会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

特別調査委員会の調査報告書公表に関するお知らせ(売掛金回収仮装?)(ラックランド)

特別調査委員会の調査報告書公表に関するお知らせ(PDFファイル)

ラックランド(東証プライム)のプレスリリース(2024年4月16日)。

税務調査で発覚した社⻑の交際接待費等の問題や、それと関連する⻑期売掛⾦の回収資⾦等に関する問題について調査していた特別委員会の調査報告書(約130ページ)を公表しています。

調査事項は...

「当委員会は、次の委嘱事項に基づいて本調査を実施した。
(1)2019 年度から 2023 年度までの当社の望⽉社⻑による接待交際費の経費精算につき、経費の内容及び経費精算の承認過程において不適切なものがなかったか
(2)2017 年度及び 2018 年度に発⽣した⾼額の⻑期売掛⾦が発⽣している特定の取引先について、当該各年度における収益認識の妥当性、与信判断の審査過程、売掛債権の保全及び回収に係る管理過程につき不適切なものがなかったか
(3)上記(1)及び(2)に関して不適切な事実が発⾒された場合、これに関する類似案件の有無
(4)上記(1)及び(2)に関連し、当社の代表取締役である望⽉社⻑による交際接待費の精算申請との関連性の有無
(5)上記の各事項につき問題が発⾒された場合にはその原因分析と再発防⽌策の提⾔
(6)その他、当委員会が必要と認めた調査事項(本報告書で当委員会が更なる調査が必要と認めた事項を含む。)」

単純な役員の不適切交際費の問題ではなかったようです。

社長の交際接待費・旅費交通費は、2023年度までの5年間で 706,692千円計上されていましたが、特別調査委員会は、社⻑による不適切な経費申請及び精算として、334,759千円を認定しています(報告書10ページ)。

その類型は、重複精算、同⾏者なし経費、家族帯同経費、私的物品購⼊、その他事業関連性がない精算です(同11ページ)。

報告書では、不適切な内容について、パターンごとに具体例も含めて説明しています。

不適切経費の使途を調べていく中で「物件 X 案件の⻑期売掛⾦債権の回収に関する不適切⾏為」という別の問題が明らかになったそうです(同34ページ)。

「すると、2019 年から 2020 年にかけて、当社から仮払⾦として望⽉社⻑の個⼈⼝座に⽀払われた資⾦が、望⽉社⻑の資産管理会社である D 社を経由して、当社が物件 Xα⼯事等(以下「物件 X 案件」という。)について売上として計上した⻑期売掛⾦の返済(後に Y 社から債務を引き受けた Z 社による返済)の原資に充てられている疑義があることが判明した。

この疑義が事実だとすると、当社による⻑期売掛⾦の回収は、当社から⽀出された資⾦によって仮装されたものとなり、その⻑期売掛⾦には回収可能性があったのかという疑義が⽣じることになる。また、⻑期売掛⾦の回収可能性に疑義が⽣じれば、そもそも回収可能性の疑わしい⻑期売掛⾦を売上計上することができたのかという疑義も⽣じることになる。」(同34ページ)

この物件X案件の売上について。

「当社は、Y 社から、同社が運営する物件 X のα⼯事及びその追加⼯事 3 件を受注し、⼯事を完了し、2018 年 3 ⽉●⽇に 3,735 百万円、同年 12 ⽉●⽇に 2,064 百万円、合計5,800 百万円の売上を計上した。」(報告書34ページ)

ところが、「注⽂者である Y 社に対する与信管理の不備」、「請負代⾦の⽀払条件の変更(前⾦/中間⾦あり→なし)に対する管理の不備」、「仕掛品(協⼒会社への先⾏⽀払)の多額計上に伴う資⾦繰り管理の不備」、「請負契約書のバックデートなど⼿続上の不備」といった不備のために、多額の未回収が発生してしまったようです(同35ページ)。

報告書では以下の図のような資金の流れを示しています(同36ページ)。(Z社は後で出てきます。)

物件X案件の受注から着工、引き渡し、売上計上までの経緯について、詳しく説明しています。きちんと読めてはいませんが、いろいろなトラブルがあったようです。会計監査人も登場します(54ページ~)。

そもそも、売上先であるY社は、工事代金全額の資金調達ができなかったようです。

「この資料から読み取れることは、物件 X 案件の請負⼯事代⾦が約 60 億円に膨れ上がったものの、Y 社は H 銀⾏に対して約 40 億円しかかかっていないという虚偽の説明をしていることから、残り約 20 億円の⼯事を Y 社から発注した形をとることができないため、新設する Z 社から発注する形をとりたい、というのが Y 社側からの強い要望であった、という点である。そして、当社としても、H 銀⾏からの融資がおりなければ当社の Y 社に対する約 20 億円の売上債権④を回収する⽬途が⽴たないので、不本意ながらも要望に応じざるを得ず、望まない想定外の受注形態になってしまったということである。 」(同60ページ)

(Y社の方は、こんなことをやれば、約20億円の原価を別の案件に付け替えたことにならないのでしょうか。)

さらに、調査では、回収したとされる売掛金の支払い原資を、ラックランド側からの支出と照らし合わせながら、できる限り調べているようです。

あやしい支出に関係する購入申請書の例。

物件 X 案件の⻑期売掛⾦債権の回収に関する問題点をまとめた箇所より。

「これらの問題点はいずれも、当社が物件 X 案件によって約 22 億円の⻑期売掛⾦を抱え、かつ、1 回でもその⼊⾦が滞ったら貸倒引当⾦の計上を検討しなければならないという状況に追い込まれたことが背景にあり、Y 社及び Z 社からの債権回収に躍起になり、なりふり構わぬ⾏動、当委員会として不適切と評価せざるを得ない⾏動に出たものと理解される。

この点、鈴⽊取締役も、Y 社や Z 社から滞りなく債権回収するためには、B1 ⽒からの無理な要請にも応ぜざるを得ず、それが H 銀⾏などへの不適切な⾏為に繋がったと述べている。

そして、これらの⼀連の不適切な⾏為に、望⽉社⻑、鈴⽊取締役、A1 ⽒という財務ラインのトップ 3 が関与していることは、物件 X 案件のような⼤規模な建築⼯事案件における当社の内部統制の有効性に重⼤な疑義を⽣ぜしめるものであり、また物件 X案件における経営者の不適切な⾏為を抑⽌できず発⾒もできなかった取締役会・監査等委員会によるコーポレートガバナンスの有効性に重⼤な疑義を⽣ぜしめるものといえる。」(報告書101ページ)

売上欲しさのためか、あぶない相手からあぶない受注をしてしまったのが、そもそも、まずかったのでしょう。その失敗を受け入れて、すなおに、回収不能はひきあてればよかったのでしょうが、苦し紛れに、いらない細工をしたために、泥沼に陥ってしまったという印象です。

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