会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

(書籍の紹介)暴走する資本主義  ロバート ライシュ 著

暴走する資本主義暴走する資本主義
ロバート ライシュ 雨宮 寛

東洋経済新報社 2008-06-13
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原著(「Supercapitalism」)の発行は2007年で、少し古くなってしまいましたが、夏休みに読んだ本のうちの1冊です。

宣伝文より

「私たちは「消費者」や「投資家」だけでいられるのではない。日々の生活の糧を得るために汗する「労働者」でもあり、そして、よりよき社会を作っていく責務を担う「市民」でもある。現在進行している超資本主義では、市民が労働者がないがしろにされ、民主主義が機能しなくなっていることが問題である。私たちは、この超資本主義のもたらす社会的な負の面を克服し、民主主義をより強いものにしていかなければならない。個別の企業をやり玉に上げるような運動で満足するのではなく、現在の資本主義のルールそのものを変えていく必要がある。そして「消費者としての私たち」、「投資家としての私たち」の利益が減ずることになろうとも、それを決断していかなければならない。その方法でしか、真の一歩を踏み出すことはできない。」

市民の「消費者」や「投資家」としての側面が最優先される超資本主義によって、民主主義が飲み込まれつつあると分析しています。最終章に書かれている「処方箋」には賛成できない部分もありますが、このような分析については概ね正しいと思いました。

意外にも、CSRに対しては冷淡です。

「「企業の社会的責任(CSR)」に対する関心の高まりは、民主主義に対する信頼が衰退していることと関係している。」(231ページ)

「大企業が情熱を持ってCSRに取り組んだ理由は簡単だ。それは新聞で美談になるし人々を安心させるからである。企業が社会的美徳に取り組むと宣言することによって、かつて若干の企業によって引き起こされた、人々が心配するような出来事について、政府が立法や規制で対処するのを未然に防げるかもしれないのだ。」(232ページ)

「CSRは、これから出世して経営幹部として得られる高額な報酬と、世の中のために何か善いことをしたいという精神的報酬の両方を望む、才能と環境に恵まれた若者をも都合よく安心させてくれる。彼らは、貧しい地域での社会事業に従事したり、そこで教師になったり、あるいは公務員として働くのではなく、MBAを取得してから、世の中のための善行のすべてを年次報告書の載せるような大企業に就職すればよいのだ。そうすれば、成功と善行の両方を同時に達成することができるし、そのように自分に言い聞かせればよい。」(233ページ)

「利益を上げている企業や業界であれば、明らかに社会的美徳に欠けていても、投資家は懲らしめようとはしない。」(239ページ)

「企業は、よりよいガバナンスによって投資家に対して敏感に反応するのであり、従業員や地域社会や社会全体に対して反応するのではない。」(241ページ)

「消費者は社会的責任が大事だというが、実際はそのために余計に払う人はほとんどいない。」(245ページ)

「超資本主義では、利益を損なうような社会的善行は許されない。どんな企業であれ、競争相手が引き受けないような追加費用を「自発的に」引き受けることはできないのだ。それだからこそ、超資本主義の下で利益にも影響が及びそうなことを企業にさせるには、規制するしかないのである。」(280ページ)

「企業は公共の慈善団体となるために設立されているのではない。」(283ページ)

元公認会計士の勝間和代の推薦文がついていますが、まともな本ですので敬遠する必要はありません。
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