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急騰株の売却益、ライブドアが投資組合から数億還流

急騰株の売却益、ライブドアが投資組合から数億還流 : 社会 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

ライブドアの証券取引法違反事件の記事。問題の出版社の株を保有していた「VLMA2号投資事業組合」のからくりが書かれています。

記事によれば、この組合は、出版社の全株式を2004年6月に4千数百万円で買収していますが、「ライブドアマーケティング」(旧バリュークリックジャパン)との株式交換により、株式交換時の時価で約44億6000万円のライブドアマーケティング社株を取得し、その後値下がりしたものの、10億円近い金額で売却しています。売却利益の大部分は同組合から、ライブドア側に流れていたようです。

「VLMA2号投資事業組合」とライブドア本体の関係はまだ明確になっていませんが、記事に書かれているようにライブドアが実質支配していたとすれば、ライブドアの連結決算上はライブドアと一体と考えるべきでしょう。つまり、ライブドアは原価4千万円の株を時価44億円の別会社(ライブドアの関連会社であるライブドアマーケティング)の株式と交換し、その後、10億円以下まで時価が下がった時点で売却、現金化したということです。

ライブドアマーケティングにおける会計処理を考えてみると、株式交換の教科書的な処理だと、交換時点の時価ベース(最大44億円)で、出版社株を買った(そして同額株式を発行した)という処理になります。連結上は、その時価を資産・負債に配分しますが、大きな資産はなかったようですから、多くがのれん(連結調整勘定)として計上されたのでしょう。実際、2005年3月末(2005年第1四半期)には20億円の無形固定資産が計上されています(前期末は2億円以下)。ライブドアマーケティングの会計処理としてはこれで正しい処理でしょう(ただし、あくまで形式的にみた場合の話です。風説の流布により株価(時価)をつりあげていたとすれば、時価をベースにした株式交換の処理は実質的にはインチキだということになります)。

会計上の問題は、株式交換の取引が、実質的にライブドアのグループ内の取引だということです。取得原価4000万円の株式が、内部取引により数十億円(10~20億円程度か)まで評価増になった(連結上は多くがのれんとして計上された)わけですから、ライブドアの連結決算上は、この差額を消去する処理が必要です。

もちろん、ファンドをとおしているという点がくせものです。ファンドやファンドの保有株は連結しなくてもいいという解釈だと、そもそもライブドアと「VLMA2号投資事業組合」は互いに独立した存在ですから、上記の取引は内部取引でも何でもなく、利益の消去も不要だということになります。いったいどちらが正しいのでしょうか。

スケールは違うかもしれませんが、もしかすると、米国のエンロン事件のように、会計の面でも大きな影響を与える事件になるかもしれません。
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