会計評論家細野氏による日産ゴーン事件の解説。前半は、特に後払い報酬のことについて、会計処理を論じています。
費用計上には3つの要件(原因事実の発生、支払額の合理的見積もり、支払の蓋然性)があるが、ゴーン氏の場合は満たしていない要件があるそうです。
「...ゴーン前会長は、先送りした報酬を退職後の顧問料などの名目で受け取るつもりだったという。そうすると、先送り報酬支払いの原因となる事実はゴーン前会長が将来日産に提供する顧問業務にあるのだから、原因事実は現時点にはない。この場合第1要件は満たされない。」
「第3要件の先送り報酬の支払の蓋然性は高いとは言えない。なぜなら、この手の超高額役員給付は、たとえ現時点において明示的に決定されていても、実際には支払われないことが多いからである。」
「役員に対する超高額将来給付は、その時点の権力者によって決定される。支払人は将来の権力者であり、その時、支払決定時の権力者は退職し既に権力を失っている。この場合、新権力者が旧権力者の決定した超高額給付を支払う行為は、自分の在任中の会社の資金繰りを悪化させるだけのことで、何のメリットもない。
すなわち、超高額将来給付が本当に支払われるためには、旧権力者は、退任後といえども会社に対して支配力を継続していなければならない。
ゴーン前会長は自分の退職後における強い影響力の保持を夢見ていたであろうが、ゴーン前会長は日産自動車の株を3百万株持っていただけのことで、その持株比率は0.074%に過ぎない。どのような画策を行おうが、一旦日産自動車をやめてしまったら、ゴーン前会長がその権力を維持することは不可能に近い。」
「現に、会長職を解任してしまった日産も、この期に及んで、ゴーン前会長の先送り報酬50億円を支払わないではないか。」
費用計上不要(したがって役員報酬にも記載不要)という結論は賛成です。
後半はゴーン氏の保釈を認めるべきという主張です。
「ゴーン前会長に罪証隠滅の恐れは皆無である。なぜなら、ゴーン前会長が罪証隠滅のために用いることのできる証拠資料や人的関係は、全て日産自動車側の内部資料と人間関係であり、それらは日産自動車側との司法取引により、全て特捜検察の管理下にあるからである。
ゴーン前会長には罪証隠滅の恐れがなく、何よりも逮捕事由がない。ゴーン前会長の権利保釈を認めないのは著しく正義に反する。」
正しい意見だと思います。
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