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会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

佐藤金融庁長官記者会見の概要(平成20年11月 6日(木)場所:金融庁会見室)

佐藤金融庁長官記者会見の概要:金融庁

11月6日に行われた金融庁長官の記者会見の概要です。銀行の時価会計についてもふれています。相当専門的な内容を述べています。(とてもぶっつけ本番の記者会見の内容とは思えない?)

長くなりますが、引用します。(総理大臣の発言を否定しているようなしていないような・・・)

「問) 同じ会見で総理が、時価会計についてどこまで貫徹させるべきか、みたいな形で問題提起をされました。今、日本の企業会計基準委員会等でも見直しみたいなものも議論になっていますが、あくまで時価会計をきちんと機能させるということだと考えており、時価会計自体を緩めるといった判断は今のところなされていないのではないかと思うのですが、その辺についての金融庁として見解をお聞かせください。

答) 企業会計基準委員会(ASBJ)についてのお尋ねでございます。

議論の前提として一点まず確認をしておきたいと思うのですが、会計専門家のみなさんが使っている「時価会計」ということばは、国際的にはむしろ公正価値会計(フェア・バリュー・アカウンティング)のことを意味しているのだと思います。これは、市場に十分な取引があって市場価格が信頼できるものである場合にはその価格による評価を用いる、すなわち「マーク・トゥー・マーケット」ということですけれども、市場が混乱している場合など信頼に足る市場価格がない場合には、むしろ合理的に算定された価格、すなわち理論値による評価、英語でいえば「マーク・トゥー・モデル」というのを使いますが、こういう両方のことのセットがフェア・バリュー・アカウンティング、公正価値会計という内容を構成しているわけですけれども、会計専門家はこのことを指して「時価会計」と呼ぶことが多いのですけれども、一般的に巷では「時価会計」というのは先ほどの二つの要素のうちの前半だけ、すなわちすべからく市場価格を用いるということが「時価会計」であるというふうな誤解があるのだろうと思います。

そういう意味で今のお尋ねの意味合いも公正価値会計(フェア・バリュー・アカウンティング)についてどう考えるかというお尋ねというふうに受け止めたいと思いますが、そういう意味ではまさに今おっしゃっていただきましたように、企業会計基準委員会というのは時価会計をきちんと機能させるための運用指針を示したものである、あるいは公正価値会計をきちんと機能させるための運用指針を示したということであろうかと思います。これは10月28日に企業会計基準委員会からQ&Aという形で解釈が公表されたものであります。

繰り返しになりますが中身を申し上げれば、金融商品の実際の売買事例が極端に少ない場合や売り手と買い手の希望する価格差が著しく大きい場合などには、今のような極端な市場価格ではなく、合理的に算定された価格、すなわち理論値を用いることが適当な場合があると、こういうことを明確化したという内容でございます。

これとは別に企業会計基準委員会は現在、金融商品の保有区分の変更についても検討を行っているところでございます。具体的には、国際的な会計基準の動きも踏まえ、金融商品の保有目的に関して、売買目的有価証券やいわゆる「その他有価証券」から、償却原価法で評価を行う満期保有目的債券に区分を変更することを例外的に認めるかどうか、こういった点について検討が行われているというふうに承知をいたしております。

金融商品会計を含めた会計基準につきましては、引き続き、民間主体であり独立した主体である企業会計基準委員会において、国際的な動きも踏まえつつ、適切な検討・対応が行われるものというふうに考えており、金融庁としてはこのような適正な金融商品会計に向けたご努力をサポートしていきたいというふうに思っております。」

これだと、マーク・トゥー・マーケットとマーク・トゥー・モデルが同列のようになっていますが、ちょっと違うように思います。「答」のように優先順位としては当然前者が優先されるわけで、どちらかというと後者はまがいものの時価、モデルの条件を変えればどうにでもなる金額という批判的なニュアンスがあるのではないでしょうか。少なくとも、実際の取引価格を説明できないのであればモデルの方がおかしいと疑うことが必要でしょう。

「問) 先ほどの時価会計の話なのですけれども、来週から銀行の決算が本格化して、一部今週も理論値を使った会計処理をされている銀行も出てきているのですが、理論値を使うところと、市場価格でいくところとバラつきがあると、同じ目線で見るというところで問題も生じてくるのではないかと思うのですけれども、何か金融庁として、どちらかに統一しろとか、そういうような対応をとる、というようなところはいかがお考えでしょうか。

答) 先ほども、市場が混乱している場合などの、市場に信頼に足る市場価格がない場合には理論値を使うというときに、「信頼に足る市場価格がない場合」というものを特定するという作業が前段として必要なわけです。その作業をするにあたっては、おそらく、各金融機関それぞれに異なる有価証券、同じ種類であっても銘柄も違うでしょうし、おそらく取得価格といったことも違ってきているわけだと思うのです。それぞれの金融機関において、ポートフォリオの中身というのは相当バラエティーがあるのだろうと思いますし、先ほど申し上げた、まさに信頼に足る市場価格がない場合として、実際の売買事例が極端に少ないとか、あるいはオファー(売値)とビッド(買値)の間の価格差が著しく大きいとか、そういうことを企業会計基準委員会は示しているわけですけれども、そういった事実が該当する金融商品、銘柄であるのかどうかといったことも、おそらくそれぞれ保有している有価証券によって事情が異なるものがあるのだろうと思います。そこは、それぞれの金融機関においてこういった事実関係をきちんと整理をして決算を作り、その作られた決算を監査法人、監査人とよく議論をしていただくということが必要になってくるということであろうかと思います。

金融庁として見ていくべきは、そういったきちんとした事実認識に基づいて、監査人との間でもきちんとした共通認識に基づいて、こういった理論値の使用というものが行われていく、というプロセスが大事だろうと思っておりまして、そこの点には注意をしていきたいと思います。決算発表が一巡したところで、どのような状況になっていたのか、ということは、ヒアリング等をしてみるという選択肢はあろうかと思っております。」

あとのほうでヒアリングするというのは具体的な話ではないとはいっていますが、金融機関の決算のポイントにはなるのでしょう。金融庁としては、「理論値」を使わせたいのか、あるいは、取引がある場合には理論値を使うな、(理論値を使うのはよいが)いい加減な理論値は使うなという点をいっているのか、よくわかりませんが、あまり気にしてもしょうがありません。

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