
通信社に勤務する知人から紹介された1冊が『世界の教育はどこへ向かうか』。教育行政に精通している彼の紹介文には、次のようにあります。
◆知人の紹介文
こうした書籍を現役の文部科学省職員が刊行できることを寿ぎたい。「はじめに」に書かれている通り「本書は、筆者が所属する組織の見解を示すものではありません」なのだけれど、さまざまな力学や歴史的制約やフィルターを通して表現された中教審答申や通知、学習指導要領といった、学校教育の規定・基底の一部を成す文言とは異なる言説が、こうして活字として読むことができて、吟味・味読できることには大きな意義があると思われます。
そして「わたしの知る限りですが、多くの文部科学省の人たちは、自らが直面する職務について誠実に向き合い、かなり多くの資料に当たり、人と出会い、話を聞き、議論をし、みずからの「観」を鍛えていると感じています」と続きますが、私もこのことはまったく同感で、これまで会合や講演で触れた文部官僚の人たちの言説には、感銘を受けてきました。世界の教育の動向を踏まえて、日本の教育のあり方について言及する1冊は、未だ教育に関わる仕事をする身にとって、とても勉強になる本でした。現場の先生方や、教育系の進路を志す人にとって、参考になるであろうと思う紹介者の言葉を、もう一文転載させていただきます。
◆紹介者の一文
新潟市のある中学校では、新年度の授業が始まる4月頃に時間をとって、各教科を担当する教師と生徒たちが、「どのような授業にしていったらよいか」また、それぞれの教科を「なぜ学ぶのか」、「どんな意味があるのか」といったより根源的な問いについて議論する機会を設けている。学校の先生方によると、この年度初めのセッションを入れたことにより、生徒たちの学ぶモティベーションが格段に上がったのを感じるという。