日産ゴーン事件のケリー被告の裁判の記事。
検察側の証人である元秘書室長に対する検察側の尋問が10月末でいったんおわり、11月からは、弁護側の反対尋問が行われるそうです。
この元秘書室長が会計監査人をだましていたという証言は、朝日やNHKが報じていますが、この日経記事でもふれています。
「東京地裁で10月16日にあった尋問で、大沼敏明・元秘書室長は未払い報酬を巡る監査法人とのやりとりを明かした。
証言によると、元室長はゴーン元会長の未払い報酬について、元代表取締役のグレッグ・ケリー被告から「インセンティブ」制度を使って支払うよう指示された。業績連動型の報酬で本来は部長級などが対象の制度だ。
元室長は支払いに備えて、2009~14年度の未払い分など約8千万ドルを14年度に計上した。この計上に監査法人が気づき、元室長に支給対象を質問。元室長は「(ゴーン元会長ら)取締役は含まれていません」と嘘を言い、支給対象者の人数を水増しした書面も示して偽装して未払い報酬の発覚を免れたという。
その後、東京国税局の税務調査でも制度の詳細を尋ねられた。「取り繕うことはできない」。大沼元室長はゴーン元会長に「もう無理です」と伝え、計上済みの費用は17年に取り消した。元室長は監査法人に改ざんしたデータを見せたことについて「すごく後悔しました」と声を震わせた。」
前にも書いたとおり、役員報酬の開示は、原則的には費用計上された金額を開示することになっているので、日産が費用計上していたとすれば、ゴーン氏、ケリー氏に不利な事実といえそうです。
ただし、2009年度から2013年度までは、費用計上していなかったわけですから(2014年度にまとめて計上したということはそうなる)、その4年間は、費用計上も開示もなく、つじつまはあっていたということになります。また、2017年に計上済みの費用を取り消したということは、そもそも計上すべきでなかったか、あるいは、ゴーン氏への追加報酬支払いの見込みがなくなったと判断したということでしょうから、結果として、役員報酬開示に含めないので正しかったと解釈することもできるでしょう。
ゴーン氏側としては、追加報酬について各年度で費用は計上するが、開示は行わず、実際に支払う時点(退任後?)で、積み立ててきた未払費用から取り崩すかたちにすれば、あらたな大きな費用(100億円超?)は計上されないため外部にはわからず、高額報酬への批判を回避できます。それができるスキームをいろいろ考えたのかもしれませんが、一気に費用計上したり、その後取り消したりしているとすれば、結局、うまくいかなかったのではないでしょうか。
そもそも、会社法で、役員報酬や役員との利益相反取引は、厳しく規制されており、合法的にこっそり役員に利益を渡すということはできないはずです。やったとすれば、違法行為ですから無効であり、会計上は費用にはならない(したがって開示対象でもない)と思われます。
結局、ゴーン事件の役員報酬(開示されていない追加分)に関しては、各年度の、1)会社法上の支払い承認手続、2)財務諸表での費用計上・取消し、3)役員報酬の開示(訂正前と訂正後)、4)実際の支払い(いまのところゼロ?)を、すべて関係づけてあきらかにする必要があります。そうでないと、役員報酬開示の虚偽記載があったかどうかは判断できないと思います。
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きんちゃん

ポラ
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