キムの上海日記 (外伝)

2004年10月から上海に赴任。中国でのExcitingな生活を日記として掲載。

紹興小旅行

2006年08月07日 02時14分51秒 | Weblog

7月15日、16日と紹興に行ってきました。
ちょっと前の話ではありますが、まあ記録ってことで掲載しておきます。
もともと、紹興にはずっと前から行きたかったんですが、なかなか予定が合わず(というかむしろ近すぎた為に)取りこぼしになっていた都市です。ここってば、結構魅力的な場所や物産が多くあるのです。まずは、日本人で紹興と言えば、「酒」。中国語で言うところの「黄酒」ってやつですね。良くある誤解ですが、紹興酒ってのは紹興地方で作られた黄酒の総称であって、お酒の種類って訳ではありません。ちなみに、ラオチュウ(老酒)ってのは黄酒の古いものを差します。原材料はもち米が主で、甕で寝かせて旨味を増していくのです。今回の旅の目的の一つは当然ながら本場もんの紹興酒を死ぬほど飲み尽くそーってのが一つ。お酒が有名ってことは、その土地に旨い水があるってことの証でもあります。そんな事からもわかるように、紹興は古い水郷としても有名で東洋のベニスとも呼ばれるほどの水の都らしい。なんで、今回の旅では街の周辺あちこちに点在している古鎮・水郷を旅してこようってのも一つ。それから、近代中国でもっとも有名な作家であり思想家である魯迅の生家があることでも知られております。更に書道家にとって見逃せないのが、「書聖」王義之ゆかりの蘭亭などが存在しているのです。

そもそも紹興の歴史的には、春秋時代の末期から戦国時代に栄えた国「越」の中心地として、その名を「会稽」と呼ばれておりました。この越国から生じた幾つかの諺は今でもよく耳にすることもあるので、知っている人も多いでしょう。「呉越同舟」や「臥薪嘗胆」なんて言葉は当時の越の歴史からでてきた諺です。中国の歴史的にみると、中原諸国の一つではなく、蛮異の国として見られてきた地方となります。より古い話では夏王朝の禹がここに葬られていると言われており、今でも禹陵として遺跡が残されておりますが、このあたりになると大分伝説というか神話に近いのではないでしょうか。いずれにせよ、会稽市はその後歴史の波に沈む事無く、王羲之や魯迅など文学・書に関連する人材を輩出しているってのは不思議な話です。場所的には上海の南250km程の距離にあり、杭州からは70kmで一時間ほどの近さに位置しております。上海から車で行く事も出来ますが、3,4時間はかかるので、電車で行くのがお薦めです。大体2時間半ほどで到着します。ただ、電車の本数が少ない為か、チケットを取るのは結構大変で、今回も一週間前に手配したにも関わらず、帰りのチケットは取る事ができず、杭州から上海へのチケットを手配して戻ってきました。

さて、初日。11時ごろの電車でしたら、これが素晴らしい。もともと軟座を手配していたのですが、どうやらVIPシートみたいのを手配してしまったらしく、飛行機のファーストクラスみたいなシートに揺られての2時間半ほどでした。ちょっと高かったけど、超快適。あれはよいね~。到着したのは15時近かったので、まずはホテル(紹興国際大酒店)にチェックイン。五星のなかなかのホテルでした。このあたりまでくると、さすがの中国でも高層建築が少なく、窓からの眺めがなかなか素晴らしいのです。さて、時間を無駄にしないために、まずは書聖王羲之の蘭亭へ向います。その昔、書道を齧ったことのある私としては、この場所は絶対に訪れなければならない場所のひとつです。書には幾つかの書体(古くは篆書や隷書から日本の仮名などね)がありますが、王羲之はその中でも現在の書体のメインとなる、楷書・行書・草書の三体を芸術的に完成させた人と言われております。「詩」であれば、杜甫が詩聖と呼ばれておりますが、書に関してはこの王羲之が書聖と呼ばれるほどの巨人なのです。この蘭亭にある序文は王羲之の代表作の一つで、行書の傑作です。俺も高校時代にはこの蘭亭序を何度も何度も模写させられたものです。懐かしい・・・。東晋時代の人ってことですから、いまからざっと1700年ほど昔になるでしょうか。あの有名な三国志の時代のちょっと後と言えばイメージ付くでしょうか?ちなみに、東晋の家系は「魏」の司馬懿から出ております。あの諸葛亮の好敵手ね。こうして歴史を俯瞰的に見るとやはりいろいろとつながりがあり面白いですね。

さて、蘭亭の内容は写真を載せるとして、その後は「魯鎮」に行ってきました。今回急遽時間が空いたところで、紹興を調整したために、日本のガイドブックが一切無く、仕方なく中国のガイドブックを参考にしながら行ってきたのです。その中に乗っていたのが、この「魯鎮」。あまりにも綺麗なその写真に新しさを感じて、ちょっと嫌な予感がしておりましたが、やっぱり、中身は新しすぎて、ちっとも面白い場所ではありませんでした。ちょっと興味があったのは、このあたりに行く途中の池や川などで真珠らしきものを養殖していた事くらい。そういや、J氏が前回上海来たときに「中国の淡水パールは杭州周辺であがっている」って言っていた気がします。その後は一旦市内に戻り、今度は有名な「八字橋」を見学に行きます。この橋、1200年ごろの南宋時代に建造されたものとやらで、結構な年代を感じさせます。なんでも中国に現存する最古の立体橋との事でしたが、まだまだ現役で利用されております。橋の左右には川を利用して暮らしている地元の人々が大勢います。透明度は30cmくらいの水(つまり汚い)ですが、お皿を洗ったり、野菜を洗ったりしているみたいです・・・かなり危険。

さて、その後はお楽しみにご夕食。今回目指したのは、紹興でも最も有名なレストランの一つ「咸亨酒店」です。こちらは、魯迅の小説にも出て来ますが、伝統的な紹興の料理を食べさせてくれるお店との事。か~なり楽しみにしておりましたが、なんと店頭からあの臭い(匂いではなく臭いね。)忘れてました。紹興って言えば、あの「臭豆腐」が有名料理なんですね。あの豆腐を揚げている匂いと言えば、夏の腐った魚市場よりも数段臭います。かのS先生も中国滞在中は、これだけは食えんと言い切っていたのもこの食材です。まあ、折角来たからには本場の臭豆腐を食わなきゃならんな~ということで、95%の義務感で一皿購入しました。口に含むとあのなんともいえない臭みが全身を犯していきます。あわてて紹興酒で飲み下さないと、窒息死しかねない臭いです。あー、なんでこんなものが大衆受けしているのか全く分かりません。まあ、臭豆腐はともかく、他の紹興料理はなかなか美味でした。特に豚の背肉を醤油で煮た物に高菜を加えたような料理は日本の懐かしい料理のようでなかなか○。一杯10RMB程で茶碗(Notコップ)になみなみと注がれる紹興酒も飲み応えありですね。このお店の隣には、結構有名な紹興酒の販売所があります。日本ではン万年するような逸品がそこそこの値段で手に入れることが出来るのです。本物かどうかは飲んでみるまで分かりませんが、紹興のこの場所で偽物掴まされるようであれば、もう仕方ないですね。あー、この日は酔ったな。

翌日、若干二日酔い気味ながら、東湖と浙江省の代表的な水郷の一つと言われる安昌古鎮を巡ってきました。東湖ではこのあたりの伝統的な船である「烏蓬船」に乗ってきました。これは足漕ぎ用の苫船です。長さ5mほどの小さな船ですが、船頭は器用に足を使って船を進めていきます。安昌は思った以上に昔の風景が残されており、かつての生活が垣間見れるようでなかなか良かったですね。外国からの観光客はほぼ全く居ない感じでした。ちょうど昼食時だったので、どっか河沿いの飯屋で昼食にしようと思ったものの、ここもやはり目の前の川で炊事を行っている事は間違い無さそうでしたので、安全の為断念。杭州までタクシーで移動してから昼食にしました。帰りは電車でぐっすりでした。てな感じで、ざっと1日半の行程でしたが、なかなかに興味深い紹興小旅行でした。上海観光にはもう飽きたって人には適度な距離かもしれません。

「咸亨酒店」にて入手して激レアのン十年物の紹興酒が我が家に眠っている事はここだけの秘密です。

キム

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