日本公認会計士協会は、租税調査会研究報告第20号「会計基準のコンバージェンスと確定決算主義」を、2010年6月15日付で公表しました。
「昨今の急速な会計基準の国際化に伴う企業会計と課税所得計算との乖離の拡大により、従来から維持されてきました確定決算主義を見直すべきとの種々の議論が起こっていることに伴い、改めて確定決算主義の意義と歴史的経緯について整理を行い」、「確定決算主義が持つ利点を踏まえたうえで、損金経理要件が課されていることに伴う逆基準性の問題などについても触れ、確定決算主義の今後の方向性について提言」した報告書とのことです。
A4で60ページ以上の大作です。
「6.今後の方向性」で上場企業について、提言がなされています。
「上場企業の財務諸表は将来指向的な数値を得るべくに会計基準が進んでいくため、課税の公平性の観点から見積的要素を可能な限り制限する法人税法の基本理念とは相入れない方向に進んでいくものと考えられる。そうすると申告調整が煩雑化すると同時に、損金経理要件による逆基準性及び税務メリットの放棄の問題がますます生じるものと思われる。確定決算主義の放棄、すなわち企業会計と税務会計を分断すればこの問題は解決するが、課税所得計算の簡便性などの確定決算主義のメリットも享受している。よって現段階では、確定決算主義の放棄を議論するのは時期尚早と考えるが、上述の逆基準性などの問題から、少なくとも損金経理要件の見直しが必要である。」
上場企業以外の企業については、「提言」としては方向性が示されていませんが、「財務諸表作成目的の二極化現象」という見出しで、上場企業と対比させて議論しています。
「上場企業以外の企業は、規模的には幅が広く、上場企業と同じ目的を持つ場合もあるが、企業を取り巻く多様な関係者の利害を調整するための判断資料としての役割が財務諸表の作成目的であることが多い。具体的に、財務諸表(計算書類)は剰余金の配当に係る分配可能額の計算及び課税所得計算の基礎とすることが多いと考えられ、計算の基礎としての確実性が求められる。この目的に資するためには、取得原価主義や債務確定主義を中心に据えた過去事象に基づく確実な数値が要求されるであろう。」
連結対個別という区分では議論されていませんが、会計基準や会計慣行(税務との関係を含む)の「二極化」という点では、「連単分離」論にも通ずるところがあります。
ただし、「損金経理要件の見直しが必要」という提言については、上場企業以外の企業を除外する理屈はないと思うのですが・・・。
また、個人的には、「企業会計と税務会計を分断」してしまうのがすっきりするのではないかと思います。あるいは、会社法会計は確定決算主義でやって、純粋に一般投資家のための開示目的の財務諸表は、(連結・個別を問わず)会社法計算書類に修正を加えて作成する方法もあり得ます。「企業会計と会社法会計の分断」(会社法会計と税務会計は分断しない)ということになります。
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