企業会計基準委員会は、「OCI は不要か?」というショート・ペーパーを、2014年5月23日に公表しました。「財務業績を報告する上で当期純利益が果たすべき役割に関する国際的な議論に参画するための検討」の一環として作成・公表されたものです。
報告書の第1項によると「本ペーパーは、ASBJ が財務報告基準に関する国際的な議論に貢献するために公表を予定しているショート・ディスカッション・ペーパーシリーズの第一号」とのことです。
42項に結論がまとめられています。
「本ペーパーにおける分析によると、各資産及び負債について同一の測定基礎を用いて資産又は負債を測定してOCI の使用を廃止又は最小限としようとすることは、不適切あるいは実行不可能である。むしろ、測定基礎を決定する際には、多くの場合には両者は同一となるであろうが、2 つの異なる観点(すなわち、企業の財務業績と財政状態の報告の観点)を一層意識すべきである。目的適合性のある測定基礎が、異なる目的を満たす上で異なるものである場合は、OCI を「連結環」として使用して、財務諸表本体に表示される財務情報の有用性を維持するようにすることが必要となるであろう。」
少し単純化すると、財務業績の報告の観点からの各資産及び負債の測定基礎と、財政状態の報告の観点からの測定基礎が異なる場合が当然ある、そのような場合にはOCI(その他包括利益)を「連結環」として使用すべき、無理やり一致させようとして、OCIを廃止・縮小するのはおかしいという主張のようです。
図式化すると、
・財務業績(純利益)の報告の観点→資産及び負債の測定(A)(PLアプローチ)
・財政状態の報告の観点→資産及び負債の測定(B)→純資産→(資本取引以外の純資産変動である)包括利益(BSアプローチ)
・(A)と(B)が異なる場合はOCIにより調整(純利益+OCI=包括利益)
ということになるのでしょう。
もっともらしい感じはしますが、他方、作りものっぽい感じもします。IASB議長がBento boxのようだと評したのもうなずけます。そもそも、「財務業績」の定義がはっきりしません。定義ははっきりしないが、今までそれなりに役立ってきたのだから、大事なものだということなのでしょうか。
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