会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

米国基準と日本基準に1兆円の差~その要因は?

税務研究会:週刊経営財務 Weekly Accounting News

経営財務2008年10月13日号に三菱UFJフィナンシャルグループの2008年3月期決算が取り上げられています。

三菱UFJは日本基準による決算と米国基準による決算の両方を公表していますが、当期純利益に約1兆円の差があります。記事によれば旧UFJホールディングスを合併する際に日本基準では持分プーリング法を採用した(したがってのれんは計上されない)のに対し、米国基準ではパーチェス法を採用した(記事によれば約1兆7000億円ののれんを計上した)ことが差異の原因だったようです。

米国基準では毎期のれんの減損をチェックする必要があり、2008年3月期は三菱UFJの株価が下落した結果、のれんの減損損失8,937億円を計上しています。日本基準ベースではそもそものれんが計上されていないので、この部分の損失が差異のうちの大きな部分となります。

海外基準ではのれんは非償却なので日本基準より甘いという見方がありますが、のれんの減損に関しては、米国基準、IFRSとも、毎期テストをしなければならず、かつ、大まかにいうと時価または使用価値との比較により減損処理をするかどうかの判定を行わなければなりません。日本基準では、20年間の割引前キャッシュフロー総額と簿価を比較して減損の要否を判定するというのんびりした規定になっているので、減損処理に関しては非常にゆるい基準といえます(個別財務諸表で子会社株式の評価減を行った場合はのれんも減らすという別のルートの処理がありますが、子会社の株式が上場しているのでなければあまり適用されません)。

コンバージェンスだといってのれんの非償却だけ海外基準を取り入れた場合には、さらに甘い基準となってしまいます。のれん減損処理の見直しも同時に行うべきでしょう。
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