震へたるあはれ
中村憲吉 『しがらみ』, 1920, 1924


頭重くゆふべの酒の醒めやらで傾城と二人朝櫻見る
正岡子規 『竹乃里歌』, 1898, [1904]


時をおき老樹の雫おつるごと靜けき酒は朝にこそあれ
若山牧水 『砂丘』, 1914-1915, 1915


靑いろの酒をしぞ思ふ朝曇る夏の銀座の窓をしぞ思ふ
若山牧水 『死か藝術か』, 1911-1912, 1912


獨りなれば秋の小山の日だまりの朝の日かげを酒と酌まうよ
若山牧水 『みなかみ』, 1912-1913, 1913


地震の朝胸乳いだける呆れがほ見きとは云はじ酒せよ刀自女
与謝野鉄幹 『相聞』, 0000, 1910


朝の街いそぎ通ればをちこちに靑葉そよぎゐて酒ほしくなれり
若山牧水 『さびしき樹木』, 1917-1918, 1918


若山牧水の狂気のような飲みっぷり。1918年に「朝酒はやめむ」と言っておきながら、なんべんも朝酒を飲んでいる。虎杖、梨、なんでもあてになるらしい。

検索ワード「 朝寝 」

2022-10-28 08:40:14 | 検索するだけの人
ヒットした短歌: 24件
 

日曜の朝寝をすれば節々は痛むがごとし疲れけるらし
斎藤茂吉 『ともしび』, 1928, 1950


東京に居れば朝寝をするゆゑにかかる太陽見ることもなし
斎藤茂吉 『連山』, 1930, 1950


朝寝して新聞読む間なかりしを/負債のごとく/今日も感ずる。
石川啄木 『悲しき玩具』, 1909-1911, 1912


都はいま朝顏苗の賣聲のすがしきをきく朝寢なるらし
若山牧水 『白梅集』, 1916-1917, 1917


つばくらの羽にしたたる春雨を受けて撫でんかわが朝寢髮
与謝野晶子 『みだれ髪』, 0000, 1901


朝寝髪みよきばかりにかきなでて三日月がたの櫛一つ挿す
与謝野鉄幹 『相聞』, 0000, 1910


うとましき手形支払ふ日はちかししかすがに吾は朝寝なしえず
前田夕暮 『歌稿 天然更新歌稿』, 1923, [1923]


よもすがら音せし風のさびしさを思ひながらに朝寝をぞする
斎藤茂吉 『つきかげ』, 1949, 1954


樺いろの雲の中よりこしと云ふ童にまじり朝寢しぬるも
与謝野晶子 『佐保姫』, 0000, 1909


旅の朝寝覚によろし甲斐唄の主は青野の風に吹かれ行
釈迢空 『短歌拾遺』, 1905, [1905]


ほのほのと夜は明けにけり崎守の朝寝の窓にむるる水鳥
釈迢空 『短歌拾遺』, 1906, [1906]


高どのに春の寒さをたれこめて朝寝し居れは花を賣る聲
正岡子規 『竹乃里歌』, 1900, [1904]


戸をくれば朝寢の人の黑かみに霧ながれよる松なかの家
若山牧水 『海の聲』, 1905-1908, 1908


君はいま旅順にありと思ふては我れの朝寝もはねおきにけり
前田夕暮 『歌稿 あららぎ』, 1904, [1904]


五月雨に淋し池水鴛鴛鴦二つ將軍未だ朝寢ますらし
伊藤左千夫 『[左千夫全集]』, 1906, [1906]


五月雨を朝寢し居れば葦切が聲急き鳴くも庭の近くに
伊藤左千夫 『[左千夫全集]』, 1905, [1905]


うぐひすは餘寒のとばり厚く引き朝寝る窓を訪はぬ鳥かな
与謝野晶子 『毒草』, 0000, 1904


起くる朝寝る夜につづくごとくなるこの短さはこころ故かも : 窪田空穂 『木草と共に』, 1962, 1964

 
「寝違え」を検索したがヒットなし。歌人は寝違えたりしないらしい。朝寝坊もしないらしい。朝寝にしてもみなさん反省していて可愛らしい。
正岡子規、伊藤左千夫など初期の近代短歌からは、当時の市井の生活がよくみえてきます。

検索ワード「 みかん 」

2022-10-27 14:26:47 | 検索するだけの人
検索ワード: みかん 蜜柑
ヒットした短歌: 124件


うつり來し親子四人が朝な朝なたのしみて見るみかんの林
若山牧水 『白梅集』, 1916-1917, 1917


負はれつつ童ことばをいふきけばみかんすぱしといふにかあらむ
前田夕暮 『夕暮遺歌集』, 1949, 1951


はちはちと蜜柑の硬き葉を燃してゐろり大きなり蜜柑山の家
北原白秋 『風隠集』, 1923, 1944


あたたかし金の箔まだ半おく蜜柑の濡るる吉濱の雨
与謝野晶子 『白櫻集』, 0000, 1942


垂乳根の母が乳房に寄眠り一つの蜜柑小さ手に持つ
伊藤左千夫 『[左千夫全集]』, 1905, [1905]


磯山の金の蜜柑の鈴鳴らず鳴りわたる時海の日出でん
与謝野晶子 『白櫻集』, 0000, 1942


山際より蒼み晴れゆく朝しぐれ斜めに海に入る蜜柑山
若山牧水 『朝の歌』, 1915-1916, 1916


髪なびけ腕あらはに枕して寝し傍にまろべる蜜柑
与謝野鉄幹 『相聞』, 0000, 1910


汁すくなき蜜柑食みつつ步むなり雪の山路にからだはほてる
古泉千樫 『靑牛集』, 1919, 1933


幾年の長き病のなぐさめに蜜柑もらひて年暮れんとす
正岡子規 『竹乃里歌拾遺』, 1899, [1899]

少年が蜜柑の枝を携へて父と去りたりその母病めば
与謝野晶子 『白櫻集』, 0000, 1942


さ夜深み酒さめ來つつ頭いたし腐りつきたる蜜柑好み食む
古泉千樫 『屋上の土』, 1916, 1928


蜜柑の木のそばとほつて、冷い六月の空遠くあふいだ
前田夕暮 『烈風』, 1940, 1943


我が著きし德島のあさ雨ぬくし蜜柑植ゑたる街の家みゆ
中村憲吉 『軽雷集』, 1925, 1931


土荒き蜜柑畑の朝時雨鋤きすててひとは在らざりにけり
若山牧水 『朝の歌』, 1915-1916, 1916


しづかすぎる六月の日の暮、蜜柑の花のにほひ空にしみる
前田夕暮 『烈風』, 1940, 1943


何處へか光る雛をば放つべきかくぞ思へる蜜柑の木かな
与謝野晶子 『白櫻集』, 0000, 1942


店頭に蜜柑うづたかく積みかさなり人に食はるる運命が見ゆ
斎藤茂吉 『つきかげ』, 1950, 1954


蜜柑むくうすら赤みを帯びし手の小さき児がほし初冬来る朝
前田夕暮 『歌稿』, 1911, [1911]


祖師堂に今日の忌日を供へたる眞しろき大根黄に照る蜜柑
窪田空穂 『冬日ざし』, 1937, 1941


はやりかせにかかり臥ればわれの食ふ蜜柑も苦しあはれ寂しき
斎藤茂吉 『ともしび』, 1927, 1950


溫泉町行きつくしては樒賣る蜜柑賣る婆の二人に逢へり
窪田空穂 『鄕愁』, 1936, 1937


海のかぜ山越えて吹く国内には蜜柑の花は花に咲くとぞ
斎藤茂吉 『曉紅』, 1936, 1940


我友は蜜柑むきつつしみじみとはや抱きねといひにけらずや
斎藤茂吉 『赤光』, 1912, 1913


まじまじと眺めて蜜柑むきゐたり硝子戸越しの鰯子の浅照り
北原白秋 『海阪』, 0000, 1949


蜜柑袋かつぎ来る子をよびとめし友さびしからむ五つ六つ買ひぬ
北原白秋 『風隠集』, 1923, 1944


そことなく/蜜柑の皮の焼くるごときにほひ残りて/夕となりぬ
石川啄木 『一握の砂』, 1908-1910, 1910


向つ邊に輝くはなにぞ冬草の山のなぞへに照るは蜜柑ぞ
若山牧水 『歌集未收録歌』, 1922, [1922]


をさなごは吾が病み臥せる枕ベの蜜柑を持ちて逃げ行かむとす
斎藤茂吉 『ともしび』, 1927, 1950


蜜柑畑の雜草がなかにこんにやくいも莖ほそぼそと立てるさびしさ
古泉千樫 『靑牛集』, 1927, 1933


大き籠を擁へ来ましぬ蜜柑なりいまだ馴染まねど友が母刀自
北原白秋 『風隠集』, 1923, 1944


ゐのししを獲てこしやうに村人が蜜柑を負ひて訪へる山莊
与謝野晶子 『白櫻集』, 0000, 1942


人とはぬ病の牀のつれつれを文にも飽きぬ蜜柑剝かまく
正岡子規 『竹乃里歌拾遺』, 1899, [1899]

蜜柑の花の香がして、六月の寺の小娘、私をみるから私もみた
前田夕暮 『烈風』, 1940, 1943


小田原の蜜柑をわれにたまはりぬたまはりし人われと同じとし
斎藤茂吉 『つきかげ』, 1951, 1954


日のぬくき小川のふちの草の上にわが兒と二人蜜柑たべ居り
古泉千樫 『屋上の土』, 1917, 1928


あまり赤く、あまりあまきこの蜜柑かな、海はをんなに似て靑く動く日
若山牧水 『みなかみ』, 1912-1913, 1913


青蜜柑はみつつさむき冬枯の野みちを行きて茶の花をみたり
前田夕暮 『虹』, 1921, 1928


投ぐるほどに見る見る籠に滿ちし蜜柑眞白き錢と代へて提げ持つ
若山牧水 『朝の歌』, 1915-1916, 1916


通りがかりの旅寫眞師をよびとめて蜜柑の樹のかげのわれを撮らする
若山牧水 『歌集未收録歌』, 1913, [1913]


冬の灯にあかる蜜柑のかげひとつ我はひた対ふその灯の沁みに
北原白秋 『昭和11年1月1日「多磨」2巻1号』, 1936, [1936]


打ちもだし酸ゆき蜜柑を吸ひにけりただわけもなく悲しかりしに
前田夕暮 『生くる日に』, 1913, 1914


ちやるめらの遠音や室にちらばれる蜜柑の皮の香を吐くゆふべ
若山牧水 『獨り歌へる』, 1909, 1910


汽車の窓べに蜜柑の皮をむきつつも身をかきほそめ昨夜のこと悔ゆ
若山牧水 『みなかみ』, 1912-1913, 1913

不思議なものをみるやうな眼をして私をみる小娘蜜柑の花が匂ふ
前田夕暮 『烈風』, 1940, 1943


友とゐてさびしとは思はね一つの蜜柑いつまでもむきて酒うまからず
北原白秋 『海阪』, 0000, 1949