笑うかなぷー

新米ママの怒涛の育児日記

遠くの友達 -続編ー

2006年03月24日 23時52分22秒 | かめきちの話
クリスティーは、女性として生きる事を決心する何年も前に、
一人の男性として女性と結婚していた。




心に女性を宿しながら女性と結婚してしまったクリスティは、次第に
「女性が女性と結婚している」という奇妙な状況に悩むようになった
という。


そしてある日、ついにクリスティは奥さんに打ち明けた。


もちろん奥さんの驚愕はすごかったことだろう。

自分の旦那さんがある日「本当は自分は女だった。これからは
女性になる」と宣言をしたのだから。



それまでの奥さんは、友達も羨む素敵な旦那さんを持っていた。

やさしいし、家事もするし(奥さんは片付けが苦手なタイプだったので
クリスティーが掃除全般をやっていた)、とてもエレガントで
ハンサムな旦那さん。



その彼女の幸せな結婚生活が根底から崩れてしまったのだ。
ショックを受けるのが当然だ。



奥さんとしては「他の人に何と言えばよいのか判らないし、
こんな恥ずかしい思いを私にさせるなんて」という気持ちが次第に強く
なっていったという。

そんな彼女が「自分を不幸にした」クリスティーに対して、恨みしか感じなく
なるのに、そんなに時間はかからなかった。


二人が別々の家に住むようになってほどなく、奥さんの恨みは形となって
現れるようになった。


最初の頃はボーイフレンドに頼んで、クリスティの家の扉を壊したり、家に
入って物を壊させたりしていたのだが、次第にエスカレートするようになり、
警察に「クリスティからストーカーを受けている。助けてほしい」などと
通報したりするようにまでなってしまった。

そしてそのせいで、クリスティーは警察に連れていかれたりしていたのだ。






手段を選ばずに彼女を攻撃するようになってしまった奥さんに、
クリスティーは会社も辞めて、しばらく安全なところに身を隠していた。


ある都会に近い街に家を借りてひっそりと生活していたのだ。



結局クリスティーと奥さんは、長い争いの期間を経て、最終的に
離婚することになった。

お互いにとって、ツラい経験だったが、それが結果的に
田舎を出るきっかけになったのだ。


そしてそれは彼女の人生を、今までよりは生きやすくした。








クリスティーが普段、どんな思いをしているのかを知ったのは、
初めて彼女と銀座に出かけて、カフェでお茶をしていた時のことだ。



あきらかにアメリカから来たと思われる数人のグループがカフェの
前を行き過ぎた。 と思ったら、すぐに戻ってきた。


そして、クリスティーの事を指さしている。


何を言っているのかは判らない。 だが、口を半開きにして、あからさまに
軽蔑のまなざしでブシツケにジロジロ見ている。


そこには遠慮というモノもなく、まるで珍しい動物を見るような
とても失礼なものだった。




これは私にとって、初めての衝撃的な出来事だった。


クリスティーは、ちょっと青ざめながらも、「気にしなくていいから」と
私に言って、何でもないように振舞っていた。


そして一日のウチに何度か、同じような視線にさらされる
ことがあったのだ。





それまでも彼女の事をジロジロ見る日本人は沢山いた。

ただそれは、まず「外人だ~!」というのが最初で、その次に
「おや、スカートを履いてる~??」っていう感じで見ているだけで、
単純な「好奇心」で見ているという感じだった。


それですら、そうとうに失礼なモノだとは思うのだが、悪意がない分
クリスティーは全然気にしていないようだった。




ところが、同じアメリカ人の場合には、あきらかに「化け物」あるいは
「珍しい動物」を見るのと同じ視線を送るのだ。





これには私のほうが参ってしまった。

その夜は、昼間の事が頭から離れなくて、全然眠れなかった。




そして、それを毎日受けている彼女の気持ちを考えると、
胸が痛くなった。




その後、アメリカの彼女のオフィスに行く機会があったのだが、
彼女のブースの場所を訪ねると、あからさまにイヤな顔をする人がいたり、
一緒にディナーに行った時に、レストランの人が、まず彼女を上から下まで
見て、先に行っていたにも関わらず、他の人を優先して席に案内
するのを見た。




頭では理解しているつもりだったけど、実際に自分で経験してみると
こんな仕打ちを毎日受けている彼女の事を考えて悲しかった。





でも、クリスティーは、それだけの差別を毎日受けながら、
エレガントさと、やさしさを全く損なわないのだった。





ある時、あまりの周りの人の仕打ちにツラくなって、彼女になぜそんなに
いつも人にナイスにしていられるのか聞いたことがある。





すると彼女は、「自分が人に受けてイヤだなと思う事は、決して他の
人にしないようにしたい」と言ったのだ。



ムリだ。 私には絶対に出来ない。
私が人に親切に出来るのは、あくまで私が幸せな時だけだ。



もしも人が私に意地悪をしたら、ヒネクレて他の人にも感じ悪く
接するだろう。 人生であんなに悪意のある視線にさらされた事が
なかった私は、たった一日でトゲトゲの気持ちになったのだ。







その後、彼女は何度か顔の手術を受けて、だんだんと本当に
女らしくなっていった。 


彼女の場合の整形手術というのは、「顔をキレイにする」為ではなくて、
「いかに女の人として自然に見えるか」という事を中心にしてやるもの
だった。




私が最後に彼女に会った3年前でも、もうすっかり女性らしくなっていたが、
その後更に女性として完璧になったようで、
「もう誰も、私の事を指指したり、笑ったりしなくなった」と
嬉しそうに言っていた。


それを聞いて、私も本当に嬉しくなった。




今では彼女は「メーキャップで人をキレイにする仕事」をしている。



それまでいかに自分を「目立たないように、目立たないように」と
してきた彼女にとって、メーキャップひとつで全然違う顔に
なれるというのは素晴らしい事だった。

そして、「他の女の人もキレイにしてあげたい」と思うようになって
今の仕事を始めたようだ。


友達も沢山できて、以前よりも穏やかな日々を送っているという。



人は時に、自分と違う人や文化に対して、残酷な態度をとる事がある。

でも、ちょっと想像力を働かせてみれば、もしかしたら自分が
そのように生まれてきていたかもしれないのだ。

明日事故に巻き込まれて、顔や体にひどい怪我を負う可能性だって
あるのだ。

もしそうなった時に、人が自分を「差別した」らどんな
気持ちがするのだろうか。




どんなにツラい思いをしても、人にはやさしく、エレガントに
生きてきたクリスティーの事を尊敬する。


そして私にとって、クリスティと知り合ったことで、
「自分と違う人や文化」に対してあらためて考えさせられた
特別な出会いとなったのだった。



クリスティーがもっともっと幸せになりますように。










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8 コメント

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Unknown (はるぴぃママ)
2006-03-25 13:50:17
以前にもアメリカに留学していたことをお話したと思うのですが当時は毎日が楽しくて日本人として差別を受けたこともなく感じなかったので今回のかめきちさんのお話を聞いてショックを受けました・・・・。映画などで人種差別や貧富の差や仕事を差別する状況がよく出てきますが向こうに住んでいる私の友達も日本よりも明らかに差別をされる状況にでくわすことが多いって言ってました。そういう時自分の無力さや無知さに恥ずかしくなりますよね・・・。



本当、そんな辛い状況にたちながら人にも優しくできるなんてすばらしいですよね。

妊娠してるとき主人がおなかの子供がもし障害を持って生まれてきたらどうしようってナーバスになってたときがありました。そのとき私はどうあっても私たちの子供だし無事に生まれてもそれこそ怪我や病気をすることだってあるんだから親になる覚悟と責任を持とうよと言いました。他人と関わって家族をもつとういうことを経験した今色々考えさせられます。子供にも人に優しくできるように育ってほしい、そのためには親である私たちにも責任があると感じます。



私もそのクリスティーが女性として一人の人としてもっと幸せになれるように心から祈ります。
Unknown (ミル)
2006-03-25 21:32:22
記事を読んで、涙がにじみました。

クリスティーさんがどんなことがあっても、優しさとエレガントさを失わず、しっかりと生きていく姿に。

私はこちらに住んでから、幸いにも差別されてイヤな思いをしたことはあまりありませんが、人種差別が原因で刺されたという事件を聞いたり、日本人の子供が成績が思わしくなく、その子がいると学校全体のランクが落ちてしまうから、他の学校へ転向するようにとあからさまに欧米人の親から言われた等というような話を聞いたりすると、自分の力が及ばない厳しい世界だと思うことがあります。

クリスティーにとって、かめきちさんのようなお友達がいるということは、とても嬉しく心強いことだと思います。

そして、かめきちさんの英語力もすごいと思いました。

クリスティーさんが、幸せな生活を送られることを心より祈っています。
友人! (じょんこ母)
2006-03-25 21:41:27
さま



遠くの友達!を読んだ「かめちち」はは心が広いな~と感心していました



の良さを認識してくれているかなパパは偉大な人です



昔々のことですが、差別なし、内外なく皆一緒、誰にでもフレンドリーで親切だった



とても素敵な祖父母…がおりました



しかし、母ファミリーは万年貧乏でした



貧乏でも家の中には友人知人であふれて笑い声が絶えませんでした



ふと、小さいころを思い出してしまいました
コメントありがとうございます! (かめきち)
2006-03-26 01:48:36
>>はるぴぃママさま



素敵なコメントをありがとうございます。



私もそれまでは、海外で人に親切にされるだけで

差別にあった事がありませんでした。



でも、彼女と一緒に過ごしたことで、人ってこんなに

残酷にもなれるんだなと、とてもショックでした。



はるぴぃママさんが妊婦だった時に、「子供は

無事に生まれてくるのだろうか」と考えた事、私も

全く同じです。 



やはり誰でも五体満足に生まれてくることに

越したことはありませんが、もし、そうではなかった

時の事も沢山考えました。



なので、実際に障害を持って生まれた赤ちゃんや、

生まれつき心臓に異常を持っている赤ちゃんの話を

聞くと、とても他人事とは思えないのです。



私自身は、違うという事で差別をしない人間で

ありたいと思うし、自分の子供にもそうなってほし

いと心から思います





>>ミルさん



ありがとうございます。



もしもミルさんが、クリスティーと同じ都会に

住むのであったら、いつか紹介していたと思います。



残念ながら、ミルさんのところとは反対側の都会

なのですよ(わかりますか?



ミルさんのやさしさ、繊細さは、とてもクリスティー

のやさしさと似ているものを感じるのです。



せめて私たちは、差別をしない心を持った子供を

育てたいと強く思っています。



でも、私の英語力はしょぼいですよ(笑)

私、体で話すほうなんで、笑われることも沢山

あります。 たぶん、クリスティーは特別だった

のだと思います。 心で話したのかもしれませんね





>>じょんこ母さま



身内を褒めてはいけませんよ(笑)



私は、誰かさんと一緒で、好奇心旺盛すぎて、

すぐに「見たい、見たい」と騒ぐ悪いクセがあります。



今回はそのせいで、たまたまクリスティーと友達

になれたのでラッキーでしたが、普通は怒ります

よね。  私の心が広いなんてとんでもないです!





クリスティーは本当に素敵な女性です。





私の友達もすぐにファンになりましたが、会社で

一緒に仕事をした人も何人か、彼女の事が大好き

になりました。 何か人を惹きつけるモノを

持っているのでしょうね。 



でも、彼女の背負っている人生はあまりに過酷です。



彼女に素敵な生涯のパートナーが現れることを

本気で祈っています
衿を正して (釣る姫)
2006-03-26 12:05:42
重い内容にも拘わらず希望と暖かさが程よく

ミックスされ、優しさに溢れたブログでした。クリスティーが自分の内なるものに目覚め

たその瞬間からの永い年月と、自分に正直に生きよう決心をし実行に移すまでの心の葛藤

を思う時、これからの彼女の幸せを祈らずにはいられません。何より感動するのは、人を愛する心と、前向きな姿勢です。

かめきちさんのような心の友達が彼女の人生を豊かにしていくのだと思います。

かめきちさん私もクリスティーが大好きにです。
優しさは強さ (腹巻)
2006-03-26 22:43:53
以前さんorじょんこさん?から思えばクリスティーさんの話を聞いたときは、単に面白いヒトの話くらいにしか思っていませんでした。(反省



銀座のカフェで受けたアメリカ人の視線…



人間って結構弱いっていうか、キャパシティが狭くて、悲しいけれど自分とちょっとだけでも違うものって受け入れられないんですよね。

同じもの同士の輪の中で自分の存在価値を確認しているっていうか…悲しいけれど。



でも、何よりも『エレガントな振る舞い』ってやろうと思っても一朝一夕で…まして意識して出来るものではないので、クリスティーさんって本当に素敵な人なんでしょうね。



そして前編の文末、続きが気になる!早く続きが読みたい!!とじらされました。

ニクイくらい巧みな終わり方でしたよ!!

さんの文章力に脱帽
Unknown (くま)
2006-03-27 06:59:36
かめきちさん。クリスティーさんのお話を書いて下さってどうもありがとうございました。読みながら、色々と考えさせられました。



腹巻さんのコメントにもありましたが、自分と異なるもの、自分の価値観と衝突するものはなかなか受け入れるのが難しいですよね。理論的には「差別はしてはいけない」と考えていても、反射的に「異なるもの」に対して軽蔑したり時には嫌悪感をおぼえたりしてしまうこともあると思います。



以前、自分の日記にも書きましたが、私が住んでいるミルウォーキーはアメリカの中でも人種隔離政策が根強く残っている都市なので、毎日のように差別を目の当たりにしています。また、大学院で同じプログラムに所属するレズビアンの友達からも差別の経験談をよく聞きます。もちろん、社会全体が差別に立ち向かっていくのが理想だとは思いますが、かめきちさんのように、個人のレベルでクリスティーさんのような方(一般的に、大多数の人々と「異なる」とみなされている人)と友情を築くことが、差別の打破につながっていくと思います。



かなぷーはかめきちさんのようなお母さんをもって、本当に幸せですね
コメントありがとうございます2! (かめきち)
2006-03-27 08:53:31
>>釣る姫さま



クリスティーの事を好きと言ってくれてありがとう

ございます!



「性同一性障害」というと、一般の人は「ああ、

オカマね」って思ってしまうのですが、それとは

違うのですよね。 もし自分がある日起きたら

男になっていて、生活をしなければならないと

したら、どんなにツラいことでしょう。



でも、彼女のエレガントさは相当なもので、ガサツ

な私はいつもずいぶんとタシナめられています





>>腹巻さま



ブログには重々しく暗く書いてしまいましたが、

普段彼女といると、おかしい事が多すぎて笑い

っぱなしです。 それは男とか女とか超えたところ

の、エレガントすぎる彼女の行動があまりに

可笑しいからです。



今でも京都に旅行に行った時の事を思い出すと

ついつい口元がほころんでしまいます。



今回は私は偉そうでしたが、私自身にも普段差別

してしまっている事があると思います。

人間の悲しい本能なのですかね、違うモノを排除

したいと思う気持ちというのは。



前編の最後を褒めてくれてありがとうございます!

そして、そのワリにショボい後編じゃありません

でした?(笑) 文章ってむずかしい!





>>くまさま



ああ、そうです。 クリスティーの住んでいた

場所とくまさんの現在いる所は、ちょっと雰囲気が

似ているかもしれません。



だからくまさんは、実感として「差別する」という

事が判ると思います。



それまで私の出会ったアメリカ人は皆感じが良かった

ので、差別されるというのを目の当たりにして

かなりショックでした。



それに日本人も相当違うモノを差別するところが

あると思ったのですが、アメリカ人のそれは、

もっとアカラさまというか、はっきりしていて

凄かったです。



私も最初は好奇心で近づいたので、人の事は

言えませんが、彼女と知り合えて本当に良かった。



そして、友達としても最高の人です