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メモ

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包茎から宗教まで――ある男子高校生の生き様。

2009-03-12 17:47:34 | Weblog
会社に落ちていた『SamuraiELO』と、エロ本を家に持ち帰る。
かたやファッション誌、かたやエロ本、中身や読者層は全っ然違うのに、広告の傾向は全く同じ、ふしぎ。

両方に入っている広告の中でも、気になるものが2つあった。

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合法 エクスタシー「オドム」快感SEX ギンギン♂ ヌレヌレ♀ 超絶頂!
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ああ、すんごいタイトル。
例によって使用者の声。

「オドムHって恥ずかしいくらい感じちゃう」(東京・20代女性)
「オドム合コンしませんかぁ~?」(名古屋・20代女性2人)
「マジ半端ない気持ちィよん」(広島・20代女性)
「今日もオドムナンパ成功!!」(大阪・20代男性)
「若い娘とハッスル最高ですよ」(新潟・50代男性)

どれも負けず劣らずの字面だが、私のお気に入りはこちら。

「デカちん!ヤリヤリ!」(福岡・30代男性3人)

なwにwwこwwwれwwww
投げやりなのに、敢えてこれにした勇気を加味すると、逆に投げやりじゃなく考え抜いて計算されつくしたものなのかもしれない…つうか思いつかないしこんなの…。
ああ、頭の中で再生すると、このままETきんぐあたりがリディムに乗せて歌い出す…。
デカちん! ヤリヤリ! デカデカ! チンチン! 俺らの! ギンギン! 仲間も! ビンビン!
ほらほらほらほら、歌ってるよETきんぐが……!!!!

たった8文字なのに、暇人の思考回路持ってかれる、この威力。
あと、オドムの威力を図にしている囲みがあります。
男性のてぃむぽ図に「カタい!」「強い!」「デカい!」、
女性のまむぅこ図に「ヌレる!」「感じる!」「イキまくる!」。
こう、ね、「ホップ!」「ステップ!」「ジャンプ!」だよね。
オスとメスの役割が、はっきりと言葉にされていて、何だか嫌な気持ちになる。

もうひとつ。

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増大成功率99% だから8cm長く6cm太く硬い男性器
増大神経インフィニティーラインへ直撃!
「スナイザー・∞インフィニティー」
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このネーミングセンス、素敵。
インフィニティーラインて!
あと使用法として、てぃむぽのイラストにこの∞をブッ刺しているので、しげしげ見てしまいました。
こりゃあ、どうやって使うんだ?? この広告からは全く不明。
気になって仕方がなくなり、この会社「コスモ○ーヤル」を検索。
すると、やふー知恵遅れがヒットした。
どうしたら包茎じゃなくなりますかって子羊の質問への回答に、それはあった。
彼は、すごく懇切丁寧に回答してくれている。

僕の場合は∞を買いまして、使用して勃起時1.5センチ(1ヶ月0.5センチ)伸びた道具が通販(コスモ○ーヤルという会社)で売られています。ペンのような形で液体を塗るタイプです。値段は9980円です。(1、2、3とあり、2がです)。ただ伸びる限界が来たとき、勃起したときに余裕が足りないときは(=海綿体の量が足りないときは)、同会社で販売しているメガンドル(こっちは錠剤タイプ)というのを(僕のように)使ってください。今は∞でさらに伸ばそうと試みています。(必要に応じてメガンドルも使うかも)

・()の使い方や文体が支離滅裂
・てぃむぽを「伸びる」と表現
・懇切丁寧すぎる

ゆんゆん? あなた、ゆんゆんなのね……!?
彼のほかの質問・回答を掘ってみると、新たな事実が続々と発覚。
彼は現在高校3年生で、知恵遅れは先月から始めたようだ。
最初の頃は、毎日何度も、真面目に勉強の質問ばかりしていた。
進学する大学の勉強を予習しているようで、たぶん理工学部っぽい。
その合間合間に、勉強が辛くなったのか、「勉強する意味とはなんですか?」「人は何故勉強しなければならないのでしょうか」「勉強している人に質問です。世界に一人きりになっても勉強しますか?」と、これまた懇切丁寧な質問が繰り広げられていた。
数学の次に英語の予習したようで、時系列的に英語の質問に移った。

そこから、彼の運命が大きく変わる。
英語の勉強にと、読んだ聖書が、彼の運命を変えてしまったのだ――。

まずは聖書に関する質問。そして、その2時間後に……。

「僕は自分には未来において究極の状態が訪れると思っています。それは宇宙空間に訪れるのか、それとも外からか、みなさんの意見を聞かせてください」
「みなさんの幸福の定義を教えてください」
「完全な存在である神は不完全な人間を愛しているのでしょうか?(ちなみに不完全な人間である僕は人間のことを愛していません)。みなさんは人間のことを愛していますか?」

数時間おきに次々とこのような質問がウプされる。
たった1日で、完全にキリスト教に持ってかれちゃった彼。
たぶん、とても素直で純粋で、お母様からお勉強ちゃんとしなさいねって優しく言われて、お兄様みたいにいい会社に入るのよぉって肩を叩かれて、でもとても優しい人間だからそれがストレスだということが分からないし、ましてや発散方法を元来知らない彼は、自分が救われる術も全く知らないまま18歳。
そんなまっさらなそこに入り込んだのが、信仰。
確かに「被害者」は「救われる」べきだし、そうあって健全な精神を保たなければならない。
でも、極端に「信じる」ことは、怖ろしい。

きっと、小中同級生のYくんも、こんな症状だったに違いない。
小学生の頃から優等生で通っていた彼、成人式で会ったとき、彼は私の向こう側に焦点をゆらゆらとさせていた。
白く濁った瞳でにかっと笑い、テンションを高めに「ひぃさしぶりぃ~連絡先交換しようよっ」と、私の向こう側にやっと焦点を絞りながら言った。
後日、彼から超長文メールが送られてきた。
とにかく、「危うい」。
主に、「神」や「宇宙」、そして「救われる」という単語が入っていたことを覚えている。
もちろんそのメールを保護し、無難な返信をした。
それきり、昨年の同窓会で会えたら嬉しいな、今はどんな目をしているのかな、と楽しみにしていたが、もちろん参加するはずはなかった。

布団に入って、早見純先生の『卑しく下品に』を黙々。
早見先生はグロだとかキモイだとか気色悪いだとか悪趣味だとか衝撃的だとか言われているけれど、
私は、コメディだし面白いし愛だし尊いし実験的だと思う。
早見先生は「生殖器原理主義」だと思う。「性器」じゃなくて、「生殖器」。
「尊い生殖機能を持つ者」を壊す変態や強姦魔や性的虐待から守るべく、「生殖機能を持つ者」を壊す話を書いている。
変態のみなさま、これで発散してください、どうか性犯罪が消えますように、と願っている。
尊いものだから残酷に潰すのであって、先生の願望ではないことを分かってほしいなと思うときがある。
というか、そう思いたい。

どうせ世間では通用しないのは分かっている。
でも、自分が良かれと信じてる主張を押し付けたりは、絶対しない。
したらそれこそ、Yくんのようになってしまうから。

信じることは、怖ろしい。

後悔と達成感が同時にやってくる。

2009-03-04 18:21:52 | Weblog
火曜日。

身体の全重力(Z・G)がベッドにかかり、立ち上がれない。
頭、上半身、腕、下半身、足、末端神経どころではない全神経が、停止。
かろうじて声帯と左指先だけは動くようで、「ぁ゛ぁ゛ぁ゛すみません、今打ち合わせ中です。18時には出社します」という音だけ出る。

やっとのことで家を出るけれど、会社に足が向かない。
近所の喫茶でモバゲーしながら1時間ほど時間を潰す。
出社してもやはりダルさは拭えず、だらだらとネット。
早く帰りたい、でも帰ってもきっと何もかもやる気が起こらない。

みぞれの降る道、寒くて冷たい。
でも、冬の雪よりみぞれより雨より、ほっぺたにツツーと流れる涙が、冷たい。
脳みそハードディスク使いすぎてアッツアツになったことによる、漏えい。
感電する、感電するよぉぉ。
だからまた、泣く。

今日の一番の楽しみは、『ダーウィンが来た!』。
なるほどな、ヒゲじいの駄洒落には突っ込んじゃいけないのか、なるほどですね。
今日はイボイノシシだったんだけど、イノシシって顔ヤバイね。
アフリカ原住民が創るお面に似ておる。

次回はタコです。どうぞお見逃しなく。

SEX AND THE CITYが現れた! 男子は禁止! 女子の友情は絶対!

2009-03-03 21:24:05 | Weblog
28日。

家の掃除をしてから、Iさんと会うため居酒屋へ。
そこでSEX AND THE CITYに出会う。
(SEX AND THE CITYとは? 仲良し女4人組で、アケスケに性とか語っちゃうこと。男子禁止ぃ~!! 女の友情は壊れないよネ☆)


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SATCキャリーが現れた!
SATCサマンサが現れた!
SATCミランダが現れた!
SATCシャーロット、いや、『稲中』の、前野と井沢がWデイトしたときに登場した、前野のことが好きなブサイク女子高生にクリソツな女性が現れた!

キャリー「あたしがぁ~ダンナのED治してあげたんだよねぇ~」
稲中「うっそ! どんな感じで?」
キャリー「あいつ超マザコンでぇ、それが原因なんだと思うの」
サマンサ「マザコンって大変そう~」
ミランダ「そうだよね~」
キャリー「でもあたしが治してあげたんだよ~ホンっト大変!」
稲中「すごいね~」
キャリー「浄水器とかもお義母さんに買えとか言われてぇ、それで野菜洗わなくちゃいけないの」
稲中「めんどくさそう~」
キャリー「そんなお義母さんがいるからあいつはダメなんだよ」

サマンサは、爪をイジッている!
ミランダは、髪の毛をイジッている!
稲中だけが、相槌を打っている!

キャリー「でもさぁ、あたしがぁ、ED治したんだよぉ~ホント大変だった~」

Aが思わず、「またかよ! 3回目だよ!」と叫んだ!
Iは、「いや、今のはバレる!」とハラハラしている!
キャリーは、勝手に会話に加わってきたAとIに気付かない!
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キャリーは最後まで、どんな会話もインターセプトしていた。
そしてゴールポストまで1人でボールを持ち続け、見事ハットトリック達成。
「トシ……男の話…好きか…?」
「…はい! 大好きです…!!」
「よか…っ…た…」
「く、久保さぁぁぁぁん!!!!」
お、トリップ。

4人の会話(?)はすごかった。
男の話 → 目の前の食べ物の話 → キャリーの話
これのループ。
他にもっと喋ることないのか?
しかも客観性がないから、私たちが勝手に会話に加わっても、全くバレない。

以前も、ドーナッツの話で30分会話する女性の話を聞いたことがある。
「あそこのドーナッツ美味しいよね~」
「美味しいよね~」
「でも夏は溶けるから食べにくくない?」
「ベトベトするよね」
「うん、ベトベトするよね」
「でも美味しいんだよね~」
「そうそう! ベトベトするけど美味しいんだよね」
これで30分だぜ?
これを果たして「会話のキャッチボール」と定義してよいのか分からない。
だから私は「会話のゲンゴロウ」と呼ぶことにしている。

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ゲンゴロウ(げんごろう)(名詞)

うち地元の小学校で流行っていた、2人以上で交互に壁打ちするサッカーこと。
その名前の由来は不明。
使用例:「昼休みゲンゴロウしようぜ! 俺ボール取ってくるから、おまえ壁とっとけよ! 2組の奴に取られんなよ!!」
※注)この場合の「俺」の発音は、「お→れ↑」ではなく、「お↑れ↓」である。
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つまり、本来1人で出来る壁打ちを、2人で行っている、それだけであり、キャッチボールのように2人いないと成り立たない遊びではないということ。
言いかえると、「SEX」じゃなくて「オナニー」。
それも、女のオナニーはSYASEI(オチ)がないから、延々と続くのだなあ。

名前を付けた5匹のサンショウウオと暮らした、当時29歳の独身女教師。

2009-02-25 05:47:00 | Weblog
日曜日。
起きぬけに独りで、昨日の『ショップジャパン』(深夜通販番組)に出ていたバアサンのマネをするけど、やっぱり上手く出来ない。
もうね、完璧なんですよ、彼女。

男性外国人「さぁ~て、今日の夕飯は何だか知ってるカイ?」
外国人バアサン「世ぇ界一美味しいクリームパスタさぁっ」

キッチンでシケモクを咥えながら、ムームーを着て、しゃがれた顔で言うのです。
「世界一美味しいクリームパスタ」。
すごい。
まっちゃんとかはきっとこういうのを見て取り入れているのだろうなと思った。
勃起王がもう一度見たい。


今日は、仕事の合間に某漫画家を囲む会合があった。
1年に2回くらい開催される少人数のファンの集い。
去年からこの会が始まり、呼んでもらって、この先生と仕事することができた。

この仕事をしていて一番「幸せ」を感じるのは、好きな漫画家と一緒に仕事ができる瞬間。
自分が発注したものが、先生の手によって形になった瞬間。
それしかないし、それで十分、贅沢なくらい。

自分の好きな人たちを、何とか、どうにかして隙間にねじ込めるか、そんなことばっか考えている。
それが出来る立場にいることに有難みを感じて生きていかないと。
ただでさえこの仕事に向いていないんだから。


いなくてもいい存在。
替えがきく存在。
昔から周りの人は「差別ダメ! 絶対! だから仲良くしてあげてね」と元養護学級教師のうちの母から言われたから、イジメられたりはしなかったのだろうか。
小中は義務教育、高校大学は金を積めば入れるところ、会社に採用されたのは障害者枠。
人格障害は病気ではなく性質だから手帳は貰えない。

それらが漫画表現である「豆電球(ひらめきの表現)」と共に堰を切ったように頭に浮かぶのは、自分を亡くす、ということ。
ああ、なるほど、そういう手段もあるんだなと、冷静に淡々と、特に何かに絶望するわけではなく、「あ、喉乾いたからお茶飲もう」と同じ感覚。

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あのコ、ちょっと変だよね、いや、「変わってるよね」「不思議チャンだよね」とかじゃなくて、何か違和感あるよね。
あー私も思った。動きとか目つき、違和感あるよね。
言ってることが理解できないときもあるけど、笑ってあげると喜ぶよね。
憎めないのはホンモノだからだよね。
こういうこと言うと、言う方が悪者にされちゃうもんね。
そうだそうだ。
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関係が薄い「友達」の頭の中を代弁することは容易い。


小学1~2年の頃、教室でよくお漏らしをしていた。
担任からは知的障害者と呼ばれ、【特別席】という、窓際にクラスメイトの机から離された席を設けられた、3人のうちの1人だった。

一人は、先天的に歩けないから脚に機具をはめていた男児。

彼は体育のときに、いつも走らされていた。
見学などさせるものか、歩けないなら、走ってみろ、この電柱からあそこの電柱までだ、おまえら何突っ立ってんだ、応援するのが友達だ、応援しないのは脚の悪い人を差別してることになるぞ。
クラスの児童たちは、「がんばれぇ~」とむこうの電柱から手を振り、声を張っていた。
彼はいつも、素直に走る。歯をくいしばって。自戒のように。
私は集団の一番後ろでおどおどと、担任の視界に入らない場所を探していた。
ときおり活発な女児が「Aちゃんもちゃんと応援しなきゃ!」と叱って《くれる》。
マインドコントロールで作られた正義感ほど、怖いものはない。

もう一人は、虚弱体質で葡萄アレルギー他、様々なアレルギーを持っていた体の小さい女児。

彼女は給食のメニューに食べられないものが多かった。
特に小学校給食のメニューによく出る葡萄パンが食べられず、残していた。
おまえまた残してんのか、前に出ろ、皆の前で食べるんだ、食べるまで帰るな、そうだ、おまえが食べないと皆が帰れないんだ、飲み込め、ほら早く、皆待ってるんだ。
教室が一体化する瞬間が分かるのが、活発な児童が「がんばれぇ~」と言うそのとき。
彼女はその場で胃の中身を全て床に戻した。
担任は当然、片付けるまで帰るな、と言い、ほかの児童と帰りの会を進める。
立ちつくす彼女。ゲロは出ても、涙は出ない。
帰りの会が終わると、「親切で思いやりを持った心の優しい」児童が担任の元へ駆け寄り、ゲロを片づけることを申し出る。
そして、「Aちゃんも一緒にやんなきゃ!」と叱って《くれる》。
児童の頃から大人の顔色を伺うようになってしまった《いい子》でいなければならない子どもと、《聞き分けが悪い身体》とそれに伴った心を持ってしまったある意味子どもらしい子ども、健全なのはどちらだろう。

そしてもう一人、トイレに行くことが出来ずにいつもその場で尿を漏らしては不可思議な挙動をしていた私。

自分に降りかかったことはよく覚えていない。
覚えているのは、私の机の周辺に味噌汁が零れていたとき。
おいA、また漏らしたのか、ケツ見せろ、スカート上げるんだよ、濡れてるんじゃないのか、皆もちゃんとチェックしろ、ああ何だ、味噌汁じゃないか、拭いとけよ。
覚えているのは、乳歯が抜けそうだと友達と話していたとき。
いつまでも歯を触っているんじゃない、まだその乳歯が抜けていないなんて、やっぱり知恵が遅れているんじゃないか、私が大人にしてやるよ、ペンチで抜いてやる、ほら、口開けろ、痛いとか言うな、おまえが痛いとか言うな。
覚えているのは、朝礼で校庭に並んでいて突然後頭部をドツカレたとき。
おまえ! 気持ち悪いんだよ! 目をギョロギョロさせやがって!
(思えばこれがはじまりだった)

だけどこれらがどういう意味を持つものだか、理解できる脳みそは、まだ出来上がっていなかった。
いやもしかしたら、本当に白痴だったからなのかもしれない。
やわやわな脳みそで考えられるのは、「私が悪いことをしているから、先生は怒るのだ」。


3人には共通点があった。
何があっても、絶対に泣かない、ということ。
他の児童は怒られれば泣くし、怖ければ泣くし、悲しければ泣くし、自分の主張が通らないと泣く。

あるとき【特別席】に4人目の女児が来たとき――彼女は活発な児童で、何度か遅刻をしたとき【特別席】に移送されてきた――彼女は担任から怒られる度にギャン泣きしていた。
つられて何人かのクラスメイトも泣いていた。
理科の実験を各班でするとき、【特別席】班にだけボロボロの古い水槽を与えられた際、「なんで《わたしだけ》こんなの使わなきゃなんないの」と泣いていた。
それを見ていたクラスメイトは彼女を慰めていた。
そんな彼女、一週間後に晴れて通常の席に戻された。
「早く普通の席に来られるように頑張りなよ、ね!」ととびきりの笑顔を見せてくれたのを覚えている。

でも、3人は泣いたのを見たことがなかった。
きっと3人とも、我慢していたわけではない。
その証拠に、家に帰れば親に怒られて泣くし、夜にひとりで寝るのが怖いときは泣く。
ただ単に、「担任の前で泣く」という手段が思いつかないくらい、頭が悪かったのだと思う。


そしてもうひとつだけ、共通点があった。
風邪などの正当な理由以外は、絶対に学校を休まない、ということ。

運動神経も頭も良かったクラスのマドンナ的存在だった女児が、突然転校した。
同じく、ドッジボールが上手かった男児が、突然転校した。
また同じく、ピアノとダンスと鉄棒が上手かった女児が、突然転校した。
みんな、中途半端な時期に唐突にいなくなった。
私含め転勤族が多い北の地のため特に気にも留めなかったが、私が関東の実家に戻り、中学に上がった頃初めて母親から真相を聞いた。
「みんな、先生に耐えられずに転校しちゃったんだよ」と。

でも、3人が担任を理由に休んだことはなかった。
きっと3人とも、我慢していたわけではない。
ただ単に、「学校は行かなければならないところ」だと信じて疑わなかっただけだと思う。


親は、私に降りかかったことを一切知らなかった。
教室でお漏らししていたことすら、知らなかった。
理由は簡単、動物盛りの弟と、赤ん坊盛りの妹を抱えた母親に、私が何も話さなかったからだ。
「今日学校で○○ちゃんと遊んだよ」
「今日学校で○○の実験をしたよ」
「今日学校でドロケイをやったよ」
こういった類のこと以外、何も話さなかったからだ。

ある学期始めの放課後、それぞれ半紙に学期目標を書く日があった。
[にがっきは ハキハキする]
私はそう書いて、担任に提出しに行った。
何だこれは、ちゃんと書け、やり直してこい。
既に教室には数名しかいなくなっていた。
[にがっきは 大きなこえをだして ハキハキはなす]
何だこれは、ちゃんと書け、自分で読んでみろ、もっと大きな声だよ、もっとだよ、小さい、何言ってんのか全然分からない。
ふと、すでに提出済みで壁に貼ってあるクラスメイトの半紙を見ると、
[ハキハキする]
がいくつかあった。
結局私は、[おもらしをしない]と書くように指示された。
そうだよ、おまえはそれでいいんだよ、よく書けたね。

その日の夕食時、私は笑顔で話した。
「今日学校で二学期の目標を書いたんだけど、先生に褒められたよ!」
《事実》だけを、母親に話した。
弟と妹がいてママは大変だから、心配かけちゃいけない、とかそんないい話ではない。
ただ単に、「怒られるのが嫌」なだけだったと思う。

私が転校して数ヶ月後、母親が北の地で仲の良かった私の同級生の母親と電話していたときだった。
「Aちゃん、○○先生からあんなことされてたでしょう。最後まで学校休まないで偉かったわねえ」
母親、青天の霹靂。
同級生の母親に、素直に驚きを表現して「え、何それ。全然知らなかったんだけど!」と言ってしまうのが、うちの母親のいいところだと思う。
「ちっとも話してくれなかったじゃないの~。まぁあの先生は異常だったよね」
何をされたかと蒸し返すこともなく、何故話してくれなかったのかと問い詰めるわけでもなく、私にはそう言っただけだった。
弟が中学生になってから「担任がムカツク」と愚痴をこぼすたびに、「お姉ちゃんなんてこんな先生だったんだから、それに比べたら全然じゃん」と母親が弟をなだめる場面をよく見たことがある。


小学2年生の三学期、終業式。
この小学校は、2年ごとに担任が変わる。
担任は涙を流しながら、私たちに送辞を述べた。
ひとりひとり、名指しでメッセージを言う。
○○は足が速かったね、○○は数学が得意だったね、○○はいつも先生の言うことをちゃんと聞いてくれたね、○○は掃除が丁寧だったね。

そして【特別席】の順が回ってきた。
○○は歩けないのに必死でみんなについていったね、
○○はゲロ吐きながらちゃんとみんなと一緒に給食食べたね、
Aは目をギョロギョロさせてお漏らししながら必死でみんなについていったね。

このとき初めて、私は2人の涙を見た。
そして2人も、初めて私の涙を見た。


その日の放課後、中庭に担任がいた。
私は中庭に向いた窓の側に立っていた。
担任は私に気付き、呼んだ。
私が窓を開けると、私の隣にある掃除用具入れの中からチリトリを取ってほしいのだという。
「わわ分かりました」
私はそう言い、ピシャリと窓を閉め、鍵をかけ、その場から離れて廊下を歩き始めた。
後ろからは、ドンドンと窓を叩く音がする。
チリトリ、チリトリ、という窓越しのくぐもった声がする。

それが、担任と接した最後だった。


その後担任は5年生を受け持ったが、兼ねてからの数々の異常な言動により、教育委員会に訴えられ、学校を去った。
「1~2年生はヒヨコだから、何が異常かなんて分からないんだよね。だからあんたも私に話せなかったんだし。5年生くらいになると判断能力がつくから、おかしいと思ったことは全部親に話すでしょ。だからあの先生は高学年受け持って良かったよ」
母親はまんじゅうを頬張りながら、呑気な口調でそう言っていた。

生き物なぜなにシリーズ第二弾~『夜景』を誇示する不思議な動物たち~

2009-02-23 05:21:44 | Weblog
土曜日。
最近目覚めるのが早くてとても偉い(と言っても13時)。
暖房・ホットカーペット・ハロゲンヒーター・テレビ・換気扇・電球をガン付けしたまま床で寝ているのに気付いたのが、13時。
ええと、最後の記憶が8時だから……うーんブルジョアジィ。

部屋がとても臭い。
汁男優が2日着たTシャツの匂いに似ている。
とても臭い。

やっと山場を超えた仕事。
まだまだ残っているけど気持ちにはちょっとだけ余裕ができたので、行ってきました「ホームパーティ(笑)」。



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~生き物ドキドキ! 生き物ワクワク!~ [シリーズ第2弾]
NARIAGARI!セレブリティ
 高層マンションに巣を作る動物の集会って!?
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【第1章】

深夜の自動販売機に群がる蛾、ひっそりとした森の中で夜だけ目を光らせては獲物を狙うフクロウ、夏の夜の網戸をビッシリと覆う羽蟻――昆虫や動物には、光を求めて動き回る種類がいくつもいます。
そんな中、「光」を威光として利用する賢い動物もいるのです。

ヒゲじい「光で威圧して、敵を追い払う動物かぇ!? まるで天津飯サンじゃ!! 天サン! プーアルも一緒かぇ!? クリリンのことかぁぁぁ!!!!」

ちょ、ヒゲじい、落ち着いてください♪
実はその逆なんです。

「彼らは『勝ち組』という属名を持っています。生息場所は主に高層マンションの20階以上。それより下だと『負け組』という名前がついてしまうから、その辺は全く違う生き物になってしまうのよ。生息の条件として選ぶのは、『夜景が一望できる』ことなの。そう、その煌びやかな『夜景』の光こそ、『勝ち組』である証なのよ」

そう語るのは、西新宿高層マンション調査員のAさん。
今回は西新宿ではないのですが、特別に調査に乗り出してくれました。

「これから見てもらうのは、32階に巣を作ったばかりの一組の『勝ち組』よ。いい? ここから入るの。あ、気を付けてよ~。『コンシェルジュ』に見つかったら面倒なことになるわ」

今日も彼らは〝集会〟を開いているようです。
巣の中を特殊な高性能カメラを使ってちょっと覗いてみましょう――。

ヒゲじい「ほぇぇ! 夜だというのに、なんじゃこのホテルの照明のような暗さは!! 夜行性なのかぇ?」

いいえ、夜行性ではないんです。
巣の中が暗い方が、一望できる『夜景』が際立つでしょう?
こうして『夜景』の光を使って、最初から敵に対して威嚇しているんです。

「今日は〝集会〟を開いているからなおさらね。他の『勝ち組』に対して、どれだけ力を誇示できるか、が勝負どころなの。我々はこれを『ホームパーティ☆』と呼んでいます」


【第2章】


巣の中にはまだ他の『勝ち組』はいないようです。
その間によく見てみましょう。
テーブルのようなものに並んでいるのは、『ケータリング風手作りオードブル』。
各所には『いつでもお客様を呼べる2~3人掛けソファ』が3つ。
そして何と言っても、巣のメインである『50インチプラズマTV』が一際目立つ場所に置いてあります。

「これらの『ブランド力』によっても、優劣が決まるのよ。『勝ち組』の世界は他の動物と比べ、生存競争が激しいの。でも、それぞれ敵対心は、あくまでも表に出さないわ。ほら、ご覧の通り……」

Aさんの指差す箇所を見ると……。
来ました来ました! 『勝ち組』がたっくさん!
巣の入口でコミュニケーションを取っています。
ちょっと聞いてみましょう。

「久しぶりぃ~♪ 今日は新居祝いに来てくれて有難う☆どうぞどうぞ☆あ、コート掛けにコート置いて、あと荷物は貴重品だけ持ってってね☆」
「はいコレ☆お土産のシャンパン☆綺麗じゃん~☆ウチなんか玄関狭くてもうダメ(笑)。私の靴が多すぎるってのもあるんだけど(笑)」
「ウチは事務所兼で使ってるから、靴は全部収納スペース入れちゃった(笑)。休みの日もスタッフ来るからさぁ、恥ずかしいじゃん(笑)」
「そっかぁ~だから便利な新宿にしたんだあ☆ウチは豊洲だからさぁ☆」

みなさん、分かりますか?
さっそくメス同士の戦いが始まっています。

「『勝ち組』のメス、通称/『玉の輿GET♪』は、このように水面下で争いを繰り広げます。それはメスの力でこの巣を作ったんじゃないからなの。オス、通称/『若手ベンチャー社長』の力によるものだからね、メスはこうしてあからさまにはできないのよ」

ヒゲじい「なるほどのぅ。メスは自分のことのように表現しているのが面白いのぅ。じゃが、オスはどうなんじゃ?」

はい、オスもオスで、戦いを繰り広げているんですよぉ。
しかしそれは、オス同士の戦いではないんです。


【第3章】


そろそろ巣に入りきらない程の『勝ち組』が集まってきました。
おや? どうやら集まってきたのは『勝ち組』だけではないようです。

「『若手ベンチャー社長』と何とか接点を持ちたい、『玉の輿GET♪予備軍』も混ざっているわ。我々はこれを、一昔前までは『ヒルズで鍋パーティ☆』と呼んでいました」

過去にこの番組で取り上げたこともありますね。
そうです。舞台は六本木、『女子大生読モ☆』と、『ヒルズ族』の集会です。

ヒゲじい「そうじゃそうじゃ! 覚えておるぞ! 確か『華』じゃったっけ? 『ヒルズ族』2~3個に1個、あてがわれるんじゃよな!?」

さっすがヒゲじい♪
高齢のわりにまだ記憶力は衰えてないんですね♪
『ヒルズ族』の勢力が衰えた今までも、こうして新宿等、各地で同じような集会が行われているのです。
そこで、先程第2章の終わりにあった疑問の登場です。
おや? Aさんが巣のオスと、それとコミュニケーションを取ろうとしている『若手ベンチャー社長』に近付いていきます。

「いい? ちょっと見てて………。ハァイ。今日は新居祝いに呼んでくれてありがとう。私? 私は彼のワイフと大学の同級生のAよ! 結婚式以来よね? よろしく」

Aさんは特殊な言語センサーを発して『若手ベンチャー社長』に手を伸べました。
すると……。

ひげジイ「ほぇぇ!? オスが『余計なこと言いやがって!』顔をしとるじゃないかぇ!! 相手の『若手ベンチャー社長』もおったまげた顔をしておるのぉ」

これはどうしたことでしょうか?
通常のホームパーティといえば、自分のワイフを紹介するのがまず最初になされるはずです。
ですが、ちょっと様子がおかしいですね。

「え! おまえ結婚してんの!? 奥さんここにいるの…!? なんつー大胆なことを…」
「いや、今日はコレもんで」(口元に人差し指をかざす仕草。人間でいう「シーッ」の仕草)

オスはAさんと『若手ベンチャー社長』を強引に遠ざけました。
これは『空気を読め』ですね。
そして『若手ベンチャー社長』にはここが『新居』ではなく、『事務所』と提示しているようです。
どうやら、オスとメスの間で、すれ違いが起こったことが原因のようですね。

「実は今日、メスから『玉の輿GET♪予備軍』たちには、集会の趣旨を『新居祝い☆』としていたにも関わらず、オスから『若手ベンチャー社長』たちにはそういう趣旨じゃなかったみたいね」

なんということでしょう!
オスの目的は『玉の輿GET♪予備軍』物色であり、メスの目的は『見栄を張りたいのぉ☆』だったのです!!
じゃあ最初から、その趣旨教えてくれよ……こっちが気ぃ使っちまったよ…いやむしろ修羅場引き起こしたくてタマンネェゼ!! ウヒョー!! と思いますが……。

「『勝ち組』は元々、いかに自分一人が勝てるか、しか能がない生き物なの。わざわざオスとメスで密なコミュニケーションを取ることはないわ。それぞれがそれぞれを利用し合い、見栄を張っていい思いをできれば、それでいいのよ」

『勝ち組』――それはオスはメスとの攻防戦を、メスはメス同士攻防戦を、あらゆる威光を借りて行う種別なのです。
『高層マンション』に巣を作り、夜な夜な集会に励む不思議な生き物、今日も各地で『勝ち組』が勝利の雄たけびを上げています――。





――終――

生き物なぜなにシリーズ第一弾~ODAIBAに生息する不思議な動物たち~

2009-02-17 16:59:26 | Weblog
土曜日。
男に二言はあらへんよ。
Y先輩に言うてもうたんやもん、「ヴァレンタインデイは、浮かれたチンカス愚民共の見物が出来る、最高の浮かれスポットに1人で行く予定です」て。
あかんわ~言うもんじゃないよなあ~。おん。
まあ、しゃーないわな、フィジカル鍛えたり、なんやクリエイチブな発想が生まれるかも分からへんもん。
おん。
ってなわけで、行ってきたで!


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~生き物ドキドキ! 生き物ワクワク!~[シリーズ第1弾]
O・DA・I・BA!
 ゴミの島に生息する不思議な動物たちの特別な1日に密着!!
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【第1章】

日本――海に囲まれ、緑に恵まれ、四季折々の風土が豊かな土地を育む、太平洋に浮かぶ小さな島。
この番組では過去に、西表島や南硫黄島、そして福岡県天神地区など、手つかずな自然の中で暮らす珍しい動物たちを追ってきました。
しかし日本には、自然の中ではなく、わざわざゴミ目当てで渡ってくる動物もいるのです。

ヒゲじい「ええ? ゴミの中じゃってぇ? そんな奇特な動物がおるのかぇ!」

ほらほらヒゲじい、慌てないの。い・る・ん・で・す・よ♪
そこは南硫黄島よりももっと北東、通称/東京都港区台場、別名/東京湾埋立13号地北部という場所です。
もともと海だった場所をゴミで埋め立てて、土地を作ったんですね~。
そんな台場に生息する動物たちは、「ゆりかもめ」という乗り物に乗ってここに渡ってきます。

「ゆりかもめに乗り込むと、さっそく四方八方を囲まれたのです」
そう語るのは、台場生態調査員のAさん。彼女(彼?)はこの日も台場調査にやってきました。
「ここに生息する動物にとって、今日が特別な日だって分かっていたのよ。でもまさか、最初からこんなにデンジャラスだなんて・・・・・・」
深刻そうなAさんの隣には、「カップル」が1組。コミュニケーションはしていないようです。
おや? よ~く見てください。「カノジョ」は発達した前足で、ピンク色の紙袋を掴んでいますね。これは何でしょう?

ヒゲじい「なんじゃらほい? あっそうじゃ! 餌じゃないかぇ? 牛も反芻して餌を蓄える場所があるじゃろ。それと同じじゃないかぇ?」

う~ん・・・・・・そうっちゃそうなんだけど。
さて、Aさん?
「今日は特別な日、通称/ヴァレンタインデイ と呼んでいるの。この日、『カノジョ』が『カレシ』にチョコレートを持っていくのよ。この行動を我々は『純愛』と呼んでいます」
なるほど~動物の世界にも「純愛」があったんですね♪ 知らなかったですね~。

【第2章】

はてさて、「ゆりかもめ」に乗った「カップル」の行方を追ってみると・・・?
「あ、あそこよ。海辺でつがいのようにしている『カップル』がいるでしょう?出没ポイントの1つなの。やっぱり今日はいつもより多いようね」
いましたいました! 「カップル」がたっくさん!
まるで定規で測ったように、正確な等間隔で座っているのが分かりますね。
これは他の動物とは違い、人間と同じように「パーソナルスペース」が備わっているのです。
「『カップル』はなおさらそれに敏感なの。いい? ちょっと見てて~。大丈夫、危なくないわ」
Aさんが近付いていきます。Aさんが「カップル」と「カップル」のちょうど中間地点に立ち、カメラのフラッシュを焚くと・・・・・・。
あ! 2組ともその場所から離れていきました!!
その後の「カップル」の行方を、カメラは捕らえていました。

ヒゲじい「おろろ!? また隙間を見つけて、他の場所に座っておるじゃないかぇ!」

そうなんですっ。一度立ったからにはこのスポットから離れるのかと思いきや、等間隔になる場所を探しては、またそこに居つくのです。
「邪魔をされたくないのよ。2人だけの世界を。これを我々は、『今日はデート中携帯禁止ぃ~><』と呼んでいます」

ヒゲじい「う~ん…なーんか変じゃのう…」

どうしたんですか? ヒゲじい。

ヒゲじい「『カップル』を見ると、紙袋を持っておるのが『カノジョ』じゃったり『カレシ』じゃったり、『カノジョ』が持っているのが正解なんじゃないのかぇ? なーんか変じゃのう…」

さっすがヒゲじい♪ よく気付きましたね!
「カレシ」に持たせる時間に、個体差が出ているのです。
「今はまだ夕方でしょう? この時間帯に『カレシ』が掴んでいる場合、『カノジョ』が、昼頃に『カップル』の状態になった直後に持たせたの。これを我々は『本命チョコ』と呼んでいます。そして、まだこの時間帯に『カノジョ』が掴んでいる場合、そうね…20時くらいかしら。十分に暗くなってから持たせるの。これを我々は『今日ゎ女のコから告る><』と呼んでいます。でも、夜持たせる場合のほとんどが『本命チョコ』と同じ意味なの」
そして、それぞれの紙袋は色が違います。中でも「三越」と「ソニプラ」の2つが目立ちますね。
よく観察してみると、「若カップル」が「ソニプラ」、「妙齢カップル」が「三越」という傾向が見られます。
個体差はあるものの、それぞれに“正解”があるんですね~。

【第3章】

さあ、少しずつ辺りが暗くなってきました。他の場所にいる「カップル」は、どこにいるのでしょう?
「来て、こっちよ。見てちょうだい~この喫茶店、『カップル』しかいないわ。あら? ちょっと待って…静かに…」
これはすごいです! 「カップル」以外Aさんと1組の家族、そして1人の男性…おや?Aさんの視線の先には、この男性がいました。
「『カップル』はその場所に対しての密度が高ければ高いほど、他の動物を無意識で見てしまうの。自分と異質な生き物だ、『カップルじゃない』と認識すると……ほら見て、あのトド似の男性、確かに『カップル』の中にいると目立つわ。たぶん、女子アナイベントに来ていた『カメコ』ね。この『カップル』密度の中に『カメコ』、これは貴重な瞬間よ」
でもでも……Aさんも見られているような気がするんですけどぉ……大丈夫なんでしょうか?
「ええ、あれは無意識的なものだし、集団が絶対的だから仕方がないわ。『カップル』が多いスポットで特別な日とくれば、特にこの土地は元々『カップルが主役』なの。自分とは異質なものを受け入れられない性質を持っているけれど、その異質な方の集団数が多くなったら、そちらに属するのよ。我々はこれを『愚民』と呼んでいます」

ヒゲじい「ほっほ~い。わしからも質問してもよいじゃろか? み~んな同じようじゃが、ちょっち違う種類もおるようじゃが? コミュニケーションの取り方が違うような気がするんじゃがいも…」

この右端と左端の「カップル」を見比べてみましょう。
確かに、ちょっと雰囲気が違いますね。右端は「カップル」ですが、左端は「夫婦」といいます。外見の違いはありませんが、雰囲気の特徴さえ掴めれば、すぐにどっちがどっちだか分かります。
「そうね、違いは『不自然さ』かしら。例えば今コミュニケーションを取っている『カップル』、姿勢が固く、楽しさが全く伝わってこないわよね。そして発せられる音も変なの。聞いてみて」

《キャッキャキャッキャキャッキャ》
《うほうほうほうほうほうほうほ》

一方「夫婦」はというと、「今日帰り買い物してこ」「あーうん。そういやコーヒーも買ってかないと」「あー同じやつにする?」「おまえどっちが好きだっけ?」という会話をしています。姿勢もゆるやかにリラックスしていて、お互いの関係性がフィットしている様子が伺えます。

ヒゲじい「わしも『夫婦』作れるじゃろか? なんだか楽しそうじゃ」

う~ん…それはどうだろう♪ だってヒゲじい、『夫婦』は心がフィットする相手がいないとなれないんですよ~。『カップル』は作れるものだけど、『夫婦』はなるものなんですよ~。
ですよね? Aさん。
「その通りよ。この土地で比較できるなんて、ラッキーだったわ。あら、そろそろ『今日ゎ女のコから告る><』をやろうとしている『若カップル』が出る頃だわ」
沈みかけた日が完全に落ちる頃、『カップル』たちはそれぞれの道へ、ある『カップル』は『観覧車』へ、またある『カップル』は『ディナー』へ、それぞれきちんと“正解”を、今日は特別な日――だからこそ『カップル』はわざわざこの土地にやってきては、“正解”に乗っ取った行動を取っていくのです。
ゴミの島に生きる不思議な動物、『カップル』。今日も様々な場所から、あの鳴き声が聞こえてきます――。

《キャッキャキャッキャキャッキャ》
《うほうほうほうほうほうほうほ》




―終―

T県在住52歳主婦の証言「わわ私はこの世の行く末を予言していたのよよよ」

2009-02-13 17:33:06 | Weblog
木曜日。
あ! ヤンジャン買うの忘れてた!!

ネタ集めとして、先週の合同コンパに来ていた男性に一斉メールを送る。
こちらは全員同じ文面、その返信の仕方、人それぞれの性格の違いが現れる返事が返ってくるので面白い。
集めたいのは、下ネタ。
「オナニーの話とか思春期の無茶な性への探究心とか、実体験を教えて下さい」と例文を挙げて送った。

タイプ・1 Hさん
《コンクリートジャングル生きやすい型》
・メールにて「考えとくね~♪」と丁寧で陽気な返信。わりとすぐ。
 このタイプは、浅く広く、人望厚すぎる薄すぎず、そんで“悪意回避フィルター”を持っていることより、人生痛い目見ることがあまりない。
 確かに見た目も「無難」な感じだった気がする。会社は有名なところで、自分から話すことがなく、間に入って会話の補足をする役割。穏やかだけどつまらない。

タイプ・2 Gさん
《将来はガハハ部長型》
・メールにて「今呑んでるからあとで連絡する」とのちに電話。笑いながら気さくにいくつも教えてくれた。
 このタイプは、体育会系まっしぐらで、大学時代も部活所属。夜はいつも赤ら顔。部下から信頼を得るのが得意で、酒とフーゾクをよく奢る。でもリーダーではない。
 確かに見た目も、着慣れたスーツが威厳を放つ20歩前って感じだった。営業的な仕事をしており、会話の中心(というか声がでかい)によくなっていた。元気だけどがさつ。

タイプ・3 Uさん
《暗いむっつりを普段隠している型》
・メールにて「恥ずかしいから電話で・・・」とのちに電話。こもこも言いながらいくつも教えてくれた。
 このタイプは、恥ずかしいけど自己主張も気持ちいい・・・しかもこんなタブーな話をしている俺って・・・と意識している真性マゾヒスト。明るい表情とは裏腹。
 確かに見た目も・・・・・・あまり接していないので覚えていない。

タイプ・4 Iさん
《“スマート”という言葉に超敏感型》
・メールにてだいぶ時間が経ってから、1回のメールで終わるネタを“スマート”に教えてくれた。
 このタイプは、賢く“男たるものスマートに”を実践している、現代人。たぶん「モテる」。なぜならば、“スマート”だからだ。
 確かに見た目も、清潔感に溢れた頑張っていない無難な「オシャレ」だった。業界系の仕事をしているからか、話の返しがうまい。賢いけどつまらない。

あと2タイプは、まだ返信がない。楽しみだ。

好き勝手分析していると、隣の部署の電話が鳴る。
「ああぁぁぁの、ぁああのう、あたな女性なのね女性の人なのね、今日は女性なのね」
激しいどもりと、文のところどころが早回しになる、不規律な声の主は、隣の編集部の読者の女性らしかった。
「あなたで大丈夫? だだ大丈夫? 話すわよははは話すわよ。私は世界的経済恐慌を知っていたのよよょよよ。こうなるって分かっていたの。黒イタチを見たのよ。T県なんだけど田舎なんだけどね、昔からこの土地じゃあ黒イタチを見ると何かああああ何か起こるのよよよ」
T県在住の52歳の主婦で、日本のアニミズム系の伝承かなんかの話だということが、バグってるを我慢して聞くと何とか分かった。
「怖いでしょ怖いでしょ? あなたもっと話しちゃってだだ大丈夫? ちょ…ちょっと…ちょぉぉぉっとぉぉ!! うるさっうるっさいぃぃぃっ!!!! あら今ちょっとごごごめんなさいね」
バグがいっそう激しくなったが、女性はかまわず喋り続けた。
「私52歳なんだけどあなたいいいくつなの? あら26歳? じゃウウウチの息子とそそそんなことはどうでもいいの、いいんだけど、蛇を踏んだから工場が潰れたのよ。蛇は怖いのよここ怖いのよ大蛇を踏んだからダメなのよ」
人の親だというこの女性、やっぱり人間、どっから正常でどっからキ○ガイだか、こういう人間と接するとさっぱり分からなくなる。
その後15分ほど同じことを繰り返し喋り、女性は「じゃあそそそういうことだから。はい、はい~」と一方的に電話を切った。

実録!天神に彷徨う女の情念~福岡ユルフワモテ子OL事変~ [後編]

2009-02-05 23:07:39 | Weblog
――前回までのあらすじ――

昨日の出来事を書こうとしたら、先月行った福岡出張での出来事が白熱してしまい長くなったので、前後編に分けることに(ただ暇なだけ)。
福岡で会った友人(ユルフワ愛されOL☆)のトンでもない言動に、驚きを隠せないA。
2人でクラブに行くことになったのだが、それはまるでコントのような光景で……。
その結末は果たして――!?



彼女の元へ戻ると、「ぇ~どぉするぅ?」と私にすり寄り、ボディタッチをしてきた。
これが噂の、男性の前でしかやらないという、「オンナノコ同士仲良しアピール」か。
3人の男性はというと、「さっき○○にも行ったんだけど、全然盛り上がってなかった。だからこっちに来た」とのこと。私は、へーそうなんすか、と適当に返事をし、隣でウネウネと動いている彼女に、「一旦ホテルに戻りたい」と話した。
彼女は「このコちょっと用事出来ちゃったからぁ、ぁたしたち行くね☆」と男性に言い、その場を離れた。
ホテルまでの道のりで、彼女は「○○ってVIPしか行けなぃし、一見ぉ断りだから入れてもらぇなかったんだぉ。かわぃそぉ~キャッキャ」とやっていた。
この言葉が後に波紋を呼ぶことになるとは、彼女は思いもよらなかっただろう。

ホテルに戻り、彼女に隠れながら用事を済ませようとするも、見つかってしまった。面倒くさいことになったと思い説明をすると、彼女は近年稀に見る「見下し戦法」に出た。

「へぇ~なんかぁ、逃げるモノがぁるってぃぃぉね~(遠い目)」
「でもぉ、そぉゅぅの、ぁたしすぐ理解できるタイプなんだぉね~。友達がヤ○ザと結婚したときも受け入れたしぃ、ゲイの友達もぃるしぃ」

……そうきたか。
姿勢はもちろん、頬杖をつくあの感じだ。そして溜息混じりに「ぁたしなんかぁ」と始めた。
いやいや、別に理解しなくてもいいし、むしろ懸念するのが普通ですよ、と言うと、「○○行ったら1杯目からオトコに奢らせょぉょ」と会話の暴投をした。
話が逸れたので有難いんだけど、ホントに「オトコ(チ○ポ)」のことしか頭にないんだな、と感心。

○○へ行くと、浜松町のクラブっぽい雰囲気だった。
フロアで踊っている人は、高齢DJやバブル女性など、ホントに好きなんだなという空気を醸し出しておりかっこよかった。
一方彼女は「今日、ダサい」とのことで、「今日なんでこんなにダサィのぉ~? やだぁ~全然イイオトコぃなぃぢゃぁん><ゴメンねぇ。もぉ飲むしかなぃぉ!!」となっていた。
私は普段見られないものが見られる、それだけで満足なんです。
そんなことより、さっきの発言、「あのオトコたち、入れてもらえなかったんだぉかわぃそぉ~」の方を気にしてほしかった。

自分を大きく見せようとする際ツメが甘いと、かかなくて良い恥をかくことになる、そこに気付いてほしかった。

ともあれ、2軒目のクラブへ。
こちらは客層が先程とは打って変わって、20代前半の若者がひしめいていた。
ダンスチームのような集団が、活き活きとした表情で踊っている。男も女も、楽しそうに音楽に合わせて、ノッてるんじゃなく本格的なダンスをしていた。
「おぉ! いいっすね! この元気な感じ楽しいなあ」
私がウキウキ面で若者たち見ていると、彼女、また始まった。

「若ぃってぃぃぉねぇ~(遠い目)。ぅちらもぉアラサーだしぃ、ぁんなハジけらんなぃぉねぇ~(溜息&遠い目」※注:嘘ではない。

だぁからどうしていちいち…!!!!! 言わないと気が済まないのか、素直になれないお年頃なのか。
そんな女2人でいると、当たり前のように男が湧いて出てくる。
「え2人なの?」「え何してんの?」「えいくつ?」「え何してる人?」
私は適当に相槌を打ち、隣で激しい口づけを交わしながら踊り狂っている外人に拍手を送っていた。
彼女は「ェ~ぅちら19歳なゎけなぃぢゃぁん! 嘘つきすぎぃキャッキャ」となっていた。
私が外人とカタコト言葉を交わしている間、1本(単位はコレしかねぇよ)余る計算になる。その1本は、しばらくは私の隣にいて、私に話しかける隙を見つけようとしていたがそのうち諦めたのか、彼女の隣についた。
するとどうだろう、彼女は2本に挟まれて、満面の笑みを浮かべているではないか。

その絵面……もうだめだ…。
ちょっもうだめっあはははははははははははははははははははははははははは
堪え切れなくなった私は、爆笑しながら走ってトイレに駆け込んだ。
端から見ると立派なキ○ガイです。本当に有難うございました。

トイレから戻ると彼女が待ちかまえており、私の耳に口を寄せ「このコたちドリンク奢る気なぃみたぃ。ぃこ」と手を引っ張ってきた。
その瞬間、彼女の肘にテーブル上にあった誰かのドリンクが当たって落下し、床にドガシャーンと音を立ててグラスが割れた。
驚いた私はすぐに割れたグラスを回収した。周りにいた若者たちも拾い集めてくれた。
その間の彼女、その様子を見降ろしながら「ゃだぁ~どぉしよぉ~」。
そして次に出た言葉は、「今拾ってた人の中に超カッコイイ人ぃた! 優しぃし、イイぉね~(≧∀≦)ぇ~どこぃったんだろ!?」。

お手上げ。
私の脳裏にはそれしか浮かばなかった。

その後も男が湧いて出てきた際、その男が気に入らなかった場合、「ぅちらレズって設定にしたから」と言って私に抱きつきながら場所を移動する等、華麗な技を繰り出していた。

最初は好奇心や体力的余裕があった。が、もう限界は近い。
そろそろ帰ろうと伝えると、「よく一人呑みするときに行く5軒のうちの1軒で、まったりしたいときに行くBar」に連れて行ってくれるという。
道すがら、「ぁ、この焼肉屋。この前医者に奢らせたトコだぁ。一人1万円くらいするんだぉ~(≧∀≦)」等があった。
ここまで終始、嘘大袈裟紛らわしさなど一切なく、「オトコ」が出てこない彼女の言葉はなかった。
例えば、「彼氏がこんなことを言っていた」「前のオトコがここで働いてる人と友達」「クラブ来たらオトコに奢らせないなんて意味ない」等、毎秒毎に出るモンだから、私の記憶容量はとっくにオーバー。

また気になった点は、アピール(自慢)の概念が、バブル期のそれなのである。
上記の「医者に奢らせた1万円の焼肉」を見てもらえれば分かる通り、会話に出てくるキーワードがバブリーなのだ。
私がそこで「いいなー」とか言うのが彼女にとっての“正解”なのだろうが、「同人種の女なら羨ましがる概念」だ。私は羨ましいとは思えない。
彼女のいる世界は、そういったことが良しとされている世界なのかもしれないから、こちら側から「それは違うよ」と指摘する筋合いはない。
彼女から発せられるオチのない話に、ただただ「へーそうなんだ。美味しんだろうねー」と言うしかないのだ。

彼女行きつけのバーに着くと、彼女は「マスター☆かゎぃぃコ連れてきちゃったぉ(≧∀≦)」と言いながらカウンターに座った。
そしてすぐテーブルに体を伏せ、「もぉ~今日も仕事疲れたぉ~><マスター、ぃつものぉぃしぃゃつ☆」とやった。
今までちょいちょい出てしまっていたが、私はここでもはっきりと、「それ、何のコントすかwwwww」と出てしまった。

福岡はどこに行っても食事やお酒が美味い。この店も例外なくそうだ。
彼女たち風に言うと、「今日ガンバった自分へのご褒美☆」とでも言うのだろうか、とにかくお酒とつまみを堪能し、5時に彼女と別れた。


が、甘かった。翌日、お昼(ランチと言っていた)を一緒に食べることになってしまったのだ。待ち合わせ場所に行くと、彼女ともう一人、男性がいた。
「昨日言ってたDJだぉ。一緒にランチしたぃって。ごめぇん><」
福岡に来たならばとんこつラーメン食べないと嘘、だと思っている私は、DJにラーメン屋へ案内してもらうことに。彼女は不満そうな顔をしていた。

DJと名刺交換をすると、同業種だった。
DJと他愛もない話をしていると、彼女は話に入らず「ぇ~ぇ~」と言っていた。
「女子アナっつたらやっぱアヤパンが一番ですよ!! 彼女がいないとテレビ成り立たないと言っても過言ではないと思います」
「アヤパンいいよね~!! 俺も一番好きだわ」

私は喜怒哀楽の「怒」が滅多に出ない。「狂」はあっても「怒」はない。
だが、次の彼女の言葉で、私、キレた。

「ぇ~ぁのコってぇ、そぉんなにデキるコなんだぁ~」(※きょとん顔で)

はぁぁぁぁ!!!!!!!!!?????????
ちょ、待てよ…あんた見境いなし? 相手、アヤパンだぜ!?
会話に加わりたいなら、もっと他にあるだろ…。
あのコて、デキるコて。女子アナと同じ土俵に立つ気満々かい。

「いやあの…まず女子アナだし、その中でも頭良くて仕切り能力は群を抜いているし…普通にすごいじゃん…そんな人のこと、今見下した…?」
私はワナワナしながら言った。まさか自分の人生の中で、アヤパンをかばってキレるなんて、そんなことがあるとは思いもよらなかった。

「ぁ胡椒取ってぇ~」

「ぁ猫ッ!!」の別バージョン登場により、彼女は私の怒りを回避した。
DJと別れたのち、私たちはタクシーに乗り空港へと向かった。
そこで、彼女の真髄が発揮されることになる。

「ぁぃつ、ぁのDJってさ、超ケチなんだぉね。さっきも奢ってくれなかったぢゃん。ぁっちから誘っとぃて。ぃつもクラブとか誘われて行くんだけど、口説きもしなぃし、奢りもしなぃの。誘っとぃて、どぉゅぅつもりだと思ぅ!? ぁりぇなぁい!!><」

ご立腹である。
だが、この台詞こそ、彼女のような人種が持つ、確固たる概念なのだ。
この世の中には、「男」と「女」しかおらず、「男」は挿れるためだけの存在であり、「女」は挿れられるためだけの存在、ということなのだ。
一見非常にシンプルな考え方だが、そこには女のちやほやされたいという願望や、それをステイタスにして生きている、などの余計な邪念があるため、私には理解できない。
「それしかない」なんて、つまらなくないのかな。
はんたいに彼女たちにとって私のような面倒くさい女は、「つまらない」んだろうけど。

「普通にみんなでワイワイしたい人なんじゃない? 寂しがり屋とか。何でも男女! で考えるのは勿体ないよ」
と言うと、彼女は興味なさそうに、巻いた髪の毛先を触っていた。

実録!天神に彷徨う女の情念~福岡ユルフワモテ子OL事変~ [前編]

2009-02-05 19:17:12 | Weblog
水曜日。
全身から滲み出るだるさと、顔の皮膚の異様な臭さで目が覚め、ベッドの上で倒れ込むように寝ていたことに気付く。
昨日の夜は「明日は全身筋肉痛必須だから、絶対今日湯船入ろ」とか、「調子に乗って湯船の中で雑誌でも読んじゃう?」とか余裕ぶっこいていたのに、この有様。
のろのろと起き上がり、『おもいっきりイイ!テレビ』の大好物企画、『火曜女の不幸劇場』を観ようとするも、やっていない。
何でだよぉォォと無駄な苛立ちを発揮するも、今日が水曜日だということには、家を出るまで気付かなかった。

出社してから、ひたすら清算。
先月福岡出張に行った際の、15万円の仮払いを清算してみると、マイナス3万円。
お金がない…また自転車運行をして、仮払いを生活費に充てるしかないのだろうか…。


福岡では、仕事後、学生時代の同級生で現在福岡に住んでいる友人と遊ぶことに。
彼女は非常にユーモラスであり、毎秒笑いを運んでくれる、笑いの神降りっぱなしな人間だ。
まず待ち合わせ場所。2年ぶりに逢った友人に言う言葉といったら、万国共通、どう考えても「久しぶり」しかないだろう。
が、彼女は違う。そんな常識を見事にぶち壊してくれた。

「お~Sさん久しぶりぃ!」
「Aちゃぁぁん! やだぁ~超カワイイぉぉ(≧∀≦)超カワイイ超カワイイ!!」
「いや、ちょ、久しぶりだね。2年ぶり?」
「超かわいぃぃぃぃぃぃ(≧∀≦)」

開始2秒でこの快進撃!
いや別に、「その帽子可愛い」とか「肌綺麗になったね」とか「マフラーの色絶妙でイイね」とか、そんなんだったら分かるんですよ。
いつもなら適当に苦笑いをするが、この日はちょっと戦ってみようかと思い、「いやいや、今さら友達同士で容姿を褒め合うは止めましょうよ…」と言ってみた(シカトされたけど)。

その後、「ぁたし方言出ちゃってるけん、恥ずかしぃたいぃ」(そんな大袈裟な方言の人、こっちにいなかった)とか、「電車で来たと? ぁたしタクシーしか乗らなぃけん、電車の路線教えて(笑)」とか、一歩踏み出す毎に繰り広げられる口撃に、ICレコーダーを回していなかったことをこの日ほど後悔したことはない。

彼女は呑み屋を予約してくれていた。お礼を言うと、
「ぇ~彼氏の店ぇ。超有名店でぇ、ぃつも予約1週間待ちなんだぉ」
と、自らの巻き髪の毛先を、指先でくるくると触りながら喋り始めた。
まるでコントを見ているような気分に陥ったが、まだまだ1回表である、姉さん、僕はこのあと、とんでもないことに巻き込まれるとは知る由もなく……。

「美容師でしょぉ? 会社経営者とぉ、イギリス行っちゃったオトコでしょ? スッピンのときに医者にナンパされたりぃ。色々あったぉね~(遠い目。注:嘘ではない)。家から出られなぃときぁったモン(笑)」
「え、監禁すか!? 大丈夫なの?」
「ぇ~ってゅぅか、服着てる暇なぃって感じ?」
「ああ、お盛んってことですね」
 ※注:30歳前の女性の会話である。

彼女は彼氏を私に紹介したあと、しきりに「タイプじゃない」と“訴えて”きた。
そして、「でも年上だし頼れるし、ぁたしの恋愛相談乗ってもらってたら、付き合うことになっちゃった」と“弁解”を始めた。
挙げ句、「好きなのか分からない。あ、好きじゃないかも」と“白状”した。
確かに彼氏は、見た目は良くはない。だが、外見どーこーじゃないでしょ今更…。会ったばかりの人間である私に、一体何の判断を求めているのだろうか。
「好きじゃないのに何で付き合っているの?」としごく真っ当な質問をぶつけると、彼女は驚くべき行動に出た。

「ぁ猫ッ!!」

え!!!!!!!?????????
ね、ねこ???????
「今Aちゃんの後ろ通ったぉ! 超カワイイ~(≧∀≦)」とキャッキャしている最中に、やっと気付いた。
彼女は、都合が悪くなると離れ業を出すのだ…と。
話を逸らすどころではない、シカトでもない、「ぁ猫ッ!!」とは…こやつ、腕を上げおったな!!!!!!!

とにかくご飯とお酒が美味い。
私は会話(つうか相槌)もおろそかに、美味い美味いと唸りながら貪っていた。
彼女はその様子を、頬杖をつきながら聖母のような目で見ており、
「ぁたしゎぃつもぉ寿司とか食べてるから、Aちゃん全部食べてぇ☆」
と微笑んでいた。
だぁから、いちいちその“演技”は何なんだ。

福岡の若者がPEACEなバイブスを出している場所に行きたかった。
その旨を伝えると、彼女は携帯と名刺をカバンから取り出し、テーブル上に並べ始めた。
「これがぁ○○ってクラブの支配人でぇ、○○ゎ芸能人も来るんだぁ。ぁたしが言ぇば安くなるから電話してみるネ☆」
彼女は巻き髪を触りながら、携帯の電話帳から支配人の番号を検索し、電話をし始めた。あれ? 名刺の意味はいずこへ……。
以降も、DJ(「コイツ超キモイのぉ」らしい)やクラブ友達に電話をかけていたが、誰ひとり繋がらなかった。

腹も膨れてきた頃、彼女から「プリ撮ろうょ☆」と提案があった。
プ、プリとは?????
「最近のプリクラって超詐欺れるんだぉ~(≧∀≦)」
ああ、プリクラね。「詐欺れる」という言葉を使うあたり、プリクラに限らず写真等の画像に写る際は、必ずしも男性の目を気にした物のみということが分かった。
プリクラ機の中に入るのは、5年ぶりである。
彼女は手馴れたもので、キメ顔を数種類用意してスムーズに撮影が進んでいた。
セレクトは、それはもう熱心である。無言で自分が一番納得できる「カワイイ(≧∀≦)」プリクラを選んでいた。

近辺のクラブに行くと、入口で3名の男性に声をかけられた。
私がスイーと素通りすると、隣にいるはずの彼女の姿がない。振り向くと、男性3名に囲まれ、巻き髪を触りながらお喋りしている彼女がいた。
「ぇ~ぉ金な~ぃ」
「ぇ~ほんとに払ってくれるのぉ? 超嬉しぃぃ(≧∀≦)」
はわわわわわっわわ。
ロバートか何かのコントでしか見たことがない光景が、目の前に広がっている。
その姿勢、その仕草、その喋り方、その台詞、どれをとっても「正解」である。

天晴ッッ!!!!

思わず私は、大沢親分のように、彼女に駆け寄って叫んでいた。



―――続く―――

巨乳とサイレンと血糖値

2006-04-11 06:15:25 | Weblog
目の前で人が発狂した。


私は一部始終を見ていた。
Fさんは、後ろのデスクで人と喋っていた。

「おい、F。体調悪いなら車で寝てろ」
「いやぁ~だいじょぶですってぇぇ!!!!」

「おい、F。もうその書類見るなって。」
「・・・ ・・・」

「おい、F。大丈夫か?」
「・・・ ・・・」

そのうち、デスクをドンドンと叩きだした。
体が痙攣していた。
顔色が土色に変化していった。
デスクの足をドンドンと蹴っていた。
突然、奇声を上げた。

きぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ
ふぅはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ

デスクをドンドンと叩く音が激しくなった。
それまで座っていたイスから転げ落ち床にのたうち回った。
近くにいた人が布団を持ってきて、寝かせた。
首がぐったりともたげた。
しばらくして、イビキが聞こえてきた。
体の痙攣は止まない。

チラ見していた私は、何度目かのチラ見で、Fさんと目が合った。
体がビクッとした。
Fさんは、私を見ているようでその向こう側を見ていた。

人が集まり出し、階下にいたFさんの部下が駆けつけた。

「救急車、呼んだ方がいいですよ!なんで今まで誰も呼ばなかったんですか!?」

巨乳の部下は、巨乳を揺らしながら野次馬に訴えた。
男性社員数人が、巨乳をチラ見した。

先輩があるジャスチャーをしていた。
腕に、注射器を当てるジェスチャー。
だから、誰も救急車を呼ばなかった。

結局、巨乳の部下が痺れを切らし、救急車を呼んだ。
数分後、救急車到着の電話をたまたま取った私は、1階まで救急隊員を迎えに行った。

救急隊員は、無線で「レベル3」だと言っていた。
フロアは騒然とし、タンカが通れるようにデスクが2台移動してあった。
運ばれていくFさんの痙攣は止まない。

Fさんのデスクから見つかった注射器は、インシュリン注射のためのものだった。