
画像 江戸時代の狂歌を載せた古書
「いつまでもあると思うな親と金」ということわざは誰でも、どこかで一度くらいは見たり、聞いたりしたことがあると思う。意訳すれば、「親と金はいつまでもない」ということを強調しているのだ。意味とすれば、言葉通りに、「親は一般的な寿命の事情から、いつまでも面倒をみてくれるとは限らないし、お金も無限にあるわけではない。だからこそ、当たり前にあるものだと思わずに、自立と倹約を心がけるべきだ」という教訓や戒めが込められている。歴史的に言えば、このことわざは、「いつまでもあると思うな親と金」という江戸時代の狂歌の一節に由来しているということを最近知った。
そして、驚くべきことにさらに「ないと思うな運と災難」と続きがあるというのだ。一般的には前者だけが有名になり、後者の方はどういう訳かマイナーな存在になったようだ。しかしながら、両者合わせて考えると、人生の機微や奥深い道理について触れていて、興味深い。改めて言えば、前者は人々に頼る心を戒め、後者は運や災難はいつかは訪れるものであるから、幸運だかからと言って、浮かれることもせず、逆に不運続きだからと言って、悲観ばかりしないで、希望を持って生きていこうという励ましにもなっている。
狂歌の作者が「運と災難」をひとくくりにしたあたりがユニークというしかない。意訳すれば、幸運も、悪運もさらには災難も人生には必ずあるのだから、心せよということだろう。災難は地震や津波、台風など各種の自然災害もあれば、職場や学校、家庭などに人間関係上のトラブル、けがや病気などの健康上の問題など多岐にわたる。運も幸運と悪運、どちらにもつかない至って普通の状態もある。肝心なことは心構えとして、幸運のときも悪運のときもどちらでもない場合でも、おごらず、腐らず、希望を持って生きていくこと、同時に災難に対しては、長い人生のなかでは、大なり小なり、遭遇するだろうから、普段から「転ばぬ先の杖」の精神で、危機管理を怠るなということだろうと思う。