金融庁の証券取引等監視委員会は、株式会社オービックに係る有価証券報告書等の虚偽記載について検査した結果、法令違反の事実が認められたとして、2013年6月21日付で、同社に対する課徴金納付命令を発出するよう勧告を行いました。
私募債への投資の評価に関連して以下のような虚偽記載を指摘されています。
「株式会社オービックは、海外の不動産プロジェクトを資金使途とする社債(私募債)に対する投資を行っていたが、社債発行者が破綻したことから、連帯保証人の資力に依拠して当該社債の償還可能性を評価していた。その後、当社は、当該連帯保証人の財政状態が大幅に毀損した可能性をうかがわせる事象を把握したが、社債の評価体制の不備等により、当該事象の影響を十分確認せずに当該社債の評価を誤った結果、当該社債に係る投資有価証券評価損等を計上しなかった。」
課徴金の金額は884万9,999円です。
虚偽記載が指摘されたのは、2012年3月期の第3四半期と本決算です。第3四半期で影響をみてみると「連結四半期純損益が▲6,025百万円であるところを7,242百万円と記載」というように、大幅な赤字であったのに黒字として報告していました。本決算でも実際は赤字だったのに黒字にしています。
証取委、オービックに課徴金勧告 130億円多く計上(朝日)
「監視委によるとオービックは、120億円分の社債を保有する会社が破綻(はたん)し、その価値がなくなっていたのに、2011年度の第3四半期と通期の有価証券報告書に社債に価値があるかのように記載していた。社債の利子分10億円とあわせて、純損益を実態よりも計130億円多く計上していたとしている。」
当サイトの関連記事
当サイトでも何回か取り上げましたが、問題となっている社債に関連して、監査人が今回指摘された期より前の期において限定付意見(結論)を出しています。監視委は、限定が付いていた期において、この私募債の評価が正しかったのかどうかについては、きちんと調査したのでしょうか。会社が訂正した期だけ調べればよいというものではないでしょう。
また、この件は投資の評価の誤りということで決着をつけようとしているように見えますが、上場会社から、100億円を超える資金が、わけのわからない海外プロジェクトに消えてしまったというのが重要な点だと思われます。それについては、会社から何らかの説明があったのでしょうか。
証券取引等監視委員会による課徴金納付命令の勧告について(オービック)(PDFファイル)
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