会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

「企業内容等の開示に関する内閣府令」の改正(金融庁)

「企業内容等の開示に関する内閣府令」の改正案に対するパブリックコメントの結果等について

企業内容等の開示に関する内閣府令」の改正が、2019年1月31日付で公布・施行されました。

昨年6月に公表された金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループ報告を踏まえ、有価証券報告書等の記載事項について、改正を行うものです。

改正内容は以下のとおり(金融庁プレスリリースより)。

○ 財務情報及び記述情報の充実

経営方針・経営戦略等について、市場の状況、競争優位性、主要製品・サービス、顧客基盤等に関する経営者の認識の説明を含めた記載を求めることとします。

事業等のリスクについて、顕在化する可能性の程度や時期、リスクの事業へ与える影響の内容、リスクへの対応策の説明を求めることとします。

会計上の見積りや見積りに用いた仮定について、不確実性の内容やその変動により経営成績に生じる影響等に関する経営者の認識の記載を求めることとします。

○ 建設的な対話の促進に向けた情報の提供

役員の報酬について、報酬プログラムの説明(業績連動報酬に関する情報や役職ごとの方針等)、プログラムに基づく報酬実績等の記載を求めることとします。

政策保有株式について、保有の合理性の検証方法等について開示を求めるとともに、個別開示の対象となる銘柄数を現状の30銘柄から60銘柄に拡大します。

○ 情報の信頼性・適時性の確保に向けた取組

・監査役会等の活動状況、監査法人による継続監査期間、ネットワークファームに対する監査報酬等の開示を求めることとします

適用日が定められています。

①「建設的な対話の促進に向けた情報の提供」欄に記載の項目等

・2019年(平成31年)3月31日以後に終了する事業年度に係る有価証券報告書等から適用

②上記以外

・2020年(平成32年)3月31日以後に終了する事業年度に係る有価証券報告書等から適用(2019年(平成31年)3月31日以後に終了する事業年度に係る有価証券報告書等からの適用可)。

「企業内容等の開示に関する留意事項について(企業内容等開示ガイドライン)」も併せて改正されています。

公開草案に対して、23の個人及び団体より延べ130件のコメントが寄せられたそうです。会計士協会が気にしていた継続監査期間に関しても、金融庁の考え方を示しています。

パブリックコメントの概要及びコメントに対する金融庁の考え方(PDFファイル)

重要なものというわけではありませんが、気になったコメントや回答をひろいました。

・(金融庁)「内部留保資金という用語は多義的であり、実務に混乱を生じさせる可能性もあることから、改正開示府令においては、内部留保資金という用語は削除しました。」

・(コメント)「会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定については、「経理の状況」の注記に記載し、独立監査人による監査の対象とすべきものである。
「経理の状況」と異なる場所に記載することは、利用者の一覧性・利便性を妨げる。
会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定については、現在は財務情報としての開示は求められておらず財務会計基準機構の基準諮問会議において企業会計基準委員会にテーマ提言を行うことが決定された段階という理解であり、先行して非財務情報にて開示するとした背景等について確認させていただきたい。 」
→(金融庁)「会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定については、ご指摘のとおり「経理の状況」の注記に記載することも考えられますが、現状の我が国の会計基準にそのような定めはないと認識しております。そのような中でも、DWG報告にあるように、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定に関する情報は、投資判断・経営判断に直結するものであり、経営陣の関与の下、より充実した開示が行われるべきと考えられますので、MD&Aに項目を設けて記載を求めることとしています。 」

・(金融庁)「ご指摘の継続監査期間については、例えば、以下のとおり整理することが考えられます。

① 提出会社が有価証券届出書提出前から継続して同一の監査法人による監査を受けている場合、有価証券届出書提出前の監査期間も含めて算定する。

②-i 過去に提出会社において合併、会社分割、株式交換及び株式移転があった場合であって、会計上の取得企業の監査公認会計士等が提出会社の監査を継続して行っているときは、当該合併、会社分割、株式交換及び株式移転前の監査期間も含めて算定する。

②-ii 過去に提出会社において合併、会社分割、株式交換及び株式移転があった場合であって、会計上の被取得企業の監査公認会計士等が提出会社の監査を行っているときは、当該合併、会社分割、株式交換及び株式移転前の監査期間は含めないものとして算定する。

③-i 過去に監査法人において合併があった場合、当該合併前の監査法人による監査期間も含めて算定する。

③-ii 提出会社の監査業務を執行していた公認会計士が異なる監査法人に異動した場合において、当該公認会計士が異動後の監査法人においても継続して提出会社の監査業務を執行するとき又は当該公認会計士の異動前の監査法人と異動後の監査法人が同一のネットワークに属するとき等、同一の監査法人が提出会社の監査業務を継続して執行していると考えられる場合には、当該公認会計士の異動前の監査法人の監査期間も含めて算定する。

継続監査期間の算定に当たっては、上記の整理も踏まえ、基本的には、可能な範囲で遡って調査すれば足り、その調査が著しく困難な場合には、調査が可能であった期間を記載した上で、調査が著しく困難であったため、継続監査期間がその期間を超える可能性がある旨を注記することが考えられます。

また、継続監査期間の記載方法については、「●年間」と記載する方法のほか、「●年以降」といった記載も考えられます。」

・(コメント)(役員の報酬等について)「報酬額の記載方法について、金額確定前にはその旨を注記することで良いか。このときの記載すべき報酬額は、公正妥当と認められる企業会計の慣行に従い、原則として会計上の費用・引当金計上額に基づき算定すべきである。」
→(金融庁)「開示府令において、記載すべき報酬等とは、「報酬、賞与その他の職務執行の対価としてその会社から受ける財産上の利益であって、最近事業年度に係るもの及び最近事業年度において受け、又は受ける見込みの額が明らかになったもの」とされています。なお、金額が確定していない役員の報酬等については、報酬プログラムの開示において記載することが求められています。」

・(コメント)「第二号様式記載上の注意(57)cの規定により、役員の報酬等の額又はその算定方法の決定に関する方針の「決定権限を有する者の氏名又は名称」を記載するに当たり、取締役会の決議によって決定の全部又は一部を取締役に再一任している場合には、その旨を記載すべきである。 」
→(金融庁)「報酬決定プロセスの客観性・透明性のチェックを可能とするため、算定方法の決定権者、その権限や裁量の範囲等の情報の開示を求めるべきとのDWG報告の趣旨を踏まえれば、ご指摘のとおり、取締役会の決議によって決定の全部又は一部を取締役に再一任している場合には、その旨を記載すべきと考えられます。 」
(これら以外にも役員報酬に関するコメント多数)

・(コメント)「第二号様式記載上の注意(58)bについて、個別銘柄毎にその検証の内容を記載しなければならないものではないという理解でよいか。 」
→(金融庁)「ご理解のとおりです。必ずしも個別の銘柄ごとに保有の適否を含む検証の結果を開示することを求めるものではありませんが、単に、「検証の結果、全ての銘柄の保有が適当と認められた」といった、一般的・抽象的な記載ではなく、例えば、
・ 保有の適否を検証する上で、保有目的が適切か、保有に伴う便益やリスクが資本コストに見合っているかを含め、どのような点に着眼し、どのような基準を設定したか
・ 設定した基準を踏まえ、どのような内容の議論を経て個別銘柄の保有の適否を検証したか
・ 議論の結果、保有の適否について、どのような結論が得られたか
等について、具体的な記載が行われることが望ましいものと考えられます。」

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