刀匠 小林貞永日記

世界唯一の「たたら」による玉鋼を生産する町奥出雲町。
その町で刀匠として日々刀を鍛えています。

平成26年小林一門展~小林貞永の歩み~に際してひとり言

2014年04月20日 | 日記


私の卸し鐵(かね)法は通常の火床に多少手を加えるだけです。材料としては古針とか碇(いかり)など明治以前と思われる古鐵なら何でもよく、
これを前もって薄くし(一分位)、短く(1寸位)切って使います。
火床に火をおこし火力が強くなった頃にこれを炭火の上にのせてその上に松炭を入れ熱していきます。
すると飴のように溶融して次第に火床の底に溜まっていきます。

一回に入れる量は100~150匁位で5回程度投入して500~600匁位までの量です。材料によってはその半分もない時があります。
底にたまった鐵は炭火の上から下へと溶け落ちていく間に炭素を吸収して鋼鐵となるのですが、
大体羽口の下三寸ばかりの深さ錬鐵を鋼鐵にする良い深さであり、溜まった鋼の上面が羽口に届く位がよく、
あまり深いと銑になり易く、また浅いと柔軟になってしまいます。

鞴(ふいご)の吹き方等も色々と工夫するのもコツの一つです。型の良い物はなかなか出来ないのです。
そうして火床の底に溜まりましたら約5~6分位ほどそのままにしておき、
次いでこれを取り出しワラ灰にまぶしてから鎚でトントントンと軽く叩いてしめてから大鎚にかけ、工程を終了いたします。

そうした業と技の集大成がいわゆる日本刀になるのです。
この4月26日から5月6日まで、島根県奥出雲町にあります「たたらと刀剣館」にて小林一門展が開催されます。
私、貞永の刀匠としての集大成の一門展でもありますので、是非ご来場いただき、伝統の技にふれていただければと思います。