会長声明「「監査基準の改訂に関する意見書」の公表を受けて」の発出について(日本公認会計士協会)
2018-07-20
日本公認会計士協会は、会長声明「「監査基準の改訂に関する意見書」の公表を受けて」を、2018年7月20日付で発出しました。(協会はやはり文書の日付を西暦表示にしたようです。これもそうなっています。)
監査基準改訂(「監査上の主要な検討事項」記載)の意義を述べたうえで、監査人に以下のように要請しています。
「監査人は、「監査上の主要な検討事項」の導入が、これまでの標準文言による監査報告書から個々の企業の監査に固有の情報を提供する監査報告書への大きな転換点であることを認識する必要があります。監査が資本市場における重要なインフラとして信頼を回復し有効に機能し続けるためには、公共の利益に資するという監査の本来的な役割を踏まえ、実施した監査の内容に関する「監査上の主要な検討事項」が利用者にとって適切な情報となるように取り組んでいただけますようお願いいたします。 」
この声明文のとおりだとは思いますが、どういうふうに「監査上の主要な検討事項」を記載すれば、「利用者にとって適切な情報となる」のかは、監査人で考えてくれということなのでしょう。ただ、「固有の情報」ということを強調していることからすると、ひな型的な文言をそのまま使ったりするなといいたいのかもしれません。
私見ですが、たぶん、監査事務所の対応としては、ボトムアップ的なアプローチとトップダウン的なアプローチがあるのでしょう。
ボトムアップというのは、現行基準でも、特別な検討を必要とするリスクなど、重要な虚偽表示リスクが高い領域とそれらへの監査人の対応は、監査役等へのコミュニケーションとして報告することになっている(例として挙がっている)ので、それらが適切に実施されているのか(重要な項目のもれがないかなど)、点検し改善していくことです。場合によっては、監査計画から見直さないといけないでしょう。今監査している期から、これを徹底しておけば、何を書けばいいのかわからないということもないでしょうし、導入初年度に、会社に唐突感が生じることもないでしょう。
トップダウンというのは、海外企業や海外上場の日本企業における記載事例を、項目別に整理して監査チームに提供するなど、監査事務所全体として対応することです。これだけだと、ひな型的文言の量産につながるおそれはありますが、やはり、どういう記載が一般的なのか(例えばどこまで詳細に書けばいいのか)という相場観は必要でしょうし、ボトムアップと組み合わせれば、それぞれの監査固有の情報の提供という目的には反しないでしょう。
なお、会長声明では、東証1部上場会社の先行適用にもふれています。
「最後に、「監査上の主要な検討事項」は、上場企業等の金融商品取引法に基づく 2021 年(平成 33 年)3月決算の監査から適用となりますが、早期適用が可能とされており、特に東証一部上場企業については、できるだけ 2020 年(平成 32 年)3月決算の監査から適用することが期待されています。」
これについては、改正基準自体ではふれられていませんが、会長声明の脚注で示しているように、監査基準改訂公開草案への「コメントの概要及びコメントに対する考え方」に記載があります。
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