「PCBをなくすために」と「環境バイオネット」のBlog

PCB等の残留性有機汚染物質の廃絶と環境バイオの普及を目指すサイト。pcb.jpとkankyoubio.net参照

ゴルゴ13と環境バイオ 海水中からレアメタルの回収

2006-01-31 01:24:36 | 環境バイオ
いったい何の関係が?と思われるでしょうが、先週発売されたビックコミックの最新号において、生物を利用して海水中からレアメタルを回収する技術が物語のキーとなっていました。

ゴルゴのターゲットになる社長が手がけていた事業だったのですが、海産の脊索動物であるホヤを使い、海水中に微量に存在するバナジウム(V)を捕集していました。

バナジウム:
 原子番号 23 の元素。V

バナジウムの用途:
 鉄鋼添加剤、超伝導材料、工業触媒などの用途で使われている希少金属です。鉄鋼との合金は構造建材や橋梁などのほか高速増殖炉用燃料被覆材料などに、チタンとの合金は航空機材料として欠くことのできないものとなっています。さらに血糖値を下げる効果も知られており、経口糖尿病治療薬の開発も期待されています。このように産業上大変有用な金属ですが、採掘や精錬のコストが高いため、希少な金属であり、経済安全保障の確立という観点から国家備蓄されています。

バナジウムの原料:
 バナジウム鉱から得られますが、リサイクルも積極的に行われており、石油燃焼ボイラーの煙煤、重油直接脱硫の使用済触媒からも回収されています。

その他:
 ラットやヒヨコにとっては必須元素です。ヒトについてはよく分かっていません。
 毒キノコの一種であるベニテングダケやホヤなどの生物で、血中にバナジウムを蓄積することが知られています。

バナジウムは、(独)石油天然ガス・金属鉱物資源機構希少金属備蓄グループのウェブサイトに詳しく掲載されています。
バナジウムについて
世界の主要埋蔵国、生産国、対日輸出国(主な輸入国:南アフリカ、中国、オーストラリア)
我が国の輸入依存相手国比率
世界の消費割合(日本は世界の11%を消費)
マテリアルフロー図


さて本題。
バナジウムなどレアメタルは、海水1トン当たり数mgという希薄な濃度で溶存しており海水からの回収方法も検討されています。
海水中に溶存する希少金属の量と日本の需要量および価格

 海水からの回収方法として、希少金属を選択的に吸着する吸着剤を使った研究(日本原子力研究所)なども行われていますが、「ゴルゴ13」で話題になったように生物であるホヤを使う方法も注目されています。
 ホヤはその形状から「海のパイナップル」と呼ばれ、食用として養殖もされています。赤道直下の海から両極、深海にまで生息し、これまでに少なくとも3,000種が同定されているそうです。
 このホヤは、血液中にバナジウムを海水中濃度の約10万倍~1,000万倍に濃縮することが知られています。しかし、食用であるマボヤなどの種類はあまりバナジウムを濃縮しません(広島大学の道端教授らが名前をつけたバナジウムボヤはマボヤの10~1,000万倍も濃縮します)。
 現在、ホヤを活用した海水からのバナジウムの回収について、その応用に向けた取り組みが進んでいます。そして、ここが重要な点ですが、「ホヤの特徴を活かした分子発生学や生体防御機構の研究、そして金属濃縮機構の解析が盛んです。わが国は、これらの研究で世界をリードしている」そうです(広大・道端研究室)
 これは、日本が率先して実用化すべき環境バイオテクノロジーのひとつだと思います。私も大いに関心があります。ぜひ実用化したいですね。まずは、実用化動向でも調べましょうか。ご存知の方は教えてください。


研究動向:
広島大学大学院理学研究科生物科学専攻 情報生理学研究室
 バナジウム濃縮機構のカギを握るバナジウム結合タンパク質の遺伝子解析やタンパク質の3次元立体構造解析などにより、そのメカニズムと生理学的役割の解明に関する研究が行われています。これらの研究をベースに海水中バナジウムの回収や、ホヤの金属濃縮メカニズムを活用した金属の高選択的分取・回収技術や金属センサーの開発といった資源・環境分野のほか、人体の金属欠乏や金属過剰による制御機構の不調や生理的異常状態を高感度・高精度に検出できる技術の開発などを目指しているそうです。

 研究テーマ:金属イオンの濃縮機構とその生理学的役割
        メタロシャペロンの機能解明
        金属結合タンパク質の三次元構造の解析
        金属関連タンパク質の分子生物学的インフラ整備
        生物進化に伴う金属イオンの利用形態の変化


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