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会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

特別調査委員会の中間報告書受領及び公表に関するお知らせ(ネットワンシステムズ)

特別調査委員会の中間報告書受領及び公表に関するお知らせ(PDFファイル)

ネットワンシステムズ(東証1部上場)のプレスリリース。

架空循環取引に関する特別調査委員会の中間報告書を受領したとのことです。報告書も添付されています。調査の過程で、本不正行為に類似する不正(原価付替取引)が存在することが発覚し、追加調査を実施することが必要となったことなどから、最終的な報告書の提出はなされていません。

調査は、KPMGの人が3人(委員1人、補助者2人)加わっていますが、弁護士が中心となって行われたようです。

架空取引の影響額は...



報告書によると、元東日本第 1 事業本部第 1 営業部営業第 1 チーム シニアマネージャーA 氏が、首謀者ということになっています。

「...納品の事実が確認できない取引は、中央省庁をエンドユーザーとする架空の物品販売を内容とする商流取引を順次繰り返す形で行われていた(以下「本不正行為」という。)。貴社においては、本不正行為の期間中、営業第 1 チームのマネージャーであった A 氏が、本不正行為による取引の当事会社(後に定義する。)の担当者らと連絡を取り合い、A 氏の部下らに対して必要書類の一部の作成を命じ、A 氏の上長に対して架空の商流取引である事実を秘して決裁を受け、本不正行為に係る取引を実行していた。すなわち、本不正行為は、貴社において組織的に実行されたものではなく、全容を把握して架空の商流取引であることを認識していたのは A 氏のみであり、A 氏が単独で行っていたものであった。」(14ページ)

不正の動機は...

「A 氏の供述によれば、A 氏が本不正行為を行ったのは、第 1 営業部が大規模な赤字を発生させたことなどから縮小傾向にあった中で、某中央省庁発注の大型案件を A 氏のチームが失注したことから、これを挽回し、第 1 営業部のプレゼンスを上げるためであったとのことであり、その後も、予算の達成が第 1 営業部のプレゼンス向上の生命線であったため、本不正行為を止められなかったとのことである。また、A 氏の供述によれば、本不正行為によって具体的な利益を得た者は自身を含めて存在しないとのことである。ただし、現時点において、これら A 氏の供述を裏付けるものはなく、本不正行為により支払われた金銭の一部が流出していることなども勘案すると、その供述内容の信用性には疑問がある。」(15ページ)

単に架空の売上や原価を計上していただけであれば、それを全て取り消せば、実損もなく解決するということになりますが、動機の箇所でも述べているように、あやしい支出があったようです。

「本不正行為は、前述のとおり、架空の商流取引が繰り返される度に売上が計上され、かつ売上代金が加算されていくが、かかる取引の途中で、案件を分割して戊社に架空発注し、さらに同社から前述の当事会社以外の複数の業者(以下「関与会社」という。)に架空発注されることがあった。すなわち、戊社及び同社の発注先である業者に対し、本不正行為によって支払われた金銭の一部が流出していると認められる。」(16ページ)

監査手続や、それに対して首謀者らが取った妨害策についてもふれています。

会計監査人は、問題の取引をサンプルとして抽出していますが(サンプリングは適切であった)、抽出したサンプルに適用した手続が不十分だったようです。

「カ 貴社会計監査人による監査

貴社の会計監査人は、1992年以降変更されていないが、その監査計画では、売上取引の実在性の検証は重点監査項目に選定されていた。監査手続の実施に際して、貴社の売上取引に関する内部統制は監査上依拠できるものとされ、サンプリングにより抽出された売上取引を個別検証することで、貴社会計監査人は監査上の心証形成を行っていた。貴社会計監査人のサンプリングは、一定金額以上の取引、循環取引の可能性がある低粗利率の取引等、複数の基準を用いて実施されていた。

当該抽出基準により選定された取引には、本調査で納品実体がない取引と認定された取引(以下「本件監査対象取引」という。)が含まれていた。当該取引について、貴社会計監査人は、A氏等に対して案件の背景事情についてヒアリングを行うとともに、内部・外部証憑の証憑突合を実施していた。貴社会計監査人が入手した外部証憑には、取引発生時点で貴社が既に入手していた証憑のほか、サンプリング終了後貴社会計監査人からの資料要求に対応してA氏が直接の売上先及び仕入先の担当者に要請し、新たに入手した証憑も含まれていた。こうした手続を経た上で貴社会計監査人から、本件監査対象取引の実在性に関する問題点が指摘されることはなかった。」(11ページ)

ただし、A氏による監査手続妨害工作(取引先との口裏合わせ、質問回答の事前すりあわせなど)がなされており、やむを得なかったのかもしれません。そもそも、取引先が架空ではない正当取引と認識していれば、証憑も出してくれるでしょう。

「(カ)監査対応等の発覚防止工作

A 氏は、内部監査及び会計監査人による監査の対象となった案件につき、監査の必要書類である受注先(顧客)発行の検収書等が不足する場合に、これらを取得するよう部下らに指示していた。また、A 氏は、部下らを介して、これらの書類の取得や、監査向けの納品確認根拠としてのメール返信等を、受注先である当事会社に依頼し、協力を得ることも行っていた。

また、A 氏は、部下らに指示して、見積書の明細等を作成させた案件が会計監査人による監査の対象となった際、部下らに対し、監査法人に対する回答案の作成を指示し、作成された内容を自らに送付させてチェックした上で会計監査人に提出させていた。」(25ページ)

疑問をもつ部下を強圧的に押さえつけていたようです。

「さらに、A 氏は、前述の見積明細作成の指示を受けて、事前に金額が決まっていることや顧客と向き合うはずの営業担当者が認識していない案件の存在について疑問を抱く部下らに対し、事実関係を明らかにせず、あるいは叱責して質問をさせないなどの対応をとっていた。例えば、A 氏は、B 氏に対しては、「先にお金が必要なお客様がいる。お金を先に払う代わりに、利子がついて返ってくるというビジネスで、悪いことはやっていない。」などと説明し、D 氏に対しては、「銀行がお金を回す必要があってこのような取引があり、悪いことをやっているわけではない。」などと説明し、そのようなビジネスもあると思わせ、従わせていた。E 氏に対しては、納得できる回答をせずに「とにかく急ぎの案件である。」と述べ、指示に従わせていた。さらに、C 氏に対しては、「お前疑っているのか。」と叱責し、それ以上の質問を受け付けずに指示に従わせていた。」(25ページ)

全体として、悪いのはA氏だけで、その上長や部下、会社、あやしい支出先を除く架空取引相手先会社は、だまされた、(部下の場合はパワハラされた)被害者であるというストーリーで作文されているようです。
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