バレーボール全日本高校選手権第5日・決勝(9日、東京体育館)男子は6年連続27度目出場の東亜学園(東京第2)が、14大会ぶり3度目の優勝を狙った鎮西(熊本)を熱戦の末に3-2で下し、3大会ぶり4度目の優勝を飾った。エースの白川明(3年)がけがで戦線離脱。3回戦から4戦連続してフルセットとなった最終5セット目に佐藤俊博コーチ(30)が満を持して投入した“魔法の紙”が選手に必勝魂を注入し、3年生が出場できる新生・春高バレーを制した。
涙腺が緩む。全国制覇まであと1点。最優秀選手に輝いた山本湧(3年)はあふれるものをこらえきれなかった。
「人生で一番うれしい。仲間との信頼。みんなにお礼を言いたい」
セッターながら、ブロックで両チーム2位の6得点。攻撃的司令塔がノーシードの東亜学園を3年ぶりの頂点に導いた。
3回戦の宇部商(山口)から4戦連続フルセット。準決勝では大村工(長崎)と2時間19分、この日の鎮西戦も2時間2分の死闘を演じた。1回戦途中にエースの白川が左足の指3本を脱臼する大けがで戦線離脱。山本も右足首捻挫を隠しながら強行出場していた。けが人が続出しながらノーマークから勝ち上がり、初の春高制覇を果たして“ミラクル東亜”と呼ばれた1983年大会のまさに再現だった。
“けがの功名”を信じた男もいた。指導歴9年の佐藤俊博コーチだ。初めて春高をテレビで見た小4の時、負傷のセッターを軸に奮闘する東亜学園に心を打たれた。「ひょっとすると、あの再現になるかもしれない」。控え部員には決勝を見据え、全チームのVTR撮影を指示。自らも白星を信じ、勝負パンツと決めた白のブリーフをホテルで毎日、手洗いした。
前夜、福の神ならぬ“福の紙”が舞い降りた。小磯靖紀監督(50)と夕食に出かける途中、路上で和紙に漢字を書く露天商を見つけた。顔を見てイメージ書きしてもらうと『俊博を信じて進め』の言葉。「驚いた。あすの決戦にピッタリだ」と、3セット取れるように3000円を渡して持ち帰った。
2点を先取された第5セット序盤、同コーチが満を持して披露した“魔法の紙”がこれ。2-5の劣勢から山本のジャンプサーブで7連続得点。元日に引いたおみくじが中吉で「中というのはセンター(中)攻撃が吉とのおぼしめし」。センター線の時間差を織り交ぜた多彩な攻撃を指示し、粘る鎮西を振り切った。
白川の代役に推挙した冨田直人(1年)はこの日も15得点の活躍。接戦に弱かったチームを蘇らせたのも同コーチの綿密なデータ分析とゲン担ぎのたまもの。小磯監督は「選手と佐藤に感謝したい」。第4セット終盤にピンチサーバーで出場した白川も「最後にセンターコートに立ててありがたかった」と感激を隠せなかった。
ユニホームの左胸には高校3大大会で頂点に立った回数を示す7つの金星。そこに新生・春高初代王者の勲章が新たに加わる。「今までで一番弱いチーム。でも、今までで一番最高のチーム」(佐藤コーチ)の証しとして。
涙腺が緩む。全国制覇まであと1点。最優秀選手に輝いた山本湧(3年)はあふれるものをこらえきれなかった。
「人生で一番うれしい。仲間との信頼。みんなにお礼を言いたい」
セッターながら、ブロックで両チーム2位の6得点。攻撃的司令塔がノーシードの東亜学園を3年ぶりの頂点に導いた。
3回戦の宇部商(山口)から4戦連続フルセット。準決勝では大村工(長崎)と2時間19分、この日の鎮西戦も2時間2分の死闘を演じた。1回戦途中にエースの白川が左足の指3本を脱臼する大けがで戦線離脱。山本も右足首捻挫を隠しながら強行出場していた。けが人が続出しながらノーマークから勝ち上がり、初の春高制覇を果たして“ミラクル東亜”と呼ばれた1983年大会のまさに再現だった。
“けがの功名”を信じた男もいた。指導歴9年の佐藤俊博コーチだ。初めて春高をテレビで見た小4の時、負傷のセッターを軸に奮闘する東亜学園に心を打たれた。「ひょっとすると、あの再現になるかもしれない」。控え部員には決勝を見据え、全チームのVTR撮影を指示。自らも白星を信じ、勝負パンツと決めた白のブリーフをホテルで毎日、手洗いした。
前夜、福の神ならぬ“福の紙”が舞い降りた。小磯靖紀監督(50)と夕食に出かける途中、路上で和紙に漢字を書く露天商を見つけた。顔を見てイメージ書きしてもらうと『俊博を信じて進め』の言葉。「驚いた。あすの決戦にピッタリだ」と、3セット取れるように3000円を渡して持ち帰った。
2点を先取された第5セット序盤、同コーチが満を持して披露した“魔法の紙”がこれ。2-5の劣勢から山本のジャンプサーブで7連続得点。元日に引いたおみくじが中吉で「中というのはセンター(中)攻撃が吉とのおぼしめし」。センター線の時間差を織り交ぜた多彩な攻撃を指示し、粘る鎮西を振り切った。
白川の代役に推挙した冨田直人(1年)はこの日も15得点の活躍。接戦に弱かったチームを蘇らせたのも同コーチの綿密なデータ分析とゲン担ぎのたまもの。小磯監督は「選手と佐藤に感謝したい」。第4セット終盤にピンチサーバーで出場した白川も「最後にセンターコートに立ててありがたかった」と感激を隠せなかった。
ユニホームの左胸には高校3大大会で頂点に立った回数を示す7つの金星。そこに新生・春高初代王者の勲章が新たに加わる。「今までで一番弱いチーム。でも、今までで一番最高のチーム」(佐藤コーチ)の証しとして。